大山スノーシュー【大雪の元谷と大神山神社】

数年前のことだが、年末年始の大寒波で、観測史上、最も激しい豪雪に見舞われた鳥取県。「本当に行くの?」と周りに心配されながらやってきたのは、毎年恒例となりつつある冬の大山。以前は僕のアウトドア仲間でよく利用していたスノーシューツアーを実施している「森の国 大山フィールドアスレチック」にこの年も森の国でスノーシューツアーのお世話になった。
ただし、一緒に行くのは家族でもなく友人でもなく、会社の上司3人。山ガールが増えているのはよく聞くが、それに以上に、僕の会社では山オヤジが増えているのだ。毎年毎年、新たに山に目覚めたオヤジたちが、大山の恒例スノーシューにのめり込んでいく。

 大山森の国の達人ガイドの案内で大雪の中を出発

雪の大山寺参道

大山寺の参道入口からスノーシューツアースタート。スノーシューとは、洋式カンジキとも言われ、フカフカの新雪の上でも沈むことなく歩けるアイテム。これを履けば、冬の大山は、夏場は入る事も出来ない場所まで、楽しく立ちいる事が出来る。
森の国のスノーシューコースはいくつかあるが、毎年オーダーするのは「元谷コース」このコースは、この森の国ならではのスノーシューの遊び方が楽しめる。
今年は森の国では一番の遊びの達人、アキタさんのガイド。山ガールと一緒になれればなんて考えていたが、残念ながら贅沢にもツアーは僕たちで貸切。色気なし。オッサン5人組。山好きオヤジオーラをモンモンに出しながら、雪深い道を登っていく。ストイックなほどに冬山を楽しむスノーシューツアーの始まりだ。

大雪の大山寺参道

大山寺に続く参道を登っていく。深い雪で覆われているが、普段は車も通れる道。大雪でそこが道かどうかもわからない状態になっている。
米子市内でもそうだったが、これだけ雪が一気に積もった事は近年では無いそうだ。住人の方が忙しそうに、あちらこちらで雪かきをしていた。

大雪の大山寺

大山寺の山門はあまりもの大雪のために、立ち入りが禁止されていた。通常なら、大山寺まで登り、そこからいったん、大神山神社の参道までダウンヒル(雪の急斜面を走り降りる)をするのだが、今回はできそうにない。

大雪に包まれた幻想的な大神山神社奥宮

雪の大神山神社参道

大山寺の境内に入れないので、大神山神社の参道を最初から歩くことになる。大神山神社の参道は、自然石を使った石畳の道では日本最長の長さを誇る。しかし、とんでもない雪の量。鳥居は埋もれ、燈籠の上には雪がどっさりと乗っている。自然石の立派な石畳の道と言われても、もはやわからない。

雪の大神山神社参道

大山寺と大神山神社はもともとひとつの「大山寺」だった。明治時代の神仏分離政策で、今のように寺とと神社に分かれるようになったが、それでもこの神社の参道や建物には仏教色が濃く融け込んでいる。神社の参道入口には燈籠とお地蔵さまが見守ってくれている。
しかし雪はその姿すら、全く別のものに変える。お地蔵さまはエジプトか東南アジアの神。燈籠はまるでジェラードのようだ。

雪の大神山神社参道

去年も年始に大雪だったが、さすがに観測史上最高の今回は、その積雪量は半端ではない。去年は登りで温まった体の渇きを癒した延命長寿の御神水。厳しい冬でも凍ることなく清水があふれ出していたが、さすがにこの雪と寒さの前に、その流れは封じ込められていた。残念ながら、長寿延命の御利益にあやかれず、そのまま歩を進める。

雪の大神山神社参道

夏場は多くの観光客や参拝客でにぎわう参道も、大雪のあとのこの日は誰も通らない。ただ、装備をしたごく少数の登山者だけが、この道を越えて、ご神体である大山に挑む。ただでさえ静かで荘厳な参道は、真っ白な雪に包まれて、神にも出会えそうなくらいの神秘的な道と化していた。

雪の大神山神社参道

あまりもの寒さに、建物が分厚い布団にくるまっているかのようだ。雪の隙間から覗いているのは社務所の窓。大雪にサンドイッチされながら、その重圧にしっかりと耐えている。

雪の大神山神社神門

やがて目の前に「神門」が見えてきた。通常の門とは扉が逆向きに開くので逆さ門とも言われており、この先が大神山神社の境内になる。

雪の大神山神社奥宮

神門を過ぎると、大神山神社の奥宮が雪の中に埋まりながら、参拝者を迎え入れてくれた。神の元に続く一筋の道の下には、長い石段が続いているが、深い雪はそんなことすら分からなくしてしまっている。
全ての色をなくしたモノトーンの世界。神秘・荘厳・厳粛・・・言葉では言い表せない、重厚な歴史と自然への畏怖が交錯する場所。
ここから先はこの神社がご神体とする、大山へと続く登山道だ。神の領域に足を踏み入れた事を知らせるように、突然雪が降り出した。舞う粉雪が静寂を深めていく。

登山道を進むと、それまで杉が多かった森がブナやミズナラの原生林へと姿を変える。大山は山麓に白神山地にも匹敵するくらいの広大なブナの原生林を擁する。春は新緑、夏は深い緑、秋は黄葉。色鮮やかさで目を楽しませてくれる森も、冬だけは一切色をなくした静かな世界。生き物たちは息をひそめ、ただ聞こえる風の音だけが、静寂をいっそうに深める。

雪の治山林道を登って元谷へ到着 

大雪の林道

夏山登山道は急斜面もあり積雪期は危険なため、途中から谷筋を登り、治山林道へと出る。夏場は決して入ることすらできない場所にも、雪に覆われた今、スノーシューを履けば、どこにでも立ち入れる。そして自分が新雪につけたトレースは、この真っ白な世界の道となり、雪を楽しむ人が後につづく事になる。

折からの大雪で、治山林道も深い雪に覆われている。車が通れる幅の道路も、斜面から流れ落ちてきた雪で、道幅は狭く、一歩間違えれば滑落してしまうような場所もある。言われなければ林道が通っている事にも気づかない雪の中、唯一、ここが道であることを示してくれるのは、体半分が埋もれたカーブミラー。

雪の元谷

林道を歩いていくと少しずつ雪に覆われた谷底が上がってくる。その谷底と林道が合流する場所。それが「元谷」だ。
もろい地盤のため、崩れていく大山。その崩れゆく大山の通り道が、この元谷。
今までの森が一気に開け、広いガレ場、谷になっている。今、歩いてきた治山林道は、この元谷に幾重にも張り巡らされた堰堤の工事のためのもの。
一気に雰囲気が変わったこの場所。手軽なスノーフィールドを楽しんだ森は終わりを告げ、ここから先は重装備のアルピニストの世界だ。よく見れば、正面右側の雪の谷に、登山者が二人、張り付いている。
もちろん、スノーシュー程度の装備しかしていない僕たちの「登山」はここで終了。ここから下山をするのだが、この元谷の堰堤が、今からの「遊び場」となる。
その前に、この元谷でランチを楽しむ事にする。

雪の元谷

大山は伯耆富士とも呼ばれ、末広がりな穏やかな容貌が代表的な風景。しかし、それは西側から見た大山の姿であり、実は大山は三角柱を寝かせたような形をしている。西側から見ると美しい三角形も、北や南側から見ると柱の部分、長い尾根が連なった全く違う山容を楽しめる。
元谷からは北アルプスのような急峻な岩壁を望むことができるが、冬場は雪と雪が日本海から常に運ばれ続け、全容は分からない。
今はただ、吹き下ろす風が不気味に付近に響き渡る。

雪の元谷

元谷から下を望む。雪で覆われていてわかりにくいが、元谷には崩れゆく大山を堰き止めるように、幾重にも堰堤が張り巡らせている。
元谷は大山の水を集め、佐陀川として日本海に向かう。その佐陀川にも、幾重にも堰堤が連なる。これからの下山は、この堰堤がまさに「大人の遊び場」と化す。その前に腹ごしらえだ。

雪の元谷

お楽しみの雪上ランチの時間だが、地吹雪舞う元谷のど真ん中などではランチは楽しめない。それにここは、雪崩の巣窟でもある。安全な元谷脇の森へと、ランチを食べる場所を確保するため、もう少し元谷を登っていく。

冬の元谷

雲の中の稜線から容赦なく吹き下ろす風が降り積もった雪を舞いあげ、一気に谷を下っていく。そんな中、雪を纏った風に向かいながら、堰堤を乗り越えて谷を登っていく。
はるか上空から引きずりおろされる風は冷たく、その谷を走る音は不気味な音にすら聞こえる。その容赦ない風雪に耐えながら、ただひたすらに斜面を登っていく。それはもう、スノーシューというより、雪山に挑むエクスパートのような状況だ。
元谷に入ると、一気に気温が下がる。今まで登りでホカホカと火照った体も、登り続けているのにどんどんと体温を奪われていくのがわかる。

 凍える元谷で暖かいスノーランチ

スノーランチ

気温はマイナス6度。
去年はめげて小屋でランチを楽しんだが、この日のガイドは遊びの達人アキタさん。有無を言わさす、この状況の中で、ランチを強行する。風上にタープを張り、この強風をしのぐのだ。
山岳経験のある僕は、タープ張りは久々。同行した上司3人は初めての経験なので、寒い中でもタープ張りには興味津津。しっかりとした木にタープを巻きつけ、裾に雪を乗せる。これで風はガード出来る。
これで少しはゆっくりとランチを・・・と、思っていたがやはり谷間の風は簡単には読むことはできない。タープの張った向きとは逆方向から風が吹き込むようになった。
寒い・・・身を寄せ合いながら、あたたかい食事が出来るのを待つ。マイナス6度にこの強い風。体感温度は確実にマイナス10度くいらはあるだろう。どんどん手がかじかんできて、指先の感覚がなくなってくる。
しかしそんな状況下でもガイドのアキタさんは上司3人にストーブを点火させ、ランチを作らせる。上司3人も「本当のビバークみたいや~♪」とブルブル震えながら、楽しく準備をしている。すっかり登山家の著書にハマッている御三方は、この状況を楽しんでいる。
「タープなんか役に立たないと思っていたが、これ1枚あるだけで全然違うなぁ」「こうやって凍傷になって、指をなくしてしまうのか~」
まるで仮想遭難を楽しんでいるようでもある。
そんな上司たちを尻目に、こっそりさぼったり、カイロを手の中に忍ばせてみたりしてば、この場を切り抜ける小細工を次々と画していく。

雪上ランチ

お待ちかねのあたたかい食事が完成。まずは雑炊。寒い雪の中で食べるあたたかい雑炊は、とにかく美味しくて体温まる。まさに生き返った感じがする。

スノーランチ

次に出来たのはポトフ。コンソメ味のスープの中に、ソーセージやツミレ、小龍包など。味がとても美味しくて、これまた温まる。
そして、最後は極めつけ、アキタ氏のオススメ、「ヤムヤム麺」を特別に用意してもらった。タイ産のインスタント麺。激辛な中に、クセになりそうな酸っぱさが混じったスープと、それを良く絡める縮れ麺が特徴。火を噴きそうな辛さだが、それが体をとにかく温めてくれる。しかし、このヤムヤム麺のスープ、辛いのに絶妙の酸っぱさがあり、これがクセになる。寒さも手伝ってグイグイ行ける。
しかしやはり美味しいが辛い。スープを飲みほした後、ザックのサイドポケットに入れておいたペットボトルのスポーツ飲料を口にする。しかし、ジャリという感触。なんと、中身が凍り始めていた。
ここは極寒の世界。その中でも、こんなに暖かい食事を楽しめたのはとても不思議な体験だった。

雪の元谷・佐陀川はスノーシューのハードな遊び場

大山スノーシュー

ランチが終われば楽しい下山の開始だ。
年末年始の大雪で、一気に雪がどっさりと積もった。フカフカの新雪が、森の中を埋め尽くす。木々も雪に閉じ込められ、悲鳴を上げているようだ。

大山スノーシュー

まずは元谷から大きな堰堤を迂回し、谷底へ降りていく。谷底に降りるのはもちろんスノーシューの醍醐味「ダウンヒル」一気に雪の斜面を下りていくのは快感。しかし、ドカ雪の新雪は、スノーシューを履いていても足をとられる。降りて行く途中、派手にみんな転倒。それでもそれがまた楽しく、笑い声が絶えない。オヤジ3人の無邪気な笑い声、谷底に響き渡る。

大山スノーシュー

さて、遊び場に到着だ。大山はもろい地層で稜線が今もどんどん崩れている。その崩れた土砂が流れ落ちていくのが元谷。土砂が元谷から発するこの佐陀川を土石流となって流れ落ちないよう、まるで堅牢な城壁のように、幾重にも堰堤が張り巡らせられている。
「大人の雪遊び」はこの高さ2~3mの雪の壁と化した堰堤を飛び降りるのだ。

大山スノーシュー

「とりゃ~」気合い一閃、堰堤の上から川底に飛び降りる。
堰堤に降り積もった雪がお尻やザックに当たって落下にブレーキをかけてくれる。そして、降り積もった雪がしっかりと落下のショックを受けとめてくれる。
当然熟練のガイドが飛び降りても大丈夫か、状況を確認してからの飛び降り。雪もしっかり守ってくれて安全。しかし、結構スリルがあり、快感。
オヤジ5人の絶叫が、谷底に響き渡る。

大山スノーシュー

堰堤は巨大なツララをぶら下げている。そして、雪の下には冷たい水が凍り切らずに流れ続けている。雪の中からあらわれるその流れは、まるで温泉のようにも見えてしまう。

雪の佐陀川

堰堤を流れ落ちる一筋の水が、どっさり降り積もった雪をかき分けて流れていく。それはまるでクレパスのよう。「クレパスのよう・・・」その一言が、世界最高峰に挑み続ける登山家の世界にドップリとはまっている上司3人に火をつけた。「ここを飛び越えろ~」
この瞬間、この元谷コースにやってはいけない遊びがひとつ増えた瞬間だった。この無謀とも言える「遊び」の提案に首をタテに降ったのは、森の国一番の遊びの達人であるガイドのアキタ氏。熟練の判断で、安全そうな場所を選び、「クレパス」と名付けた川の流れををみんなで飛び越していく。

大山スノーシュー

が、記録的な大雪によるあり得ないコンディションは、ベテランのガイドでも把握は難しい。この「クレパス」に飲み込まれそうになる人が続出。「落ちたら上がれない~、引き上げて~!!」「要救助者」をみんなで必死に笑いながら引き上げる。

大山スノーシュー

救助中に二次遭難が発生。雪庇が崩れ、「クレパス」の中に飲み込まれてしまう。
「あ~、冷たい~!!」川底に流れる水がじわりじわり足の中に侵入してくる。大慌てで脱出する。
この川は浅く、ガイドの判断で万一川に落ちても、足首をぬらす程度の場所を選んでたのが幸い。靴の中に水が入った程度で助かった。

大山スノーシュー

これが落ちた穴。穴と言って、はじめから空いていたわけでなく、足を踏んだ途端、これだけの穴があいて、す~っと下に落ちてしまったのだ。まるでスローモーションのように雪の暗い空間に落ちていったのが、今思えば面白く、怖くもある。
雪の下は真っ暗。冷たい水が流れる地下水路のようになっていた。深さは3mくらいはあったと思う。前に前に、雪を崩して段差にしてよじ登ってきた「もがいた跡」がついている。

雪の佐陀川

さすがに「クレパス」飛びはこれ以上は危険。封印して、もう2度と落ちないように慎重に川を下っていく。人の大きさに比べるとその深さが良くわかる。楽しい遊びだが一歩間違えるととても危険な遊び。熟練のガイドがいるからこそ、楽しめる「大人の遊び」だ。そして、ガイドに従い、節度ある行動ができるのも「大人の遊び」。

雪の佐陀川

元谷を振り返る。雪で埋もれてしまってわからないが、幾重にも重なった堰堤を飛び降りて、新雪の中を歩いてどんどん谷を下ってきた。雲に包まれた真っ白な所が、先ほどランチをとった元谷だ。
雪が埋め尽くされた谷は平坦のように見えるが、雪の無い時期は岩が積み重なってた深い谷。夏には決して歩いて入る事が出来ないこの谷に、スノーシューを履けば簡単に踏み入れ、そして楽しく遊べる。道具があれば、雪は移動の手助けとなりうる。

雪の金門

楽しい遊びはあっという間に終わり、「金門」に到着した。去年も直前に大雪が降ったが、下流の雪が少なく、金門迄は川を下れなかった。数年前の大雪の2月には金門まで下れたので、今年は1月頭にして、2月の雪を積んでいる事になる。
ここから先はもう飛び降りる堰堤は無い。「大人の雪遊び」はここで終了。しかしまだもう一回、感動の声と絶叫の声を上げる、スノーシューツアーのハイライトは残っている。

雪の金門

雪の積もった堰堤の連続する「大山・元谷」でしかできない、雪のフィールドとスノーシューならではの遊びを楽しんだ後、一行は「金門」に到着した。
その名前の通り、まるで岩山が引き裂かれたかのような険しい地形。門のように空いた隙間から、元谷から下ってきた佐陀川が流れ落ちていく。かつての大山寺の神域であり、ご神体である大山の稜線から流れ集めた水をここで全てを集めている。まさに神からの恵みの水を一手に受け取るという、ありがたい場所。そのあり得ない地形もあり、とても神々しく思える。
雪の無い夏場は周辺は石の塔が幾つも積み上げられた「賽の河原」になっている。

冬の金門

まるで岩をえぐるようにして流れていく佐陀川。深い雪に覆われながらも、ゆっくりと金門から下界へと流れ落ちていく。険しい大自然の表情には、この山を御神体とする自然への畏怖をも感じさせる。

雪の賽の河原

金門から振り返る佐陀川。夏場は岩が転がり、幾つもの堰堤が林立するこの川は歩くことなどできない。しかし、雪に覆われたこの季節、スノーシューを履けば、とても快適に川下りを楽しめる。その途中、雪のクッションに覆われた堰堤から飛び降りるのは、この季節、この場所でしか楽しめない遊びだ。
佐陀川が途切れる一番奥は、大山の稜線が落ち込む「元谷」その上部にはまるで北アルプスの岩峰を思わせる大山の雄姿があるのだが、残念ながら日本海から直接あたる深い雪雲に覆われている。
夏場なら、ここは大山の美しい姿を眺められる、「ベストビュースポット」なのだが、残念ながら、冬場の大山常に雲に覆われは、その姿を拝める事は殆どない。

雪の佐陀川

雪に閉ざされた佐陀川。雪化粧した森を縫うように描かれた白い帯の上にはスノーシューで歩いた跡が残っている。普通なら、新雪の深い雪の上は進むのすらままならない。しかし、スノーシューを履けば、パウダースノーの真っ白な雪の上を気持ちよく、何にも邪魔されることなく、歩いて下ってこれる。各自が思い思いに、自分の好きなトレースをたどり、そのあとには道が残る。
厳しい冬でも凍てつかない佐陀川の流れだけが、雪に覆われる事を拒み、一筋の深いクレパスのようにこの谷を下っている。

大山スノーシュー

金門を出ると、大神山神社の日本一長い自然石を使った参道に戻る。ここから再び、反対側の森を登っていく。神域の巨大な杉林を抜けると、再びブナやミズナラの原生林に入る。それと同時に、先ほどまでの天気がうそのようには青空が広がってきた。

大山スノーシュー

光が射し込み始めた森を登っていく。葉を落とした木々には、折からの大雪が降り積もり、真っ白な森になっている。雪のトンネルをくぐり、少しずつ高度をもう一度あげていく。

大山スノーシュー

坂を登りつめた場所。急に視界が広がる。先を進むパーティー全員が、その神々しい風景にくぎ付けになる。

冬の大山

大山、そして大山山麓のブナの原生林。そして大神山神社神域の杉の巨木群。残念ながら大山本体は深い雲の中だが、雪を頂いた広大な森は、静かながらも圧倒的な迫力で見る者を魅了する。

雪の大山の森

まるで日本とは思えない風景を醸し出す大山寺、大神山神社の神域の広がる杉の林。見事に雪を頂いたその姿は、まるでカナダの広大な針葉樹林にも見える。
その神域のスギ林の向こうには、今日ランチをとった「元谷」が広がっている。

冬の大山の森

巨大な杉が林立する森の上部には、ブナの原生林が広がっている。大山のブナの原生林は白神山地に匹敵するほどの広さをもつ。広葉樹林であり、冬は葉を落とすので、スギ林のように遠くから見て真っ白になるような存在感は少ない。
それでも針葉樹・広葉樹がまるで水と油のように交わらず、独自の森をつくる様子は不思議。山岳信仰のご神体として手つかずの大山と、その麓に栄えた巨大な寺と神社。その象徴がこの風景となっているようだ。

大山スノーシュー

大山は結局姿を現さなかった。しかし、その山麓に広がる森だけでもこれだけの美しさを見せつける、とても神々しい姿だった。
さて、大神山神社の参道に出てわざわざもう一つ山に登ったのは、この神々しい風景を見るためだけではない。最後はこの行程最大にして最長の急斜面を一気にダウンヒルする。
普段は立ち入ることすらできない急斜面の森。スノーシューで一気に走り下って行く。
転倒、滑落、なんでもあり。フカフカの雪がすべて受け止めてくれる。最後に大はしゃぎして、今年のスノーシューも幕を閉じた。

大山の観光と宿泊情報

大山の宿泊の選択肢はいろいろあります。
まず、大山山麓にはリゾートホテルやペンションが多くあります。 森の香りを感じる大自然の中でゆっくりと滞在できます。
また、車で20分走った場所にある「皆生温泉」は海沿いに旅館が建ち並ぶ山陰屈指の温泉地。 美味しい海鮮はもちろん、海を眺めながら入れる温泉が自慢の宿がずらりと並んでいます。フィールド近くの森の中か、海の近くの温泉か好きな場所に泊れるのも大山付近の魅力です。

■ 皆生温泉・大山のホテル・宿一覧

大山森の国

住所: 鳥取県西伯郡大山町赤松634
電話: 0859-53-8036
休業日: 水曜日(夏休み期間は無休、12月中期休業あり)
営業時間: 9:00~17:30
スノーシュー期間: 1月初旬~3月初旬
料金: ガイド料1人6500円(スノーシューレンタル代別)
交通: 米子自動車道・米子ICより車で約15分
駐車場: 500台(無料)

【投稿時最終訪問 2018年1月】

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