辻川山公園【妖怪ベンチと河童の池】
兵庫県福崎町。姫路市の北部に位置する町で、美しい市川が流れる盆地の町。古くは街道が交差する交通の要衝として栄えていました。現代の知名度はお世辞にも高いとは言えませんが、近年「妖怪ベンチ」が注目されています。
福崎町の店舗にリアルな妖怪の実物大フィギュアが座るベンチがいくつもあり、町内を散策すると、多くの妖怪たちに出会うことができます。これは福崎町の出身で、日本の民俗学の父と呼ばれる柳田國男氏の著書「妖怪談義」に着想を得た町おこし。そんな妖怪たちが池から飛び出し、空を舞う公園で、柳田國男氏の足跡をたどる博物館などがあり、妖怪ベンチ巡りの拠点となるのが「辻川山公園」です。
妖怪ベンチ巡りの拠点にもなる辻川山公園
辻川山公園は中国自動車道福崎インターからもほど近い場所にあります。駐車場もあるので車での訪問が便利です。この中では、河童や天狗といった動く妖怪、そして全国妖怪造形コンテストの入賞作品が迫力の巨大な像となって飾られています。「三木家住宅」や「旧辻川郵便局」といった歴史ある建物も公園すぐのところになあるので、ぜひ一緒に見学したいです。
福崎町の妖怪ベンチのひとつ「油すまし」も、この辻川山に あります。瓶から流れ出した油が妖怪となる不気味ながらも見事な造形には見入ってしまいます。
妖怪ベンチは2020年7月現在で14カ所。今も少しずつ増え続けており、辻川山公園から福崎町へ散策すると、多くのベンチに腰かける妖怪たちに出会えます。
なお、辻川山公園向いにある「もちむぎのやかた」というお店に「座敷童子」の新しい妖怪ベンチができました。かわいらしい妖怪ですので、ぜひ忘れずに訪れたいです。
福崎町のキャラクター河童のガタロウとガジロウが住む池
公園に入ると池があり、ここに河童の兄弟が潜んでいます。柳田國男氏の著書をに出てくる河童より造られた妖怪キャラクター、「ガタロウ」と「ガジロウ」です。恐ろしすぎる着ぐるみゆるキャラにもなっている、福崎町を代表する妖怪です。
池のほとりにはベンチと妖怪像があります。のどかな風景の中に、いくつもの妖怪がいるの風変わりした場所です。
よく見ると、池の中に訪れる人を驚かせようと息を潜める河童の姿がまる見えです(笑)
池の中にいるのは、河童兄弟の弟、ガジロウ。9時~ 17時の毎時0分・15分・30分・45分(6~9月は18時まで)に水中から飛び出してきます。
時間になると、静かだった水面がボコボコと突然激しい音を立てて泡立ち始めます。
コンプレッサーの音が聞こえるのは・・・たぶん幻聴です(笑)
水中から恐ろしい形相で、ガジロウが出没!
何も知らなかったらこれ程怖いものはありません。しかし人々は驚くのかと思いきや、待ってましたの大喝采。大人気のガジロウさんです。
ガジロウと一緒に水から出てくる兄のガタロウですが、この時は橋の下に隠れキャラのように潜んでいました。ガタロウが手に持っているのは尻子玉。河童が人間のお尻の穴から抜き取るものと言われており、これをとられた人間は腑抜けになるそうです。川で尻子玉を抜かれた人間は溺死してしまうとか・・・
池のほとりには尻子玉を手にしたガタロウの像もあります。お皿が乾き動けなくなり、池のほとりで固まっているそうです。よくみると尻子玉が2つも。悪さし放題です。
大迫力の全国妖怪造形コンテストの最優秀作品妖怪たち
「招き鵺」(第3回全国妖怪造形コンテスト一般の部 最優秀作品)
2014年から2018年まで5回にわたり、福崎町で「全国妖怪造形コンテスト」が開かれ、各回の一般部門最優秀作品が、大型FRP像として公園内に設置されいます。
顔はサル、胴体はタヌキ、手足はトラ、尾はヘビという恐ろしい形相の鵺(ぬえ)
口の中からまた別の生き物がのぞいているあたり、とても禍々しく感じます。
「天狗の森の妖翁」(第1回全国妖怪造形コンテスト一般の部 最優秀作品)
青い目が黒い体の中で鋭く輝いています。賽銭箱が天狗の前に置かれており、その眼力についつい財布のひもをほどいてしまいそうになります。
「怪しい抜け道」(第4回全国妖怪造形コンテスト一般の部 最優秀作品)
立入禁止と立て札がある竹やぶに、遅刻しそうになったため近道で入り込んだ女子高生。その背後に迫る砂かけ婆の不気味な気配に恐れる表情がとてもリアルです。
「輪廻の輪」(第5回全国妖怪造形コンテスト一般の部 最優秀作品)
深夜の山中で神楽の囃子をしているというやまばやし。獅子舞のような恐ろしい妖怪のまわりに小さな動物の妖怪が楽器を奏でて踊っており、少しほんわかとした賑やかな雰囲気を感じます。
高い場所にある小さな小屋には天狗が住み着いています。時間になると、小屋から天狗が飛び出して、空を滑空します。筋肉モリモリで恐ろしい形相の天狗ですが、逆さまになり、大好物の福崎名物のもちむぎどら焼きを美味しそうに持っているあたり、どこか憎めません。
天狗の出没時間は9時5分~ 17時5分の毎時5分・20分・35分・50分。6~9月は18時5分まで出てきます。残念ながら訪れた日はメンテナンス中で、河童もステイホームでした。
柳田國男の足跡をたどる資料館や神社
柳田國男・松岡家記念館
柳田國男は明治8年に福崎町・辻川の松岡家に生まれました。東京帝国大学後に官僚というエリートコースを歩みながらも、大正8年に退任し、学者として民俗学の礎をつくりました。
國男の生家である松岡家の大成した兄弟も共に顕彰するために記念館となっています。
神崎郡歴史民俗資料館
福崎町のある神崎郡の歴史や生活用具、農具などの民俗資料を展示する資料館。明治19年に建てられた神崎郡役所を移築・復元したもので、明治時代の建築物としても価値があります。
柳田國男生家
昭和49年に公園内に移築され、保存されています。日本一小さな家と柳田氏は著書に記していたそうですが、いやいやどうして、立派なご自宅です。文化財としての価値も高く、内部を見学することができます。
鈴の森神社
鈴の森神社は、学問や安産などにご利益があるといわれている神社です。絵馬を奉納すると願いが叶うといわれており、多くの参拝客が訪れます。柳田國男氏が、子供の頃によく遊びに来ていた場所で、境内にある大きなヤマモモの木や狛犬は、氏にゆかりがあると言い伝えられています。
公園には広い東屋もあります。思った以上に見所がたくさんの辻川山公園。自販機も公園内にあるので、付近の妖怪ベンチや歴史的建造物をめぐる前に、ここで一息つくのもいいでしょう。
辻川山公園
場所: 兵庫県神崎郡福崎町西田原1038-12
電話: 0790-22-0560
時間: 24時間 (資料館は 9:00~16:30)
休み: 無休 (月曜・祝日の翌日・12/28 ~ 1/4)
交通: 中国自動車道・福崎ICより約5分
駐車場: あり(無料・14台)
【投稿時最終訪問 2020年3月】