紅葉の皿ヶ嶺【見頃は10月下旬~11月上旬】

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愛媛の県庁所在地である松山市。松山市が広がる道後平野の東端にそびえる1271mの山が「皿ヶ嶺」
西日本最高峰である石鎚山に連なる山で、広大なブナの原生林が広がる花の名山。例年10月下旬から11月初旬には黄葉したブナの森がとても美しく、頂上直下に広がる高層湿原など紅葉の季節の登山がとても素晴らしい山です。標高900mの登山口まで松山市街地から車でわずか1時間でアクセスでき、地元学校が遠足で訪れる整備された歩きやすい山。秋の訪れを家族連れでも一足早く楽しめます。

標高900mの上林森林公園から気軽に登れる紅葉の名山

上林森林公園

皿ヶ嶺の登山口となるのは「上林森林公園」。1車線ながらも離合場所は多くある舗装された道を走ってたどり着くことができます。100台は停めることができる広い駐車場もあるので、シーズンの週末に訪れても問題ありません。
公園内には避難小屋と水道・トイレがあります。キャンプもできる公園内にも紅葉が美しい木々が多いので、出発前に少し愛でておきましょう。ここから登山がスタートだが、登りを開始する前にちょっと立ち止まってましょう。この森林公園内の所々の紅葉も見事です。特に、公園入口にあるトイレ裏側、林道へ戻る道の脇の紅葉は見事で、毎年必ず立ち止まるようにしています。

上林森林公園

駐車場からはしばらく人工林の中を行くます。朝の凛とした空気に包まれる森の中に差し込む一条の光が黄葉を眩しく照らすとても幻想的な、静かな世界です。途中、風穴があります。夏は積み上げられた岩の隙間から冷気が噴き出すスポットですが秋・冬は全く何も感じることがないので素通りします。

皿ヶ嶺登山道

人工林を抜けるとブナとミズナラの混合林の中をつづら折りに高度を一気に稼いだ後、ゆっくりと東側へと登っていきます。北側斜面のため光は入りませんが、大きなブナやミズナラが織りなすとても美しい森。頂上付近に出れば日が当たるさらに大きな巨木の森もあるのでここは登りに専念しましょう。

皿ヶ嶺の紅葉

北側斜面を登り切り、ついに稜線にたどりつくと、ここでは登山者を歓迎するかのように、木のベンチが待っていてくれます。ここからは松山や瀬戸内海の景色が美しく見えます。そしてその頭上には突き抜ける青空をバックに燃え上がっています。朽ち果てたブナの巨大な老木が佇むこのベンチで少しゆっくり休憩しながら、秋の深まりを感じましょう。

皿ヶ嶺黄葉のブナの原生林

小さな流れを渡り、稜線上を歩いて進みます。付近には大きなブナの木がいっぱい。ブナの形は独特で、フラダンスを踊っているかのように独特のポーズをとる木。そして、幹に空いた穴で、まるで人のように見える木。これほど個性的な木が点在する森は、なかなかありません。

竜神平の周回が最もブナの黄葉が美しい道

皿ヶ嶺黄葉のブナの原生林

しばらく行くと、竜神平へ右に曲がる分岐点に出ます。しかし、このまま竜神平に行くのはもったいない。実は、まっすぐ行くルートが、ブナ林が続く稜線を行くルートが皿ヶ嶺のブナの黄葉を一番楽しめるルートです。「皿ヶ嶺」の名前の由来になったであろう、下界から見た皿のようなになった平らな山容の縁を歩くルート。心地よいアップダウンをつづりながら、彩られた木々のトンネルの散歩道は最高に気持ちよいのです。所々左側に山が切れ落ちていて、時々下界の里山や、遠く町の風景を眺めることができます。また冬にはこのルートは霧氷が綺麗な場所でもあります。稜線の散歩道にはふかふかの落ち葉が敷き詰められています。

皿ヶ嶺の紅葉

黄金のブナの黄葉に包まれたプロムナードは目が眩しくなるほど。金を纏った紺碧の布地に包まれたような森。秋の美しさが濃縮された、美しい森を歩くと、気持ちはとても軽くなります。多くの登山者は先ほどの分岐から竜神平へ入り、直接頂上に向かうため、そのため、このルートはとても静か。この素晴らしい秋のブナの森が、ほぼ独り占めです。

皿ヶ嶺紅葉の登山道

稜線のブナの森は、歩くとまるでそれはふかふかクッション。1歩1歩がとても気持ちよく、足を踏み出すたびにガサガサと乾いた音が立ち、落ち葉が舞いあがるります。ゆるやかな勾配で道も広く、登山というより自然の中を散策しているような気分。とても気持ち良い秋の風景です。

皿ヶ嶺秋のベンチ

皿ヶ嶺で、僕が最もお気に入りの場所がこのベンチ。竜神平北側のブナの原生林が広がる稜線の途中の登山道途中にあります。森の北側は下界に向かってすっぱりと山が切れ落ち、南側竜神平に向かって緩やかに下っていきます。そのためこの場所には光がよく入り、森の広がりを感じながらも、空の広がりも感じられる場所です。ここでコーヒーを入れて飲むのが、楽しみのひとつ。絵にかいたかのような静かな秋の公園の風景が、静な山の上にあるのです。

皿ヶ嶺ブナの黄葉

ベンチに座って空を見上げると飛び込んできた風景。美しいブナの金色の黄葉。その美しさにはベンチにもたれながら思わずため息が出てしまうくらい。この散歩道は今日はほとんど人が通らずとても静か。風に揺れる木々のざわめきと、どこかで派手に木を打ち鳴らすゲラ(キツツキ)の音が時々聞こえます。ここで味わうコーヒーやランチは至極の時間なのです。

皿ヶ嶺ブナの黄葉

青空から降り注ぐ太陽の光が金色の衣装をまとった木々を輝かせます。風に衣がなびくと、落ち葉にこぼれる木漏れ日がゆらゆらと動く。光と音、煌めきと静寂が複雑に織り込まれた、色鮮やかな世界は、いつまで見ていても飽きません。

皿ヶ嶺黄葉のブナの原生林

ベンチを出発して、鮮やかな紺碧の空を、眩しい金色のヴェールが覆うかのような黄葉のブナの原生林を進みます。時折風にざわめく木々が、足元の落ち葉に光を落として色鮮やかに紅葉の森の中を秋色に染め上げます。

秋の皿ヶ嶺の森

稜線の途中から竜神平に向かう道が右へ分岐しています。バッファローの角を模したオブジェのような低木と道標が目印です。
ここから稜線を外れ、竜神平へ向かう道に入ります。この竜神平に向かう途中の森もとても素敵。緩やかな斜面の覆われた原生林はどこまでも広がりがあるよわうに感じられます。急斜面と人工林が特徴の四国の山にあって、この森の風景はかなり稀有です。ブナの密度は少なくなり、黄葉の光はやや薄まりますが、それでも様々な木々が青空に華やかな彩りを添えてくれます。

秋の皿ヶ嶺

竜神平に向かう道は、笹に覆われた、森の中を彷徨うように進んでいく。人の手が入っていない全くの原生林。先程の稜線とは違い、深い森の広がりを感じられる道。まるで信州まで来たような不思議なトレッキング。この森を行く人も少なく、聞こえるのは小鳥の声と木々のざわめき。暖かい光が降り注ぐ、とても気持ちの良い森で、ここも皿ヶ嶺の中では気持ちよいスポットのひとつです。

紅葉の高層湿原「竜神平」は皿ヶ嶺を代表する風景

紅葉の竜神平

しばらく行くと、突然深い森の木々が途切れ、視界が広がり、気持のいい青空と、一面の笹野原の広がる風景が森の中に飛び込んできます。ここが「竜神平」
竜神平は標高1100mに広がる四国には珍しい高層湿原。とはいえ、最近はかなり乾燥化がすすみ、湿原というより、笹野原と化してきています。それでもその風景は、ここが瀬戸内海にほど近い場所という事を忘れさせ、信州の高原に来たかの様に思ってしまいます。

秋の竜神平

さあ、森を抜け出して、太陽の光が降り注ぐ気持のいい竜神平を行きましょう。竜神平に出ると、青々とした笹が少し季節を戻したかの様。それでも、竜神平を取り囲む色鮮やかな紅葉の彩りが、そこにある秋の空気を強く感じさせてくれます。頭上にそびえる皿ヶ嶺の山も、色鮮やかなパッチワークをその山肌に広げ、とても美しく見えます。

紅葉の愛大小屋

竜神平の南側には「愛大小屋」があります。愛知大学ではなく、愛媛大学です。森の中にたたずむ三角屋根の建物は、まるで白雪姫の小人の小屋や妖精の家のような幻想的な風景。竜神平を眺めながら、小屋前のベンチで昼食をとる登山者もとても多い場所です。ここははキャンプ地に指定されおり、簡易なトイレもあります。また、この無人小屋にも500円で宿泊することができます。土間にテーブルとイスがあり、就寝できる木の板の床が二段になってあり、シュラフやランタンを持ってくれば快適に泊まれます。小屋の近くに湧水がありますが、心もとないので水は多めに持参する必要があります。

竜神平から皿ヶ嶺頂上へは神秘的なブナの大木の森

黄葉のブナの原生林

愛大小屋とトイレの間から森の奥へ続く道が皿ヶ嶺への登山道。美しく深いブナの原生林を抜けて、皿ヶ嶺頂上へと向かいます。

秋の皿ヶ嶺

行くのは南斜面。日の光がさんさんと降り注ぎ、とても鮮やかな木漏れ日が続く道。
こちらの南斜面には時々、植林がされているエリアがあります杉林の中に足を踏み入れると、とても幻想的な世界。一切の音が木々に吸収された、静寂の世界がそこに広がります。ブナの手つかずの原生林とは違い、人が生み出した美しい森の広がりです。

皿ヶ嶺からの石鎚山

竜神平から皿ヶ嶺頂上を目指す道に、このルートで唯一、石鎚山を望むことができる場所です。標高1271mの皿ヶ嶺から1982mの西日本最高峰の石鎚山までは数々の頂上を結びながら、四国の尾根と呼ばれる天空の稜線がつながっています。目を凝らすと、天を貫く石鎚山の頂上の石鎚神社や頂上後山肉眼で確認できます。その山岳風景は神々しく、見事としか言いようがありません。頂上からも望むことができない絶景、足を止めてしばし鑑賞することを忘れることなかれ。

秋の皿ヶ嶺登山道

先ほどまでの歩いてきた道と違い、道幅は狭まり、散歩道から登山道の様相となります。所々急な斜面を登ったりする箇所もありますが、それでも普通の登山道と比べればとても歩きやすい方です。
色鮮やかな落ち葉が敷き詰められた道は皿ヶ嶺頂上に向かうメインルート。行き交う人も先ほどよりもぐっと増えました。

皿ヶ嶺の紅葉

南からの日差しに照らされるブナの林。頂上に近づくにつれ、ブナの森の中にある巨木がとても多くなってきます。空に向かって一斉に手を広げたような形のブナたち。その手先には金色に輝くヴェールを掲げ、眩しい光を森の中に届けてくれます。

皿ヶ嶺のブナの大木

登山道に並ぶように現れたこの2つのブナの木が現れると、頂上はもうすぐ。道脇に仲良く立つこのブナはとても特徴的で、手で触れることもできるのでとても親しみがあります。この付近には個性的なブナが多く、1度訪れただけでも自分の好きな木がいっぱい見つかるはず。そして、再び訪れても、その木がどの木だったかすぐに見分けがつきます。本当に、木の1本1本が長い年月を経て強烈な個性をその体を使って表現しています。

皿ヶ嶺のブナの老木

特に樹齢を重ね、まるで意思をもったかのような表情をしたブナの大木。ギリシア神話に出てくる森の精霊ドリアードと呼びたくなる、皿ヶ嶺で一番好きなブナの大木です。竜神平から皿ヶ嶺頂上へ向かう道は、まるで石を持ったかのようなブナの大木がいくつもある、妖精の住むような神秘的な森なのです。

四国カルストまで見渡せる皿ヶ嶺頂上

皿ヶ嶺頂上

黄葉のブナの原生林を抜けると標高1271mの皿ヶ嶺頂上に到着。なだらかで広い頂上ですが、周りは灌木や木々に覆われていて残念ながら展望は限られます。それでも青空に突き出したような空間は、とても開放感があり、気持ちがよいのです。

皿ヶ嶺からの展望

頂上からは唯一の展望がある南側の風景は山々の連なりを望める絶景。眼下には、久万高原町の町並み、そして遠くには四国カルストの山並みを望むことができます。頂上にもこの風景を望む場所にいくつもの木製のベンチとテーブルがあります。山頂の気温はぐっと下がりますが、天気が良い日は気持ちの良いランチやコーヒータイムが楽しめます。

天空の森から下界を見下ろしながらの下山

皿ヶ嶺ブナの原生林

頂上からは十字峠経由で竜神平の西端へと下ります。しばらくなだらかな斜面を進むと十字峠があり、ここを右に進めば「竜神平」に戻ることができます。また、ここをまっすぐ「引地山」へと向かって進むルートもあります。静かな山道で、途中、「風穴」への分岐点をから一気に下るルートで本格的な山道になっています。左側が杉の人工林、右側が手つかずの原生林の狭間を行くルート。静かな山旅を楽しみたい熟練者にはオススメのルートです。

皿ヶ嶺からの東温市

十字峠から竜神平へ下りていく際、下界の風景もよく見えます。はるか下に広がるのは東温市ののどかな田園地帯です。

皿ヶ嶺からの竜神平

眼下に広がる竜神平を取り囲む森。お皿の向こう側には山は無く、下界の人が暮らす街まで一気に山が切れ落ちており、皿ヶ嶺と呼ばれている平らな山の形がよくわかります。まるで天空に浮かぶかのような森が四国有数の美しい秋の森を作り出しているのです。

皿ヶ嶺の紅葉の森

竜神平からは上林森林公園まで再び来た道を下山します。日が傾くと、夕日が射し込み、金色に照らされた黄葉のブナの森はとても美しく輝きます。

愛媛でも気軽にかつ、とても美しい紅葉が見られる皿ヶ嶺。秋の季節の登山にはオススメです。

皿ヶ嶺

紅葉の時期:10月下旬~11月上旬
アクセス:松山自動車道・川内ICより車で約30分
駐車場:100台(無料)
コース上トイレ:あり(ただし相当原始的)
コース上水は:あり(地面から湧き出す湧水のみ)
オススメコース:
上林森林公園→竜神平一周(時計回)→愛大小屋→皿ヶ嶺
→十字峠→竜神平→上林森林公園

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冬の皿ヶ嶺は霧氷が美しい初心者も安心の雪山

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