国立天文台三鷹キャンパス【一般見学無料】
調布飛行場の近くを通る天文館通という道。自然が多く残る閑静な住宅街を抜ける道で、その途中に国立天文台の本部があります。日本が誇る天体観測の権威で、その重厚な門構えは近づきがたいものがありますが、無料で一般見学ができる施設です。
天文学なんて難しいと思う方も多いとは思いますが、とても分かりやすく展示がされています。また、明治や大正時代の望遠鏡や7件もの登録有形文化財に指定されているレトロな建物や都内とは思えない豊な自然など、天文学以外にも見所がたくさんある場所なのです。
気軽に見学できる最高峰の天文研究施設
まるで大学の様な国立天文台の正門を入ると右側に守衛所があります。入場は無料ですが守衛所で記帳をして入構の受付が必要です。門を入って左側には自転車置き場もありますので、サイクリングの途中に立ち寄る事もできます。守衛所も大正13年に建築された木造洋風建築で、登録有形文化財に指定されている貴重なものです。
正門を入ると、まさに研究機関や大学といった雰囲気。本当に見学していいのかとちょっと不安になったりもします。
国立天文台の三鷹キャンパスの広大なキャンパスには、都内の市街地とは思えない豊かな自然が残っています。森の中を散策しているだけでもとても気持ちが良いです。見学をするにもかなりの距離を歩くことになるので、建物の一部が自販機のある休憩室として整備されていたりもします。まずは守衛所を入って左側、南へと進みます。
築100年を越える「第一赤道儀室」
「第一赤道儀室」は1921年に建造された国立天文台三鷹キャンパスの中でいちばん古い建物。木製のドームからはたっぷりのレトロ感が漂っており、2002年に登録有形文化財にも登録されています。
中は見学することができます。年代物のコンクリートの階段を登り、レトロな木の扉をくぐって中に入ります。
天文台の中には1927年に設置されたカール・ツァイス社の大きな製赤道儀があります。60年以上、太陽の黒点観測に利用されていたそうです。
設置されている赤道儀は口径20cmの巨大なもの。現在は観測に利用されていませんが、実際に太陽を映し出して学芸員さんが説明してくれます。国立天文台の三鷹キャンパスはに豊かな自然が多いとはいえ、都内にあるため星空の観察には適さず、今は主に太陽の観察に注力しているそうです。
赤道儀とは天体の動き(日周運動)にあわせて星を追いかけるシステムで、速度調整機構付重錘式時計駆動という方式で太陽を追っています。現在のものにに比べると古いアナログなもので、機械仕掛けのギミック感がとてもレトロに感じます。
深い森に点在する登録有形文化財の建物
第一赤道儀室の前から西に向けて歩きます。さらに深い森の中を進みます。この先に本当に見学施設があるのか心配になってしまうくらいの自然の豊かさです。調布飛行場のすぐ東側にあり、付近には高いビルやマンションがなく、広大な森が残る敷地は、散策するだけでも都内にいることを忘れさせてくれるほど静かで自然が豊かな場所です。
「太陽塔望遠鏡」(太陽分光写真儀室)
1930年に建設された地上5階、地下1階建ての鉄筋コンクリート造りの建物で、屋上に太陽観測用の望遠鏡が備えられています。ドイツのポツダムにある相対性理論の実測検証をするために建てられた「アインシュタイン塔」と同じ造りで、太陽観測用の望遠鏡も姉妹機が備え付けられています。観測は1968年に終了しており、現在は外観のみ見学することができます。建物は登録有形文化財に指定されています。
巨大な建物と望遠鏡の大赤道儀室
「大赤道儀室」は天体観測の建物がいくつもある三鷹キャンパス内構内で一番大きなドーム。1926年建築の鉄筋コンクリート2階建。2階は巨大な屈折望遠鏡が設置された木製のドームとなっており、1階は望遠鏡の台座となっています。現在は「天文台歴史館」としてパネル展示などを行う施設となっており、1階も2階も見学可能です。
大きなドームの中に鎮座する、カール・ツァイス社製で口径65㎝の日本最大の屈折望遠鏡。それはまるでロケットのようです。昭和 4年から観察が開始され、恒星観察に使用されていましたが、現在は運用は停止されその場で展示されています。よく見ると表面の塗装が剥がれている場所もありとてもレトロな品。巨大な木製のドームと相まって、前時代の遺品のように感じます。
とても巨大な望遠鏡のため、望遠鏡がどんな角度になっても観測者が見られるように、床自体が上下に昇降して接眼部の高さを調整していました。観測の終了に伴い、床も今は固定されています。巨大な望遠鏡の他にも様々な機器が展示されています。
階段を降りると、望遠鏡のフロアの下に出ます。巨大な天体望遠鏡を支える土台があります。2階の床が固定された今はもう一つの展示室となっており、世界各地にある天文台の写真や歴史的な観測装置が展示されています。
2階フロアの木製の床を階下の1階から見上げると、とてもレトロなつくりに見えます。かつて最新鋭を誇りながらも役割を終えた施設はとても不思議な魅力にあふれています。
天文観測を紹介する展示室
研究施設の1棟が展示室として開放されています。天文台で行っている研究が紹介されています。
展示室では、天文観測施設や人工衛星などの紹介や、それらが観測した天体の説明などが展示されています。難しい内容ですが、パネルや観測装置の模型などがあり、わかりやすく説明されていて興味深い内容になっています。
貴重な望遠鏡が保存される子午儀資料館
「子午儀資料館」は1925年に建設された鉄筋コンクリート造の平屋建の建物で、登録有形文化財に登録されいてます。子午儀資料館の中には貴重な子午儀を多数展示・保存されています。子午儀は南北を結んだ子午線方向のみ正確に向きを変えて観測できる天体望遠鏡です。
内部で保存されている「レプソルド子午儀」は国指定の重要文化財に指定されています。有効口径135ミリの子午儀で明治13年にドイツで製造された貴重なものです。かつては海軍の天文台で使用され、その後この三鷹キャンパスで恒星の位置観測を行っていました。
明治時代の天体望遠鏡のゴーチェ子午環室
「ゴーチェ子午環室」は、半円形のドームの鉄筋コンクリート造りの建物で、レトロで奇抜なその形は目を引きます。この建物も登録有形文化財に登録されている貴重なもので、2000年まで天体観測を行っていました。内部にはゴーチェ子午環が保存されています。
旧日本軍の施設や北海道の農場施設にも見える建物。半円形の屋根が特徴で、屋根の中央を開いて観測していたそうです。
大事に保存展示されている「ゴーチェ子午環」。明治36年にフランスのゴーチェ社が制作した子午儀で、現在の価格にして約4億円もしたそうです。有効口径は20cm、焦点距離は310cmで、1982年まで運用されていました。
広大な芝生広場に並ぶ数々の観測施設
キャンパスの一番奥まで行くと、広大な芝生広場に出ます。今まで森の中を歩いていたので、これだけ開けた場所は驚きです。
芝生広場の中には巨大な6mミリ波望遠鏡が設置されています。通常はこのような施設は塔の上や高い山の頂上にあるので、手が届きそうな目線の高さで間近で見られるのは貴重です。
東京の市街地の中にこれだけ広い空間があるのには本当に驚きです。百葉箱のような小さな小屋には、何かの観測機器があるようです。
秘密基地のような天文機器資料館
「天文機器資料館」(自動光電子午環)
1982年に建設され、2000年までカール・ツァイス社製の自動光電子午環による観測に使用されていました。観測を終了している一世代前の天体望遠鏡ですが、それでもゴーチェ子午環と比べると格段に精密な天体観測ができたそうです。
建物自体を天文機器資料館として公開されています。無機質な銀色のドームの内部は、まるで秘密基地の様。建物の内側にも関わらずとてもひんやりとしています。自動光電子午環をはじめ、座標観測定器や位置情報システム、天体写真儀などの観測機器がたくさん収蔵されています。どれも貴重なものですが、まるで倉庫の中で眠っている機械を見ているような気がします。
わかりやすい展示と、普段は見ることがないレトロな建物や品々に囲まれた国立の研究施設。とたも広い敷地で見応えたっぷりの見学は思った以上に時間がかかります。せっかくの機会なので、ゆっくりと見学したいですね。
国立天文台 三鷹キャンパス
住所: 東京都三鷹市大沢2-21-1
電話: 0422-34-3600
営業時間: 10:00~17:00 (入場16:30まで)
休業日: 年末年始
料金: 無料
交通: JR武蔵境駅よりバス15分・京王線調布駅よりバス15分
駐車場: 54台(はじめの3時間500円・以降1時間ごと200円)
【投稿時最終訪問 2018年3月】