波照間島【日本で一番南の有人島】
日本で最も南にいる有人島である「波照間島」(はてるま)
沖縄本島よりさらに南西へ約450km離れた場所にある、まさに日本の端っこだ。八重山諸島の中心、リゾートの島である石垣島から高速船で約70分。リーフの外、波が立つ外洋を航海してたどり着く絶海の離島だ。
港に着いた観光客を、各民宿の車が迎えに来ていた。波照間島には立派なホテルはない。民宿や、それが少し大きくなったようなこじんまりしたホテルが数軒あるだけだ。それだけに、旅行会社のツアーなどは、必ずと言っていいほど、波照間島へは日帰りで訪れる。ここにツアー客が泊まれるような施設はないのだ。
今回宿泊する宿は、八重山のひとり旅をする人間では知らない人はいないくらいの有名な「たましろ」という民宿。有名と言っても、一般受けするかどうかは大きく人によって分かれる宿だ。宿までは港からは歩いてそう遠くない。のんびりと島を歩いて宿に向かう。
宿の夕食まではまだまだ時間がある。やはり、日本で一番南の島を楽しまなくては。部屋に荷物を置いて、散歩に出かけることにした。
日本で最も南国の離島の風景
宿の近くの風景。これが日本で一番南の有人の島だ。一面に畑が広がり、潮風をいっぱいに受けて風車が回っている。とても牧歌的で、北海道がそのまま南の海にやって来た感さえもあった。
石垣造りの集落を抜けて、海を目指す。まさに沖縄の原風景。日本にいながら、異国を感じる瞬間だ。
何度も角を曲がり、深い緑の木々をくぐると、海が見えた。青い空の下、どこまでも広がる青い海。その色の濃さと美しさに、自然に海を求めて早足になる。製糖工場を通りすぎると、美しい海に出た。
到着したのは「ニシ浜」というビーチ。美しい砂浜。青い透き通った海。どこまでも広がる空。もはや別世界で、天国すら思わせる風景。この八重山諸島の旅で見た、最も美しいビーチだった。
遠くには西表島が見えている。シュノーケルの準備をしていなかったのが残念だ。とにかく、この美しさに心躍る。ズボンが濡れる事などお構いなく、美しい海に走りこんだ。今、この景色の中にいることが気持ちいい。浜辺の岩陰に座り、このエメラルドグリーンの海を眺める。いつまでも眺めたくなる。
日本最南端の場所「高那崎」
宿でレンタバイクを借りて向かうは「高那崎」。一般人が到達できる日本最南端の場所だ。港からおおよそ15分ほどで到着した。
ここには日本最南端の碑が立つ。碑の入口には、日本全国から集められた石を使って作られた道がある。道は蛇を模して作られており、どこから持ってきた石かわかるようにされているのが面白い。
そしてついに日本最南端に立つ。感動だ。この遥か南は、もう異国の地。普段見ることができない、深く青い海の色が、その実感を高めてくれる。最南端の碑の先には、岩場があり、海に没している。本当の最南端はその海辺である。行けるところまで、海に近づいてみることにする。
青い海は荒々しく、島の断崖を削り取り、雄大な景色を作り出していた。崖の上に、島を周回する道路に沿って立てられている電柱に、この場所にも人の生活があることを思い出させる。
吸い込まれそうな深く美しい青色をした海と、その上に浮かぶ日本で一番南の島。岬に立っている建物は、南十字星を観察できる天文台だ。
ここは本当に日本なのだろうか。美しい自然と牧歌的な景色に囲まれたこの島は、遠い異国の地のように思えた。
ニシ浜の美しいビーチがあった島の北側とは全く違い、南側には荒々しい崖と深い海が広がっていた。与那国島もそうだったが、島の南側はとても荒々しく、断崖絶壁がそそり立つ。そして、島の人の暮らしの中心は、北側にある。南国に吹く風は、島の南側に厳しい自然をもたらしているのだろうか。そして、この南風が運んでくる空気は、遠い異国の匂いがした。
波照間島の南国風景をツーリング
青い海へと続くサトウキビ畑の中の道。海の向こうに見えるのは西表島だ。
灯台へと続く道。遠い知らない異国のようだ。それでもって、昔に通った道のような。初めて見る道だが、どこか心の中にあるなつかしささえも引き出される景色だった。
コート盛の近くに広がるサトウキビ畑。風に吹かれて波打つ畑は、まるで緑の大海原のように見えた。
高那崎で日本で一番南の場所を踏みしめた後、島内をレンタバイクを気ままに走らせる。島の西側には与那国空港があった。小さな空港だ。空港の周りには、ヤギが放牧されていた。島の北側は、海を見下ろす畑が広がる美しい光景だった。
島を一回りする「島一周道路」は原付ならものの15分で1周してしまう。小さいけれど、濃密にいろいろなものが詰め込まれた島の生活と景色があった
レンタバイクを宿に返し、島を抜ける準備をする。それでもまだ、出航まで時間があったので、今度は歩いて宿の近くを散策する。
サトウキビ畑の中の道。大海原を渡ってきた青い風が、深い緑のサトウキビの葉を心地よい音を立てて揺らす。この道の先はどうなっているのだろう。この先にはどんな景色があるのだろう。風に誘われるように、先へ先へと歩いていきたくなる。
時間となり、船に乗った。離れていく美しい南の島。滞在時間はほんの22時間。もっと長く居たかった。日本で一番南の景色が、こんなに美しいと思わなかった。