与那国島ダイビング【日本最南端の青い海】

日本最西端の宿「はいどなん」で朝、目が覚める。窓から差し込む明るい光がまぶしい。
台風は?部屋から出て、外を見る。空は気持ちいいほど晴れ渡っている。相変わらず、風は強いが・・・
朝食の時間の天気予報。与那国島への台風の直撃は免れ、台風は遠ざかっている。しかし、暴風の余波は強いとの事だ。
今日は飛行機が欠航のようです。宿の人から宿泊者にそう伝えられると、食堂内がざわめいた。
天気がいいので海に潜れるかと少し期待していた。この時期、海底遺跡のある島の南側は、夏の南風の影響で潜れる日は少ない。そのため、海底遺跡に潜れない可能性は覚悟していた。台風が通り抜けているなら、島の北側は潜れるのではないだろうか。
しかし、今日は飛行機が欠航になるくらいの風なので、もう船は出せないだろう。外を見ると、遠くの海には白波がいっぱい立ち、かなり荒れている。飛行機の欠航を知った旅人のざわめきの中、僕は今日のダイビングをあきらめる気持ちの整理がついた。
さて、そうなると、今日丸1日時間がある。まずはゆっくり朝食を楽しもう。そう思っていると、宿の方から電話が入ったと呼び出される。
電話の主は、今日ダイビングでお世話になるショップの方。中止の電話をわざわざしてきてくれたのかと思っていると・・・
「今日、船出しますよ。早く来てくださいっ」
「えっ」
「こんな時でも、潜れるんですかぁ~」
もしかしたら、陸に近い場所で波の穏やかなポイントがあるのかも知れない。あきらめていただけにあって、ダイビング可能の連絡はとても嬉しかった。が、それと同時に本当に大丈夫なのかという不安もあった。
急いで荷物をまとめ、宿をチェックアウトする。歩いて5分ほどのところに、ダイビングサービスのショップがある。
ダイビングでお世話になるのは、与那国ダイビングサービス(YDS)
民宿「よしまる荘」も併設しており、今日の宿はここだ。
ショップに到着するとまずは荷物を預け、急いでダイビングの準備をする。よしまる荘のチェックインはダイビング後だ。
着替えをすませ、持参した機材を用意し(ひとり旅にジャマだったのでほとんどレンタル)、集合。ここで、ブリーフィングが行われる。
本日の僕のバディは、同じく一人旅で与那国を訪れている女性。「よろしくお願いします」簡単に挨拶をすませると、乗船する。
港のすぐ近くにショップがあるので、船まで徒歩1分なのはありがたい。
YDSの船は40人近く乗れる大型のクルーザーだ。これなら、多少の海の荒れも大丈夫そうだ。
今日は台風直後にもかかわらず、僕を含め10人近くの3パーティーが乗船していた。ゆっくりと船は久部良の港を離れる。

日本最南端の絶景を眺めながらのクルーズ

与那国島の青い海

内湾を航行中の船から見る西崎。荒々しい岩と深い緑、そして青い海が織り成す景色はとても美しい。その景色に見とれていると、少しずつ船の異常を感じ始める。船が揺れ始めた。
船の進行方向を見ると、もうすぐ内湾を抜け、外海に出そうな場所にきている。その外海には激しく波が立っている。
えっ?もしかしてこんな荒海にでるんですか??

与那国島西崎

日本で一番西の場所、西崎。ここが日本の最果ての陸地だ。青い波に激しく洗われている。
外海に出たとたん、船は何度も大きく飛び跳ねる。もうカメラを構える余裕はない。
船が激しく揺れるので、座ると気持ち悪い。船にしっかりと捕まり、振り落とされないように立ちながら、船の揺れに合わせて体を水平に保つ努力をする。
しかしどんどん気分が悪くなってくる。早くポイントにつく事を祈りながら、美しい与那国の海の景色で気を紛らわせた。

与那国島の青い海

海底遺跡を是非この目で見てみたい。そう思って訪れた与那国。
しかし夏場は南風のために、島の南側にある海底遺跡に潜れる可能性はぐんと下がる。しかも、今日は台風の余波で石垣島への飛行機が欠航になっている。そんな日にはやはり、海底遺跡には残念ながら潜れない。
比較的波の穏やかな島の北側のポイントへ。穏やかとはいえ、エンジンを止めると、一気に波の影響を受ける。右や左へ上へ下へ・・・船は木の葉のように揺れる。
ううう・・・気持ち悪い。そうなんです。僕は船酔いする人なんです。
フェリーでも酔わないし、小さな船でも酔わない。でもなぜか、ダイビングする時に限って酔うんですね。大型タイプの船ならへっちゃらなんですが、漁船チャーターやこれだけ揺れる日は困った人になってしまいます。
さて、ボートダイブには基本的に2つの方法がある。ひとつはアンカー(海底にロープを固定したもの)を使用して潜る方法。ロープがあるので、潜行や安全停止が楽にできる。
もうひとつはドリフトダイブ。ロープなしで潜行し、浮上した後は、追っかけてきた船に回収してもらう方法だ。
与那国では基本的にドリフトダイブで行われる。安全停止や潜行はとりあえずできるようになっているので心配はないのだけど、このうねりの中に身を沈めるのは少し不安だ。
とはいえ、もう船の上にいるのはもう我慢できない。水面の上にいると、いやというほど水に揺らされ、気分が悪くなる。ここは早く、水の中に潜ってしまうに限る。潜りさえすれば、この揺れから解放されるのだ。
さっさと装備をつけ、レギュレーターを咥える。今回、初導入となる、ハウジングを装備させたデジカメをBCのポケットに入れる。
インストラクターの指示が出たらすぐ、バックエントリーで青い海に身を放り込む。
水の中に背中から落ちる。大きな水の音の後、しばしの静寂と青い色に包まれる。そして、水面の上に浮き上がる。
揺れる。揺れる。やはり水面は気持ち悪い。できるだけ水の中に体を入れるようにし、インストラクターの潜行のサインを待つ。そして、潜行。BCのエアを抜き、青い水の奥へとジャックナイフで逃げるように潜行を開始。
一面の青い色。そして、静寂の世界。
降り注ぐ青い色が、海の中をゆらゆらと照らしている。自分の吐き出すエアの音しか聞こえない、静かな静かな青い世界。
ゆっくりと海底に向かって下りていく。水面からでも海底はよく見えている。
まるで、空を飛んでいるかのよに錯覚する気持ちいい潜行だ。
やがてゆっくり海底に到着する。
透明度は予想していたよりも良くない。台風直後で大分水がにごっているのだろう。
それでも透明度は25mはある。僕のホームは串本だが、串本で透明度25m越えたら、万々歳だ。贅沢は言えない。
与那国は大物の宝庫だ。ハンマーヘッドやバラクーダー、ナポレオンなども見ることができる。海底遺跡はダメだったが、大物に期待しよう。

与那国島の青い海へ大物を探して1本目のダイブ!

与那国島のタテジマキンチャクダイ

・・・結論が先になりますが、今回見た一番の大物は、このタテジマキンチャクダイ。串本で見たときは感動だったが、与那国で見てれてもなぁ・・・なんだかついてなかった。

与那国島ダイビング

魚もあまり海中を泳いでおらず、根などについていた。台風の影響で、海が荒れたから、避難していたからだろうか。海の底の岩場には、いろいろな魚がいた。

与那国島ダイビング

ニセクロスジギンポが群れをなしていた。これだけいっぱいの魚がいるのに、大きいのはなかなかいない。
大きい魚がダメなら、地形だ。与那国の海には、昔の鍾乳洞が沈んだ場所もあり、複雑な地形になっている。地形派ダイバー大喜びの場所だ。僕も地形派なので、地形を楽しむことに専念しよう。

与那国島ダイビングWアーチ

ポイントの名前にもなっている「Wアーチ」をくぐる。海底の岩がアーチになっていて、その下をくぐることができる。なんだか、洞窟を探検しているようで、とても楽しい。水の中は、無重力状態なので、空を飛ぶように洞窟の中を探検できるのも、また面白い。

オイランヨウジ

岩場でオイランヨウジを発見する。マクロ(小さな生き物)はあまり好きではないが、海にはいろいろな命があるものだと、改めて感心する。

与那国島ダイビング

海底から見上げる与那国の海。水面から、神秘的な透き通った青い光がカーテンのように降り注いでいる。とても幻想的な世界。何も聞こえない中、ダイバーが吐き出すエアの音と、魚が岩についた藻をついばむ音だけが聞こえる。青い母なる海の中で、命が育まれていることを実感する。
さて、与那国の海を堪能したら、浮上し、安全停止に入る。安全停止とは海面に出る前に、水深5mで約5分、停止する事。減圧症の予防のためで、これを怠ると、そのまま病院送りになってもおかしくない。
BCと肺の中の空気を調整し、水深を一定に保つ。インストラクターのダイブコンピューターが減圧完了のアラームを水中に発する。浮上の合図がでる。
が、できるだけ後に浮上するようにこそこそインストラクターについて行く。水面に出たら、また、船酔い地獄が待っている。
ただでさえ、ダイビング直後はタンクの圧縮空気のおかげで窒素酔いになっているのだ。潜水前とは船酔いのレベルが違う。
一番最後に浮上する。が、ここがドリフトダイブの特徴。浮上しても船は近くにいない。ゆっくりと向こうからやってくる。
気持ちわるい。早く引き上げて走り出してくれ~。
なんとか船に上がり、機材を外す。が、もう限界だ。
海から全員上がったことを確認し、3.2.1ハイッエレエレエレエレ~(T▽T):*・’+,。
あああ、きれいな海を汚しちまったぜ。せめて、お魚さんのエサになればいいんだが・・・
そう思っていると船は走り出した。
吐き出したこと、窒素酔いが収まったこと、船の揺れがなくなったこと。それらが作用して、何とか僕の体調は快方に向かっていった。

1本目ログ

ポイント:与那国島馬鼻Wアーチ
通算潜水回数:23
天気:晴れ・強風
透明度:25m(与那国島では悪い)
透視度:25m(与那国島では悪い)
水中温度:27℃
最大水深:27m
タンク圧力:190→90
潜水時間:38分

見た魚:オイランヨウジ・ナンヨウハギ・オオモンハタ・タテジマキンチャクダイアカスジカクレエビ・クダゴンベ・コショウダイ など

1本目のダイブを終え、ふらふらになって船からショップに戻る。ここで昼食。メニューはスパゲッティ。
陸に上がって気分も回復し、なにより、胃の中が空っぽになった事もあり、おいしく頂いた。
今回、バディを組むことになったOさんと、昼食時に初めて自己紹介する。あわてて1本目を潜ったので、簡単な挨拶しかしていなかった。
すると、なんと、彼女は僕と2つ隣の駅に住んでいることが判明した。こんな、日本の一番西の島で、ご近所さんに偶然会えるとはびっくりだ。地元ネタで、ものすごく話が盛り上がった。
さて、午後からは2本目のダイブだ。次のポイントは祖納沖だ。
まだ風も強いので、やはり島の北側のポイント。そして、エントリーするまでは、やはり、強烈なうねりとの戦いになる。1本目と同様に、海の中に逃げるように転がり込む。

与那国2本目のダイブはダイナミックな地形を楽しむ

与那国島ダイビングLアーチ

まず、Lアーチという、半洞窟へ潜行する。地形派の僕にとっては、この上なく楽しい。亀裂の中に潜っていくのは、まるで探検ドキュメントを体験しているようだ。

与那国島ダイビングLアーチ

Lアーチの上部を見上げる。普段の生活では絶対に見ることのできない、神秘的な青い色。頭上に多くの生き物が行き交う、立体的な世界。

与那国島ダイビング

幻想的な青い光が、水面からカーテンのように降り注いでいる。相変わらず、水面は激しく揺れている。浮上するのが嫌になるくらいだ。しかし、そのおかげで、美しい青い光が、幾重にも揺れながら交錯し、海底に降り積もる。それはまるで、幻想的なショーを見ているようだった。いつまでもここで、この自然の美しさを眺めていたかった。

与那国島ダイビング

大物には出会えなかったが、突然目の前に小魚の群れが現れた。ゆっくりとその群れの近くまで近寄る。こちらが接近しても特に逃げることなく、優雅に泳いでいる。命にあふれた世界。母なる海。

与那国島ダイビング

海中に、タンクを叩く金属音が響き渡る。これは、インストラクターが参加者を呼び集めるサイン。
ふと見ると、インストラクターがかわいいヤツを捕まえている。ヒトヅラハリセンボン。なんて間抜けで、愛嬌のある顔なんだろう。思わず、マンガのような、垂れ下がっている涙を画像修正ソフトで落書きしてみたくなる(笑)
危険を感じると体を膨らませ、全身トゲだらけになり、毒ももつため、捕食されることは少ない。そのため、その動きはとてもゆっくりで、地上の生き物である人間にも水中で簡単に捕まえられる。そう、人間だけは、あなたを『美味』として、食べるのですよ。
放してやると、えっちらほっちら逃げていった。どうやら人間には身の危険を感じたのだろう。先ほどとは違う、なかなかのスピードだ。彼は命の危険を感じ、一生懸命必死に逃げているのだろう。しかし、不器用に泳ぐその姿はとても滑稽で、愛らしく、思わず笑いがこぼれてしまった。
2本目のラストを飾るのは、四つ穴という洞窟。暗い洞窟の中に降り注ぐ青い光。よく、ダイビングの雑誌などを見ていると、必ず載っている写真。今、その世界を実感している。言葉はない。だだ、その現実離れした、幻想的な世界を、時間がたつのも忘れて、楽しんだ。

与那国島ダイビング
与那国島ダイビング
与那国島ダイビング

楽しい幻想的な世界を楽しんだ後は、過酷な現実世界が待ち構えていた。船に戻った瞬間、窒素酔いと船酔いのダブルパンチ。
はああ、すいません。宿のおかみさん。あなたが作ってくれたスパゲッティ、お魚さんに差し上げます。
エレエレエレエレ(T▽T):*・’+,。
ふと、横を見ると、バディのOさんも・・・
エレエレエレエレ(T▽Tpq):*・’+,。

やはり今日の波、初心者にはきついわ・・・
船はショップがある久部良の港には戻らず、近くの祖納の港に寄港した。
「3本目はここから船出すよ~」とインストラクター。
僕とOさん、一緒に・・・「3本目は、もう勘弁してくださいっ」
あまりもの波の高さに、さすがにもうギブアップだ。インストラクターや、他のスタッフは残念そうにしていた。
さすが、沖縄の海人(うみんちゅ)、屈強だ。
その日のショップのログには、こう書かれた。

3本目。波が高くなったため、めげて休み
はい、その通りです。めげてしまいました。

2本目ログ

ポイント:与那国島・祖納沖
通算潜水回数:24
天気:晴れ・暴風
水温:28℃
透明度:25m(悪い)
透視度:25m(悪い)
潜水時間:40分
最大水深:26m

与那国ダイビングサービス・民宿よしまる荘

住所: 沖縄県八重山郡与那国町字与那国3984-3
電話: 0980-87-2658
交通: 久部良港前 (空港、フェリー乗り場より無料送迎)
部屋数: 洋室4室、和室4室、大部屋1室
イン: 15時
アウト: 10時
温泉: 男内湯1・女内湯1、シャワーブース
設備: テレビタオル・バスタオル・エアコン

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