うだつの町並み【徳島県美馬市脇町】
徳島県美馬市脇町の「うだつの町並み」は、江戸時代から明治時代にかけて、阿波藍の集散地として栄えた町並みが今も残る重要伝統的建造物郡保存地区。「うだつが上がらない」という言葉の元となった「うだつ」は裕福な家の構造の一部で、うだつがある歴史的な家屋の町並みは他には岐阜県美濃市しかなく、とても貴重な景観となっています。うだつをはじめ、裕福さを示そうと競うように贅を尽くした商家が建ち並ぶ通りはとても美しい日本の風景です。
豪商が軒を連ねた美しい和のストリート
うだつの町並み観光の拠点かつ駐車場となるのは「道の駅藍ランドうだつ」です。うだつの町並みに隣接する道の駅で観光にも利用可能。39台と駐車場台数はさほど多くないのが、ほぼ、うだつの町並み観光用の道の駅となっています。道の駅からはうだつの町並の案内板に導かれて通りに出ると、タイムスリップしたかのような通りに出てきます。
うだつの町並みは東西430mの通りに江戸から明治時代に財をなした藍商人の屋敷が約80軒建ち並ぶ通り。漆喰の白壁、本瓦葺きが特徴の町並みはとても美しく、当時の面影を色濃く感じることができます。そしてほとんどの歴史ある商家にはうだつを見ることができます。
道の駅から通りに出るとすぐの場所にあるのが「吉田家住宅」
1792年に創業した脇町でも一二を争う豪商でした。見学施設として公開されており、立派な商家の内部や当時の様子を知ることができます。約600坪という広大な敷地があり、道の駅藍ランドうたづの船着き場や商業施設はこの吉田家住宅のものでした。
16世紀後半から18世紀半ばまで醸造業を営んでいた「森家」。今の建物は明治13年に建て替えられたもので、 大正8年から昭和29年までは病院でした。当時の医療施設がそのまま保存されているそうです。
うだつが上がりまくっている江戸時代の高級住宅街
うだつとは、隣家との境界に取り付けられた防火壁のことで、 二階の壁面から突き出した漆喰塗の袖壁の部分です。江戸時代には実用的な用途に合わせて装飾的な意味合いも強くなり、うだつを造るにはかなりの費用がかかったそうです。そのため立派なうだつがある家は裕福な家と見られ、うだつを造れない(屋根にうだつをあげられない)ことが転じて、出世ができないという意味の「うだつが上がらない」という言葉になったと言われています。
美しいうだつが競うように屋根の上に設けられています。当時の豪商たちがどれだけ財力を誇示していたか感じられます。
うだつと同時に、厄除け、魔除けのために大屋根の端などにつけられている鬼瓦も見所。あうんの鬼瓦や笑っている鬼瓦もあり、見事なもので富の象徴の一つです。作ったという。
うだつのほかにも、屋根のすぐ下に設けられた「虫籠窓(むしこまど)」という細木を配した格子窓もよく使われており、うだつと並んで2階の見所となっています。
ずらりと並ぶ漆喰白壁と瓦屋根の建物。屋根には見事なうだつが上げられており、ずらりと通りの奥まで突き出すように並ぶ風景は圧巻です。
歴史ある商家を利用した魅力あるお店
通りにある様々なお店も魅力的です。「ワタル珈琲」は漆喰塗りの和の建物が建ち並ぶ中、洋服レンガ造りを思わせるような外観。レトロな雰囲気がうだつの町並みに違和感なくマッチしています。美味しいコーヒーはもちろん、ベトナムフードのバインミーや酒粕チーズケーキなどの珍しいフードが楽しめ、おしゃべりなマスターがいる雰囲気の良いお店と人気です。
通りに面した立派な商家の「森邸」
1872年築のかつての造り酒屋で、現在はレンタルオフィスとしてリノベーションされています。内部はかつての雰囲気を残したまま随所に使いやすい工夫がされているそうです。
徳島はサテライトオフィスを推進しており、自然や古民家を利用したオフィスが県内各地でありますが、この脇町でも商家や蔵がオフィスとしても有効利用されており、観光以外にも魅力ある町づくりが行われています。
うだつの町並みのほぼ西端に「美馬市伝統工芸体験館 美来工房」があります。明治時代の税務署を改装した洋風建築で、レトロな駅舎のようにも見えます。美馬和傘の制作見学や体験、観光案内などがあります。
美馬市伝統工芸体験館 美来工房の前には「自働電話」と書かれた公衆電話が置かれています。今はもう公衆電話や電話ボックスがなくなってきましたが、平成、昭和の公衆電話よりもさらに古い、レトロなものです。まさに電話ボックスの原型と言えそうです。
この付近で折り返し、うだつの町並みの東側へ向かいます。
延々と続く美しい伝統的な町並みはまるで江戸時代に訪れたかのような気になります。そして当時の賑わいも今も感じることが出来ます。
脇町は阿波や讃岐へ向かう街道の交差する交通の要衝。吉野川を利用した水運にも恵まれており、この通りの屋敷裏には吉野川への船着き場がありました。阿波の伝統的産業である藍の集積地として大いに栄えた町でした。
「国見家」
1707年築で、付近では最も古い建物。敷地は表通りから当時の吉野川に達する広さがあり、川岸に門があり堰段を通じて吉野川の船着き場に出ることが出来ました。
懐かしのボンカレーの看板。江戸時代の町並みですが、昭和レトロもよく似合います。
道の駅より東側の通りにも見所がいっぱい
道の駅への連絡路から東側に少し行くと広場のようになった場所があり、その中心に辻井戸があります。かつてはここを利用するご婦人が井戸端会議をしていたのでしょう。
うだつの酒屋の正木商店。「うだつのあがる酒」などの地酒が人気で、お土産、花嫁菓子なども販売しています。店の軒先には「書状集箱」という明治時代に使われていたポストがあり、今も郵便物を投函すれば収集してくれるそうです。
倉庫だった建物をリノベーションしたという脇町図書館。小路が奥に続いており、その先にはうだつ稲荷。さらにはコールセンターがあり、心地よい環境で多くの方がガラス張りの開放的なオフィスで働いていました。
築150年の商家をリノベーションした「みんなの複合文化市庭 うだつ上がる」。雑貨店、書店などのショップや、カフェなどが入居する複合施設となっています。日本の和の中でのひと時や厳選されたアイテムを選ぶのも楽しいので、ぜひ立ち寄ってみましょう。
うだつの町並みの東端、大谷川の向こう側にひときわ目を引く建物があります。こちらも脇町を代表する歴史的な建物のひとつ「脇町劇場」です。昭和9年建築の芝居小屋で、洋館のような外観ながら、廻り舞台や奈落などを備えた歌舞伎なども上演できるの日本の伝統的な劇場です。1995年に閉館し、取り壊しされる予定でしたが、山田洋二監督の永木「虹をつかむ男」で「オデオン座」として劇中に登場したことで一躍脚光を浴び、1999年に文化財として修復・保存公開されることになりました。四国では愛媛県の内子座、香川県の金丸座とあわせて現存する3か所の芝居小屋ひとつです。
■うだつの町並みの中の古民家旅館
■うだつの町並みに近い清流ホテル
うだつの町並み
場所: 美馬市脇町南町
電話: 0883-53-2333(道の駅藍ランドうだつ)
営業時間: なし(道の駅は9:00~17:00)
休業日: 無休(道の駅は12/27~1/1)
交通: 徳島自動車道・脇町ICより約10分
料金: 無料(入館有料施設あり)
駐車場: 隣接する道の駅「藍ランドうだつ」を利用(39台)
【投稿時最終訪問 2020年5月】