旧木下家住宅【神戸市舞子公園】

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風光明媚な松林と淡路島を望む青い瀬戸内海でかつてより保養の地として栄え、明治天皇も足繁く通った神戸市垂水区の舞子。現在も舞子公園や明石海峡大橋、海水浴場などもある神戸市内のマリンリゾートのスポットとして人気のエリアです。そんな舞子に建つ「旧木下住宅」は昭和初期に建てられたかつての実業家の居宅。阪神大震災後にかつての和風住宅が急激に姿を消す中、当時の姿をそのまま残す屋敷として国の登録有形文化財にも登録されています。太平洋戦争直前に建てられた近代的な数寄屋和風住宅はいたるところに工夫をこらした意匠があり、見ごたえのある屋敷は一般公開されており見学することができます。舞子公園散策と一緒に訪れて、美しい日本の風景を楽しめます。

風光明媚な舞子の風景を見下ろす前庭

舞子公園から風光明媚な松林を抜け、線路の高架をくぐった住宅街の中に残る丘に「旧木下家住宅」があります。木製の門をくぐり敷地内に入り、まだ細い道を進むと緑に包まれた中に屋敷が姿を現します。

旧木下家住宅の入口は、この先にある玄関。その前に塀にある門から美しい前庭に出ることが出来ます。前庭からは美しい庭園と明石海峡を望む舞子らしい風光明媚な風景が楽しめます。なお、この通路と前庭の境には伽羅石が敷かれており、旧木下家住宅の見所のひとつとなっています。

旧木下家住宅の敷地は約670坪もある大邸宅。舞子海岸に面する丘の上にあり、明石海峡を眺める展望も望める絶好の立地にあります。広い敷地の中には母屋をはじめ、蔵や納屋、使用人の離れが建ちます。昭和16年築の近代的な建物です。

広い芝生が敷き詰められ、松をはじめとした庭木に囲まれた前庭。旧木下家住宅には前庭と中庭があり、この前庭は公開されており、自由に散策することが出来ます。高台の上にある前庭からは淡路島とそこにかかる明石海峡大橋の風光明媚な風景を借景として臨むことができます。とても美しい庭になっています。

前庭と海を眺める素敵な日本家屋

庭を散策すれば園路に戻り、玄関の引き戸を開けて中に入ります。広い玄関は畳敷となっており、落ち着いた和の装い。ここにある受付で料金を支払い、中にお邪魔させていただきます。

玄関にある扉を開けると、そこは応接室。来客を家の生活を垣間見させずもてなすつくりとなっています。
壁一面の窓でとても開放的な空間で、美しい前庭と明石海峡を見下せる、屋敷の中でも最も眺めの良い部屋で、来客のもてなしが感じられる空間です。和と洋が絶妙にミックスされた内装は昭和前期のシンプルでモダンレトロな空間に高級な調度品。ソファーに座ると気持ち良すぎて、しばらく動くことができませんでした。

応接室から扉を出ると、一気に和風の空間に。庭に面した広縁が屋敷の奥の書院まで続いています。一面の窓と広く長い広縁はひとつづきの空間となって、どこか懐かしくも美しい日本の美を醸し出しています。

屋敷の中心に作られた10畳の座敷。前庭に面した広縁と中庭に面した縁側で庭に挟まれ、そして中室につながったとても開放的な空間です。違い棚や欄間といった数寄屋風の書院造りの特徴をはじめ、広縁の舟底天井や水屋の網代天井などとても独特の意匠が取り入れられており、落ち着きながらも庭や装飾に目を奪われてしまう空間です。

中室は座敷の次に控える6畳の和室。飾り棚がつけられた奥行きのある床の間には見えにくいですが蛇口がついています。蛇口の下には竹が組まれていて、隙間から水が流れていくようになっています。とても趣向が凝らされた設えで、こちらも見所のある部屋になっています。

中の間の前の広縁はさらに幅が広くなっていて、庭の眺めがさらに美しく見えます。畳、板の間、芝生が敷き詰められた美しい空間が一続きになっており、そこに居るだけでも気持ちよい空間です。

中室から座敷を振り返ります。訪問した時期は3月でしたので、座敷にはおひな様が飾られていました。いつの時代のものかはわかりませんが、素人目にもとても立派なもので、和の趣をさらに深くして日本の美を感じさせてくれました。

応接室と同じように、前庭に突き出すように造られた書院。美しい庭と相まって和の装いがとても引き立ちます。

書院は床の間の横に明り取りのために設けられた障子窓のこと。明石海峡に開けた前庭から射し込む光がとてもまぶしい空間です。本来は書物を読むための施設だったそうですので、かつての家主はここでゆっくりと本を読んでいたのかもしれません。

中庭に面した落ち着いた茶室

中庭に面した縁側を奥に進むと日本家屋の真髄ともいえる茶室があります。その手前には待合室があり、茶をたてる準備が整うまで来客が待機するスペースになっています。4畳の狭いスペースですが、丸窓や飾り棚など、シンプルにして美しく装飾がされる素敵な空間になっています。
この先には茶室がありますが、訪問時はイベントで使用中だったため写真はありません。

茶室は竹を使った掛け込み天井になっています。旧木下家住宅には竹を使った飾りや建材がとても多く使われておりひとつの特徴となっています。これは建築されたのが太平洋戦争が始まった頃ということもあり、資材不足を補うために手に入りやすい竹などを工夫して使ったといわれています。今となってはとても独特で特徴的な設えとなっています。

屋敷に取り囲まれるように造られていた中庭。応接室や広縁から眺められる開放感とは真逆で、茶室から眺める中庭には閉塞された空間の中に鞍馬石の振り蹲踞などが置かれ、美しい和の美が凝縮されています。非公開エリアで散策はできませんが、屋内から眺めることができます。

和モダンにあふれる生活の空間

トイレの横にある手洗いが何とも和レトロ感があって素敵です。昭和の趣を残しながらもどこか芸術のような美しさがあります。トイレも昔ながらの和式ですが水洗となっており、木の床で書院造のような飾り棚があるなどとても昔懐かしい趣があります。今のような便利さはありませんが、昔の様式でのトイレを快適に体験できるようになっています。

いつ使っているのかわかりませんが、洗面所と風呂はリフォームされて新しくなっています。見た目は昭和な造りの施設ですが、とても新しいものになっていました。昭和時代の新築もこのような感じだったのでしょうか。時が経つにつれて、レトロな雰囲気を醸し出しそうです。

台所も昭和風に新しくリフォームされています。必要最小限の家電しか置かれていませんが、その気になればコンロなどを置いて本格的に料理をすることが出来る空間です。

茶室脇にある水回り。竹と亀甲網代という、屋敷の天井に多く使われている意匠を設えた和モダンアートな水回り。おそらく昭和の初期に造られたそのもので、令和の今でもとてもおしゃれに感じるエモい空間です。ここでお茶の道具などに水を入れたり洗ったりしていたのでしょう。

玄関から応接室と反対には、浴室・台所に続く廊下。その廊下にはレトロな黒電話が置かれています。玄関近くの廊下に置かれている電話が、和風の昭和レトロを感じます。

平屋のようにも見えますが、旧木下家住宅には2階もあります。階段で登れるようになっていますが、残念ながら非公開です。おそらく明石海峡の風景がとてもきれいに見えるはず。機会があれば登ってみたいですね。

管理棟からは屋敷と舞子の風景を一望

屋敷の裏には管理棟があり、1階には最新式のトイレがあります。また、エレベーターで2階に上がることができ、テラスからは先ほど屋敷の2階から見られなかった風景を眺めることが出来ます。

2階には旧木下家住宅の管理事務所があります。管理室の一角は眺めの良い研修にも使えるスペースとなっており、見学者用の休憩室として開放されていることもあります。開放的なガラス張りの部屋からは、屋敷の屋根越しに風光明媚な舞子の風景を望めます。

2階のテラスからは旧木下家住宅を見下ろせるほか、舞子公園の松林や淡路島まで一望できる風光明媚な光景が見ることが出来ます。近年になりマンションなどの建物が出来て見える範囲は狭まってしまいましたが、かつては海が一望できる素晴らしい屋敷からの眺望だったのでしょう。

■舞子公園のリゾートホテル

旧木下家住宅

住所: 兵庫県神戸市垂水区東舞子町11-58
電話: 078-787-2050
営業時間: 10:00~17:00 (入館16:30まで)
休業日: 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
料金: 100円
交通: JR・山陽電鉄舞子駅から徒歩5分
駐車場: なし

【投稿時最終訪問 2017年2月】

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