森の国ぽっぽ温泉【駅舎にある旅情溢れる日帰り湯】
愛媛県南部の町、宇和島から高知に向けて、山を越え、川と並走するJR予土線。宇和島から山を越えると最後の清流四万十川の支流沿いに走り、江川崎からは四万十川沿いを遡上するなんとも旅情溢れる鉄道旅を楽しめる。
そんな予土線の四万十川支流沿いにある松丸駅の2階にある駅舎に併設された珍しい温泉が「森の国ぽっぽ温泉」だ。
駅舎の中にある珍しい温泉
JR松丸駅の駅舎。1階には温泉入口とホーム入口と地域交流のスペースがある。地域交流スペースの管理人が駅の業務も請け負っているようだ。大きな駅舎だが、その中はゆっくりとした時間が流れる独特の旅情があふれている。駅前はよくある商店街だが、駅の横に広い駐車場があるので、車で訪れても安心。
温泉へは1階の入口から入り、階段を上がって2階へ。入湯料400円を支払い、中へ入る。平成14年のオープンであり、施設は比較的きれいだ。
ぽっぽ温泉には「虹の湯」と「森の湯」の2つがあり、男女入れ替え制。「虹の湯」はウッディな雰囲気、「森の湯」は渓谷の雰囲気をそれぞれイメージしている。今日は僕が入る男性用の浴室は「虹の湯」であった。
「虹の湯」の内風呂。大きな窓もあり、開放感もあって気持ちいい。なんといっても日本家屋を思わせる浴室内の雰囲気が良い。ただ木をふんだんに使うだけでなく、柱や梁など思わせる工夫が光っている。
浴室内にはミストサウナの他、箱蒸風呂と打たせ湯がある。箱蒸風呂が置いてあるのは珍しく、打たせ湯も最近ではめっきり数が減った。久々に味わう湯の楽しみに、思わず長湯をしてしまいそうだ。
内風呂を十分に楽しんだら、今度は露天風呂だ。しかしここの露天風呂も変わっていて、内風呂同様、とても楽しめる。露天風呂に使っている浴槽は、なんと江戸時代から最近まで実際に造り酒屋で使われていた酒樽や釜。ここまつまる駅付近は、伊予と土佐を結ぶ急松丸街道の商いの中心地として栄えていたそうだ。
酒樽2つと釜1つが並んでいる。小さいので、ひとつにひとりずつ入り、湯を楽しむ。長い間お酒に浸っていた酒樽に浸かっていると、まるで熱燗に入浴しているような気になる。もちろん、お酒の匂いは全くしないのだが・・・
釜の風呂は、まるで煮立っているかに見えるよう、ジャグジー仕様になっている。実際に使われていた、当時の火にかけられた姿を思い出させる演出は遊び心が満点。
こちらは巨大な酒樽を使った浴槽で、何人もの人間が一度に湯に浸かれる。こんな大きな酒樽でお酒を作っていたのかと、驚きさえもする。
酒樽に浸かりながらふと壁を見ると、「伊予美人の湯」と看板がかけられている。「美人の湯」というと、多くは独特のぬめりのある泉質の湯のことを言うがここは違う。この酒樽は、「伊予美人」という銘酒を造っていた蔵元のものでこういう名前になったそうだ。ちなみに「伊予美人」という名は、この蔵元の令嬢が、日本初のミスコンで上位に入賞したのを記念して名づけられたそうだ。
この露天風呂で少し気になったのはかなりオープンなところ。湯船に入るまでに歩く際、すぐ下の道路を歩く人や行き交う車と目があってしまうほど壁の高さが低い。この温泉のロケーションが駅の2階という事は、この周辺は住宅の密集地でもある。遠くの風景が見えるのはいいが、近隣の家屋の窓が同じ目の高さというのもどうだろう。絶景が拝めるわけでもないのだから、もう少し壁の高さをあげても良かったのでは?この湯船は女性が使う日もあり、その時の女性の目にはこの開放感がどう感じるのかがちょっと気になった。
そんな事を湯に浸かりながら思っていると、湯煙の静寂を切り裂くいて、近くから踏切の音がしてきた。そして、足元でディーゼルのエンジンの大きな音が響いたかと思うと、単線を一両編成のワンマン列車が走り出した。ここは駅の2階。このすぐ下が旅の発着点。カタコトと遠くに響いていく列車の音。酒樽の湯に浸かりながら、感じる旅情に酔いしれていた。
湯を楽しんだ後は休憩室に。広くて清潔な和室はとてもくつろげる。ぽっぽ温泉の外には足湯もあるという。早速、足湯も楽しみに行く。
列車を待ちながら足湯でまったりできる
足湯へは一度ぽっぽ温泉を出て、駅のホームへ入る。先ほど湯に浸かっていた場所の下が、列車の駅。なんだかとても不思議だ。そして、このホームの階段を登ると足湯がある。
足湯からは四万十川へと流れる支流の吉野川の流れが望める。ゆっくりと流れる川、遠くまで続いていく線路を眺めながらの足湯は旅情があふれる。事実、ここで列車を待つ間、足湯に浸かりながら時間を過ごせる。あまりもの気持ちよさに列車に乗るのが惜しくなる。しかし、列車を乗り過ごしたら最後、2時間は待ちぼうけだ。
慌ててホームの上から靴を持った素足の乗客が列車に飛び乗ってくる。そんな風景をここでは見られるかも知れない。
ちなみにこの足湯は無料で、JRを使わなくても誰でも利用できる。更衣室もあり、とても気持ちの良い足湯だった。
■松野町の美しい渓流でアウトドアな滞在
大門温泉 森の国ぽっぽ温泉
場所:愛媛県北宇和郡松野町丸松1661-13
電話:0895-20-5526
交通:JR予土線松丸駅 駅舎2F
松山自動車道西予宇和ICより約50分
開業:平成14年
料金: 520円(中学生320円・小学生160円)
温泉:アルカリ性単純冷鉱泉/加温/自家源泉
内風呂、露天風呂、打たせ湯、箱蒸風呂、サウナ、水風呂
ジェットバス、釜・樽風呂、貸切家族風呂(1時間500円)
営業時間:10:00-22:00 札止め21:00
定休日:第2月曜日(祝日の場合は翌日)
駐車場:35台
ロッカー:有(無料)
付帯施設:休憩室、足湯(無料)
無料設備:シャンプー・ボディソープ・ドライヤー
【投稿時最終訪問:2007年6月】