冬の鳥取砂丘
「スタバは無いけどスナバはある」日本で最も人口が少ない県である鳥取県の知事の自虐ネタ元が、鳥取県を代表する観光地のひとつ「鳥取砂丘」。県庁所在地である鳥取市の東部に広がる南北2.4km、東西16kmの日本第二位の砂丘。国の天然記念物にも指定された広大な砂の風景。灼熱の砂漠のイメージとは程遠い、寒い冬の季節に訪れた。
冷たい北風が作り出す冬の砂丘の美
鳥取砂丘の駐車場は500円だが、ほんの少しだけ離れた土産店には「駐車無料」と看板が出されている。お言葉に甘えて、停めさせていただく。当然、駐車場代金以上のお土産やドリンクなどを購入する。
土産店が並ぶ前の道路脇からも砂丘に入れるようになっている。一歩砂地に足を踏み入れると、そこは海岸とは全く違う不思議な世界。
海に向かって、どこまでも砂の丘が続いている。日本海の海と一体となって、平面的な写真ではまったく距離感がつかめない砂丘。先を歩く人にモデルになってもらい、その広さを確認する。
日本海から吹き付ける強い北風が、砂丘に風紋を描いている。風が砂を巻き上げてできた模様が風紋。本場の砂漠のような見事な砂紋ができるのは稀だそうだが、それでも地表に描かれた風と砂のアートは見事。
砂丘の中に流れる水はまさにオアシス!
寒い北風が吹いていなければ、まさに砂漠。視界には一面砂の地面と寒空のみ。そんな砂の世界の中に、空の色を映した池が見えてきた。まさに砂漠のオアシス。
砂の丘の下、すり鉢状の地形に水がたまっている。蜃気楼が現れたり、ラクダを従えた商隊が休んでいるかのような場所。まさに砂漠のオアシスだ。砂漠と違い、付近の砂は水分を含んでグラウンドのようにも見える。冬の鳥取砂丘は雪に覆われて一面が真っ白になる事もあり、比較的踏み心地も固い。
砂漠の中に突如として現れた池。北風にあおられて、水紋を描くように激しく波立っている。
よく見ると、向こうの方から水はとめどなく流れてきている。不毛の砂の地にも、地衣類のような植物が定着している。伏流水か、河川の流れだろうか。おそらくこのすり鉢状の底の部分には水が常に流れるようになっていそうだ。砂漠でもない、まるで北極圏の短い夏を思わせる、ツンドラのような風景。
鳥取砂丘最高峰の馬の背へ砂の中を登る!
すり鉢状の池の真上には、砂の丘がそびえている。鳥取砂丘で最も高い場所である「馬の背」だ。高さは約47m。「背」の上を行く人が小さく見える。
さて、馬の背に向けて登り始める。おそらく本物の砂漠も、こんな上り下りがいっぱいあるんだろう。先日の雪を吸って締まっているとはいえ、砂地を登っていくのは大変。しかもかなりの急勾配。わざわざオアシスの池まで降りなければ、もっと緩やかなルートがあったのだが・・・
吹きすさぶ北風が、砂丘の砂を吹き飛ばしている。所々で砂吹雪が巻き上がり、砂粒手が鉄砲玉のように飛んでくる。これにあたると、なかなか痛い。このような砂吹雪が何度も何度も巻き上がり、この砂の絶景を造っているのだろう。
馬の背からは鳥取砂丘と日本海が一望
「馬の背」を必死に登る。馬の背に登る本来のルートを外れているので、勾配と崩れる砂の足元が体力を奪っていく。直登はさすがに難しいので、斜めに登り高度を稼いでいく。足元には先ほどのオアシスの池がどんどんと広がっていく。
馬の背の頂上、稜線部分に到着。内陸部を振り返る。右側が先ほど水辺まで降りたすり鉢状の池。写真中央が砂丘のメインの入口で、ここからまっすく歩けば、こんなにしんどい思いをしなくても馬の背の上まで来れる。
馬の背から眺める日本海。距離感はわかりにくいが、海までまだ距離はある。それでも海鳴りが大音響で響き、海を渡ってきた強く冷たい風が砂を伴い肌に突き刺さる。一面の何もない風景で、大音響の風が砂を体に叩き付けてくる。厳しい自然がとてつもない広がりとなって襲いかかってくる。そのスケールに、ただただ茫然と立ち尽くす。
50m近い高さの馬の背から海まではやはり50m近い下りになっている。しかし、一面砂と海しか無い何もない空間は距離感を狂わせる。まるで波打ち際にこしかけて、ゆらめく波を見ているかのように思う。しかし実際はここは海から遠く離れていて、波は人を飲み込むくらいに高く荒々しい。
海を斜めに見ると、ややこの砂丘の標高差が見いだせる。足元からは一気に海まで砂の斜面がずり落ちている。足を踏み外せば、転がり落ちていきそうだ。実際にこの斜面でスノーボードならず、サンドボードという遊びができるようだ。
鳥取砂丘は不思議な写真を生み出すキャンパス
鳥取砂丘の写真といえば、植田正治氏が有名だ。人気俳優の福山雅治さんが写真の弟子入りしたことでも知られている。植田氏の鳥取砂丘での写真の真骨頂はは、広大な砂丘で遠近感を利用した不思議な演出写真。小人を手のひらに乗せているように見えるような写真だ。せっかくなので、同行した上司や同僚にお願いして、そんな写真を撮ってみたかったが、とにかく風がきつい。風が巻き上げた砂丘の砂が容赦なく突き刺さり、痛いのなんの。とりあえず、そこら辺を歩く人を勝手に被写体にして、砂丘の広大さを表現してみた。
砂の斜面を一気に走って下り降りる!
広大なスケールと不思議な風景をいつまでも見ていたかったが、風がまともに叩き付けられる馬の背の頂上。さすがに長居はききつい。そろそろ「下山」するとしよう。しかし、普通に歩けるルートを歩いて降りていくのは面白くない。当然、馬の背に登る急斜面につけられていた無数の足跡。それをつけた人と同じことをするのだ。ここから一気に砂の急斜面を走り下りるのだ。
砂がクッションになってくれるので一気に40m近い標高差を下り下りる。病みつきになりそうな快感だ。オアシスを通り過ぎてもまだまだ惰性で走り続けていく。
振り返る馬の背。オアシスの上の急斜面を下りここまで一気に駆け下りてきた。靴の中はもう砂まみれだが、とにかく気持ちが良かった。通常は、写真右の緩やかな斜面を斜め右に馬の背へと登っていける。
砂丘の入口まで戻って来た。振り返る鳥取砂丘。人が小さく、遠くに見える広大な風景。分厚い雲から陽射しがこぼれ、最後に美しい砂の風景を見せてくれた。
ラクダや砂丘ならではのお土産も楽しもう!
鳥取砂丘の名物といえばラクダ。砂丘をラクダに揺られて進むのは、本当に砂漠に来た気持ちになれそうだ。だがラクダの乗車は1300円。ラクダとの記念撮影も100円~500円もかかる。夢の世界は遠い現実の壁の向こうにある。
砂丘の散策が終われば木の階段で鳥取砂丘の駐車場へ下る。ビジターセンターの付近では足の砂が落とせるようになっている。
さて、鳥取砂丘の食べる名物といえば「砂たまご」鳥取県地鶏の卵を因州和紙で包み、鳥取砂丘の砂で蒸し焼きして作られている。売店でその卵を砂の上で温めた状態で販売していたのでひとつ購入。白身にほんのりと焦げ目がつき、黄身がイモや栗のような食感になるそうだ。「そうだ」というのは、食べようと思ったが移動中に紛失してしまって食べられなかったから。せっかく買ったのに残念。今度砂丘に行ったときは、しっかりと頬張りたい。
最後に「スタバはないがスナバはある」は2015年初夏まで。この砂場の近くにもスタバができました。
■ 鳥取砂丘にほど近い温泉宿
鳥取砂丘
場所: 鳥取県鳥取市福部町湯山
電話: 0857-22-3318
休業日: なし
交通: 鳥取自動車道・鳥取ICより車で20分
料金: 無料駐車場: 320台(1回500円)
【投稿時最終訪問 2015年1月】