植田正治美術館と福山雅治写真展 【鳥取県・大山】

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山陰地方を代表する名峰で日本百名山のひとつでもある鳥取県・大山。伯耆富士とも呼ばれるその姿は山麓から見上げるととても美しい。そんな美しい大山の姿を一望する山麓に建つ美術館が「植田正治写真美術館」だ。
以前のことだが、あまり美術館を巡ることのない僕たち夫婦だが、珍しく、写真には何も興味もない妻が大山登山の折りに絶対に寄りたいとの強い要望で、訪れることになった。いったいどういう風の吹きまわしかと思っていたが、理由はすぐにわかった。
この美術館で、歌手・俳優の「福山雅治」さんが出展する写真個展がちょうどその時に開かれていたのだ。長年のファンである妻はこの期間限定イベントを見過ごさなかった。
この美術館から見る大山はとてもきれいだと聞いていたので、僕もその大山を目当てに立ち寄ってみることにした。

大山の自然に溶け込むスタイリッシュな空間の植田正治美術館

植田正治美術館

「植田正治写真美術館」の正面。コンクリート打ちっぱなしのモダンな設計だ。大山の山麓の田園風景に突如として現れる近代建築は、とても目をひくモニュメントでもある。
さて、ここで「写真家・植田正治」さんがどのような人かを紹介。鳥取県出身の世界的写真家で2000年没。鳥取の地を離れず、鳥取砂丘や弓ヶ浜で多くの写真を撮影している。山陰の空や砂丘を背景に被写体の人をオブジェのように配して撮る独特のスタイルで、世界的にも注目された写真家だ。
美術館なので、作品を撮影することはもちろん禁止。じっくりと鑑賞させていただく。広い砂漠のど真ん中に、タキシードを着た男性が突っ立ち、その手前に遠近感を利用した人が立っている。美しい風景の中に、衣装・立ち位置・小道具などすべて計算尽くされたその写真は、演出された写真。それだけに一瞬を切り取った写真ではなく、考えて用意して作り上げられたクリエイティヴな空間が切り取られている。それはまさに、創造であり、写真美術というものだった。写真には、こういう撮り方があるのか。そこにある風景ばかりを切り取っていた僕にはとても斬新で衝撃的な内容だった。

植田正治美術館

ではなぜこの美術館で福山雅治さんが出展しているかについて。福山雅治さんは写真を撮ることでも有名だが、その影響はこの植田正治氏との出会いが大きいとされている。その出会いは、アルバムジャケットの撮影をスタッフの紹介で植田正治に依頼したこと。はじめはアルバムジャケットに氏の写真が使えるのかと心配されたそうだが、その完成度の高い写真に以降のジャケットの多くを植田氏に依頼することになる。また、その後は福山雅治さんは植田正治氏に師事することにもなり、親交を深めたといういきさつがあるそうだ。
福山雅治さんの写真は、世界中を旅した時のものがほとんど。基本は縦写真で白黒。どの写真もとても自然体で気取ったものはない。師匠の植田氏の写真は計算されつくられた写真だが、弟子の福山さんの写真はつくられた写真ではなく、そこにあるがままのものを切り取る写真。しかし、師匠の「計算」はしっかりとたたきこまれているようで、普通に切り取る風景や人物はすべて計算しつくされているように、とても芸術的。一瞬を計算して切り取る。そんな師匠の技を自分なりにアレンジした芸術を福山さんは確立しているように感じた。
同じ目の前にあるものを切り取るだけでこんなに違いがでるのか。モデルを用意しないといけないような人手のかかる師匠の写真は僕たちがまねできない「非日常」の世界。しかし、弟子の福山さんは師匠の技を自分たちと同じ「日常」というステージに持ち込み、その違いを見せつけてきた。

館内からの大山の眺めが秀逸すぎる

植田正治美術館からの大山

この美術館を訪れる人の多くは一眼レフをもった方々。老いも若きも、男も女も、日本人も外国人も・・・
写真に興味のあるかたも多いだろうし、妻のように福山雅治さんのファンとも思われる方も。美術館の中はもちろん写真撮影禁止だが、許されている場所がある。それが、この大山を美しく撮れる「福岡堤」という貯池。
コンクリートの壁に囲まれた池の向こうに見えるのは日本百名山の大山(1729m)。残念ながらこの日は天気が悪く風も強く、美しい風景にはならなかった。天気が穏やかだとこの池に逆さ大山が映り、取り囲むガラスに周辺の田園風景が映り込みとても素晴らしい風景になる。
また館内にはカメラの内部を模した映像展示室ある。世界最大のカメラレンズから写された大山の映像を楽しむことができる。

植田正治美術館からの大山

多くの人がここで写真を撮る。一眼レフを構え、本格的に撮る人もとても多い。ちょっと僕も影響を受けたのでモノクロで撮ってみた。確かに、白黒写真だと、カラーと違いその表現は難しいが、アートっぽく感じる。

植田正治美術館

今回開催されていた展覧会は「PHOTO STAGE ~記憶の箱庭~」(2007.7.28-9.24)
2006年に六本木ヒルズで開かれた展覧会を植田正治写真美術館バージョンとして開催したものだった。
カメラの撮り方一つでこんなに写真が変わってくる。とても写真が面白いと思った。

大山の観光と宿泊情報

大山の宿泊の選択肢は多くあります。
まず、大山山麓にはリゾートホテルやペンションが多くあります。 森の香りを感じる大自然の中でゆっくりと滞在できます。
また、車で20分走った場所にある「皆生温泉」は海沿いに旅館が建ち並ぶ山陰屈指の温泉地。 美味しい海鮮はもちろん、海を眺めながら入れる温泉が自慢の宿がずらりと並んでいます。フィールド近くの森の中か、海の近くの温泉か好きな場所に泊れるのも大山付近の魅力です。

■ 皆生温泉・大山のホテル・宿一覧

植田正治美術館

住所: 鳥取県西伯郡伯耆町須村353-3
電話: 0859-39-8000
休み: 火曜(祝日の場合は翌日休、展示替えによる休館あり、12~2月は休館)
営業時間: 9:00~17:00 (入館は16:30まで)
料金: 大人800円・大学・高校生500円・小中学生300円
駐車場: 100台・無料
交通: 米子自動車道 米子IC、溝口ICより車で約15分

【投稿時最終訪問 2007年9月】

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