庵治町【「世界の中心で、愛をさけぶ」のロケ地】

その場所が目の前に迫ると、車で聞く音楽を入れ替えた。どこか物悲しく感じるピアノの旋律が流れ始め、車窓からは林立する石材加工工場がやけに目につくようになる。流れる曲は平井堅の「瞳を閉じて」。そして、石材加工工場の軒先には高級石である「庵治石」がうず高く積み上げられている。
訪れたのは香川県高松市の庵治町。言わずとしれた、高級石材の「庵治石」の産地である。しかし、この庵治町に、まだまだ熱いスポットがある。2004年に公開され、観客動員数620万人を記録した大人気映画「世界の中心で、愛をさけぶ」。主人公である朔太郎が青春時代を過ごした場所としてロケ地に選ばれたのが、この庵治町である。
作者の片山恭一氏は愛媛県宇和島市の出身。残念ながら宇和島市内でのロケ地はないが、四国内のロケ地が多く使われている。
「助けてください！」と朔太郎が叫ぶ名場面は高松空港。
アキが入院している病院は愛媛県庁（松山市）
校長先生の骨を盗んだお墓（大洲市長浜町）
ロケ地は何箇所かあるが、やはりメインのロケ地である庵治町は歩いているだけでその世界に入り込んで行ける。それでは映画の名シーンを思い出しながら、風光明媚な港町を散歩してみよう。

自然豊かな瀬戸内海を舞台にしたロケ地

まず訪れたのは、皇子神社。境内前には庵治湾が一望できる展望の素晴らしい公園がある。森山未來演じるサクと長澤まさみ演じるアキが写真館の主の重蔵の初恋の相手が校長先生だったとブランコに乗りながら話すシーン。そのシーンで印象的だったブランコがここにある。海を背景にふたりでブランコに乗れる最高のロケーション。この神社は縁結びの神様として、注目を集めていて、訪れるカップルも少なくない。

続いては、王の下沖防波堤。サクがここを走って叫んだり、サクとアキが夕日を眺めながら話したシーンに登場。ロマンチック満点の場所だが、休日となると地元の釣り師たちが、糸を垂れて思い思いの時間を過ごす。

映画の撮影セットが新たな観光名所に

物語の重要な場所となる雨平写真館。とても歴史ある建物に見えるが、実はこれは映画のセット。現在はロケ地の中にある「庵治文化会館」に移設、保存されている。中は「セカチュー」の記念館として、公開されていて、あの扉を開けて中に入れたのだが、現在はカフェとして営業している。

建物は細部の痛みや汚れまで、よく作られている。知らない人が見たら、まるで本物のように見える。こうやって見ると、とても歴史があり、港町の風景に溶け込んでみえる。

ここが、「雨平写真館」のセットが組まれていた場所。写真右側の空地にセットが組まれていた。は監督がこだわった「海が見える交差点」で、わざわざここにセットを作ったそうだ。

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のどかな港町で撮影された主人公の甘酸っぱい青春時代

「谷商店」
サクとアキが電気店のショーウィンドウでウォークマンを見つけて眺めた店だ。実際は洋品店だが、この日は祝日だったので、シャッターが閉まっていた。

夢島で倒れたアキを父親が迎えに来た港。ここでサクは父親に殴られ、そのあとアキを乗せて走り去る車を必死に追いかける。

校長先生の葬儀が行われた場所。ここで、サクはアキへの恋心に気付く。しかしなぜか、うどん屋になっている。ロケの前から営業していたそうだが・・・

その他にも、アキとサクが原付に二人乗りした場所など・・・まるで、誰かよく知った人の青春時代をたどる旅をしているようだった。こうやって、好きな映画のロケ地を旅してみるのも面白い。庵治町の港町。片田舎の長閑な風景が、どこか遠い異国や思い出の地にさえ思えた。そして、名作のロケ地に選ばれた美しい風景は、それだけでも十分に旅情を楽しませてくれる素晴らしい場所だった。