雪の大山寺・大神山神社 【大山森の国スノーシューツアー】

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鳥取県の大山は標高1729mながら、日本海に面した独立峰のため、冬は豪雪で本格的な雪山を楽しめる。その雪に魅せられて、何度も冬の大山には訪れている。冬の大山の醍醐味は、スキーもそうだがやはり「スノーシュー」。洋式カンジキともいわれるスノーシューを履けば、夏場は立ち入ることすらできない深い森や谷の奥を気軽に楽しむことができる。とはいえ、地形やその土地の状況を知らないと、雪の下に隠された危険な場所や雪崩などでひどい目にあう。
そのため、毎年スノーシューのガイドを頼んでいるのが「森の国 大山フィールドアスレチック」。西日本最大級のアスレチック場でキャンプや様々な体験学習・プログラムなどがあり、大人も子供も楽しめる施設。雪に閉ざされる冬場はアスレチックはできないが、そり遊びやスキー教室、雪上ランチなどの冬ならではの遊びを提供しており、その中の一つに「スノーシューツアー」がある。比較的安い料金なのに、美味しいランチをツアー途中にコンロで作ってくれるなどその内容はとても充実している。
「森の国」のスノーシューのコースは5つある。今回のツアーは僕たち勤務先仲間だけの参加だったので、僕のイチオシ「元谷コース」への案内をお願いした。このコースは雪に埋もれた大山寺を抜け、大山の懐の元谷を目指すコース。下山時には、ほかのコースにはない、「遊び」ができる。

スキー場前の大山寺参道からスノーシュー出発

雪の大山寺参道

大山山麓にある森の国の駐車場に自分の車を置く。雪深い大山の懐へのアプローチは森の国の送迎車でしてくれる。通常は大山スキー場に車を停めることになるのだが、1日1000円の料金がかかるし、混雑時は駐車場に入れず、麓の駐車場からシャトルバスの利用になる。そんな面倒とも無縁なのはうれしい。
車を降りて、少し歩くと大山寺の参道に出た。一面は真っ白な雪に包まれた豪雪地帯。まさに北国を思わせる景色だ。ここでスノーシューを装着し、雪深い参道の急坂を登っていく。
雪の中から生えているような道路標識が、ここが道であることをかろうじて認識させてくれる。この先は車も通れない。深く積もった雪の上に、ただ一筋の人が歩いた跡が残っている。

雪の大山寺山門

大山寺の山門にたどりついた。深い雪に覆われた山寺は日本の冬を感じさせ、とても趣きがある。雪に覆われた階段を、ストックを突き、登っていく。

雪の大山寺本堂

大山寺の本堂。大きな屋根の上にはパウダースノーが美しく積もっている。大山寺は奈良時代に創建された寺で、一時は3000人もの僧兵を擁し、山岳仏教の修験所として栄えていたそうだ。
本堂の前は散水で融雪されている。ここに至るまで、一筋だけだが踏み固められた道もある。冬の季節、大山寺入口まで訪れるスキーヤーは多いが、夏場に比べ、大山寺を訪れる人はとても少ない。それでも地元の方や遠方から観光客など、この歴史のあるお寺をお参りをしていく人も皆無というわけではない。

雪の大山寺開運堂

「開運堂」も雪に埋もれている。鐘は夜間・早朝を除き、ひとり1回なら誰でも突くことができる。ありがたい鐘だが、スノーシューを履いたまま突くわけにもいかず、と言って、スノーシューを脱ぐのも面倒なので、突くのは今回はあきらめる。

大神山神社の神秘的な雪の参道を行く

雪の大神山神社参道

さて、大山寺の社務所脇から、森の中の急斜面を一気に「ダウンヒル」して、今度は「大神山神社」の参道に一気に出る。ダウンヒルとは、雪の積もった急斜面を一気に走り降りること。普段は入ることすらできない、道のない森の中。しかし、冬の積雪期はスノーシューを使えば、その森の中に入っていくことができる。深い原生林の中の気ままな散策は、夏には味わえない冬の大山の醍醐味のひとつ。

雪の大神山神社参道

大神山神社の参道は、自然石を使った道としては日本で一番の長さを誇る。その立派な石畳は深い雪に閉ざされて全く見えない。雪に埋もれる燈籠が、この大山の雪深さを物語っている。
雪に閉ざされ、歴史ある石畳の姿は見えないが、静寂に包まれた参道には威厳と神秘さを感じずにはいられない。

雪の大神山神社延命長寿の御神水

参道途中にある、延命長寿の御神水。雪に覆われる厳しい冬にも凍ることがなく、流れ続けている。口に含むと、とても冷たいが、透き通った味は神々しくて美味。寒い雪の世界だが、雪の参道の登りはなかなか大変で、体はポカポカに温まっている。渇いた喉を潤してくれる、ありがたいお水でもあった。

雪の大神山神社神門

冬の大神山神社の参道を行く人は少なくとても静か。夏場は多くの観光客や登山客が訪れる場所も、雪に覆われたこの時期は冬山登山者か熱心な参拝者くらいしかこの道を行かない。それだけに、雪の静寂さと人気のなさに包まれた参道はとても神々しく幻想的。
やがて目の前に「神門」が見えてきた。通常の門とは扉が逆向きに開くので逆さ門とも言われており、この先が大神山神社の境内になる。

雪の大神山神社神門

「神門」から望む大神山神社の「奥宮」
奥宮の前は長い階段だが、この季節、深い雪に覆われている。全てを覆い尽くす雪が造りだす静かなモノトーンの世界。雪が全ての音を吸い取る、訪れる人もほとんどいない、静寂の空間。幽玄と神秘が見事に織りなされた風景には、まさにそこに神がいると信じられるくらいの厳かな場所だった。

雪の大神山神社奥宮

大神山神社・奥宮は日本最大級の権現造り。明治時代の神仏分離の政策がとられて、奈良時代から続く大山寺は「大神山神社」と「大山寺」に分かれることになった。そのため、この奥宮は神社でありながら、お寺のような雰囲気をとても強く感じられる。それがこの奥宮をとても神秘的なものにしている、また一つの要因だろう。
さあ、ここから本格的な登山道。元谷を目指して、深い雪に覆われた、ブナの原生林を雪をかき分けて登っていく。

大神山神社奥宮境内からは雪の登山を進む

大山スノーシュー

雪に覆われた幽玄の世界を思わせる大神山神社での参拝を済ませたら、目指す「元谷」へと山道をスノーシューで進む。雪に閉ざされたブナの原生林はとても美しく、緑色に覆われる夏場とは全く違った雰囲気。
訪れる人も鳴く鳥もいないこの場所は、静寂そのものが漂っている。雪を踏みしめる音と自分の息遣いだけが、自分の周りにある音だ。

大山スノーシュー

夏場は川沿いに木道や階段が整備された遊歩道があるが、深く積もった雪がそれらを全く意味のないものにしている。元谷を通り過ぎて大山を目指す、登山のエキスパート達がつけた、一筋の歩いた後だけが、ここが道であることを示していた。どこまでも続く深いブナ林は、雪と霧に包まれている。
ここでガイドが道から外れて、斜面の谷筋を登るコースに入るように示される。谷筋には歩いた跡はなかったが、それがまるで道のように山の上へと導いているようだった。夏場は下草や岩で歩けないような谷筋も、雪に覆われた冬場は問題なく入っていくことができる。ただし、深いスノーパウダーに覆われた斜面を登っていくのは、スノーシューを履いていてもとても疲れる。
しばらく僕がトップを歩いていたが、しんどいので、休憩するふりをして無理矢理後続の上司をトップにする。さすがに3番手になると、とても楽。冬山登山でラッセルのトップを次々に交代していく効率性が身にしみて感じることができた。

雪の大山治山林道

斜面を登りきると、ここにも一筋、先ほどよりも小規模だが人が歩いた跡があった。ここは元谷へ続く治山林道。大山はとても崩れやすい地質でできており、今も頂上付近では崩壊が続いている。その崩壊した大山の大きな通り道が、目指している「元谷」だ。その為、元谷では土石流などが発生して麓を襲わないように大規模な治山工事が今も行われている。
ここは元谷へと工事車両が向かうための道。しかし、雪に覆われている林道は、そこに歩いた跡がなければ道であることとすら気付かない。それだけ深い雪が大山には降り積もる。林道とはいえ、降り積もる雪でその歩ける箇所はとても狭くなっている。1歩踏み間違えれば、谷の下に転がり落ちるような場所を何か所か通り抜けるので慎重に雪の上を歩いていく。

ブナの実

途中、真っ白な雪の上に何かが散らばるように落ちている。拾ってみると、何かの実だ。
ガイドをしてくれた「大山森の国」のガイドさんによると、これは『ブナの実』だそうだ。大山は山麓に白神山地にも匹敵するくらいの広大なブナの原生林を擁する。この付近も一面のブナ林なので、そこに落ちている実は確かにプナの実である。驚いたことに、このブナの実は食べられるそうだ。冬場の貴重な食料ということもあり、一面に散らばっている実のほとんどは動物に食べられている。その味を確かめようと、辺りを探してみたが、実が詰まっているものはなかった。
しばらく探してみると、やや色が黒いが、実が割れていないものが見つかった。食べられるかと匂ってみたりしてみたが、その途中、ガイドから強烈な一言を頂いた。
「それ、ウサギの糞ですよ・・・」

大山の真下の巨大な雪の谷「元谷」

雪の大山元谷

結局ブナの実は見つからなかった。気を取り直して歩いて行くと、間もなく突然景色が開けた。閉じ込められたかのようなブナの原生林から、一面の雪原。ここが目指していた『元谷』である。
この元谷の上部には、大山の北壁がそびえる。大山は「伯耆富士」と呼ばれるくらい穏やかな山容が印象的であるが、それは大山の「西」側の一面だけ。崩れゆく大山の北側と南側は、まるでアルプスの岩峰を思わせる荒々しい雰囲気。その景色は、元谷に立つと圧倒的な雰囲気で頭上に迫るが、残念ながらその存在すらも今は感じることができない。

雪の大山元谷

冬は雪崩、夏は土石流の通り道となる元谷。雪原の真ん中で長居をすることはないようにしたい。しかし、標高1700mの稜線が切れ落ち、集まってくるのがこの元谷。雪崩がなくても、山の上から容赦なく冷気が雪の斜面を滑り降りてくる。元谷に入ると、一気に気温が下がったのが実感できる。手がかじかみ、冷気に体が貫かれる。まさに、本格的な雪山に来たと感じる場所だ。
ホワイトアウトしかけの雪原の中を導いてくれるのが人が歩いた踏み跡。この元谷から大山頂上へ目指す冬山登山者も少なくはない。元谷を横断していると、向こうから大きな荷物を担いだエキスパートが下山してきた。

雪の大山元谷小屋

雪の上でランチと洒落込むつもりで銀マットを何本も持ってきたが、天候はよくはない。霧にちらつく冷たい雪。そして上空の稜線から吹き下ろす極寒の風が、元谷でじっとできない事を悟らせてくれる。そこで急きょ「元谷小屋」に向かうことにした。
無人の避難小屋で、元谷の左岸、木々に囲まれた場所にある立派な小屋だ。元谷を渡り切ると、森の中にその姿を確認することができた。

元谷小屋でスノーランチ

大山元谷小屋

元谷小屋に到着し、スノーシューを外し、中に入る。中には登山者の荷物が置いてあった。昨晩ここに泊まり、朝早く頂上に向かい、またここに戻って一晩を過ごすのだろう。
中には暖房はないが、風が遮断されるだけでもとても温かい。断熱材や二重窓。「必要があればご利用ください」と設置された大型のそりとソンデ(雪崩に巻き込まれた人を探索する棒)がある。それらが、ここが雪崩の巣のすぐそばであることを物語っている。
山小屋の中にトイレ(ボットン)があるので、やや臭い気になったが、外でゆっくりスノーランチするような状況でもない。ここでランチをとることにする。不思議なことに、ランチをつくっている間に、トイレの臭いは気にならなくなった。人間の鼻は便利にできているものだと思う。

大山元谷小屋でランチ

荷物を降ろしたら、ガイドのDAIさんがランチをつくり始めてくれた。寒い場所、ストーブでつくるホカホカの食べ物はとにかく美味しい。できれば雪の上で食べたかったが、それでも着々と出来ていく美味しそうなランチはとても待ち遠しい。

森の国スノーシューツアーのランチ

1品目はポトフ。雪に覆われた山小屋の中で頂くホカホカの一品は体かとても温まる。そして何よりも、とにかく美味しい。ガイド曰く、味は別に大した工夫はしていないとの事だが、冬のアウトドア、体を動かした後の温かい食事は何よりも美味しい。

森の国スノーシューツアーのランチ

2品目はカニ雑炊。これもとんでもなく美味しい。雪の中で体を動かすことが、魔法のスパイスなのだ。そして、雪の中で、これだけ手間がかかるものを作ってくれるというのが、とにかく嬉しい。

森の国スノーシューツアーのランチ

最後はデザート。ミルクティーにマシュマロを落としていただく。これがとても甘くて、それでいてマイルドで、疲れて冷えた体には何よりも効く。ガイド曰く、「いろいろ試したが、日東紅茶のミルクティーが一番マシュマロにあう」との事だ。
さて、食事が終わった頃、体からオーラのような蒸気を吹き出しながらパーティーが下山してきた。聞けば、たった3時間強という短い時間で大山を登頂してここまで下山してきたとの事だ。すごいスピードだ。大山には年に何度も何度も登っているとの事で、相当なエキスパート集団だ。我々が持っていたスノーシューを見て、最新のスノーシューはここが違って使いやすいと、いろいろご講義頂いた(笑)
さて、美味しいランチを楽しんだら、今度はここから下山だ。僕が今回連れて行ってほしいとお願いした「元谷コース」
実はその醍醐味は元谷にあるのではなく、元谷からの下山時。夏場は近づくことすらできない、連続する堰堤で治山された川底。雪のある冬場だけその川の底に降り、アンビリーバブルな下山を楽しむことができる。元谷を流れる佐陀川の上をスノーシューで下り降りるのだ。
この佐陀川は崩れ落ちる大山北壁の岩石が流れてくるため、幾重にも堰堤が張り巡らされている。大小の岩石が転がり、その岩石が深く削った谷。夏場はまず歩くどころか河原に降りることすら難しい場所。しかし雪に覆われた冬場なら、スノーシューでその谷底を下っていく事ができる。しかもものすごく楽しい「遊び」をしながら・・・

元谷から冬の佐陀川をスノーシューで楽しく下る

冬の佐陀川

元谷小屋から元谷の底に流れる佐陀川に降りるにはまず深い雪に覆われた深い森の中を下っていく。元谷の下部には、その流れ落ちる土砂を堰き止めるため、巨大な堰堤があるため、直接川を下る事はできない。普段なら立ち入ることもできない急斜面も、滑るようにスノーシューでダウンヒルし、どんどん下っていく。

冬の佐陀川

巨大な堰堤を巻くようにして、森の急斜面を下り降りると、佐陀川の川底に出た。スキー場や広い雪原を思わせるような冬の川。大山から下山する一部の登山者も、普段とは違う大山の風景を求め、この川を歩いて下っているようだ。先人がつけた足跡が、山の下へと一筋の道となって続いている。
しかし僕たちはこの大山に登りに来たのではなく、遊びに来たのだ。この道をつけたてあろう登山者とは違い、とっても「ムダな動き」をこれから楽しむ。

大山スノーシュー

幾重にも続く小規模な堰堤の一つから飛び降りる。これがこのスノーシューツアーで一番の「楽しみ」だ。
スノーシューツアーでお世話になった「大山森の国」の数あるスノーシューコースでもここだけ。このコースでしかできない遊びで、この遊びをしたくて僕はこの「元谷コース」の希望を出していた。

高さが3m以上はあるであろう堰堤から谷底に飛び降りるなんて事は夏場は絶対にできない遊び。堰堤に寄りかかるように積もった雪が、お尻やザックにあたって落ちる速度を減速してくれ、深く積もった雪がしっかりと着地のダメージを受けとめてくれる。高いところから飛び降りたあの足の痛みもショックもなく、爽快感だけ味わえる、大山ならではの冬の遊びだ。

大山スノーシュー

堰堤には流れ落ちる水がそのまま凍りつき、ツララになっている。その巨大さには驚くばかり。普段は見れない神秘が、普段足を踏み入れることすらできない谷底に広がっている。

冬の佐陀川

中には滴り落ちた水滴が少しずつ凍っていったと思われる「氷筍」、いわゆる逆さツララもあった。冬の元谷は自然現象のまさに宝庫。体を動かして楽しみ、そして見て感じて楽しめる。

冬の元谷

下り降りてきた元谷を振り返る。一番上部の堰堤の上が元谷。上部の堰堤は大きすぎるので飛び降りる事が出来なかったので森を迂回した。高すぎて雪がコンクリートの本体を覆っていないのがわかる。その下の幾つも続く堰堤をわざわざ飛び降りて谷を下ってきた。このスノーシューツアーの4名分のみ、しっかりと堰堤に飛び降りた跡が残っている。
他の登山者は堰堤の川岸付近、雪がしっかりと溜まっている場所を選んで歩いているようだ。確かに、大山に登ってきた登山者なら、荷物も多く疲れもたまっている。わざわざ雪の中を飛び降りる事はない。時々霧が薄らぎ、元谷の奥に雪に染まった大山北壁の姿が幻のように消えたり現れたりしている。

冬の川

下りていくと、所々ぽっかりと穴があいている。元谷は岩や砂が積もった場所で、水の流れは伏流水となり、川の流れはなかった。しかし、何度も堰堤を下り、岩の量が少なくなってくると、川幅はせばまり、水の流れが現れる。雪の下にも水が流れているようで、その水の流れている場所にはこのように雪が穴をあける。この穴の付近は気をつけないと。うっかり雪を踏み抜いたら、冷たい川の水の中にはまってしまう。

大山スノーシュー

堰堤の飛び降りだけがこの元谷のスノーシューの楽しみではない。川底を下らず、しばらく川岸を歩き、一気に河底に向けてダウンヒルするのも楽しい。雪の斜面を一気に駆け下りるのは、スノーシューならではの楽しみ。

雪のアニマルトラッキング

雪の上には時々動物の足跡が。「アニマルトラッキング」とよばれ、その形でどんな動物か推測するのも楽しい。
これはウサギ。小さい穴が後ろで大きい穴が前にあり、独特な形なので僕でもすぐにわかる。後ろの小さい穴が前足、前の大きい穴が後ろ足。とび跳ねながら進んでいる。

雪のヤマブドウ

ウサギの目当てはどうやらこの「ヤマブドウ」のようだ。雪の上の足跡はこの付近に集中していた。とても静かで何もいないように思われる雪の元谷。それでも確実に生き物たちは、この厳しい大山の冬を生き抜いていた。
ここから少し下ると、ずいぶんと先のほうに何か動くものが・・・キツネだ。僕たちの姿を見つけたとたん、とび跳ねるように対岸の森の中に消えていった。相当距離があったにも関わらず、すごいスピードで逃げて行ったので、まともな写真は撮れなかった。まさか、こんな雪の中に人間が出てくるとはキツネも思わなかったのだろう。

冬の佐陀川

下る佐陀川の川幅はやや狭まり、木々が谷に押し出すようになってきた。大山から下りてくる冷気が届かなくなったからだろうか。それとも大山から流れ落ちてくる岩石が少なくなったからだろうか。谷の雰囲気は少しずつ変わってくる。

冬の佐陀川

川幅はずいぶん狭まり、雪の下にその流れが姿を現すようになった。さすがに谷底を好きなように縦横無尽に歩けなくなった。ここで、右岸側(川の流れに向かって右側)へ渡って川を下る事にする。
この先は「金門」というかつての神域があり、巨大な岩が門のように佐陀川の流れを閉ざしている場所になっている。その場所まで無事に下れたとしても、左岸にいれば、下山ルートに出るためには川を渡らないといけない。まだ水に濡れずに渡れそうな幅である今のうちに、川を渡る。
しかし、幅が狭いとはいえ、雪に覆われた川を渡るのは容易ではない。雪庇になっていないかしっかり確認してから流れに近づかないと・・・
「うわ~冷たいっ!!」
雪庇を踏みぬき、凍てつく流れに足を突っ込んだ犠牲者の悲鳴が谷に響く・・・

大山スノーシュー

さあ、いつでも谷から脱出できるよう右岸に渡ったら、残りの「遊び」を最後まで楽しもう。まだまだ続く雪の堰堤をみんなで飛び降りていく。高くても雪がクッションになるので、そう簡単にケガはしない。思い切って飛び降りる!

大山スノーシュー

「そりゃ~っ」
堰堤の下、安全そうな場所を狙って一気に飛び降りる。この快感はクセになるほど。僕は2回目だったが、僕以上に、いっしょに参加した会社の上司は夢中になっている。おやじ4人が無我夢中に、奇声を上げて雪の上から飛び降りるという奇行を繰り返しながら、谷を下っていく。

冬の佐陀川

雪の壁となった堰堤。さすがにここを登っていくのは無理だが、下って行くのは簡単でしかもたのしい。たっぷりの雪とツララが温暖な場所で暮らす僕たちにとっては、とにかく珍しく楽しい。

大山スノーシュー

川幅は狭まり、佐陀川の流れもはっきりしてきた。ここからガイドの判断で、一般ルートである、大山神神社の参道に戻る事にする。戻ると言っても、夏場は下草が生い茂り立ち入ることもできない、広大な大山神神社の杉林の中を突っ切っていく。冬だけに許される、神秘の森への散策だ。

大山スノーシュー事故

とはいえ、雪におおわれている地面には何があるかわからない。森の中にも人工物があったり、急な穴がある事がある。雪は真っ白で、その境界線をはっきりと認識できない。
急に上司がふっと視界から消えた。雪の下にあった人工的な溝に落下していた。雪があるので落ちても怪我はなかったが、深い雪は踏ん張りが効かず、立ち上がるのにはとても苦労する。

豪雪

雪の下にはこのようなコンクリート造りの建物も埋もれていた。門があり堅固な建物だが、今は何も使われていないようにも思えた。雪をどっさり積んだ建物の上に乗り、最後の「ジャンプ」で建物を乗り越えると、その先には見覚えのある場所が待っていた。大山寺のかつての神域である「金門」だ。

大山のビューポイント、雪に覆われた金門

冬の賽の河原

元谷を出発し、元谷から流れ出す佐陀川を幾重にも張り巡らされた堰堤を飛び降りながら下ってきた。そして最後は深い森を抜け、たどりついたのが「金門」とその前に広がる「賽の河原」である。
見下ろす「賽の河原」。向こうにはかすかに大山の北壁が見えている。その北壁の真下にある「元谷」からこの川沿いをスノーシューで下ってきたのだ。
ここで一気に佐陀川は、進行方向左へと流れる方向を変える。深い雪に割れ目のように走るのがこの佐陀川の流れ。雪が何もかも覆い隠しているが、ここにはいくつも石が積み上げられていたり、お地蔵さまが安置されていたりする。まさにかつての「神域」にふさわしい場所ではあるが、雪に覆われた今は、周辺の風景と何ら変わりない。それでもここはそびえる大山を望める、大山のベストビューポイントの一つ。雲に覆われた大山を背にしたこの風景には、神々しさを感じる。

冬の金門

その佐陀川の向きが変わるところに、名前の通りにそびえるのが「金門」だ。左右にそびえたつ断がい絶壁が、まるで門のように川の流れを細めている。そして、細めた流れを滝のように落としている。広い河原を持つ佐陀川が、まるでここで忽然と姿を消してしまうかのような場所でもある。

冬の大山北壁

元谷と大山北壁。巨大な壁のように聳え立つ大山からの流れを一つにあつめ、この佐陀川は流れてくる。そんな佐陀川の上を歩いて下るのは、大山から日本海へ向かう水を追った小さな旅だった。やがてこの雪も水へ融けて、日本海へ向かう事になる。

冬の佐陀川

深い雪に閉ざされた佐陀川の流れ。流れる水がかろうじて僅かに雪を積もる事を拒んでいる。雪原に一筋描かれた水の流れが、その降り積もった雪の深さがどれだけのものか物語っている。
時間まで凍りついたかのような世界だが、動物たちが歩いた跡が真っ白なキャンパスの上に描かれている。厳しい大山の冬を、多くの動物たちが乗り越えていく。

雪の大山北壁

望遠レンズで望む大山北壁。日本海にあって、その姿は北アルプスのような森林限界を超えた世界。実際大山は、日本海の上に突き出した特異な地形と、もろい地層から6合目が森林限界になっている。
全てのものを拒む冬の北壁。その険しい表情には自然の美しさを感じられ、まさに神が宿る山である。

冬の大山北壁

大山北壁と大山のブナの原生林。大山は神の山として伐採がされなかったため、広大なブナの原生林が広がっている。その広さは世界遺産の白神山地をしのぐとも言われる。元谷から大山へ登頂するには、このブナに守られた森の中を登っていく。森の向こうには険しい岩壁と雪。よく見れば、雪の壁には幾筋も流れおちた跡がうかがえる。
この元谷は雪崩の巣窟。今回スノーシューで遊んだエリアは雪崩の危険性は極めて少ないエリアだったが、スタートである元谷は雪崩のたどりつく場所だ。そんな自然の脅威を目の当たりにする。
冬の大山、美しくも人間を寄せ付けない神々の山。そんな雰囲気を人間がかつて神域と定めた場所で、感じざるを得なかった。

大山の観光と宿泊情報

大山の宿泊の選択肢はいろいろあります。
まず、大山山麓にはリゾートホテルやペンションが多くあります。 森の香りを感じる大自然の中でゆっくりと滞在できます。
また、車で20分走った場所にある「皆生温泉」は海沿いに旅館が建ち並ぶ山陰屈指の温泉地。 美味しい海鮮はもちろん、海を眺めながら入れる温泉が自慢の宿がずらりと並んでいます。フィールド近くの森の中か、海の近くの温泉か好きな場所に泊れるのも大山付近の魅力です。

大山森の国

住所: 鳥取県西伯郡大山町赤松634
電話: 0859-53-8036
休業日: 水曜日(夏休み期間は無休、12月中期休業あり)
営業時間: 9:00~17:30
スノーシュー期間: 1月初旬~3月初旬
料金: ガイド料6500円(スノーシューレンタル代別)
交通: 米子自動車道・米子ICより車で約15分
駐車場: 500台(無料)

【投稿時最終訪問 2018年1月】

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