等々力渓谷【東京23区に唯一残された渓谷】
東京23区の中で唯一残る渓谷「等々力渓谷」は駅から徒歩3分という町のど真ん中にありながら、深い森の中を流れる川沿いの遊歩道を散策して、東京都は思えない深い自然を楽しむことができます。東京23区の中で唯一残る渓谷「等々力渓谷」。東京の都会の中に谷が残っているといわれても、本当?と思ってしまいます。
等々力渓谷は、住みたい区で上位にランキングされる世田谷区、しかも駅から徒歩3分という住宅街のど真ん中にあります。住宅街を流れていた谷沢川は突然、森に包まれた深い等々力渓谷に入ります。等々力渓谷には約1kmにもわたり遊歩道が整備されており、都会とは思えない大自然の中を気持ちよく散策することができます。
駅からすぐの住宅街に突然現れる深い谷
駅から3分も歩くと、突然景色が変わります。緑のあふれる空間に橋が架かっています。ここが等々力渓谷。そして渓谷にかかる橋は「ゴルフ橋」と呼ばれています。これは昭和初期にこの等々力に広いゴルフ場があったことに由来しています。
ゴルフ橋から等々力渓谷を見下ろします。そこはここが町の中とは信じられないくらい静かな場所。東京23区内唯一の渓谷は、町の中を突然えぐるような深い谷になっいてます。
住宅街に架かるゴルフ橋から見下ろす等々力渓谷は、まるで原始の森の様相。こんな自然が開発されずに都会のど真ん中に残っていることに、感動すら覚えます。実際に等々力渓谷を流れる谷沢川の上流は、住宅街を流れる護岸された川になっており、谷となっている約1kmの区間だけ、原始の姿に戻るのです。
ゴルフ橋の手前に等々力渓谷への入口があります。ここから階段を下ると、ゴルフ橋の下に出ることができます。
東京のど真ん中で楽しむ渓谷散策
階段を下りると、美しい川が流れる深い森。水と木々の心地よい薫りがとても気持ち良い風景です。たった数十秒前で町の風景から世界がガラリと変わります。深い谷と森、そして水辺が作り出す環境は自然そのもの。暑い夏でもとても涼しい場所になっています。ただし夏の時期はやぶ蚊が多いので、虫よけスプレーなどがあれば安心です。
等々力渓谷は武蔵野台地の南端部分を侵食してできた谷です。そのため、川岸には地層断面が露出している場所がいくつかあります。はっきりとわかる地層の間からは、湧水が滲みだしている箇所も多くあります。
等々力渓谷散策のスタートに架かるゴルフ橋は、渓谷に下りてみると赤い色がとても目を引く美しい橋。ここから谷沢川(やざわがわ)に沿って、等々力渓谷の中を約1kmの遊歩道が続きます。
等々力渓谷には川沿いに遊歩道が続きます。しっかりと整備されているので、とても歩きやすくなっています。シラカシやムクノキ、ケヤキなどの大きな木々が深い森をつくり、渓谷を都会の中から別世界に隔離しています。
遊歩道を歩くと森の香りや、鳥の声や虫の音がとても心地よく感じます。まるで山奥の渓流をハイキングしているようですが、ここは都会の中で、しかも駅から徒歩5分くらいの場所です。都会の中に意外に緑が多く残る東京23区ですが、ここはその最もたる場所だと言えます。
遊歩道は小さな橋で谷沢川を渡ります。ゆっくりと流れていた水はこの辺りから流速を速め、渓谷の森の中にせせらぎの音を響かせています。
橋の周辺はあるがままの河原になっています。ここだけ見ると、ハイキングの途中、山の中で出会う風景。東京の大都会のど真ん中で、手付かずの自然が残っていることには、驚きです。かつては東京も、こんな場所ばかりだったと思いを巡らせてしまいます。
川にかかる小さな橋を渡ると、渓谷を渡る大きな橋が見えてきます。これは東京の大動脈のひとつ、環状八号線が通る「玉沢橋」です。深い渓谷の散策を楽しんでいる途中に、大都会を走る交通量の多い道路が頭上を走っているという不思議な場所です。
玉沢橋を越えると、谷沢川は護岸されていますが、川辺にはデッキがかかっていたりして、水辺に入れる箇所がいくつかあります。夏は子供が水遊びを楽しんでいます。ここが都会のど真ん中、世田谷区であることを忘れざるを得ない景色です。
湧水や遺跡も点在する神秘的な等々力渓谷
渓谷内には所々湧水が流れ出しており、湿地のようになっているところもあります。あふれ出た水は遊歩道を細い溝で流れますが、その小さな流れも冷たくて清冽です。
渓谷の左岸には、、古墳時代末期から奈良時代にかけての横穴墓が6基以上点在しています。中でも昭和48年に発見された3号横穴は、その入口まで近づいて見ることができます。
中に入ることはできませんが、小さな窓から内部を覗くことができます。墓内の奥行きは13メートルもあり、は豪華な副葬品も出土したそうです。
横穴墓の近く、等々力渓谷中ほどには広場があります。トイレもあり、休憩や子供と遊ぶにはもってこいの場所です。砂利道ですが渓谷外から下ることもできるので、自転車をここに止めておくこともできます。
渓谷の大自然を渡る都会の大動脈
環状八号線にも等々力渓谷へ下りる入口があります。緑に囲まれた入口は小さな広場になっています。ロードバイクなどは広場への砂利道は下れないので、ここに駐輪しておくのがよいでしょう。
環状8号線が等々力渓谷を越える玉沢橋。その付近の風景は、普通に都会の幹線道路です。ここから見下ろす等々力渓谷とのギャップが相当に激しいので、ぜひ散策途中に見に行きましょう。
都会の幹線道路に架かる玉沢橋から下を覗き込むと、そこは別世界。都内でも多い交通量を誇る環状八号線に下に、こんなにも自然が豊かな静かな川が流れているとは本当に驚きです。
再び玉沢橋から広場を経由して、等々力渓谷の中に戻ります。渓谷の中を下流に進むと細い参道があり、その先に「稚児大師堂」があります。稚児大師とは、幼少期の弘法大師(空海)のこと。森に囲まれた小さくも立派なお堂の中に、子供の姿の仏像が安置されています。稚児大師像は子供が拝みやすいように低い位置に祭られており、渓谷を訪れる参拝者が足を止めてお参りしていました。
等々力渓谷は日本の美も宝庫
渓谷左岸には「不動の滝」があります。不動明王を奉った祠があり、その横に石樋から水が流れ落ちています。滝というより修行場の様相で、実際に昔から滝行の場とされていたそうです。この不動の滝の水音が渓谷内に響き渡ったことから、等々力というより名前の由来になったそうです。不動の滝の儁そばには、抹茶やお菓子、葛餅などがいただけるす趣ある甘味茶屋「雪月花」があります。また、滝の横にから長い階段を登ると、等々力不動尊に出ることができます。
遊歩道から右へと登る階段は、閑静な住宅街への出口。しかし、階段を登りきったところに美しい日本庭園があります。散策途中に一息つける場所でもあるので、是非立ち寄りましょう。
階段を登り切ると住宅街に出ます。ここに日本庭園の入口があります。日本庭園の入口前通路に駐輪スペースがありますので、ここに自転車をとめることもできます。また、日本庭園の中にはトイレもあります。
日本庭園の敷地に入るとすぐに広い芝生広場もあります。ここも解放されているので、レジャーシートなどを広げてゆっくりとすることもできます。都会のど真ん中の緑に包まれた芝生広場は何とも気持ち良い場所です。
芝生広場からの世田谷区の町並みが一望できます。都内でも住みたい区の上位常連である閑静な住宅街。この付近は武蔵野台地の南端となっており、関東平野にありながら意外に起伏がある場所です。
等々力不動尊から等々力渓谷を挟んだ対岸に広大な日本庭園が広がっており、その中に、昭和36年に建築された書院建物があります。
書院建物は無料で開放されており、日本庭園を眺めながら畳の上で休憩ができます。等々力渓谷についての写真や資料が展示されていたり、パンフレットも配置されていたりと、ビジターセンター的な役割も担っています。休憩がてら、等々力渓谷のことについて詳しく知ることができる場所です。
書院の室内には無料のウォーターサーバー(お茶もあり)が設置されています。縁側に座って、日本の美しさを堪能しながら休憩できる落ち着いた場所です。
昭和48年に著名な造園家によって造園された日本庭園。池や石畳の道なにがある庭は、等々力渓谷の森を借景にしてとても美しく落ち着いた佇まいです。ここが都会のど真ん中ということを忘れるくらい静かです。
日本庭園のなかを散策しながら、谷沢川沿いに戻ることもできます。途中、見事な竹林があり、まるで京都の庭園にの北かのような趣深い風景です。
竹林とモミジの回廊を進むと、とても風情あるかぶき門に出てきます。門をくぐって敷地外に出ると等々力渓谷に戻ることができます。
都会に戻り多摩川へと流れる等々力渓谷
かぶき門から出ると、谷沢川沿いの舗装された道に出ます。等々力渓谷は上流に少し戻ると遊歩道の入口となっています。等々力渓谷はこの先普通に住宅街を流れる川となります。湧水の多い東京の川は、澄んだ流れが意外に多いのです。
等々力渓谷を抜けた谷沢川は住宅街の中を流れます。残念ながら川沿いを進む道はなくなるので、迂回して谷沢川の流れを追いかけます。
等々力渓谷を抜けたわずか500m足らずの流れで多多摩川に合流します。多摩川も大都会の郊外を流れる川としては自然豊かで美しい流れです。
都会の中のオアシスともいえる等々力渓谷。都会の中に残った奇跡的な自然を満喫できる素晴らしい場所でした。
■等々力渓谷散策に便利なホテル
等々力渓谷
場所:東京都世田谷区等々力1-22
交通:東急大井町線「等々力駅」より徒歩3分
料金:見学無料
時間:日本庭園 9:00~17:00(11~2月は16:30まで)
休日:日本庭園 年末年始(12/29~1/3)
駐車場:なし
【投稿時最終訪問 2018年9月】