狭霧台【湯布院と由布岳の雲海展望台】
大分県・湯布院。温泉と洒落た店が軒を連ねる観光地。湯布院には情緒あふれる温泉宿が点在する。気持ちいい温泉と美味しい料理を楽しんだのならば、朝は気持ちの良い布団でゆっくりと・・・
そんな湯布院の朝だが、車で旅をしているのならば、是非朝風呂の前に足を伸ばしたい場所がある。それが湯布院の町の上にある「狭霧台」だ。もちろん朝だけでなく、日中にも立ち寄りたい絶景スポットだ。
湯布院の町を一望する絶好の展望台
湯布院を見下ろす山の中腹にある展望台が「狭霧台」売店などもあり、湯布院観光の名所のひとつになっている。湯布院の風景はもちろん、美しい由布岳(1583m)を間近に望むことが出来る。また、秋や冬の朝には見事な朝霧や雲海のかかる由布院を楽しめる。九州横断道路、やまなみハイウェイの起点となる別府市から約40分の距離にあるため、湯布院を通過し、久住方面に向かう場合などは絶好の休憩地点となる。
狭霧台から見下ろす由布院。田園風景が広がり、森に囲まれた美しくのどかな町並み。しかし、この中には温泉が幾つも点在し、洒落た店や美術館が軒を連ねる。昔の良き日本の中に、日本の今がある、とても美しい町。夏にはホタルが今も飛び交う湯の町は、自然と文化が交錯する素敵な場所だ。
由布岳の美しい姿を間近で見上げることもできる絶景スポット
眼下には湯布院、そして頭上には由布岳がそびえる絶好の展望スポット狭霧台。一面の草原を纏い、夏には鮮やかな緑色に包まれる由布岳は、とにかく美しい。標高は1600m足らずだが、単独峰となっているので、低い雲がひっきりなしに山にかかる。山頂は雲に隠れては、また姿を現しの繰り返し。
由布岳は「豊後富士」とも称される。東峰と西峰の2つのピークを持つ双耳峰。湯布院のどの場所からもその姿を望めるため、湯布院の象徴ともなっている山だ。緑のキャンパスの上に、雲が落とす影が走っていく。日本離れしたとても美しい風景を間近に楽しむ事む事が出来る。
ちなみに狭霧台の少し上には由布岳登山口があり、由布岳に登ることが出来る。頂上までは往復約4時間。道も比較的歩きやすく、登山口にはご自由にお使いくださいと杖まで置かれている。
しかし、それは「マタエ」と呼ばれる東峰と西峰の分岐点まで。「マタエ」まで登ると森林限界を越え、風や雨から身を守れる森は姿を消す。そして、この上空をかけていく雲と風に絶えず身をさらされる。マタエから頂上までは、火山でできた地形と厳しい気象条件に常にさらされている場所。そこはもう、北アルプスのような3000m級に近い山の厳しさがある。特に最高峰の西峰に続く道は、岩場と鎖場が連続する、さながらアルピニストの世界。この山に登るのなら、防寒具と雨具、そしてしっかりした登山靴は絶対必要。初心者は西峰はあきらめ、東峰への登山のみとすべきである。ハイキング気分で登りたくなる登山道だが、その先にハイキング気分で入り込むととても危険な目にもあいかねない山である。
狭霧台は展望だけではない。由布岳の登山口か湯布院の入口付近までは、この草原の中の道のドライブとなる。道幅も広く、車を走らせる喜びを満喫できるドライブスポットでもある。
狭霧台にはガラスの一枚壁がベンチと組み合わせて置かれている。何の用途に使われるかはわからないが、おそらくは湯布院のアート性を醸し出したオブジェのように思える。このオブジェに映る風景と由布岳を組み合わせると、おもしろい風景が撮れそうだ。その時の時間、季節、天候によっていろんな顔を見せてくれる由布岳、インスタ映えを狙えるポイントでもある。
運が良ければ夏場の早朝にも雲海を見ることができる朝霧台
さて、狭霧台の名物といえば、湯布院の朝霧を一望できる事。湯布院は盆地になっていて、由布岳に引っかかった雲がとにかく雨を落としていく。この夏の旅で湯布院に計6日間滞在したが、天気なのに夕方にはほぼ毎日と言っていいほど雨が降った。そんな湯布院は水に恵まれ、早朝に車を走らせると、雨も降っていないのにフロントガラスに水滴が付き、ワイパーを動かすほどだ。
この日は8月末で本格的な朝霧シーズンにはまだ早いが、それでもこれだけの朝霧を見ることが出来た。8月末、9月頭の滞在だったが、朝起きれば必ず霧がかかっていたので、これくらい、もしくはこれ以上の風景は毎朝見れるのではないだろうか。
朝霧がかかる湯布院の町並み。まだ夜が明けたばかり。町は寝静まっていてとても静か。音もない空間にゆっくりと霧が漂うように流れていくのは、とても幻想的な風景。湯布院が見せてくれる、また違った顔だ。
少しずつ空に赤みが増してくる。美しい朝焼けが湯布院の空を染めていく。とまったような静かな時間が、ゆっくりと動き始める瞬間。この時間は僕は大好きだ。ゆっくりと見て言いたいと思うが、この日はそうはいかない。この写真を撮った時、向かっていたのは由布岳の山頂。今から登山を開始するのだ。
そして朝焼けがあると天気は崩れるというように、この日の天気は午後から雨だ。実際、朝は快晴だったが14時からバケツをひっくり返したような雨に湯布院は見舞われた。山の天気は変わりやすいというが、この由布岳、他の山以上に相当に気変わりが早い山でもある。
だが、朝早くにここに立つ人にとっては、これ以上なく美しい風景。今朝はどんな風景をここで見ることが出来るのだろう。狭霧台の朝もとても表情が豊かである。
本格的な湯布院の雲海を見るならやはり晩秋の早朝
気温は0℃。深い霧に包まれている由布院の町。まるで湯けむりに覆い尽くされたような静寂な温泉町を抜け、道路を走ると、気持ち良い草原地帯に飛び出す。そして、雲の上に出たように、一気に霧が引いていく。霧がなくなってすぐに、狭霧台に到着する。
その狭霧台から見下ろすのがこの風景。湯布院の朝霧だ。湯布院は盆地になっていて、冬場の朝にはにはしばしば霧が発生し、海のように広がる。真っ白なヴェールに包まれているのが、先ほどまで居た、まだ寝ぼけ眼の湯布院の町だ。
夏場にも狭霧台から雲海を見たことがあった。しかし、それは雲海であって、今回の朝霧とは全く別の物。雲海は雲の切れ間から湯布院の街並みが見れたが、朝霧は湯布院の町自体を覆ってしまっている。とても濃度が濃く、高度が低い「雲海」がこの朝霧だ。
朝霧が作り出す雲の海。その波打ち際となるのが、深い森。木々の間を、まるで寄せては引く波のように、川のように、朝霧は音もなく流れていく。目覚めたばかり、まだ色のない世界。静寂の中、音もなく沸き立つ朝霧は、とても幻想的だ。
日が昇り、少しずつ太陽がこの静寂の世界を色づけていく。この日は11月の三連休。湯布院は標高が約450m、この狭霧台は約660m。下界の別府などでは紅葉の見頃の頃でも、由布院は一足早く冬の足音。
雲海の海にも、朝日で茜色に染まっていく。単色の雲海は幻想的だったが、色鮮やかになっていく雲海もまた、感動的で美しい。日に照らされて温度変化が生まれたからだろうか。まるで満潮のように、雲海が広がり始めた。
雲海が波のように押し寄せ、由布院からこの狭霧台に向かう道路を飲みこもうとしている。押し迫る雲海。朝霧が流れる道を駆け抜けいていく車からはどんな風景が見えているのだろう。まるで海外のアウトバックを行く道を雲上から見ているようだ。
雲海に包まれる山々は、まるで海に浮かぶ島々のよう。日が登り、静かだった風景がにわかに動き始める。
朝霧の雲海にも光が差し込み始める。ぎっしりと敷きつめられた雲の海。その上に架かる高速道路の橋。それはまるで、本当の海と陸のようにもみえる。
頭上には由布岳がそびえる。湯布院に湯をもたらす、標高1583mの活火山。その美しい山容は伯耆富士と呼ばれ、由布院の町から望むことができる。まだ雪の姿は見えないが、頂上付近は相当に寒そうだ。
朝霧の海に光が差し込み始めた湯布院。盆地に広がる雲海は、海というよりまるで湖だ。
光が差し込み、明るくなると、この狭霧台に訪れる人も多くなってきた。狭霧台の売店もシャッターを上げ、一気に町の息遣いが聞こえ始める。湯布院が眠りから覚めたと同時に、その湯布院を包んでいた朝霧の雲海も少しずつ小さくなっていく。
やがて雲海は川を流れるように消え、湯布院の町が姿を現す。湯布院では朝霧が晴れ、快晴の空が頭上に広がる。そして、何事もなかったかのように湯布院では晩秋の一日が始まる。
冬の朝の一瞬の出来事。布団の中で心地よい惰眠をむさぼれば、この風景があったことにすら気づかない。湯布院で朝起きて霧が出ていたならば、ぜひこの狭霧台に、美しい風景と出会いに車を走らせたい。
感動の風景て心は温まったが、手も体も冷え切った。しかし、まだ立ち込めるこの朝霧の中、待ってくれているのは気持ちの良い温泉の湯けむり。早く帰って、湯布院の朝風呂に飛び込もう。
湯布院の観光・宿泊情報
湯布院は自然と温泉にあふれる町。のどかな田園風景や美しい森が広がり、洒落た飲食店・カフェや手作りアート作品のギャラリーなどのお店も多くあります。豊富な湯量で源泉かけ流しの宿が多い「由布院温泉」は、静かな環境の中でゆっくりと湯を楽しめると、九州でも屈指の人気温泉地です。
狭霧台
場所: 大分県由布市湯布院町川上野々草1946-14
電話: 0977-85-3848 (狭霧台展望売店)
駐車場: 16台(無料)
施設: 売店(8:30~17:30 年中無休)・トイレ・自販機
交通: 大分市内よりしまなみハイウェイを車で約40分
大分自動車道湯布院ICから別府方面へ車で約10分
【投稿時最終訪問 2012年11月】