長浜大橋【日本最古の現役道路可動橋】
愛媛県最長の河川である「肱川」。瀬戸内海に肱川が出会う伊予長浜。かつては海運で栄えていた町で、美しい瀬戸内海を楽しむドライブやサイクリングの起点。冬には「肱川あらし」という、川から大量の霧が下ってきて海に流れ出す神秘的な自然現象が起こる町だ。そんな長浜の肱川に、海運が栄えていた頃の名残である歴史的な橋が残っている。
真っ赤でレトロな美しさの長浜大橋
伊予長浜や肱川のシンボルとも言える「長浜大橋」。橋長226m、愛媛一の河川「肱川」の河口にかかる赤がまぶしい立派な橋だ。昭和10年に完成した歴史ある鉄橋だが、この橋は日本最古のある特徴をもった橋である。この橋は現役のものとしては、日本で最も古いバスキュール式(跳ね上げ式)の道路可動橋である。橋の中心部が跳ね上がり、その下に船舶を通すことができる。
長浜大橋から望む肱川上流方面。深い山々を割り、ゆっくりと流れる悠久の大河。愛媛県最大の大河の河口にも関わらず、町は大きく発展していない。そのため、付近には豊かな自然が残っている。どこか懐かしく、それでいて新鮮な日本を強く感じさせる風景だ。また、冬の良く晴れた日には、肱川には「肱川あらし」という神秘的な自然現象が発生する。肱川の中流域にある大洲盆地から大量の朝霧が川を下ってきて、瀬戸内海に流れ出していくという珍しい現象。発生時には雲のような霧で長浜大橋や長浜の町が覆われ、とても美しく幻想的な風景となる。強い川風に身を縮めながら、真っ白な中で鮮やかさを際立たせる赤橋を地元の人が渡っていく。冬には最も美しい、肱川あらしと長浜大橋の姿がある。
どこかレトロな雰囲気を残す鉄橋。建造から75年近く経過してもなお、今も地元の人からは「赤橋」と呼ばれて親しまれている。
ここが可動橋の稼働部分。道路がここから跳ね上げられる。白い建物は操作室。残念ながら現在の橋の稼働は、点検を兼ねて日曜日の13時から週に1回行われるだけである。
昔はここ伊予長浜は、この肱川を下ってくる木材などの集積地としてとても栄えていた。上流には伊予の小京都と呼ばれる城下町の大洲があり、その交流で愛媛の中でも有数の規模を誇った町だったそうだ。かつては土佐藩を脱藩した坂本龍馬はここから船で四国を後にしている。しかし、そしてこの肱川沿いに鉄道が敷かれ、陸運が発達するとこの橋の役目は終わった。当時は頻繁に跳ね上がり船を通していたこの橋の機能も、今では通過する大きな船はなくなり、不要となっている。それでも現在のこの橋は時々跳ね上がり、そして冬には「肱川あらし」の中に浮かんで、多くの人をこの町に人を呼ぶ目玉として機能している。
長浜大橋が架かる長浜の美しい風景
長浜大橋から海の方を眺めると、コンクリート製の立派な橋がかかっている。橋長333mの「新長浜大橋」である。夕やけこやけライン、国道378号線はあちらの橋を渡り、夕日を追うようにさらに西を目指す。この肱川を渡る橋としての役目は、今はあの新しい橋が担っている。新しい橋の向こうはもう瀬戸内海。長浜大橋の上からも潮の香りを感じられ、海鳥が空を舞う姿を見ることができる。
地元の商店街に直結する長浜大橋。「新」長浜大橋がかかっても、こちらは地元の足として、今も多くの人と車が行き交う。幅は5.5mあるので橋上での離合は何とかできるが、入口はポールを立てていて大型車が入れないようにしている。ポールの幅は2mくらいなので、普通車なら少し気をつければ難なく通り過ぎられる。車で訪れたのなら、一度はここを走ってみたい。
また、長浜商店街はどこか懐かしい雰囲気の通り。少し歩いてみると、昔は賑やかだった面影を残す、静かな港町の旅情を感じることができる。
肱川の上流の大きな町は大洲市と西予市があるが、いずれも人口5万人程の町。しかも平成の大合併で相当広い市になっているので、流域にある町の規模はさほど大きくない。そのため、肱川の流れもここ下流までも美しく豊かな自然が残っている。流れる川をのぞきこむと、すきとおった水の中にはいっぱいの魚が泳いでいる。色濃く残る自然と歴史を感じる、美しい場所だった。
なお、7月と8月の夜は長浜大橋は美しくライトアップされる。真っ暗な肱川の上に浮かび上がる赤橋はとても幻想的で、レトロな雰囲気が何倍にも感じられます。松山から夕日が美しいと人気の国道378号線を夕方にドライブして、日没後に長浜大橋のレトロなライトアップを楽しむといったプランもいいかもしれない。
肱川観光に便利な大洲中心部のホテル
長浜大橋
場所: 愛媛県大洲市長浜
料金: 無料
駐車場: 橋の東側に駐車スペースあり(3台ほど)
交通: 松山自動車道・伊予ICより国道378号線を約30分
松山自動車道・大洲ICより県道24号線を約20分
JR予讃線伊予長浜駅より徒歩約10分
橋の開閉: 毎週日曜日13時
【投稿時最終訪問 2008年3月】