伊方きらら館と伊方ビジターズハウス【伊方原発】

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国道197号線。高知から四国を斜めに貫き、日本一細長い「佐田岬半島」の背骨になる国道。
この道路の佐田岬半島の背骨となる区間は「佐田岬メロディーライン」と称される。左に右に、眼下に海を見下ろしながら、細い半島の山々の頂を連ねる快走路だ。
そしてこの佐田岬半島には、何十基という真っ白で巨大な風車が立ち並ぶ。その半島の付け根近くには、四国唯一の原子力発電所である「伊方原発」がある。日本一細長い半島は、四国を代表する発電の地なのだ。
そんな発電の地を代表する道の駅が「伊方きらら館」。この道を走る人はおそらく、四国最西端「佐田岬」を目指す人。ドライブの途中にはぜひ立ち寄ってみたい。

ドライブの休憩や癒しに便利な道の駅伊方きらら館

伊方きらら館

伊方原発を見下ろす山の上にある道の駅伊方きらら館。じゃこ天など販売する売店やトイレが完備されている。
そして、伊方町の観光物産センターである「伊方きらら館」。1階は特産品の展示販売がある。魚に直接触ったり餌をあげたりできる「ふれあい水槽」があり、子供には人気だ。2階には伊方町の民俗資料館があって、無料で見ることができる。中には懐かしの品々もあって、なかなか面白い。

伊方きらら館休憩室

3階は休憩室になっていて自由に使うことができる。無料のお茶のサービスがうれしい。
畳に座りながら、遠く青い海を眺める。これからの佐田岬への長いドライブ、または佐田岬からの長いドライブ。ここで少しゆっくりして疲れをとりたい。

伊方きらら館連絡通路

休憩室のある3階から通路が伸びている。「伊方ビジターズハウス」という、伊方原発の紹介施設へと続く。四国電力のPR施設で、入場は無料。1978年のオープンだが、2007年の展示内容がリニューアルされた。まだ東日本大震災の4年前のことで、この時の訪問もまだ震災前だった。

震災前に訪問した伊方ビジターズハウス

伊方ビジターズハウスアースギャラリー

きらら館からビジターズハウス入ると、別館のエネルギー展示ホールからの入場になる。ここには「アースギャラリー」やエネルギーに関するゲームなどが展示されている。子供連れなら、楽しく遊べるこちらの別館の方が人気だろう。特におもしろかったのは、自分でタッチペンを使って描いたキャラクターを水族館で泳がせられるこの展示。

伊方ビジターズハウス

本館の原子力展示ホール。原子力発電に関する説明や展示がされている。主に「原子力発電の安全性」がPRされていた。

伊方ビジターズハウス

原子炉格納容器の1/6のリアルな模型が展示されている。原子力発電の仕組みを映像と演出で説明してくれる。こうやって原子力でタービンを回すのかと、理解できた。

伊方ビジターズハウス伊方原発展示

伊方原発の中央制御室を再現したブース。安全管理の様子を解説してくれる。原子力発電の安全性の確保の仕組みと発電の仕組みがなかなかよくわかった。リニューアルされたばかりで、無料ながら、なかなか見ごたえのある展示だった。

伊方原発

伊方きらら館に戻り屋上に出るとそこは展望デッキ。今までいろいろと展示を見たその「伊方原発」を間近に望むことができる。そして、山の上に立ち並ぶ風車。
まさにここは電力の町。いろいろ問題はあるが、原子力も風力もCO2の発生の少ない発電方法。豊かな自然の中にある発電施設。温暖化の未来を切り開くことができるのか。未来に向けた人間の挑戦が、青い海の上に突き出た細長い陸地の上で営まれていた。

震災後に再訪した伊方原発のビジターズハウス

伊方ビジターズハウス

前回訪れた時と違い、多くの人が訪れている。中には観光バスで乗り付ける団体もいる。あの日以来、原子力発電は国民が注目する所になった事を実感する。
ビジターセンターの一角には、子供が電力や環境問題、原子力について、ゲームで学べるブースがあるがここにはあまり人は立ち寄らず。奇しくも大人の興味は原子力発電に、子供は原発の近くには近寄らせずということだろうか・・・

伊方ビジターズハウス
伊方ビジターズハウス

四国電力も必死だ。子供や家族連れを呼びこんで少しでもイメージを良くしようと、無料のバルーンアート教室を開いたり。パンフレットを持って帰ってもらえるようにディスプレイし、無料のお茶を用意したり。

伊方ビジターズハウス原子炉展示

原子炉の模型が展示されており、どのように発電が行われているのか、詳しく説明されている。こうやって模型などで原子炉の構造を見ると、なるほどと思えることが多い。
前回訪れた時は結構チンプンカンプンだったが、連日の報道により、恐ろしい程その内容や用語が頭の中に入ってくる。しかし、前回は最新の科学技術だと感じたこの模型も、本当に大丈夫なのかとかと疑問視するところも多々ある。

伊方ビジターズハウス原子炉展示

今回の展示で一番衝撃的だったのは「5重の防護壁」だ。万が一事故が起こっても5重の壁でしっかりと放射能を封じ込めますと説明がある。その壁は以下の通り。
1.ペレット・・・ウランを焼き固め、内部にしっかりと保持
2.燃料被ふく管・・・丈夫な金属でペレットを密封
3.原子炉容器・・・厚さ20㎝の鋼鉄製の容器
4.原子炉格納容器・・・厚さ4.5㎝の鋼鉄製の密封容器
5.コンクリートの遮蔽壁・・・厚さ140㎝のコンクリート

ペレットと燃料被覆管は熱であっけなく溶解。原子炉容器はメルトダウンで穴が開き、原子炉格納容器はメルトスルーで漏れ出した核燃料で損傷。コンクリート遮蔽壁は、要するに水素爆発で吹っ飛んだ建屋?
前回訪れた時は、これで十分と思っていた。しかしその十分が、電源喪失からものの数時間ですべて破壊されるとは・・・
今回の津波が想定外というが、こんなに簡単に想定外が起きるのは恐ろしい。人は自然災害にも無力、危険と表裏一体のテクノロジーも完全に制御することはできない。人間の思い上がりを痛々しい程に感じる展示だ。
そのほかにも自然界には放射能が存在するとか、レントゲンや飛行機での被ばく量はいくらだとか・・・
今となっては全く納得のいかない安全性の説明がむなしくも思える。

伊方ビジターズハウス

損得なしで考えれば、原発をやめ、当然再生可能な自然エネルギーへ転換する事に反対する人は稀だろう。地球温暖化を考えれば、二酸化炭素を排出せず、比較的割安な原子力発電は選択肢のひとつと前までは思っていたが、その考えはやめた。少なくとも、人が住んでいるすぐ横で、核反応を起こすという恐ろしさは、今回いやというほど感じた。
しかし、四国の40%の電力をまかなうこの伊方原発がいきなり止まれば、四国での生活はかなり困る。経済も停滞し、企業の国際競争力も地に落ちる。そうなれば、日本という国は沈没だ。復興の中、経済が沈没する事にも疑問が残る。
その一方、今回被害に遭われた方や、原発の至近距離に住む人はこんな悠長な事は言ってられないだろう。原子力発電に国のエネルギーの中核を任せて来た今日、その背骨をいきなり抜こうというのは簡単ではない。
少なくとも、今の子供たちが安心して暮らせる社会を望むのは、子を持つ親の共通の願いだ。子供の未来を犠牲にしてまで、今をしのぐような事をすれば日本に、そして人間に未来はない。

伊方半島

ちなみに、伊方原発がある佐田岬半島は、風力発電のメッカでもある。半島の上に立ち並ぶ巨大な風車群は圧巻。
しかし、日本経済新聞によると、伊方原発を停止し、すべて風力発電に頼るには、この風車を8000基も建てないといけないそうだ。素人目に場所もコストもまったく足りないと感じる。簡単に、再生可能な自然エネルギーを増やせばよいと結論付けるのも、随分乱暴に感じる。
今、日本は大きな分岐点に差し掛かっている。答えはまだ見えないが、みんなで答え探しをしなければならない。そう改めて感じた。

伊方きらら館ふれあい水槽

いろいろな思いが渦巻き、いろんな立場がある問題。簡単には解決できない大変な問題だ。
帰りは道の駅「伊方きらら館」にあるふれあい水槽でお魚と触れ合う。少しブルーな気持ちも、少しここで癒された。

佐田岬に行くなら絶対泊まりたい魚が美味しすぎる宿

伊方きらら館

住所: 愛媛県西宇和郡伊方町九町3-179-1
電話: 0894-39-0230
休み: 無休
営業時間: 9:00~18:00(10~3月は~17:00)

伊方ビジターズハウス

住所: 愛媛県西宇和郡伊方町九町コチワキ3番耕地204
電話: 0894-39-1399
休み: 無休
料金: 無料
営業時間: 9:00~17:00

交通: JR予讃線八幡浜駅から伊予鉄バス三崎行きで32分、伊方ビジターズハウス前下車すぐ
   松山自動車道・大洲ICより車で約50分 
駐車場: 約45台(道の駅を利用)

【投稿時最終訪問 2008年2月】

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