愛媛・予讃線電車旅【歴史と夕日が楽しめる路線】

最終更新日

Comments: 0

電車旅。それは、人情と旅情にあふれた旅のスタイルだ。
最近、車での移動が多くなり、電車で旅に出ることがめっきりなくなった。目的地にダイレクトに移動できるのは車の魅力。しかし、電車旅に比べると、どこか旅の趣という点では劣る。目的地までまっすぐに向かわず、大勢の地元の人と同じ時間を同じ場所で過ごす。ハンドルを握らなくていい分、車窓に流れる風景を追いかけていける。ビールを片手に・・・
電車旅には、そんな旅の行程を楽しむ要素が満載なのである。旅情あふれる電車旅を四国で楽しむなら愛媛県の「JR予讃線」がオススメだ。予讃線沿いの内子・大洲・卯之町には古い街並みが残り、駅を下りての散策にはもってこいだ。遠くまで足を伸ばせば、青い宇和海とミカン畑の中を走る電車でたどりついた八幡浜や宇和島で、海の幸を堪能するのも良い。
しかし、なんといっても予讃線の一番の楽しみは、向井原駅から伊予長浜駅の区間の乗車だ。海と並行しながら走る電車旅は風光明媚な瀬戸内海の景色を車窓から楽しめ、特に夕方のその美しさは格別である。その区間にある「下灘駅」は、海に一番近い駅として有名であり、鉄道ファンに人気があるだけでなく、多くの映画やポスターのロケ地としても使われている。観光列車「伊予灘ものがたり」も走る人気の路線だ。
この電車旅を格安で楽しむための心強い味方は「四国再発見早トクきっぷ」だ。2000円で四国内の普通・快速電車が乗り放題。前日迄に購入が必要だが、休日も使用が可能だ。

さて、今回の旅のプランは以下の通り。

松山10:14 → 内子11:06 【内子の古い町並み散策】
内子14:03 → 大洲14:18 【駅前で電車時間待ち】
大洲15:28 → 伊予長浜 → 松山17:01 【当日の日没17時15分頃なので、夕陽の海沿いを汽車が走る】

JR松山駅から出発するローカル線の旅

JR松山駅

出発はJR松山駅だ。乗る電車は1両編成のワンマン電車。いや、電車ではない。汽車だ。予讃線は、松山~宇和島間は電化されておらず、ディーゼル車両となる(正確には伊予市駅以南)
エンジンの音を響かせて客を待つ電車の音には、旅情を掻き立てられずにはいられない。

重信川鉄橋

汽車に乗り込み間もなく出発。ゴトン、ゴトンというレールの音に、ブロロローというディーゼルエンジンの音。それはローカル線ならではの重い音だが、心を解き放ち、どこか軽くしてくれもする。
しばらくすると、汽車は松山市の南端、重信川に差し掛かった。ここを渡りしばらくするころには見慣れた風景は一変し、松山で多く乗った乗客も少なくなる。日常からの脱出。旅の始まりを感じるボーダーラインでもある。

向井原駅

電車は「向井原駅」に到着した。この駅の南側で、線路が二股に分かれている。左側が内子を経由して大洲に向かう「新線」で、山の中を走り、特急列車も行き交う。右が伊予長浜を経由して大洲に向かう「旧線」である。
このように、向井原~大洲間の予讃線は、新旧の2ルートが存在する珍しい区間だ。まずは左の新線で大洲に向かい、帰りは右の旧線から帰ってくる予定だ。いわば、歴史と自然をめぐる、環状線なのである。

特急宇和海

いくつもの長いトンネルをくぐり、汽車は山の中を進んでいく。仕事で宇和島に行く時に何度か特急列車に乗ったが、こんなにトンネルを長く感じたことはない。速度計を見ると、時速50kmほどしか出ていない。特急列車は時速100kmを越える速度で山の中を疾走していく。普通列車はその半分の速度。車窓から見える風景も、全く違って見える。
途中、伊予中山駅で特急列車「宇和海」の通過待ち。松山から宇和島に向かう予讃線は単線だ。このようにで、何度も対向列車を待つのがローカル線の旅の醍醐味ともいえる。通過待ちの間は、線路に出て、周りの風景を楽しむのが好きだ。途中下車までとはいかないが、知らない場所を少しでもと楽しむ時間でもある。

内子で楽しむ歴史散策

内子駅

第一の目的地、内子駅に到着。ローカル線にしては珍しく、高架上の駅だ。
内子には四国でも有数の古い街並みが残る場所である。駅から町並みも近く、歩いて10分もかからない。散策にはもってこいだ。この内子で、歴史に触れ、おいしい郷土料理に舌鼓をうつことにしよう。

内子駅の猫

階段を下りていくと、下から首輪をつけた猫が階段を登って来た。そして、ホームの入り口脇にちょこんと座り、じっと何かを待っている。ご主人の帰りを待つ忠猫か、それとも無銭乗車を企むドロボウ猫か?
いずれにしても、電車旅の方々で見つける、何かドラマを感じさせる予感のひとつに、旅に出た実感を覚え始めた。
JR内子駅から外に出て、内子の歴史ある街並みを目指す。「内子座、八日市・護国の街並み」と道標が続いているので、それに従いって道を行く。10分ほど歩くと、歴史を感じる街並みになってくる。本格的な散策をする前にまずは腹ごしらえだ。

りんすけ

向かったのは「りんすけ」というお店。ここの名物は「鯛めし」
内子よりもっと南の宇和島の郷土料理なのだが、とてもおいしい一品をリーズナブルに味わえるので人気がある。

りんすけの鯛めし

これが鯛めし。鯛の刺身をアツアツのごはんにのせ、生卵と醤油だれで頂く絶品である。鯛のあら煮と味噌汁もついて、なんと1050円。とっても安い!
歴史ある街並みで、こんなおいしい料理が食べられるのは贅沢の極み。新鮮な海産物がこんな山の中で手に入るのは、比較的四国有数の漁港である八幡浜が近くにある賜物だろう。
ちなみに愛媛県北部、瀬戸内海沿いにも郷土料理の「鯛めし」がある。しかし、瀬戸内海の「鯛めし」は鯛を炊き込んだごはんだ。同じ名前の料理が、その県の北部と南部で全く違うもモノなのである。
美味しい料理でお腹いっぱいになったら、古い町並みの散策だ。

内子座

最初に向かったのは「内子座」
大正5年に建てられた本格的な歌舞伎劇場。約650人を収容することができる、愛媛県内に現存する最古の木造芝居小屋である。見学料300円で、芝居の舞台裏から奈落の底、控室まで、普段なら見ることができない場所まで見学できる。しかし、残念ながらこの日はも年に数回行われる催しものの日で、一般入場は制限されていた。
外からの歴史ある建物の眺めを楽しみながら、さらに内子の町の奥へと進んでいく。

内子の町並

内子の町並み。伝統的な町並み保存地区以外でも、どこかレトロを感じさせる場所が方々に存在するのが内子の魅力。まるで、何十年も前の街の路地に迷い込んだかの様な錯覚。

八日市・護国の町並み

「八日市・護国の町並み」
黄色と白漆喰で塗りごめられた重厚な外壁が特徴的な歴史ある建物が軒を連ねる。特に特徴的なのが、床几(しょうぎ)と言われる折り畳み式の縁側のようなもの。何軒かの家が、軒先に床几を利用して、無人店舗を出店している。名産のみかんや美味しそうな果物など、ついつい欲しくなってしまう。
このような歴史ある街並みの中でに普通に人が住み、現代の生活が営まれている。木曽路の妻籠や馬篭のように商売気は少なく、人の生活の息遣いが聞こえるのが、この内子の町並みの不思議なところである。

八日市・護国の町並み

内子は江戸後期から明治時代にかけて、和紙と木蝋で栄えた町だ。今も伝統的な和蝋燭の製造を続けている大森和蝋燭屋がこの通りにある。
見どころのひとつ、上芳賀邸。木蝋商人として莫大な財をなした芳賀家の分家。当時の商家の豪邸や木蝋つくりの施設、木蝋に関する資料を見学することができる。入館料は400円。何度か見学しているので、この日は見学せず、さらに通りの奥へと歩を進めた。
道を歩いていると、近くの下校途中の中学生の女の子から「こんにちわ」と声をかけてくれる。知らない人にごく自然に挨拶ができる。とても素晴らしいことで、こちらまで心温かくなる。そう思っていたら、また別の女の子が何人か次々に、同じように「こんにちわ」と挨拶をしてくれた。これが地方のいいところだと思う。
地方に行けばいくほど、地域のコミュニティの繋がり、人間味というものが、とても強く感じられる。旅先で人情を感じるのは、その土地の人々の暮らし方そのものを感じるということなのだろう。

内子

内子のとある店の軒先。日本の伝統ある文化の香りがとても色濃く漂っている。どこか懐かしくて、それでいて新鮮な感覚が、方々で感じられる。

内子の干し柿

民家の軒先にぶら下った干し柿。日本の晩秋の風景。こういった古き良き日本を気さくに感じさせてくれるのが内子の町並みだ。歩いているだけでも、新しい発見をいっぱい楽しませてくれる。

内子町立図書館

レトロな感があふれる町立の図書館。昭和初期か大正時代くらいの建物だろう。3月ぐらいに訪れたときには、ここにはお雛様が飾られていて、中が一般にも開放されていた。内部の階段室など、かなりのレトロさが漂っていた。

大洲の名もないレトロな街並みに途中下車

内子駅

いろいろと街並みを見ていたら電車の時間が近づいてきた。早足で急いで駅へと戻る。
ホームに駆け上がったと同時に次の電車がやってきた。間に合った。もし、乗り遅れたら、1時間は電車を待たねばならない。そうなると、次の目的地に間に合わない。これがローカル線の恐怖でもあり、面白みでもある。

JR予讃線

電車は内子駅を出発して、次の目的地、大洲駅を目指す。途中、新谷駅付近で、別の方向からやってきた路線と合流する。これが、向井原駅で別れた予讃線の旧線との合流だ。
新線では山の中を駆け抜けたが、旧線は風光明媚な海辺を駆け抜ける旅の人気路線だ。大洲駅では電車を乗り換え、今度はこの旧線で海沿いの旅へと向かうのだ。

大洲駅

大洲駅に到着。大洲は伊予の小京都として栄えた城下町だ。
復元された「大洲城」や日本建築の粋を集めた「臥龍山荘」など、ここにも歴史感じる場所が多くある。「東京ラブストーリー」や「となり町戦争」のロケ地として有名な「大洲神社」もここにある。

大洲散策

大洲も時間があればゆっくりと散策してみたいのだが、残念ながら観光名所は駅から少し遠い。距離にして2km程離れている。電車待ちの時間は1時間程しかない。残念ながら、大洲の観光は時間的には無理だ。
仕方がないので、大洲の駅付近を散歩してみた。少し裏通りに入ると、時間がずいぶんと遡った空間に出会えた。昭和の時代を感じさせる、時間の迷い道。こんな知らない小路を歩いてみるのも、電車旅の楽しみのひとつだ。
いろいろ探索していると、1時間なんてあっという間だった。さあ、ここからがメインの路線、夕陽と海の電車旅が始まる。
時刻表に刻まれたその時間は訪れ、太陽は西の空に傾き始めた。この電車旅のクライマックス。夕陽の海を走る人気路線への乗車の時間だ。

肱川沿いを走る旅情溢れるローカル線

大洲駅

西日を受けながら大洲駅で待つ汽車。1両編成のワンマン汽車に、思い思い人が乗り込んでいく。
地元のおばあちゃん、子供連れ。ビールを飲んで気持ちよく寝ているおじさん。
今回の巡礼は終わったのか、白装束を着て大きな荷物を背負ったお遍路さん。そして、僕と同じく、鉄道旅を楽しんでいると思われる旅人たち。
電車は出発して間もなく、往路で乗った新線である内子線の線路と別れて旧線へと進み、一路伊予長浜駅を目指す。
なお、大洲駅で乗車する電車は進行方向むかって左側に座りたい。

伊予白滝

「伊予白滝」駅で、通過列車待ちだ。どんどん夕日の差し込む角度が水平に近づき、色づいてくる。そんな太陽に、電車の向こうの山肌が照らされている。
この山には、紅葉の名所「白滝」がある。この時間には滝の周辺の紅葉は恐ろしいほど色づいているに違いない。そんな事を思いながら、ノスタルジアにあふれたホームでの時間を楽しむ。

肱川

予讃線の旧線は、大洲~伊予長浜間は「肱川」沿いを走る。
「肱川」は愛媛県下で最大の一級河川。大洲市を出ると、河口の伊予長浜までは大きな町はなく、里山の風景を流れていく。河口が近づくにつれ、旅情あふれる表情を見せてくれる。

海に沈む夕日が美しい愛ある伊予灘線

伊予灘

伊予長浜駅を過ぎると風景は一変。先程まで進行方向左側にあった川は海へと変わる。肱川が瀬戸内海に流れ出すと、汽車は今度は瀬戸内海沿いに走っていく。
汽車と並走するのは国道378号線。「ゆうやけこやけライン」の名を持つ、絶好の夕日ドライブのルートで、僕もこの道をよく車を走らせる。今日は汽車なので、思いっきり美しい海辺の風景を楽しめそうだ。
なお、この区間は「愛ある伊予灘線」という愛称を持っており、JR四国の観光列車「伊予灘ものがたり」が走る大人気の区間だ。海に沈む夕日を眺めながらディナーがいただける大人気の旅だ。

予讃線夕日

夕日差し込む車内の様子。夕日に乗せられて美しい海の風景が車窓から飛び込んでくる。この汽車に初めて乗る旅人、毎日乗っている地元の人。誰もがこの夕日に照らされた、美しい海に目を奪われている。
この美しい光景に勝てるのは、線路が刻む心地よい音に導かれる睡魔くらいだろうか。この美しい海は進行方向左側に広がる。大洲駅で左側の座席に座ることをオススメしたのはこのためだ。

予讃線

汽車は進む。前方には海と、その海沿いの「ゆうやけこやけライン」を走る車の列。次々と運転席の窓に現れる美しい風景に、乗客の目は虜にされてしまう。前から迫ってくる風景は汽車の目前で左右に分かれ、スピードを一気に増して後ろへと流れていく。未来が過去へと変わっていく場所、それがこの汽車の車内なのだ。

予讃線からの海

車窓に映る風景は、時々港町の中を走り抜けていく。どこか懐かしいその風景は、忘れていたものを思い出させる。旅情あふれる、心温まる風景だ。

下灘駅

「下灘」駅に到着した。ここは「海に一番近い駅」として有名なところ。鉄道ファンには根強い人気があり、ドラマや映画、ポスターのロケ地としても非常に有名だ。
特に、この駅から眺める海に沈む夕日は最高にきれいだ。電車から見る下灘駅よりも、ホームから見る下灘駅の風景の方がとても美しい。

僕たちと同じと思われる、鉄道旅の人は、ここで汽車を降りた。おそらく、ここで沈む夕日を眺めて、日没の後、次の汽車に乗るのだろう。これが通の鉄道ファンのスケジュールなのだろうが、僕は何度かここで夕日を拝んでいるので、このまま汽車で通過した。

予讃線夕日

下灘駅は夕日の駅だった。駅を出発したあと、夕陽も海の向こうへと旅立つように、一気に水平線との距離を縮め始めた。水平に近いオレンジ色の光を受け止められるのは、海とレールだけ。あとは漆黒のシルエットに変わり、この旅の主役を際立たせる。

夕方の予讃線

風景の中に溶け込んだ夕日は、車窓の風景をすべてオレンジ色に包みこんだ。夕日色した瀬戸内海を走る路線は、現実味を失っていく。まるで、映画かドラマの中に迷い込んだみたいだ。乗客の中に、有名な俳優が演じる主人公が紛れ込んでいても不思議ではない。

ゆっくりと夕日と輝く海に囲まれた線路の上を汽車は走っていく。そのスピードはとても速いようでもあり、とてもゆっくりでもある。目的地も決まっているようで、さまよっているようにも感じられる。ただ、この時間がもう少し、長く続けばいいと、願わざるを得ない、切ない気持にもさせてくれる。

夕陽の予讃線

途中、夕陽色に染められた列車とすれ違う。シルバーの車体は眩しいオレンジ色になり、夕日に向かって旅立っていった。残念ながらこの汽車に夕日旅の切符は渡された。この駅を過ぎると、夕陽の旅は終わりを迎えた。
海と別れて間もなく、汽車は向井原駅に到着。ここで、新線と合流し、予讃線1周が完結した。あとは松山駅に戻るだけだが、もう少し鉄道旅を楽しみたいので、次の「伊予市」駅で下車。
JR伊予市駅の真正面には、伊予鉄道「郡中港」駅がある。伊予鉄道は日本で4番目に開業した私鉄である。明治21年から運行している路線には、レトロな車両、レトロな駅舎や橋脚が多く残り、乗っているだけでタイムスリップしたような旅が楽しめる。愛媛で鉄道旅を楽しむには、外せない路線だ。
この郡中線は比較的新しくて町の中の走行が多いので、ほかの路線に比べ旅情を感じることは少ない。それでも途中、停車する駅舎には歴史感じるものが多い。
伊予鉄道の歴史を感じる人気路線は松山市駅~高浜行きの「高浜線」。伊予鉄道のメイン路線でもあり、一番古い歴史を持つ路線だ。かつては松山港が四国の入口であり、そこから松山市内へと走っていた路線で、夏目漱石ら著名なれきしじんもこの路線に乗車している。海と古い駅舎の組み合わせが、なんとも旅情を誘う。
郡中線の乗車はあっという間だった。電車は松山市の中心、松山市駅に到着した。長く、短い日帰り鉄道旅は、こうして街の賑わいの中で終わりを迎えた。
伊予鉄道の松山市駅はJR松山駅と少し離れているが、松山の中心部にあり、美味しい飲食店やホテルが集まっている。道後温泉へのアクセスも便利だ。松山や道後温泉で宿泊するなら伊予鉄道への乗り換えもオススメだ。

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください