ピナイサーラの滝【西表島・シーカヤック】

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熱帯を思わせる大自然が残る沖縄八重山諸島の西表島。島のほとんどがジャングルに覆われており、その中を流れる川には多くの滝がある。そんな滝の中でも沖縄県最大の落差を誇るのが「ピナイサーラの滝」。海に近い場所にあるが、道なきマングローブ林の奥にあるピナイサーラの滝に向かうにはシーカヤックが便利だ。
シーカヤックにて「ピナイサーラの滝」を訪れるにはツアーに参加するのが一般的。今回お世話になる「村田自然塾」の方が宿まで車で迎えに来てくれた。村田自然塾の車は西表島の大自然の中を走り、船浦海中道路の脇の路肩に停車する。

現地ツアーに参加してカヤックで目指すピナイサーラの滝

ヒナイ川河口

ピナイサーラの下流となるヒナイ川。マングローブか覆う川の河口には堤防のように道路が走っており、ここからシーカヤックをスタートする。
まず堤防の近くの穏やかな場所でシーカヤックの簡単な乗り方の説明を受ける。シーカヤックは安定度は高い乗り物なので、初心者でも比較的安心だ。ただし、絶対に転覆しない保証はないので、全員ライフジャケット着用。財布や携帯は防水バックに詰める。デジタルカメラはハウジングを装着する。他の参加者もハウジングや防水カメラを用意している。防水対策は完璧だ。実際、転覆した参加者はいなかったが、この防水対策が必要となる事態がこのツアーでは起こる。
講習終了後、いきなり出発。講習と言っても注意と基本的なパドルの使い方だけ。あとは「慣れろ」といわんばかりに、いきなりの実践だ。

西表島シーカヤック

ここは道路が堤防のようになっており、波はほとんどなく、初心者でも安心して乗れるところだ。はじめはパドリングもぎこちなかったが、10分もすれば広いところでは何とか様になってきた。パドルの操作に慣れてきたころ、目指すピナイサーラの滝が見えてきた。

西表島ヒナイ川

目的地はピナイサーラの滝。沖縄の言葉で「白い髭のような滝」という意味。落差50mで、沖縄県最大の滝だ。
ピナイサーラの滝に行くには滝のあるヒナイ川をカヤックで遡る。引き潮になれば、何箇所か海を渡れば歩いていくことは可能だ。しかし、ここへの遡上は西表島でも人気のカヤックコース。カヤックに乗らない手はないでしょう。

カヤックで探検するマングローブ林

西表島マングローブ林

カヌーをこぎ、河口に近づいていくとマングローブ林が迫ってきた。マングローブは汽水域(海水と淡水が混じる水域)に生息する植物の総称。西表島では「オヒルギ」や「メヒルギ」が多く生息している。
ガイドの誘導で、ヒナイ川を遡上する前に、マングローブ林が生い茂る小さな支流中に入っていく。初めて間近に見るマングローブ。写真では洪水の川を船で行くように見える。しかし、その川の中に張り巡らされた植物の根、水の上に広がる緑のトンネル。本当に「秘境」に迷い込んだようだった。

西表島マングローブ林探検

どんどん川幅はせまくなり、もうカヤックが進めないところまでやって来た。まだ十分にパドリングもできないので、こんなににせまいと方向転換もできない。しかしここは川。ゆっくりと水が流れている。カヤックはゆっくりと林の奥から海へと流されて戻されていく。
少し広いところに出ると、ガイドの指示で方向転換する。さあ、本流ヒナイ川を目指し、全員がパドルで水をかき始める。マングローブ林から抜け出した一行のカヤックは、湾の奥へと再び進む。そこは川がマングローブの林をかきわけ、ゆっくりと大きな流れを海へと押し出していた。
ゆっくりとその大きな流れに入っていく。少し流れを遡ると、川は左右に別れている。左手がヒナイ川、右手がマーレー川だ。ヒナイ川の上流に今回目指すピナイサーラの滝がある。

西表島ヒナイ川

ヒナイ川に入り、マングローブ林に覆われたジャングルの中のを進んでいく。川の両側にはマングローブの林が深く生い茂っている。

一夜だけ咲く幻の花「サガリバナ」

西表島マングローブ林

しばらくすると、前のほうから、何か白いものが流れてきた。ひとつではない、いっぱい流れてきた。

西表島サガリバナ

これはサガリバナの花だ。サガリバナの花は夜に咲く。そして朝が来ると同時に散る。熱帯に咲く神秘的な花だ。

サガリバナ

朝、山の方で一斉に散ったサガリバナが、ヒナイ川に流されて、今ここまでたどり着いたのだ。西表島の川では、この時期、朝一番に入ると、サガリバナが流されてくるところに出会えるのだ。
なんて神秘的な光景なんだろう。いっせいに散った儚い花が、流れに身を任せ、今ここで出会ったわけだ。言葉にできない感動を覚える。
サガリバナが流れる川を遡っていくと、どんどん川幅が狭まっていく。急な角度で何度も川が蛇行し始める。突然目の前にピナイサーラの滝が現れる。

カヤックの次はジャングルの中をトレッキング

ピナイサーラの滝をめざす

今まで遠くに見えていただけの滝が、すぐ目の前に迫っている。もうすぐ滝の真下にたどり着きそうだ。しかし、川はどんどん浅くなってきた。ジャングル独特のにごりがある川だが、底が見えるくらい浅くなってきた。目の前には大きな岩がせり出している。これ以上進めるのか?と思っていると、ガイドの指示で、川岸に着岸する。
岸から張り出している木につかまり、水の中に入る。とは言っても、ふくらはぎくらいの深さだが。
カヌーをロープで陸につなぎとめる。そしてついにジャングルの中に上陸する。ここからは陸路にて、ピナイサーラの滝を目指す。
僕たちはカヤックを係留し、陸へとあがった。ここから、陸路でピナイサーラの滝を目指す。まずは、山を登り、滝の落ち口を目指す。そこで景色を眺めながら、ランチをとる予定だ。

サキシマスオウ

ふと川辺を見ると、不思議な形の木がいっぱい生えている。サキシマスオウという木だ。マングローブ林の後背地の湿地帯などに生息する木だ。高さ10m程の木だが、その根っこが特徴的だ。
「板根」という板状に発達した細い曲がりくねった板のような根は、本州の植物では、まず見ることができない。とても不思議な木との出会いをしばし楽しむ。
そしてついに出発しようとしたとき、ガイドの人が大声を上げる。どうやら知人と鉢合わせしたようだ。
ガイドの知人は強引に潮の引いていない海やマングローブ林を渡り、滝へと続く道まで来たようだ。そのためか、何箇所かクラゲに刺されていた。ガイドが所持していた薬を傷口に塗り、治療を開始する。

セマルハコガメとサガリバナ

治療の間、そのあたりをウロウロすることにする。
すると、先ほど川面を流れていた神秘の花、サガリバナが地面に落ちているのを発見する。薄いピンク色の花。花びらというより、細い繊毛がいっぱいついている、かなり変わった花だ。
サガリバナの花を観察していると、ゴソゴソと地面で動くものが。も、もしかして、沖縄名物の毒蛇、ハブ??と思ったら亀が出てきた。
その亀はセマルハコガメと、ガイドが説明してくれた。実はこの亀、外敵に襲われると、甲羅の腹側が折れ曲がり、完全に蓋を閉じて体を防備する特徴がある。要するに、頭や足、手がひっこんだ場所まで甲羅をかぶせて、完全防御するらしい。しかもこの亀は天然記念物。
貴重な生物をこんなに簡単に間近に見れていいのか。早速ちょっと亀さんとお戯れになろう。ゆっくり甲羅をつかむ。多分すぐ引っ込んでしまうだろうなぁと思っていると、なんとこの亀、おしっこをぶっ放すという、思ってもいない反撃にでた。
思わぬ攻撃にひるんだ隙に、完全防備体制に入った。見事だ。見事すぎる・・・
丸まった状態で観察する。確かに普通の亀と違い、完全にフタがされている。そのうち、危機がないと思ったのか、セマルハコガメは甲羅から出てきた。

貴重な植物と動物とのふれあいを楽しんだあと、ついにピナイサーラの滝を目指して出発する。ここからはジャングルの中、滝の上部を目指して山を登っていく。
ジャングルの中の山道を歩き出してどれくらい経ったのだろうか。道はきちんとついているが、足元はスポーツサンダルなので登りにくい。高温多湿のジャングルの中では汗が吹き出してくる。なかなかつらい山道だ。
ジャングルの木々の間を潜り抜けると広い河原に出る。ふと川の流れる方向を見ると、そこにはジャングルはなく、青い空が広がっている。
ついに来た。ピナイサーラの滝の上に到着した滝口に近づくと青い空の下、緑色のジャングルと瑠璃色の海が広がる風景が一望できる。

ピナイサーラの滝の上から眺める西表島は絶景!

ピナイサーラの滝上からの眺め

滝の上に立つと、西表島の深い森やサンゴ礁に囲まれた青い海を一望できる。この滝から流れ落ちる水が海に注ぐ河口は、シーカヤックをスタートした海中道路だ。青い海の向こうには「鳩間島」が見えている。

ピナイサーラの滝上部

ピナイサーラの滝の落ち口。ここから落ちた水は川を下り、ジャングルの向こうの青い海に注がれる。ジャングルを縫うように流れる川をカヤックで遡ってこの滝の上まで登ってきたのだ。
ピナイサーラの滝からのこの絶景を楽しみながらランチを頂く。火照った体を滝へ流れ落ちる親善の川の水で冷やしたりしながら、思い思いの時間を過ごす。

ピナイサーラの滝から滝壷を見下ろす

おそるおそる滝の下をのぞいて見る。写真ではわかりにくいが、落差は50m。こわい、こわすぎる・・・
写真の左下の草の間に少し色のついた豆粒みたいなものが見えます。それ、人です

ピナイサーラの滝からの眺め

どれだけの時間がたっただろうか。ふと見ると、出発した場所が引き潮のため、干潟のようになって来た。潮が引くと、歩いてこの滝まで来ることができると聞いていたが、本当だなあと思った。干潟の中にも川の流れは残っているので、帰りはそこをカヌーで進むらしい。
十分に景色と食事を楽しんだあと、今度はピナイサーラの滝の下へと向かう。また来た道を引き返す。道を下りながら、遠くに雷の音がするのを聞く。もしかしたら、夕立が来るかもしれないなぁと感じた。しかし、それはこれからおきる大自然の驚異の幕開けの合図となることを、まだ僕は知る由もなかった。
ピナイサーラの滝の上から山を下り、カヌーを降りた地点まで戻ってきた。ここから川沿いに歩き、ピナイサーラの滝の下を目指す。
上流に行くにつれ、川の流れの中に多くの岩が頭をのぞかせはじめる。もうこれ以上カヌーで進むのは無理だ。しばらく歩くと雨がついに降り始めた。雨に濡れるジャングル、まさに熱帯雨林の秘境に迷い込んだ感じだ。その秘境の奥から、雨とは違う激しい水の音が聞こえ始める。着いた、ピナイサーラの滝の滝つぼだ。

ピナイサーラの滝にうたれて水遊び

ピナイサーラの滝

50mの高さから降り注ぐ滝はまさに圧巻だ。滝の下に立つと、すごい水しぶきが飛んでくる。
ガイドがライフジャケットを係留しているカヌーから持ってくるよう、予め指示をしていた。早速、ライフジャケットをつけ、滝つぼで浮いてみる。
おおおお、気持ちいい。はるか上空から水しぶきが降り注ぎ注ぎ、体がクールダウンされる。
今度はライフジャケットを脱ぎ、素潜り。水深は深いところで3mくらいだろうか。しかしジャングル特有の水のにごりで視界は無し。

ピナイサーラの滝にうたれる

滝つぼで遊んだあとは、今度は滝にみんなでうたれる。滝つぼから岩をよじ登ると、50m上空より放たれた大量のシャワーを浴びることができる。

ピナイサーラの滝に打たれる

ピナイサーラの滝に打たれた感想は・・・・
痛いっ。すごい勢いで降ってくる滝の流れはとにかく乱暴だ。水圧で体が下に持っていかれそうになる。上から何か物が落ちてこないか心配だが、さっき上の様子を見て、変なものは流れてこさそうになかったので、多少は安心だ。ともあれ、これだけ落差のあるな滝にうたれるという、超ワイルドな経験ができ、とても楽しかった。

ピナイサーラの滝

これだけローアングルで滝を写す機会も滅多にないだろう。しかし、滝にも勝るとも劣らない自然の驚異が、はるか上空から今まさに襲いかかろうとしていた・・・

スコールに打たれながら目指すゴール

西表島のスコール

ピナイサーラの滝つぼでの水遊びを十分に楽しみ、ついに帰路に着く。カヤックを係留している場所まで戻る。川に入り、ロープを外し、カヤックに乗り込む。
そしてスタート地点へと川を下ろうとしたとき、ついに来た。恐れていたものがついに来た。
「夕立」なんかではない。「スコール」だ。とにかく激しい。こんなに激しい雨は初めてだ。痛いわ、息ができないわで・・・

スコールのカヤック

とにかく参加者一同、激しい雨にうたれながら、黙々とと川を下っていく。

西表島ヒナイ川

川を抜け、内湾に戻ってきた。何とかこの頃には雨がやんだ。
出発した時と違い、内湾はすっかり潮が引いていた。所々地面が顔を出し、カヤックがすすめる場所も限られている。迷路のようになった干潟の海をガイドの先導で進んでいく。するとついにゴールとなる、海中道路が見えた。
しかし、また行く手を阻むものが。先程よりも激しいスコールがまた襲いかかってきた。痛いというよりも冷たい。7月の南国の島で、これほどまでも冷たさを感じるとは・・・

西表島スコール

ゴールはすぐそこに見えているのになかなか前に進めない。とにかく体温が無理矢理下げられていく。体の芯まで冷えていく。体がガタガタ震えだす。スコールはやみ、小雨になったが、体の震えはとまらない。
まいったなあ・・・と思っていると、ふと触れた海水が暖かい。もしかして・・・と思い、カヤックから海へ飛び込んでみる。
あったかぁ~い
なんと海はぬるま湯のように感じる。湯船につかっているような感覚だ。カヌーにつかまり、泳ぎながら進んでいく。
「海の中暖かいよ~」と言うと、他の参加者も海に飛び込み始めた。
道路の近くに行くと、もうカヤックがすすめる場所は残っていない。ひざ下までしかない深さのところをカヤックを引きながら歩く。
スタート地点に着くと、ツアー会社の車が迎えに来てくれていた。小雨の降る中、バンのハッチバックのドアの下で、順番に体を拭き、バンに乗り込む。こうして、大自然を満喫するツアーは幕をとじた。
本当に大自然の神秘や畏怖に触れた、生涯でも忘れられないイベントのひとつになった。しかしカメラや財布など、ちゃんと防水しておかなかったら、多分泣いていただろうなぁ・・・

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