JR神戸線「須磨~塩屋間」で味わう、走る初日の出
元旦最大のイベントといえば、やはり初日の出。
一年の始まりに、はじめて昇る太陽を迎えるその瞬間は、古くから神聖な儀式として大切にされてきました。
それは山頂や岬、海岸線といった“特別な場所”で拝むのが定番ですが、実は関西の都市部に、驚くほどユニークで、しかも気軽に体験できる初日の出スポットがあります。それが、JR神戸線・須磨~塩屋間。
大阪へ向かう通勤電車が走る路線の中で、これほど長時間にわたり海のすぐ横を走行する区間は、ほかに類を見ません。
駅と駅の間のほぼすべてが海。
日常では「通勤途中の癒し」として親しまれているこの車窓が、元旦の朝には、特別な“舞台”へと姿を変えます。
そう、ここでは電車に乗りながら、海から昇る初日の出を迎えることができるのです。
大パノラマの海を目の前に、初日の出電車は走り出す

確実に初日の出を電車内から拝むため、今回は塩屋駅で下車。
須磨駅は須磨海岸で初日の出を見ようとする人で非常に混雑するため、時間調整や乗車のしやすさを考えると塩屋駅がベターです。
ホームの先端から海の様子を確認し、いよいよ電車に乗り込みます。
この日は水平線に雲がなく、日の出時刻は比較的正確。選んだのは7時8分 塩屋駅発の電車でした。
なお、水平線に雲がかかると日の出は遅れます。その場合は乗車する電車を後ろにずらす判断が必要です。
この次の電車は8分後の7時16分発。都会の路線なので、すぐに電車が来るのも非常に便利なポイントです。

先頭車両に乗り込み、静かに発車する電車。
塩屋駅を出てすぐ、車窓いっぱいに広がるのは、遮るもののない海の大パノラマ。都市部とは思えないほど、視界は一気に開けます。
やがて、水平線の向こうが淡く染まりはじめ——
海から、新年最初の太陽が顔を出しました。

流れる車窓の中で、ゆっくり、確実に昇っていく初日の出。
正確には水平線ではなく海の向こう、遠くにある紀伊山地から太陽が昇るので、少しだけ初日の出のタイミングは遅れます。
ガタンゴトン、と規則正しく響く走行音。
通勤電車で毎日見ているはずの風景が、この瞬間だけは、どこか神々しく、胸を打つ光景に変わります。

塩屋方面からの電車には、須磨海岸へ向かう人の姿はありません。
車内にいるのは、仕事へ向かうような乗客が2人ほど。
「お正月からお疲れさまです」——そんな言葉が自然と浮かぶ、静かな車内。
日常と非日常が交差する、この時間こそが、この初日の出体験の醍醐味なのかもしれません。
須磨駅到着、そして“もうひとつのオススメ初日の出スポット”へ

JR神戸線の中でも駅間距離が長い須磨~塩屋間。
初日の出を眺めながら走るうち、電車は須磨海岸の目の前にある須磨駅へと到着します。
ここで折り返しの運賃清算のために下車し、駅を出て須磨海岸でも初日の出を迎えることにします。

須磨駅に到着。
改札を抜けた瞬間、目の前に広がるのは、関西屈指の海水浴場・須磨海岸。
ビーチには、初日の出を拝もうと集まった人々がずらり。
すでに日の出の瞬間を見終えた人たちが、ホームへと戻っていく姿も見られました。

駅を出て数歩で砂浜。
これほど海に近い駅が都市部に存在すること自体が、まさに奇跡です。
天候にも恵まれた穏やかな元旦。
凪いだ海が奏でる、やさしいさざなみの音が、一年で最初の朝を静かに包み込みます。

海から昇る太陽、美しい砂浜、その背後に連なる神戸の街並み、そして須磨駅。
東南方向に大きく開けた神戸には初日の出スポットが数多くありますが、アクセスの良さ、視界の広さ、開放感を総合すれば、須磨海岸は市内屈指の名所と言って間違いないでしょう。

須磨から塩屋方面へ戻る電車に乗り込みます。
西行きの電車は海側のレールを走るため、さらに海が近く感じられるのが特徴。
通勤とは逆方向のため、車内はほぼ無人。
昇りきった初日の出を眺めながら、静かに揺られる電車。
“走る初日の出”と“歩いて迎える初日の出”。
その両方を味わえる、贅沢で心に残る一年の始まりとなりました。
※神戸市の初日の出時刻 7:06
※2024年初日の出のレポートです


