紅葉の皿ヶ嶺・陣ヶ森縦走 【東温アルプス】

最終更新日

Comments: 0

愛媛県東温市にある「皿ヶ嶺」は花や湿原が楽しめて気軽に登れると松山市近辺では人気の山。標高1270mだが、広大なブナの原生林が残る。11月初旬にはブナが一斉に色づき、一面が金色に輝く見事な紅葉を楽しめる。
皿ヶ嶺は、西日本最高峰、「石鎚山」(1982m)の西側に連なる標高1400~1000mの「東温アルプス」と呼ばれる山域の中に位置する。「東温アルプス」は地元山岳会が名付けたのだが、今では東温市が公認したうえ、「東温アルプスガイド」を作成し、観光資源として整備を始めている。最近では県外からの登山客も訪れ、随分とにぎやかになった。
皿ヶ嶺に入るには、標高約900mに位置し、車で登ることができる「上林森林公園」が一般的。とても広い駐車場があるので、紅葉や行楽シーズンでも安心して訪れられる。今回もこの「上林森林公園」からの入山。今回の入山は11月3日、朝7時過ぎ。3番乗り。朝の空気は冬を思わせるくらい、とても寒かった。途中、木々の間からのぞく松山の街なみと島々が浮かぶ瀬戸内海がはっきりと見える。

ブナとミズナラの美しい皿ヶ嶺の森の登り

紅葉の皿ヶ嶺

皿ヶ嶺への登山はしばらく北側斜面を登る事になる。寒くて暗い道は、紅葉はまだなのに、どこか冬の気配すら感じさせる。
はじめて美しい光に出会うのは、ベンチが置いている広場。ここの木々は経年美しく紅葉しているが、今年は猛暑のため少し控えめな紅葉だ。

皿ヶ嶺の老木

ベンチの後ろには僕がこの山の主と感じているブナの老木が今年も変わらず鎮座していた。もう枝も葉もない、朽ち果てていくだけの木だが、毎年変わらない姿を見せてくれる。

皿ヶ嶺の稜線は黄葉のブナと笹原が彩る気持ち良い道

紅葉の皿ヶ嶺

ベンチから小さな谷を越えると、道は稜線に入る。とても歩きやすく、気持ちのいい道だ。
しばらくすると、道は分岐に。右折すれば高層湿原である「竜神平」を経由して「皿ヶ嶺」に登るルートとなる。しかし、ここはあえて直進する。

紅葉の皿ヶ嶺

直進した道は、東温アルプスの主稜線となる。ゆるやかなアップダウンを繰り返しながら、落ち葉でフカフカの広い道を行く。ブナやナラ、そして笹に覆われた道はとにかく気持ちがいい。秋は紅葉、冬は樹氷。皿ヶ嶺でもっとも気持ちの良いオススメの場所がこの稜線道だ。

紅葉の皿ヶ嶺のベンチ

そんな気持ちの良い稜線道でのオススメの場所がこのベンチ。ブナに囲まれたとても静かな場所に置かれたベンチは、僕だけでなく、この山を訪れる人の多くの人のお気に入りの場所。ここで読書をしたりする人もいる。
紅葉の時期は、写真ベンチの右にあるブナの大木が頭上で黄金の黄葉を広げてくれるので、とにかく美しい。残念ながら、今年は黄葉は遅れていてまだブナの葉は青々としている。ここでコーヒーを沸かし、朝食にする。少し寒いが、それでも至極の時間だ。
しかし心なしか、毎年このベンチの座り心地が悪くなっているような・・・

紅葉の皿ヶ嶺

朝食を済ませたらベンチを出発。すぐに再び道が分岐する。右に行けば竜神平を散策して皿ヶ嶺に登るルート。普段はここで右折して、皿ヶ嶺に登るのがお決まりになっている。特に、ここから竜神平に出るまでの原生林が、とても雰囲気が良くて僕は大好き。
しかし、今年は紅葉が遅れていること、たまには違うコースを歩きたいと思ったので、このまま道を直進する。目指すは「陣ヶ森」(1206.9m)だ。
稜線の道はよく整備された皿ヶ嶺の山域を外れるので、幅が突然狭くなった。それでもとても歩きやすい道。森が身近に寄ってきて、また違った趣となる。

紅葉の皿ヶ嶺

陣ヶ森に向かう稜線にも全く同じベンチがあった。森が迫り、うっそうとしている分、ロケーションは朝食をとったベンチの方が良い。
が、お気に入りのベンチの座り心地が悪くなっている理由がこのベンチを見てはっきりとわかった。ベンチの高さが違うのだ。
正確に言うと、先のベンチはどんどんと埋まって低くなっているのだ。多くの人が座るので埋もれていっているのか、それとも毎年積もるブナの腐葉土で埋もれているのだろうか。確かに随分座り心地が悪くなった。まるで座イスのようになってきている。

陣ヶ森を見ながら一気に下ると急階段

紅葉の皿ヶ嶺

気持ち良い稜線の道は突然途切れ、一気に下る階段へと変貌する。
皿ヶ嶺はその名前の由来のように、皿のような山容をしている。高層湿原の「竜神平」が皿の底だとすれば、今歩いた稜線や皿ヶ嶺のピークが皿の縁にのっているといった感じか。ちょうどここもお皿の縁。ここから「上林峠」まで一気に下りになる。相当に傾斜が険しく、終始階段を下りていく。登りはきついし、下りも雨に濡れた木の階段は滑りやすく気は抜けない。

紅葉の陣ヶ森

予想以上に長く続く階段。その途中、森が途切れて、目の前に目指す陣ヶ森が現れた。
山の上に建つ鉄塔の右、少し膨らんだ所が頂上だ。陣ヶ森の鉄塔までは、保守車両が入れるように久万林道が伸びている。その林道の上側の稜線を山道はピーク目指して伸びている。
目指す山を確認したのち、まだ階段の道はずんずん下る。下った分、また同じだけ登らねばならないのであまり下ってほしくない。そう思っていると、やっと上林峠に到着した。
ここでは「水の元」と「陣ヶ森」と記された分岐になっている。迷わず「陣ヶ森」へと直進する。途中、すぐに「久万林道」と記された分岐があるが、ここも「陣ヶ森」へ直進。ふとみると、「久万林道」のダート道がすぐ下に見える。

紅葉の陣ヶ森頂上に向けて再度の登り返し

陣ヶ森への登山道

陣ヶ森への登りにとりつく。今までの快適な道とは違い、山道という雰囲気がいっそう強くなる。ただ、道はしっかりと整備されているので、迷ったり危険な場所は無い。途中、檜の香が漂う見事なヒノキ林と原生林の境を登っていく。

陣ヶ森秋の登山

昼でも薄暗いヒノキの人工林の向こうに、秋の輝きを纏った明るい景色が垣間見られる。頂上はもうすぐ。最後の急坂を登っていく。

秋の陣ヶ森頂上

ヒノキ林を抜けると、目の前には見事な紅葉とそびえる鉄塔。陣ヶ森のランドマークの真下に出た。立派な鉄塔施設を迂回するように道は進む。
途中、井内峠と陣ヶ森に分岐が現れる。井内峠に進む道は、この東温アルプスの縦走路だ。朝早くにも関わらず、縦走をしてきたようなパーティーに出会う。もちろん進むのは、「陣ヶ森」への道。

陣ヶ森頂上

縦走路の分岐からわずか1分ほどで頂上にたどりつく。残念ながら頂上からの展望はほとんどない。ここが「陣ヶ森頂上」と示す、看板だけが立っている。

紅葉の陣ヶ森頂上

陣ヶ森頂上から鉄塔を振り返る。この鉄塔付近だけ、何故だか紅葉がとても進んでいた。
せっかくの頂上、腰をおろしてゆっくりしたいところだが、予定時間をおしていたので休憩もせず、来た道を引き返す。

上林峠

上林峠に戻ってきた。まっすく行けばあの階段を登り返して稜線に戻る事ができる。が、また登るのもしんどいので、今度は右側「水ノ元」への道を進む。

上林峠への登山道

北側斜面のやや薄暗い森を下っていくと広い道に出る。一直線にのび、両端がきっとり工事されている事を考えると、以前は使われていた林道だろう。当然、今の路面状況を考えると四駆でももはや入ることはできない。
ここで再び「久万林道」と「水ノ元」へ分岐がある。ここは左側、「久万林道」方面へ進む。

巻き道になる林道を歩いて上林森林公園へ戻ろう

上林峠登山道入口

道を歩いていくと、やがて上林トンネルの横に出る。引き込みの道路があり、チェーンで封鎖されている所を見ると、やはり今歩いた道は以前は林道だったと確信する。

上林トンネル

上林トンネルを覗いてみる。上林トンネルの幅員は6m、全長は860m。東温市と久万高原町を結ぶ立派なトンネルだ。
実は、上林トンネルの手前まではよく登山で来るのに、このトンネルは通ったどころか見た事もなかった。ここまで至る「上林河之内林道」は道幅1~1.5車線の細い道。トンネルも細くて対向車がきたらえらいことになると思っていた。しかし実際は、トンネルは広く、離合も全然問題ない。ここに至るまでの林道の方が細い。あまり使う機会は無いが、何かあった時はこの道で「東温アルプス抜け」をするのもアリだなと思った。

上林林道

上林トンネルから林道を下る。この先が車を置いた「上林森林公園」だ。皿ヶ嶺登山口を経て上林トンネルに至る林道は時々2車線はあるがおおよそ1~1.5車線。離合が難しい区間も何箇所かある。最近では登山者のマイクロバスが入る事もあるので運転には要注意だ。しかし、上林森林公園から上林トンネルまではとても静か。1台も車に出会うことなく森林公園まで戻る事が出来た。

秋の上林森林公園

上林森林公園に戻ってきた。出発した時は日も差さず寒々しい冬の朝をも思わせる風景が、光を一杯浴びた秋の風景に様変わりしていた。ほぼ一番乗りだった駐車場も、すでに多くの車であふれている。
紅葉が遅れていて残念だったが、秋晴れの中、初めてのコースを歩けたのはとても気持ちが良かった。

皿ヶ嶺から陣ヶ森縦走地図

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください