キャラバン珈琲由布院館【湯布院の隠れ家カフェ】
湯布院の金鱗湖の散策中だった。あれほど晴れていた天気が急に崩れ、突然降り出した冷たい秋雨。観光客が考えることは皆同じで、金鱗湖付近のカフェは満席。軒下にも人だらけ。ぐんぐん下がる気温と由布岳から吹き下ろす寒風がたまらなくつらい。スマホで少し離れた所のカフェを探す。ちょうど良いことに金鱗湖から1本細い道を入ったところに喫茶店がある。雨の中、娘を抱きかかえて大急ぎでその店に向かった。
湯布院の知る人ぞ知る隠れ家カフェ
その店は「キャラバン珈琲 由布院館」。山荘風の建物に広い庭。車も入れないような狭い道にあり、湯布院らしい隠れ家といった佇まい。どちらかというと、大人の静かな空間だ。中をのぞくと、蝶ネクタイをつけ、ひげを蓄えたダンディなマスターがコーヒーを入れている。初見の印象としては、物静かな職人タイプ。場違い?この中に子供を連れて入ってもいいのか?そう思いながらも、冷たい雨から逃げるように店内に恐る恐る入ってみる。
店内はアンティークな調度品が揃えられた、とても落ち着いた店内。落ち着いた音楽が響く店内は10人も入れば満席になる。まさに大人の隠れ家といった雰囲気。あれほど賑わっていた金鱗湖付近の飲食店とは違い、ここはマダムが2人、のんびりとお茶をしているだけだ。店内の一部ではガラス製品の販売があった。季節柄、クリスマスのツリーや雪だるまが多く並んでいるが、お値段もなかなか。子どものおもちゃではなく、品のある装飾品。興味津々に娘が眺めるが、手を出さないでとちょっと冷や汗ものだ。
店内の大きな窓からは素敵な英国風の庭が眺められる。花壇と芝生の庭にはベンチやブランコが置かれていてとても雰囲気がある。この景色を眺めながらコーヒーを頂く時間は、とても落ち着いた上質なものだ。
マスターが淹れ、語るコーヒーの魅力
メニューにはいろんなコーヒーが並んでいるが、今回頼んだのは「トルコ珈琲」。トルココーヒーというのはどんなものか知らなかったので、今回オーダーしてみた。出されたトルココーヒー、写真を撮ろうとすると、突然ダンディなマスターが歩み寄ってきた。ヤバイ。最近ではこういった飲食店で出されたものを写真に撮る人は多くなったが、それでも店側としては迷惑だったり、ありえない事だと思う人も多い。特にこのマスター、こだわりの職人気質に見える。珈琲は飲むもので、写真を撮るものではないっ。そう一喝される事を覚悟したが・・・「トルココーヒーの写真を撮るなら、これも一緒において撮らないと」そういって、トルココーヒーを入れる道具である「ジェズブェ」を持ってきてくれた。その後饒舌にトルココーヒーについて語り、どんどんと写真を撮らせてもらった。とても気難しいマスターに見えたが、実はコーヒーについてはとても饒舌で、気さくな方だった。マスターから聞いた話の受け売りになるが、トルココーヒーとはその名の通り、トルコで飲まれるコーヒー。実は世界で初めてコーヒーが飲まれたのはトルコで、のちにヨーロッパにトルコからコーヒーが伝わったそうだ。このトルココーヒーこそ、コーヒーの一番最初の飲み方であると言える。トルココーヒーはこのジェスヴェと呼ばれるコーヒー用の鍋で、コーヒーの粉と砂糖を入れて煮立てる。キャラバン珈琲では3回も沸騰させているそうだ。ジェスヴェで煮立てたコーヒーをカップに注げばトルココーヒーは完成。
当然、コーヒー豆をそのまま煮立てているのでカップの中には豆の粉が入っている。少し時間をおいて、粉が沈んでから頂く。その味は濃厚。でも比較的あっさりしている。クリームを入れなくてもとても飲みやすく、胃袋にガツンとくるあのブラックの苦みもない。普段飲んでいるコーヒーとは全く違う味。ダイレクトに豆の味を頂く珈琲の原点の味、しっかりと楽しむ。
普通のコーヒーと違い、トルココーヒーにはコーヒーの粉が入っているので、全部飲むことはできない。どうしても少しだけ残すことになる。そんな少しだけ残すコーヒーで楽しむのが「コーヒー占い」
飲み終わったカップをソーサーにひっくり返す。これにはコツがいる。初めてする僕はソーサーにコーヒーをこぼしてしまった。「大失敗」とマスターに笑われてしまう。それでもしばらくひっくり返したまま時間を置き、再びカップを元に戻すと・・・カップの中に沈殿していたコーヒー粉が、まるで万華鏡のような美しい幾何学的な模様を描き出した。この模様で占いをするのがコーヒー占い。ただ、イスラム教では形に意味を持たせるのはタブー。仏教の仏像、キリスト教のキリスト像があるが、イスラム教には偶像はない。そのため、この占いに意味を持たせるのは禁忌とされ、単なる遊びであるとマスターが教えてくれた。40年以上この店を守るオーナーのコーヒーについての造詣は深く、いろいろな話を聞かせて頂いた。しかし、オーナーのイチオシは「ウィンナーコーヒー」だそうだ。今度訪れた時は、これをオーダーするしかないだろう。
苦いコーヒーが苦手な妻と3歳の娘の飲み物。カフェ・オ・レとバナナジュース。妻も娘も大満足だった。こだわりの美味しいコーヒーと落ち着いた空間。そしてオーナーの楽しいコーヒーの話。雨を避けるように飛び込んだ店だったが、思わぬ隠れ家を見つけられてとても満足な気分になった。しばしの隠れ家の滞在を楽しんでいると、冷たい雨は上がり、再び薄日が射し始めた。
外に出ると、同じ敷地にある骨董屋のオーナーにも話しかけられる。とても気さくな方で、いろいろと湯布院の事も教えていただき、イングリッシュガーデンで娘を遊ばせてもらえた。渋い大人の隠れ家だったこの一角。でも、小さな子供も笑顔で迎えてくれる大人の寛容さや、コーヒーの写真を撮る事を楽しませてくれる大人の遊びも持ち合わせている。なんだかとても素敵な場所に思えた。
湯布院の観光・宿泊情報
湯布院は自然と温泉にあふれる町。のどかな田園風景や美しい森が広がり、洒落た飲食店・カフェや手作りアート作品のギャラリーなどのお店も多くあります。豊富な湯量で源泉かけ流しの宿が多い「由布院温泉」は、静かな環境の中でゆっくりと湯を楽しめると、九州でも屈指の人気温泉地です。
キャラバン珈琲 由布院館
住所:大分県由布市湯布院町川上1614-3
電話:0977-85-3912
交通: JR湯布院駅より徒歩約20分
営業時間:早朝~日没
定休日:時々あり
駐車場:なし
煙草: 喫煙可能
メニュー: ウィンナー珈琲750円 カフェ・オ・レ650円 トルコ珈琲700円
(一部) エスプレッソ珈琲650円 カプチーノ700円 ホット・モカ・ジャワ700円
アイリッシュ珈琲800円 カフェ・ロワイヤル900円
ダージリン ウパ キーマン (世界三銘紅茶・各650円)
【投稿時最終訪問 2012年11月】