立山高原バス 【立山黒部アルペンルート】
立山黒部アルペンルート。それは、北アルプス、3000mを超える「立山」を貫いて、北陸・富山と信州・長野を結ぶ長大な山岳観光ルート。途中には「室堂」や「黒部ダム」といった見どころを擁する、日本一の山岳観光ルートといえる。そして、このアルペンルートは山岳観光だけでなく、北アルプス登山の重要な足と基地にもなっている。日本百名山として人気の高い立山(3015m)や剣岳(2999m)の懐へと一気に潜り込めるこの山岳ルートは登山者にもとても重宝される。
その西側・富山側の起点である「立山ケーブルカー」までは、JR富山駅から富山地方鉄道で約1時間で到着する。ここからアルペンルート最高所である室堂までは路線バスでアクセスするのだが、それは絶景ドライブだ。
立山ケーブルカーを降りるとそこはバス乗り場。バスの改札があり、ロープウェイに乗る際に発券された整理券のバーコードを通して改札を通る。10kg以上の荷物を持っていると手数料が必要。とはいえ、そんな大荷物になるのはテント泊の登山者の大型ザックくらい。荷物は申告制だが、山小屋泊の登山者の荷物はほぼノーチェックだった。
美女平から雲上の世界に向がって出発するバス
バス停には何台も高原バスが並んでいる。ハイブリットタイプのバスなどもある。
「立山高原バス」はここ美女平から、県道と立山有料道路を走り、バスは標高2450mの室堂を目指す。立山黒部アルペンルート最高地点の室堂までは、標高差約1500m。バスは23kmを50分かけて、雲の上の世界へと駆け抜ける。
ちなみにこの道路は、高原バス(路線バス)と観光バス以外は乗り入れできない。マイカー利用の場合は、ケーブルカーの立山駅の駐車場を利用する。
さあ、バスに乗ったら、雲上の室堂平を目指して出発だ。運よく一番前の席を確保できた。大迫力の自然風景のシアターを鑑賞しているようだ。
車内では立山の自然や、走行している付近の自然の紹介ビデオが流れている。運転手が走っているペースに合わせて、ビデオの放映を調節してくれるので、リアルタイムの紹介が楽しめる。
バスは出発するとすぐに「ブナ坂」という場所にさしかかる。樹齢200年を超えるブナの原生林を縫うように道は走る。その後、大きな杉(立山杉)が点在するようになる。
その中でもひときわ大きいのがこの立山杉。「森の巨人百選」にも選ばれたこの立山杉は、バスの車窓からでも、その存在感は圧倒的だ。
車窓から見ることができる日本一の滝
順調に走る高原バスの前に、ハザードを出しながら先行するバスが停まっている。まさか、渋滞?
いや、様子が違う。少しずつ少しずつ、前に進んでいる。バスの乗客は、左側前方に注目している。どうやら、カーブの先に何か見えるようだ。
ここは「滝見台」という地名。ここで「滝見」といえば、あの滝しかないだろう。日本一の滝が、ここにあるのだ。
木々の間から姿を現した大瀑布。これが「称名滝」だ。
日本一の350mの落差を誇る滝で、目指す室堂の頭上にそびえる立山連峰の水を集めた壮大で美しい滝。台地上になった山の上を険しく削る称名川。そして、緑の険しい山肌を4段に分けて一気に落ちる様は遠くからでもその迫力が伝わってくる。国の名称、天然記念物で、日本の滝百選にも選ばれている。
しかし、よく見ると右側に細いながら、日本一の称名滝と同じ場所に落ちながら、もっと高いところから落ちている滝があるではないか?
これは「ハンノキ滝」と呼ばれる滝。なんと落差は称名滝のそれを超える500m。しかし、ハンノキ滝は、雪解けの季節や雨の後など、水が豊富な時にしかその姿を現さない。それゆえに、常に水を流し続ける称名の滝が日本一の落差だと認定されているのだろう。
とはいえ、雪解けの時期は称名滝の滝壺には、日本一と暫定日本一の滝が2本も降り注ぐ。このケタはずれにダイナミックな景色は一度見に行きたいのだが、なかなか行く機会がないのが残念だ。
森林限界を越えた雲上の草原をバスは行く
バスが走るにつれ、深い森は退き、開放感ある笹野原が広がるようになってくる。高い場所に登っていることが実感できる。
しかし、目指す室堂は雲の中に隠れていて見えない。このバスはやがて、頭上に敷き詰められた雲の中に突入するだろう。雲の厚さ次第で、室堂は雲上で晴れているか、雲中で何も見えないか、大きく運命は変わってくる。
バスはどんどん高度を上げていく。先ほどまで見上げていた山々は眼下へと下がっていき、流れる雲は同じ高さへと迫ってくる。雲上の別天地へ、何度も何度もカーブを描きながら、バスは行く。
森林限界を超えた山肌や針葉樹に覆われた草原が車窓を流れていく。どんどん目指す美しい世界が近づいていることに心躍が踊り始める。
が、すで分厚く敷き詰められた雲は空を隠し、真正面にある大日岳と奥大日岳の稜線をその雲の中に閉じ込めている。
天狗平付近で、バスは突然スピードをゆっくりと落す。「ソーメン滝」という滝に近づいたと案内がある。バスの左前方を見ると、確かにその名の通り、ソーメンを流したかのような一本の筋のような滝がある。
称名川が削った深い谷に、降り注ぐというより流れ落ちている。滝も素晴らしいが、この周辺の深く刻まれた谷が連続する地形はとてもダイナミックだ。地図には「ゴシャメンの滝」とも記載されている。
滝に吸い込まれる川の流れに導かれるように、上流から雲も流れ込んできた。天気が悪くてもこれが自然。晴れた日と違い、とても神秘的な表情を見せてくれる。
僕は、この高原の雨や霧の天気も嫌いではない。しかし、険しい山を登る今回は別の話。出来れば退いてほしい・・・
周りには高木の姿はなくなり、広い草原の中を道は走る。
立山は火山でできた山。地質的条件もあり、すでに森林限界を超えたようだ。それと同時に、まるで生き物のように山肌を流れる霧が目の前に立ち込める。これが、さっきまで頭上を覆い尽くしていた雲の正体。
真夏でも雪が残るアルペンルート最高所「室堂」に到着
ついにバスの目の前に雲が迫ってきた。ここからは雲の中の世界となる。先行しているバスが雲のヴェールの中へと消えていった。
運良ければ雲の中を突き抜けて、雲の上、晴天の室堂へと思ったが、どうやら無理のようだ。室堂がちょうど雲の中になっていそうだ。
「雪の大谷」を通過する。ここは立山黒部アルペンルートの代表的風景で頻繁にパンフレットに乗る場所。ゴールデンウィーク前には、高さ20mの雪の壁が両側にそびえ立つあの場所だ。
さすがに8月末の猛暑の中では、雪の壁の姿は全く残っていない。それでも道路脇には真夏を超えた今でも、いっぱいの雪が残っていた。
室堂バスターミナルに到着。残念ながら室堂は雲の中で周りは真っ白。何も見えない。
多くの人の目的地だけあって、室堂のバスターミナルの中は人で混み合っている。ここでは富山側からの高原バスだけでなく、立山の下を抜け長野方面を目指すトロリーバスの発着場にもなっている。
ターミナルには土産屋やレストランがあり、雲上のリゾートホテルである「ホテル立山」も併設されている。まさに室堂の散策や立山・剣岳の登山のペース基地である。
さて、ここで歩く準備を整えたら、本日の宿へと向かう。階段を登ると、雲に包まれ、涼しい冷気を纏った森林限界を超えた世界が待っていた。
雲上の別天地「室堂」で宿泊できるホテル
■雲上の山岳リゾートホテル
■日本最高所の温泉
立山高原バス
場所: 富山県中新川郡立山町
電話: 076-432-2819 (立山貫光)
料金: 1660円(美女平~室堂)、富山駅から室堂までの往復券6530円(5日間有効)
期間: 4月10日~11月30日 (弥陀ヶ原・室堂間は4月17日~)
時間: 美女平(始発7:30・最終17:30)
室堂(始発8:00・最終16:30)
【投稿時最終訪問 2019年5月】