雲海に浮かぶ天空の城【立雲峡と竹田城】
立雲峡は、標高757メートルの朝来山の中腹に位置し、古くから山陰屈指の桜の名所として知られ、「但馬吉野」という別名がつくほどの美しい景勝地です。
春には何百本もの桜が山肌を淡く彩り、地元でも特別な花見スポットとして親しまれてきました。しかし、近年その人気に火をつけたのは、何といっても竹田城跡を“真正面から、最も美しく”望むことができる絶景展望地としての魅力です。
特に10月から11月の明け方から午前8時頃。
よく晴れ、前日に湿度が高く、夜間にぐっと冷え込んだ日——そんな気象条件が整うと、竹田城が雲海に浮かび上がる“天空の城”の姿を望むことができます。紫がかった夜明けの空、静かにたなびく白い雲、その中に浮かび上がる石垣のシルエット。
誰もが息を飲む幻想的な光景が、ここ立雲峡では目前に広がるのです。
雲海を見るなら日の出前に到着したい立雲峡

立雲峡には約60台分の駐車場がありますが、雲海のシーズンともなると状況は一変します。明るくなる頃にはほぼ満車となり、やむなく途中の道路脇に駐車する車列が延々と続きます。
特に週末は混雑必至。雲海を狙うなら、夜明け前の暗いうちに到着する心づもりが必要です。
雲海を目的としないのであれば、朝8時を過ぎると急に混雑が落ち着きます。雲海狙いの車が一斉に下山するため、このタイミングを狙って訪れるのも賢い選択です。

登山口は駐車場からすぐ。かつては桜の季節を除き、無料で自由に登山できましたが、竹田城の人気急騰に伴い入山管理が強化され、現在は有料・時間制限付きとなっています。
ここで入山料を支払い、立雲峡の静かな森へと足を踏み入れます。
天空の城と出会うために登る、雲の上へ!

第3展望台は駐車場からわずか5分ほど、標高300mほどの位置にある最初の展望台です。ほとんど登る感覚がないほど気軽にアクセスでき、竹田城の全景も視界に入ります。
ただ、訪れる人はほとんどいません。

標高が低いため雲海の水位が高いと城跡が雲に沈んで見えなかったり、竹田城の手前を大きな高圧電線が横切るため、写真撮影には不向き。雲海撮影を目的にするなら、ここからさらに上を目指すべきでしょう。

有料化されて以降、立雲峡の登山道は手入れが行き届き、幅も広く、とても歩きやすくなっています。落ち葉の絨毯を踏みしめ、木漏れ日の中を進む道は、登山初心者にも安心。
とはいえ山道であることに変わりはないため、ヒールや革靴は論外。最低でもスニーカー、できればトレッキングシューズを用意したいところです。

標高約350m、駐車場から15分ほどで到着する第2展望台。ここも人影はまばらで、訪れる人はやはり最上部を目指しています。
まだこの高さでは雲海が高く、竹田城はその奥深くに潜んだまま——白い雲の海に隠れて姿を見せません。
しかし、この辺りに差し掛かる頃、空気がふわりと明るく変わります。山際から昇る朝日が雲海を照らし始め、薄く金色を帯びた光が一気に山肌を染め、景色に劇的な変化が訪れます。

第2展望台を過ぎたあたりで、雲海の水位が下がり始めます。
そして白い海原の奥から、光を受けた竹田城跡がすっと姿を現す——まるで雲の中から艦影を現した巨大戦艦のよう。
「ラピュタ」と称される所以は、この瞬間にこそあります。
ラピュタと称される竹田城ですが、これは劇中で、真下の雲から突然巨大戦艦ゴリアテが雲を割って姿を現すシーンを彷彿とさせ、思わず心が震えます。
雲に浮かぶ天空の城!
の奇跡の絶景

第1展望台は標高約420m、駐車場から40分ほど。ここが立雲峡の主要展望台です。
途中、小さな「竜神の滝」を通り過ぎ、振り返ると雲海の大パノラマが広がります。白い雲が山々をのみこみ、峰だけがぽつりぽつりと島のように顔を出すさまは、まさに自然が描く墨絵の世界。
斜面のあちこちには平坦に整地されたスペースがあり、レジャーシートを広げて腰を下ろす人の姿も。気温は低いですが、湯気の立つ温かい飲み物を飲みながら絶景を眺める時間は、この上なく贅沢です。

第1展望台の上部には、新しく造成された「立雲峡テラス」があります。
空が完全に明るむ前にもかかわらず、既に多くの人が集まり、老若男女が思い思いにカメラを構えています。
早い人は、白く広がる雲海の向こうで昇る朝日——“雲海に登る日の出”を狙って何時間も前から待機するほど。
ここは、立雲峡の中でも最も竹田城を美しく撮影できる“特等席”と言えるでしょう。

立雲峡テラスにはフォトスポットが設置され、雲海に浮かぶ竹田城をバックに撮る写真はまさに映え確定。SNSでも人気の撮影場所となっています。

目の前に広がる光景は、まさに「雲の海」。
雲が水平線のように広がり、山々が島のように浮かび上がる幻想的な風景は、この場に立つ人すべてを無言にさせるほどの迫力です。

そしてその中心で、竹田城がまるで海を進む戦艦のように雲海の上に静かに浮かんでいます。流れゆく雲は、まるで船が切り分ける波しぶき。その躍動感は自然の演出とは思えないほど。

竹田城が見せる“天空の城”という姿は、雲が城をそっと包み込み、一部だけが浮かび上がる神秘的なものです。
雲のヴェールに隠されたその輪郭は、まるで大空を漂う孤島の要塞。
視界に入るだけで胸が高鳴る、非日常の景色がここにはあります。

よく見ると、竹田城跡の上には小さく人影も見えます。開門と同時に登った人たちが、雲の上に立つ城からの眺めを楽しんでいるのでしょう。
竹田城跡は早朝登山が可能で、12月上旬までは朝5時から開門されています。ただし冬季は積雪により閉鎖され、登ることができなくなります。
雲海と竹田城、そして朝日。
この三つがそろった瞬間、立雲峡はまさに奇跡の舞台となります。
一生に一度は見たい絶景。その舞台の一つとして、立雲峡はこれ以上ないほどの魅力を放っています。
竹田城下の町屋の宿
立雲峡
所在地: 兵庫県朝来市和田山町竹田
電話番号: 079-674-2120 (情報館天空の城)
料金: 300円 (中学生以下は無料)
期間: 通年
休み: 無休
時間: 5:00~
交通: 北近畿豊岡自動車道・播但連絡道路/和田山ICより車で約10分
駐車場: 約60台(無料)
【投稿時最終訪問 2023年10月】



