雪の皿ヶ嶺【霧氷の森のスノーハイク】

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松山市内には雪は積もらなくても、松山市の背後には西日本最高峰の石鎚山を主峰とする険しい山々が一気に瀬戸内海から立ち上がっている。それゆえに市内に雪がなくても、見える山は真っ白だ。そんな雪を求めて毎年訪れるのが皿ヶ嶺という山。標高1270mの山にはブナの原生林一面に広がっており、寒さが厳しくなると見事な霧氷の森が楽しめる。その美しさに魅せられて、今年もこの大寒波の翌日に登りに行った。

四輪駆動車なら上林森林公園まで楽々アクセス

冬の上林森林公園

標高950mの上林森林公園まで車で登る。思った以上に雪は少なく、凍結や根雪がなかったので、ノーマルタイヤの四駆で問題なく登れた。去年も大雪の後に皿ヶ嶺に登ったが、車が入れないくらいの道路の積雪だった。それだけに、今年も湧水の集落に車を停めて登らないといけないかと思ったが、車で一気に標高を稼げたのが幸いだった。

雪の皿ヶ嶺

この日はとても寒く、アイゼンを装着する手が一気にかじかむ。準備ができれば、真っ白な雪に包まれた登山道を登っていく。雪の量は多くないが、それでもサラサラのパウダースノーがとても気持ちがいい。
途中、3か所ほど谷を横切る場所があり、そこではサラサラの雪が道に流れ込んできている。足場が悪く、滑り落ちる可能性があるので、注意して横切る。それ以外の場所には危険はないので、比較的簡単に雪山が楽しめる山でもある。

降雪の後の皿ヶ嶺は霧氷がとても美しい

皿ヶ嶺の霧氷

斜面を登り切り、稜線直下に出るとベンチがある。そこで皿ヶ嶺が歓迎してくれるように雲のヴェールを脱ぎ捨てた。まるでひらひらとはためく白い布のような雲がすぅっと引くと、そこから眩しい太陽の光がこぼれる。それと同時に、空は青く染まり、木々は宝石のように輝き始める。
美しい霧氷。これこそ冬の皿ヶ嶺の美しい風景。

皿ヶ嶺の霧氷

青い空に真っ白な雲が泳ぎ、風で霧氷の木々がゆっくりとゆらぐ。サンゴの海の中に寝そべっているかのような錯覚すら覚える。青と白の2色が織りなす冬の美しさ。泳ぐ雲から光があふれるたび、急ぎカメラを構え、その輝く風景を切り取っていく。

霧氷と青空のコラボを満喫したら、先に進むことにする。ベンチから先は登りはなくなり、水平な道となる。おそらく皿ヶ嶺という山の名前の由来になっているのだろう。皿ヶ嶺の頂上の直下には、「竜神平」という高層湿原があり、それがまるで皿のように山の頂に広がっている。その皿の縁の部分には広大なブナの原生林が広がっており、いよいよその部分を歩き始めたことになる。

ブナの原生林の霧氷

広大なひろがりを感じる原生林には、巨大なブナの個体が多い。樹齢を重ねたブナは、その独特な枝ぶりや形で個体認識がたやすいものも多い。竜神平の入口近く、まるで門番のように立つこのブナの木もそのひとつ。空に向かって思いっきり手をかかげたようなその姿。複雑に絡み合うような枝の重なりは神秘的にも思える。ブナという木自体の美しさを感じさせてくれる、見事な木だ。

竜神平を一周するルートは外せない!

雪の皿ヶ嶺

やがて竜神平の入口に到着する。ここを右に行けば竜神平だが、いつも僕はこのまままっすぐ進み、皿ヶ嶺の稜線を行く。竜神平が皿の底だとすると、その縁の稜線を歩いていく事になる。実はこの稜線こそが、皿ヶ嶺で一番美しいブナの森だと僕は思っている。冬は霧氷、秋は黄葉で目を楽しませてくれる、
この日はまだこの稜線ルートに入った人はおらず、ふかふかのパウダースノーで道は覆われている。踏み込んでも、グググという音がしない、フカフカ、サラサラの雪をかき分けながら、ブナの森の稜線を進んでいく。

冬の皿ヶ嶺

踏み跡のない道を進んでいくと、動物の足跡が姿を現した。動物というより、足跡より鳥のようで、尻尾を引きずったような跡もある。何だろう。カラスかな?そう思いながら、足跡に導かれるように進んでいく。右に左にふらふらと進んでいく足跡はまるで千鳥足。この雪の中を酔っぱらった鳥がすたこらと進んでいたようで、とても可愛らしい足跡だ。やがて足跡は道から外れ、深い森の中に消えていった。

皿ヶ嶺の霧氷

見上げると、美しい霧氷が頭上を覆っている。白と静寂に包まれた森に、時折空から降り注ぐ空の青と風のささやき。五感が研ぎ澄まされ、自然の中に溶け込んでいくような感覚が味わえる不思議な森だ。

雪の皿ヶ嶺

稜線歩きの終着付近の鞍部には、僕の大好きなベンチがある。ブナの森の小路に静かに佇むベンチはとても絵になるし、ここに座ると、その森自体をゆっくり楽しめる。秋はここでコーヒーを沸かし、頭上を覆うブナの黄葉の写真を好きなように撮るのが楽しい。
しかし冬は雪でベンチは埋もれてしまっている。去年は雪の中でコーヒーを沸かしてみたが、北風の通り道なので寒いのなんの・・・残念ながら冬場で風のある日は、お気に入りのベンチも素通りになる。

冬の皿ヶ嶺

やがて稜線の道に竜神平と書かれた小さな道標が現れる。ここからも竜神平に下ることができ、今からは右折してその道を進んで竜神平に向かうことになる。森の中を下っていくコースなのだが、この森の中も気持ちがいい。ながらかな斜面なのて、森の広がりがとても感じられる。雪の積もった冬場なら、微かに残るルートのあとをわざと踏み外し、好きなように森を探検してみるのも面白い。

四国離れした竜神平の冬の風景

雪の竜神平

やがて森は途切れ、目の前に一面の野原が現れる。ここが「竜神平」だ。竜神平の向こうにゆるかに広がる山が皿ヶ嶺の頂上。霧氷で森が覆われている。

冬の竜神平

竜神平は四国随一の高層湿原で、一面の笹に覆われている。竜神平の上部には、先ほど歩いた霧氷の森が広がる。開けた草原は開放感があり、歩いていくのがとても楽しい。

冬の皿ヶ嶺頂上

皿ヶ嶺にある愛大小屋で食事をと思ったが、すでに満員。仕方なく、皿ヶ嶺の頂上まで登り、頂上のベンチとテーブルでランチ。ラーメンとコーヒーで体をあたためるが、この日の気温は頂上でなんと-5℃何度もこの頂上は冬場にも登っているが、これほど寒いのは初めてだ。

冬の皿ヶ嶺頂上

標高1270mの皿ヶ嶺の頂上。ルートの中ではほぽ唯一、皿ヶ嶺の南側の展望を一望できる場所だ。それゆえ陽射しが入るのでゆっくりとでき、展望を眺めながら数あるベンチとテーブルでランチをとる人が多い場所だ。(写真は別の日のもの)

雪の四国カルスト

頂上からは久万高原町の町と雪を頂いた四国カルストの山々が展望できる。この久万高原町は皿ヶ嶺が属する石鎚山系の山々で松山と隔てられている。松山の川は瀬戸内海に流れるが、久万高原町の川は太平洋に流れる。今、僕が立つ場所は四国の分水嶺だ。眼下には瀬戸内海が見えるこの場所が分水嶺。四国の山深さと険しさを改めて感じる場所だ。

頂上から西に向かう稜線からの下山が冬にはオススメ

雪の皿ヶ嶺

頂上からは、引地山に向かう稜線を行く。北側はブナの原生林、南側は美しい杉の人工林。稜線は森の変化の境界線になっている。この稜線の向こう側にある、「久万スキーランド」で流れる音楽が静寂のなか、わずかに聞こえる。これだけの雪だ。今日はスキー場も大賑わいだろう。

稜線の途中から、車を停めた上林森林公園まで下る。このルート、雪が無いときは急斜面でとても歩きにくいのだが、積雪期は別。雪の上を一気に急斜面を駆け下りる。アイゼンをつけていれば、冬場の雪の下りはすこぶる快適だ。

雪の皿ヶ嶺登山

途中、メインの登山ルートに戻ってからも、普段は入る事の出来ない森に入り、ショートカット。オフトレックの急斜面を一気にダウンヒル。先日の大山のスノーシューのダウンヒルを思い出しながら、一気に山を直線で下った。

雪山登山の後はゆっくりと下山 

雪の上林森林公園

駐車場に戻ってきた。公園内の道路で、家族連れがそり遊びを楽しんでいる。これはいい。僕も娘がもう少し大きくなったら、ここに連れてきて楽しませてあげたい。テーブルを出して、寒くなったら温かいコーヒーなどを準備して。

雪の上林林道

楽しい雪山を満喫したら、車で雪道をゆっくり下っていく。例年なら、帰るときには雪は解けて路面が顔を出すのに、この日は林道の終点近くまで雪は解けなかった。幸い、派手な凍結はしていないので、ゆっくりと注意して山を下っていく。下山後はもちろん、温かい温泉でゆっくりしたい。

皿ヶ嶺近くの人気の温泉には宿泊も可能

【道後温泉の宿一覧】

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