屋島寺【瀬戸内海を一望できる四国霊場】
四国では普通に白装束を着て歩いて旅する人を見かける。彼らは「お遍路さん」
お遍路とは真言宗の開祖、空海こと弘法大師の足どりを追うように、四国を一周するように配された88か所の寺を回る巡礼の事。公共交通機関やマイカー、ツアーバスで回る人がほとんどだが、今でも本当に人力のみで四国を巡礼しながら一周する人も多い。88か所を回り切ったお遍路さんにもたらされるのは「結願」という、願いをかなえる事。苦行に耐える「お遍路さん」に接待を施すことで、自身の願いも託す。そんな「お接待」の文化が今の四国には根強く残り、とても旅人には優しい土地柄である。
今回訪れたのは、その84番目の霊場にあたる「屋島寺」
源平の屋島の戦いの舞台にもなり、那須与一の扇の的の伝説も残る、名勝「屋島」の頂上に鎮座する、歴史ある寺院だ。標高293mの独立峯である屋島の頂上にあるため、旅を続けるお遍路さんにその寺を打つためだけに過酷な登りを課す。しかし、観光ならば、「屋島ドライブウェイ」を走り、あっという間に頂上に立つことが出来る。
屋島頂上に鎮座する立派な屋島寺
屋島ドライブウェイ終点、広い駐車場に車をとめれば、歩いて5分で屋島寺に到着。この日は娘をベビーカーで押して行ったが、ここまでは難なく到着。この「東大門」をくぐれば境内だ。境内へ登るには階段だけになり、スロープは無い。ベビーカーは担ぎあげる。
屋島寺の境内。境内には砂利を敷き詰めた庭が広がっていて、解放感がとてもある。見事な庭を眺めながらベビーカーを石畳の上を押していく。
本堂の奥にある大きな建物は宝物館。かつての源平の戦いにまつわる品々も奉納されている。
屋島寺の中には太三郎狸を奉った神社も
ふと違和感を感じて足をとめる。はて、今いるのはお寺のはずなのに、何故が「鳥居」が・・・
本堂の横に鎮座するのは「蓑山大明神」。日本三大狸に数えられる太三郎狸を祀っている。この狸、弘法大師が屋島で霧に巻かれ、道に迷った所、蓑笠を着た老人に姿を替えて山上まで案内したとの伝説が残る。佐渡の団三郎狸、淡路の芝右衛門狸と共に日本三大狸と称され、善行を多く積んだことから、屋島寺の本堂の横に大切に祭られている。四国の狸の総大将とされ、家庭円満、縁結び、子宝にご利益があるそうだ。
屋島寺本堂。屋島寺は754年、鑑真和上の建立といわれている。この本堂は鎌倉時代後期のもの。とても歴史がある。国の重要文化財にも指定されてる。朱塗りの鮮やかな本堂が夏の青空に映えると、どこか首里城のような沖縄の雰囲気が何気に漂ってくる感じが個人的にした。
お遍路さんならここで、自分の名を記した札を治め、灯明、線香をあげる。その後、般若心経をあげ、納経帳にその寺を参拝した印である朱印を頂く。このあたりまでくると、お遍路も終盤。手慣れた手つきでお遍路さんはその儀式を行っている。
お遍路ではない僕たちは、通常に参拝。参拝した後は、本堂の前の道を直進。「四天門」をくぐり、境内から下りる。この門から直進し、仁王門をくぐりしばらく行くと、屋島ケーブルがあるが、残念ながら廃止されている。日本最古級のレトロなケーブルと駅舎が現役時代の姿のまま放置されている。廃線マニアにはたまらない場所だそうだ。
屋島寺からは瀬戸内海の美しい風景が一望
四天門を出た所を右折し、石畳の道を行く。やがて、店に囲まれた参道のような場所を通り過ぎると、開けた場所に出る。ここが「獅子の霊巌」といわれる場所。展望台になっており、高松の市街地、そして島々の浮かぶ風光明媚な瀬戸内海の風景を楽しむ事が出来る。
この場所で、源氏の兵が陣笠を投げて勝鬨を上げた故事にならい、素焼きのカワラケを海に向かって投げるのが屋島の名物のひとつでもある。
ここに弘法大師が立ち、沈みかけた夕日を再び空高く戻したという言い伝えが残っている。そんなことが出来るはずもないだろうが、そんな話が残っているのは、ここが夕日がとても美しいから。以前、屋島の麓の浜辺から、とても美しい夕日を眺める事が出来た。この日は望むことが出来なかったが、間違いなく獅子の霊巌からの夕日の眺めは最高なのであろう。さて、次は屋島観光の目玉として息を吹き返した「新屋島水族館」に向かう。
屋島山上の絶景の宿
屋島寺
場所: 香川県高松市屋島東町1808
電話: 087-841-9418
休業: 無休
営業時間: 宝物館は9~17時
料金: 無料(宝物館は500円)
交通: JR屋島駅・琴電屋島駅からシャトルバスにて10分
高松道高松中央ICより約13km
【投稿時最終訪問 2010年7月】