奥祖谷二重かずら橋

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かずら橋というと、徳島県の祖谷渓を思い浮かべる人がほとんどだと思う。深い谷奥にかかるかずらでつくられた橋。幽玄な渓谷にかかる原始的ながらも見事な橋は秘境という言葉がよく似合う。
しかし、実際のところは、その秘境にはどうやって作ったのか、信じられないような巨大な立体駐車場がつくられ、多くの車が訪れる。「秘境」に訪れる道は快適な2車線の道でとても走りやすい。そのため、繁忙期にはかずら橋を渡るのに、行列を作って何十分も待たねばならないこともしばしば起きる。地元の観光関係者の努力の賜物ではあるが、ここはもはや秘境ではなく、秘境の中の観光地と化している。
しかし秘境のかずら橋を求めるなら諦めてはいけない。あと30km、祖谷のかずら橋から、1~2車線の細い道を走る気合いがあれば、もうひとつのかずら橋に出会うことができる。かずら橋のかかる祖谷川の源流である西日本第2の高峰、標高1955mの日本百名山「剣山」へ向かい走る国道439号線。剣山の懐に抱かれるような深い渓谷の中まで遡ると、姿を現すのが「奥祖谷二重かずら橋」だ。

深い山の中にあるもうひとつのかずら橋

奥祖谷二重かずら橋

奥祖谷二重かずら橋の入口には売店などが数軒あるが、祖谷のかずら橋に比べれは相当規模は小さい。ここまで訪れる人も比べると相当に少なく、橋を渡るのに行列をするようなことはない。
ちなみに、この場所はかずら橋からは30kmも走るが、剣山の登山口である「見の越」からはたったの6kmほど下ったところだ。どれだけ山奥にあるのかがよくわかる。今回は剣山の登山の後にここに立ち寄った。
見の越から二重かずら橋までの道はほぼ1.5車線。予想に反して道幅はそこそこで、離合に困るような場所は少ない。
一方、二重かずら橋からかずら橋までは、路面状況はずいぶん良くなるが、道幅は上流部よりもやや狭い感じがする。特に点在する集落の中の道は細く、離合に困る箇所もある。ただ、ところどころ快適な2車線があり、改良工事も進んでいる。国道439号線から祖谷渓に向かう県道に入ると、とたんに道は良くなる。

奥祖谷二重かずら橋

入場料500円を支払い、谷へと道を降りて行く。これは祖谷のかずら橋と変わらない。帰り道がやや憂鬱に思えるが、かずら橋に出会うためには必要な行程だ。

奥祖谷二重かずら橋

しばらく行くと、深い谷の底に横たわる神秘的な橋が姿を現した。これが奥祖谷かずら橋の男橋。
その昔、平家の落人が源氏の追ってを防ぐため、いつでも切り落とせるように「しらくちかずら」で橋を作ったという。このように、お盆に昼間に訪れても、人が乗っていないかずら橋の写真を撮れてしまうのは、この奥祖谷かずら橋のお得な点である。

奥祖谷二重かずら橋男橋

「奥祖谷二重かずら橋」、1本目の橋である「男橋」の全景。橋の近くに滝があるのも、「祖谷のかずら橋」にそっくりだ。手つかずの自然が残る深い森の中につくられた神秘的なかずら橋。何かの伝説や物語の舞台の中に迷い込んだような気分になる。

奥祖谷二重かずら橋

早速かずら橋を渡る。すぐに切り落とせるようにつくられた橋だが、もちろん現在のものはワイヤーで補強しているのでご安心を。

奥祖谷二重かずら橋

とはいえ、この「男橋」は長さ41m、幅2m、水面からの高さ約10m。歩く振動でギシギシ揺れ、足元はスケスケで、そのはるか下には美しい祖谷川が流れていいる。ほとんどの観光客は手すりにつかまりながら、恐る恐るゆっくりと歩いて行く。僕は高い場所が平気な人間なので、一眼レフ片手に気持ちよく手すりも持たずに歩いて行く。こういう人間が橋の上をずかずかと歩くと、橋はよく揺れて、手すりにつかまる人間に恐怖感を与える。迷惑な人種である(笑)

奥祖谷二重かずら橋

かずら橋の足元はこのようになっている。十分に足を踏み外せるくらい広い隙間のはるか下には美しい透明の川。揺れる橋が、感じる高さをさらに高く思わせてくれる。足元の渡し木の隙間からその美しい流れと緑を見ていると、深淵に吸い込まれてしまいそうな気がする。

奥祖谷二重かずら橋

編み込まれたかずらの向こうには、美しい川が流れている。原生林を縫う深い谷間のはるか上空、原始的な造りの橋を渡る。まさに秘境がここにある。

奥祖谷二重かずら橋の滝

橋を渡り切ると、河原に降りる階段がある。河原に降りると、先ほど橋の上から見えた滝に近づくことができる。それほど大きな滝ではないが、それでもマイナスイオンと、緑の薫りを織り込んだ水の匂いをまき散らすこの滝は究極の癒しだ。
この日は増水していて無理だったが、夏の暑い日ならこの河原で川遊びを楽しむことも可能だ。相当水は冷たいのだが・・・

奥祖谷二重かずら橋

下から見上げるかずら橋。足元はスカスカ、ワイヤーで補強されているとはいえ、見た目はとても貧弱で原始的。こんな橋、渡れるのかと思うくらいだ。

奥祖谷二重かずら橋

こういう写真の撮り方をすると、かずら橋の高さが良くわかる。切り立った崖の上に掛けられた、相当に心細い橋だ。足元は丸見え、しかもギシギシときしみながら橋は左右に揺れる。ここを渡るのは相当にスリリングな体験だと思う。

奥祖谷二重かずら橋キャンプ場

「男橋」を渡り、少し上流に行くと、キャンプ場がある。トイレもきれいで、東屋もある。照明もくつかあるようで、1人300円という利用料金は格安だろう。しかも清流沿いにあるので、夏場は水遊びを楽しむことができる。昼間は観光客が訪れるが、サイトの中まで入ることはないし、夜は川の音が怖く感じるくらい、とても静かだろう。ただ、ここでキャンプをするなら、駐車場から結構歩いて荷物をは運ばないといけない。しかも、あのかずら橋を荷物を持って渡らなければならないというオマケつきだ。

奥祖谷二重かずら橋

キャンプ場の横すぐに、また別のかずら橋が姿を現した。これは「女橋」とよばれるもう1本のかずら橋。奥祖谷のかずら橋は「男橋」と「女橋」の2本あり、「夫婦橋」と呼ばれている。
かずら橋が二本、平行して谷にかかっていることから、「二重かずら橋」と言われている。

奥祖谷二重かずら橋

さあ、もう1回かずら橋を渡って元居た岸に戻ろう。この「女橋」は長さも高さも「男橋」に比べるとスケールは小さい。どうしても「男橋」を渡れない方は、もう少し上流に歩けばこの「女橋」がある。こちらの「女橋」をチャレンジしてみるのも良いかもしれない。
ちなみにこの奥祖谷の二重かずら橋は「男橋」も「女橋」も一方通行でなく、好きな方向から好きな回数だけ渡り放題だ。この橋を渡ることに「快感」を感じるような方は何度でも満足がいくまで橋を渡ることができる。その点では、「祖谷のかずら橋」に比べてもダントツにお得である。

奥祖谷二重かずら橋女橋

木とかずらを編み込んで組み立てたかずら橋。源平の伝説が残り、今は観光客の目玉となっているが、昔は生活に使われていた橋。山深い清流に架かるこの橋の姿には、さまざまな歴史とロマンを感じることができる。

奥祖谷二重かずら橋野猿

さらにスリルとアドベンチャーを体験したい方にオススメなのはこの野猿。籠に乗り込み、ロープを自分の力だけで手繰り寄せて前に進んでいく。順番さえ並べば、無料で誰でも乗れる。大人でも数人乗れる大きなものだ。女橋のさらに奥に、並ぶようにつくられている。かずら橋を見ながら川を渡って行くのはなかなか面白い。しかし、楽しいのは川の中央まで。初めは勢いで野猿は下って行くが、ここから対岸までは己の腕力で進まなければならない。途中でヘタれば、対岸で待つ人にロープを引っ張って助けてもらわないといけなくなる。自分の体力と相談して「乗車」したい。
余談だが、先ほど紹介したキャンプ場への荷物の運搬には、この野猿は使えそうだ。

かずら橋付近の宿泊情報

■剣山の近い奥祖谷には宿は少なくなりますが、奥祖谷にじゅうかずら橋の近く、剣山や三嶺登山にも便利な日帰り温泉も楽しめる便利な宿が「いやしの温泉郷」です。

■かずら橋のある祖谷渓には祖谷温泉があり、多くの旅館が軒を連ねます。中でも「ホテル祖谷温泉」はケーブルカーで谷底に降りて浸かる川沿いの露天風呂が秘湯として人気で、よくメディアでも紹介されています。

大歩危・祖谷渓の旅館・ホテル一覧

奥祖谷二重かずら橋

住所: 徳島県三好郡東祖谷山村字菅生
交通: 徳島道美馬ICよりR438・439経由、東祖谷山村方面へ1時間30分(46km)
時間: 8時~17時
期間: 4月~11月(営業期間中は無休)
料金: 大人500円、小中学生400円 (キャンプ場利用料・別途300円)
駐車場: 50台(無料)

【投稿時最終訪問 2009年8月】

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