遊子水荷浦の段畑【子連れで楽しむ宇和海の絶景】
「耕して天に至る」と言われる「遊子水荷浦の段畑」(ゆすみずがうら の だんばた)。2007年7月に国の重要文化的景観に選定されたその風景は、下から見上げるだけでも圧倒される。海の近くの山が全て石垣で組まれて畑になり、今なお作物が耕作されている。まさに、空へと続く段畑は、言葉を失うほどのスケール。1600年代から開拓が開始されたとされる遊子の段畑は、幾世代の人々の手によって現代に引き継がれている。
遊子水荷浦の段畑へはマイカーが便利
遊子水荷浦の段畑へのアプローチは、宇和島市内からおおよそ車で50分。路線バスや海上タクシーという手もあるが、やはり車が一番便利だろう。国道56号線・寄松交差点より県道37号線と県道346号線を走り、たどり着く。道は海に突き出した細い岬を走り、宇和海のリアス式海岸や日本の原風景を思わせる漁村の中を抜けていく。その美しい海の風景はドライブするだけでも楽しい。道はこういった地方道の割には随分と整備されていて、所々細い個所はあるが快適な2車線が大半。「遊子水荷浦の段畑」の標識も所々にあり、わかりにくい分岐点では大いに助けになってくれる。
散策の拠点となるのがNPO法人「段畑を守ろう会」が運営する「だんだん茶屋」ここの駐車場を利用させてもらう。この遊子は、漁業がとても盛んな場所でもある。「だんだん茶屋」では「アジの遊子丼(650円)」や「大漁御膳(1500円)」などの新鮮な海鮮を楽しむ事が出来る。先ほど寄った宇和島市中心部の「きさいや広場」とどちらで食べようか迷うほどだ。もちろん、この遊子の段畑の特産品であるイモを使った「だんしゃく御膳(650円)」も楽しめる。ただし、だんだん茶屋の営業時間は11時~15時(食事は14時まで)と短い。定休日も月曜日と木曜日。時間が合わないのならば、「きさいや広場」で美味しい海鮮を楽しんできてからこの段畑に寄りたい。
だんだん茶屋の横には「だんだん屋」という物産販売店もある。海産物や遊子段畑で獲れた芋を求める事が出来る。また、ここでしか販売していない、ジャガイモ焼酎「段酌」も目玉。「半農半漁」という、水荷浦の凝縮を楽しめるお店である。
段畑から見下ろした「だんだん茶屋」付近の様子。写真中央、車が停まっている所がだんだん茶屋の駐車場だ。舗装された個所は少ないが、未舗装の部分には何台も車が置ける。付近の路肩などにも車がおけそうなので、普通に訪れて車を停める場所に困る事はまずないだろう。
駐車場には真新しいトイレが造られている。木の香りがとても良く、快適に利用出来た。
ベビーカーでも登れる遊子水荷浦の段畑
それでは段畑の頂上目指して出発。この日もカメラと三脚を担いだカメラマンや観光客が多くはないが訪れていた。カメラマンは石垣沿いに造られた階段を登っていく。
今は農業用モノレールなどが設置されており、荷物や作物の上げおろしは随分楽になっただろう。しかし、以前はこの急な石造りの階段を天秤棒を担ぎあげ、子供が作物を下に背負って下ろす手伝いをしていたそうだ。特に作物に必要な「水」を担ぎあげる事がとても重労働で、そのため「水を荷する」という意味で水荷浦という地名になったという説もあるそうだ。
さて、この日は僕もとても重たい荷物を抱えている。それは「赤ちゃんとベビーカー」とてもではないが、耕作用の石段を担いで登ることはできない。しかし、石垣の山を縫うように道が走っているのが見える。駐車場の北側へと道を進むと、民家の間から段畑を登っていく道があるので、そちらへと迂回する。
遊子水荷浦の段畑のメインの散策道になる道。コンクリート舗装されていて、とてもきれい。勾配もきつくないので、ベビーカーを押しながらの散策も全く問題なかった。
この道は段畑の頂上部分まで通じている。散策も楽だし、軽トラック程度なら難なく走れる道。農作業の効率の向上に大きく貢献している道だ。
どこまでもコツコツと積み上げられた美しい石垣
段畑の中を行く。見事に積み上げられた石垣。その技にも驚かされる。今もこの石垣のメンテナンスには手を抜かず、しっかり農家の方によって行われている。この段畑という、先祖代々受け継いできた財産は、今もしっかりと守られている。
山の上まで見事に積み上げられた石垣。マチュピチュを彷彿させる、まるで古代文明の遺跡のようにも見える。
段畑には水路や階段といった機能もしっかり石組で造られている。その技術の高さには驚かされる。そして農作業用のモノレールや散水施設、イノシシ侵入防止用の電流柵など、現代の技術も多く取り入れられいる。単なる観光資源ではなく、今もこの畑から多くの芋が収穫されている。
見下ろす宇和海と段畑は絶景!
段畑から見下ろす水荷浦の海。リアス式海岸に囲まれた海はとても穏やかで、養殖が盛ん。ひっきりなしに漁船がイカダを縫うように走り去っていく。「半農半漁」という昔ながらの生活が今も続く、遊子水荷浦の風景は、とても美しいものに思えた。
芸術。遺跡・・・あらゆる言葉を手繰り寄せるが、ぴったりする言葉が思い浮かばない。とにかく見事で壮大で美しい、段畑の風景。これを作り上げるのにどれだけの時間がかかり、どれだけの人が汗水を流したのだろう。
美しい曲線を描く石垣のフォルム。もう芸出の域に達している。日本の城の石垣、ヨーロッパの古城の城壁を思わせる見事な石垣は、そのままモダン建築に使えそうなほど洗練されている。
幾重にも重なる段畑。どの畑にも芋がぎっしりと埋まっている。今も現役で働く畑。あまりにも急こう配なので、上下の段への移動の為、所々にハシゴが掛けられている。随分と近代化されたとはいえ、コンバインやトラクターなどは持ち込めない。未だに全て手作業の畑仕事は、とにかく大変。それに石垣の補修や、移動の手間。この風景を維持して、作物を育て続ける農家の方の努力は大変なものだと思う。耕作されなくなったら、一瞬にしてこの段畑は崩れ、荒れ果ててしまうだろう。残念ながら、そのような段畑はこの付近にはいくつもあるそうだ。
赤ちゃんをベビーカーに乗せ、遊子水荷浦の段畑の随分上まで登ってきた。遊子の段畑と宇和海を一望できる風景。最高の風景を赤ちゃんも楽しむ事が出来る。
山一面に広がる段畑。所々にはみかんが実を結んでいる。みかんもこのような急斜面で栽培される。宇和海は典型的なリアス式海岸で、海から一気に急斜面で山が立ち上がる。そんな宇和海のある宇和島は日本一のみかんの産地。耕作地を求めた先人の努力が、この美しい段畑や日本一の愛媛みかんを生み出したのだろう。
この急斜面の高度差、ベビーカーに乗った赤ちゃんでも楽しめる。もちろん、道の脇には柵は無いので、転落しないように十分に注意。
頂上付近に到着。見上げる遊子段畑の風景も見事だが、上から見下ろす風景も、その広がりが一望できてとても見事。はるか遠くまで続く、段畑の曲線美。そして全ての畑に元気よく育つ緑の葉。この段畑に挑むすべての人々の努力が、この感動を生みだしていると思うと、本当にこれからもずっと頑張ってくださいと応援したくなる。
宇和島の観光と宿泊情報
宇和島の観光名所は色々ありますが、有名どころは市内中心部に凝縮されています。現存十二天守のひとつ宇和島城や宇和島闘牛、和霊神社などは宇和島中心部のホテルに車を置いて、ゆっくりと徒歩で巡りたいですね。また「鯛めし」や「じゃこ天」といった美味しいものも宇和島では頂きたい名物。老舗の飲食店も市内中心部に軒を連ねているので、歩いて夕食に行ける宇和島駅付近のホテルが宿泊には便利です。
遊子水荷浦の段畑
場所 愛媛県宇和島市遊子
電話 0895-62-0091(段畑を守ろう会)
交通 宇和島市内から車で約50分
駐車場 約20台(無料)
トイレ あり
ベビーカー 可能
【投稿時最終訪問 2010年3月】