小笠原・大村海岸【日本一早い元旦の海開き】
東京都でありながら、東京から南へ1000knも離れた太平洋に浮かぶ小笠原諸島。その中心である父島では、東京とは思えないほど温かく、沖縄に劣らない南国情緒が漂う。そんな小笠原の海開きはなんと元旦。父島では美しい真っ青な海で、新年が明けると島のビーチで初泳ぎを楽しむのだ。
小笠原父島のメインストリートを散策
おがさわら丸で到着したのは元旦。初日の出を太平洋のど真ん中で迎えて父島に到着。おがさわらの玄関口、二見港から父島のメインストリートである「湾岸通」を歩く。正直な感想であるが、思っていたよりも立派な町並みだ。特に、おがさわら丸が入港した直後なので、多くの旅行者が歩いており、とても賑わいがある。それに、町並は日本らしさが少なく、本当にどこか南国の異国を思わせる。服装はTシャツ1枚、短パンで、南国の日差しの下で日本国内での新年というものは、全く初めてで不思議な感覚だった。小笠原名物「ギョサン」(漁業用サンダル)を売るお店も多いので、ここで南国の履物をゲットして小笠原ライフを満喫するのも良い。
小笠原は日本の中でも特異な歴史をもつ。小笠原諸島はもともと無人島で、170年ほど前にはじめてこの父島に欧米人5人とハワイ系住民15人が移住。その後日本からの移住も始り、日本の領土と認められる。先住の欧米人、ハワイ人は日本に帰化。戦前には小笠原諸島で7400人を超える人々が暮らすようになっていた。しかし太平洋戦争で南方の重要拠点とされ、軍の施設が次々と建設。1944年にはこの父島が米軍の大空襲を受けたことにより、小笠原の住民は全土に強制避難させられる。その後、小笠原諸島は米軍に占領され、1967年までは父島はアメリカ統治下で欧米系の住人が暮らしていたのだ。
映画「硫黄島からの手紙」の舞台となった「硫黄島」は小笠原諸島の南部にある島。あの激戦の一部にこの父島もあった。島を歩くと、あちらこちらに映画でも見たトーチカや地下壕が普通に残っている。戦争の傷痕と欧米との文化交流、それが今の小笠原の風景にどこか遠い異国の情緒を感じるのだろう。
島の通りにはカフェ、土産屋、生活雑貨店。スーパーや生協が数少ないながら立ち並ぶ。予想以上にお店の数も多く、買い物も不便なくできる。買い物は後で楽しむとして、まずは通りの一番奥にある「小笠原ビジターセンター」を目指す。
歩いていると、出発した冬の東京都は明らかに空気の香が違う。東京は冬の無機質な冷たい空気だったが、小笠原の空気はとても温かく、緑の香りがする。芝生の香りだ。通りに面する建物の多くに芝生の庭があり、気持ちのいい緑の香りと日本らしくない欧米的な風景をつくりだしている。大きな芝生広場の横にビジターセンターがある。しかし、その芝生の香と、その向こうに見える青い海にひかれて、まずビーチに出てみた。
ウミガメが帰る母なる小笠原の青い海
父島最大の地区である大村にある「大村海岸」。父島の中心街、「大村地区」の西端に位置するこの大村海岸。大神山公園(広い芝生広場)の向こうに、広がる美しいビーチだ。白い砂にエメラルドグリーンの海。天気が少しかげっているが、それでもとても美しい。打ち寄せる波は透明で、海の中まで透き通って見える。沖合には豪華客船の「きそ」が停泊している。「きそ」の年末年始の小笠原へのクルージグは恒例だ。だが、あまりもの巨大な船体のため、二見港には接岸できず、沖合に停泊している。ちなみに小笠原・父島の海開きは元旦。日本一早い海開きだ。本日はその元旦で、はウミガメ放流などのイベントが、この大村海岸で行われる。初泳ぎのイベントはもう終わったようで、すでに誰も海には入っていなかった。しかし、この日に海で泳いだ人には、日本一早い海開きの参加証が渡されていた。そして今からウミガメの赤ちゃんを海に還すようだ。
保護されていたウミガメの赤ちゃんを参加者がビーチに置くと、誰に教えられたわけでもなく、一斉に波打ち際を目指して歩み始める。とてもたどたどしい歩み。しかし、よちよち歩きの子供に「こっちよ」と母親が優しく呼ぶように、海が小さなウミガメたちを呼んでいる。まだ波は高く、厳しい表情を見せるが、ウミガメの赤ちゃんにとっては母なる海。いくつもの足跡を残しながら、ウミガメたちは波打ち際を目指す。
ついに波打ち際にたどりつく。母なる海は自分の元に帰って来たウミガメの赤ちゃんを、乱暴なくらいに高い波で抱き締め、そして包み込むようにその美しい水の中に飲み込んでいく。また一匹、また一匹、激しい波に乗って、ウミガメの赤ちゃんは小笠原のエメラルドグリーンの海に旅立っていく。旅立ちの時。すべてのウミガメの赤ちゃんが青い海へと旅立つと、周りにいた人から拍手が上がる。なんだかとても感動的な瞬間だった。今日旅立ったウミガメの何匹が、またこの小笠原の土を踏めるかはわからない。でも、頑張ってたくましく育って、大きくなった雄姿をまた見せてほしい。
豪華客船が停泊する青く美しく父島の海
ウミガメの赤ちゃんがすべて青い海に旅立った後、祝福するかのように、曇り空から日が注ぎ始めた。曇り空に淀んだ海には命が宿ったかの様に、鮮やかなエメラルドグリーンが広がった。今、目の前にあるのはまさに、南国の海。
フェリーや多くの漁船、クルーザーの港である父島の玄関口・二見港に面していながら、その水の美しさは半端ではない。白い砂浜はとエメラルドグリーンのコントラストは小笠原に到着した実感を強烈に与えてくれた。ビーチにはゴミも落ちておらず、とても町の中にある海岸とは思えない美しさ。更衣室やシャワーも完備されていて、海水浴にはもってこいだ。民宿、ペンションが集まる父島の通りからも一番近いビーチ。内湾なので、波も穏やかで、気軽に海に親しめる。
沖に停泊しているのは、豪華客船「きそ」年末年始の恒例のクルージングで今、小笠原に訪れている。巨大な船体は二見港の岸壁に停泊できないため、沖に設置したブイに係留されている。豪華客船が浮かぶエメラルドグリーンの海なんて、本当に日本では見ることができない海外の風景だ。大村海岸には「小笠原ビジターセンター」がある。小笠原の自然や文化、歴史を知る都ができる。小笠原に初めて訪れた僕にとっては、ぜひとも行っておきたい場所。いつまでもここで美しい海を眺めていたかったが、波打ち際を後にした。
小笠原・父島の宿泊情報
■ 父島の街の中心で便利なリゾートステイ
■ 小笠原を代表するリゾートホテル
【大村海岸】
場所:東京都小笠原村父島
アクセス:船客待合所(おがわら丸乗船場)から徒歩10分弱
設備:トイレ、シャワー
近隣施設:大神山公園(芝生広場)、小笠原ビジターセンター、聖ジョージ教会
【投稿時最終訪問 2008年1月】