桜の松山城【黒門口と古町口登城道】

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愛媛県松山市の桜の名所のひとつであるのが「松山城」。標高132mの小高い山の上にそびえ立つ、江戸時代の天守閣をそのまま残す歴史ある城郭。桜を纏った松山城には日本の美が凝縮されている。
山の上にある松山城にはリフトとロープウェイが通じているが歩いて登ることもできる。ロープウェイの運航前の松山城にはほとんど人はおらず、美しい桜と城郭の絶景を静かに堪能することができる。
朝早く、観光客が訪れ始める前には散策や体力づくりを目的に城山に登る人も多い。今日は4つある松山城の登城道の「黒門口登城道」と「古町口登城道」を1往復ずつ歩くことにする。

松山城下の城山公園で静かな朝のお花見

松山城朝の桜

松山城を取り囲むお堀にはもうすでに桜が見事に咲き誇っている。朝日を浴びて、幻想的に輝く桜は、朝早いこの時間でしか見られない、美しい光景だ。桜の時期には多くの花見客で賑わう堀端も朝早くはとても静かで心地よい桜の散策が楽しめる。

松山城山公園

松山城は市街地のど真ん中に残る小高い山の上にある。標高は132m。自然がそのまま残る山の中の登城口を登っていく。松山城は日本三大平山城にも数えられ、その天守閣は日本に12か所しか現存しない、江戸時代に造られた天守の一つである。城山の麓には広大な城山公園があり、春には桜が見事に咲き誇る。

黒門口登城道で登る春の松山城

黒門口登城道

最初に登るルートは、江戸時代の正規の登城道だった「黒門口登城道」
巨大で立派な石垣が残る中を登っていく。まだ朝の早い時間だが、お城まで散策やトレーニングで登って行く人も何人かいる。中にはなぜか、ホラ貝を持った人まで・・・

二之丸史跡

松山城の正式な登城道だった「黒門口登城道」にとりつく。「城山公園」の端、二之丸史跡からうっそうとした森の中を登っていく。すぐ近くに見える観覧車がある場所が松山の中心部。松山はこの松山城が市内のどこからでも見えるよう、建物の高さ制限が厳しく、高い建物が少ない。

松山城黒門口登城道

うっそうと茂る森の中、石段がずっと続くの道を登っていく。県庁所在地の中心部から一歩踏み込んだだけでこの濃い自然。小鳥のさえずりの中、路面電車の音や車の走る音が木々のあいだをすり抜けて、聞こえてくる。町の雑音は何ともよろしくはないが、江戸時代と現在をつなぐ何かにも思えてしまう。

松山城黒門口登城道

どんどん登城道を登っていく。森の中を貫くように城へと続く道。昔はここを多くの侍が行き来していたのだろうと思うと不思議だ。
そう思っていると、突然森の中にホラ貝の音が鳴り響き始めた。どうやら先ほどのホラ貝を持っていた人が、途中で練習を始めたようだ。いや、練習とはいえないほど見事な腕前。ホラ貝が鳴り響く中、城へと続く古の道を登っていく。まるで、城へと馳せ参じる当時の侍になった気分で、足どりはとても軽い。

松山城戸無門

15分ほどで戸無門まで登ってきた。ここからは市内の風景が一望できる。ここでは多くの桜の木が迎えてくれる。

早朝の松山城で桜と城の絶景を一人占め

桜の松山城

登城道を登り切ると、一気に森は無くなり、空が開ける。松山城に到着だ。
朝日に照らされた美しい桜とお城が出迎えてくれた。松山城には、日本の美を感じさせる美しい風景があった。

春の松山城

松山城本丸にたどり着いた。ここにはいっぱいの桜の木があり、花見の時期になると多くの人であふれるが、ロープウェイの運航前の早朝にはまだ人はいない。見事な桜と松山城の風景を一人占めだ。

桜の松山城

訪問時はまだ咲き始めの頃だったが、それでも個体によっては見事に花を咲き誇らせている。美しい城壁の縁にあるベンチに座り、コンビニで買ったサンドイッチとコーヒーで、ひとりプチ花見。すると、開門の時間を知らせる太鼓が打ち鳴らされる。
城と桜、そして伝統的な日本の音。幾重にも重なって奏でられる日本の美を、贅沢なくらいに満喫する。

松山城の桜

松山城の見事な城壁を彩る春の色。ウグイスが遊び、「ホーホケキョ」と春の音を奏でてくれる。
さて、写真右上、城壁の隙間から出ている道が「古町口登城道」ここからいったん下山する。

古町口登城道で感じる松山城の奥深さ

松山城乾門

天守閣を回り込むように進むと、「乾門」にたどり着く。ここから「古町口登城道」で松山城をいったん下山する。

松山城石垣

桜に彩られた本丸を見上げる。緻密で精巧に組まれた、見事なほど美しい石垣が重なる風景は圧巻。

松山城天守閣

見上げる松山城の天守閣。松山城の天守閣は黒船が訪れた翌年に完成した、江戸時代最後の天守閣。いわば、日本の城郭建築の集大成がここにある。
その見た目の美しさと裏腹に、この城を落とすために攻め入った兵が自分だったと考えると何度もぞっとさせられる。本丸を守る壁に開けられた幾つもの鉄砲穴から容赦なく鉛玉を浴びせられる。美しさの中にあるその凄まじい防御力を感じられるのも、この松山城の魅力だ。

古町口登城道

さて、乾門を出て古町口登城道を下りはじめると、突然分岐に出会う。道標などはないが、どう見ても道は右へ下る道が正規ルートのようである。
しかし左に行く道も広くしっかりしていて、しかも尾根伝いの道。ひねくれ者の僕は、好奇心に導かれ、わざわざ左の道へと進む。

古町口登城道

道は尾根伝いから斜面を下っていく道に変わる。どこに出るのかはわからないが、しっかり道が付いているのでしかるべき場所に出るだろう。
しかし、とても深い森だ。まるで登山に来たよう。ここから100mほど直線距離で移動すれば、そこは車や電車が行き交い、ビルや店が並ぶ商店街だ。この森は深く静かとはいえ、空からクラクションや電車の音が降り注いでいる。県庁所在地の町の中心部に、これだけの深い森が広く残っているのもとても珍しく思える。

古町口登城道

道はやがて古町口登城道に合流した。しかし合流する付近は道ではなく踏み跡だけと化し、急斜面を下りるようになっている。古町口登城道から見れば、そこに松山城に登れる道がもうひとつあるなんて見た目わからない。看板や道標も出ていない。隠された松山城へのもう一つのルートだった。

古町口登城道

「古町口登城道」の入口にたどり着いた。オフィスビル群の裏にあり、看板も何もない。まさに、地元の人だけが知っている道で、観光客の姿は無い。子供連れや老夫婦がジャージでこの道を登っていく。

古町口登城道

さてもう一度、今度は「古町口登城道」で松山城に登り返す。道は広くなだらか。階段などの段差は少なく、歩きやすい。ここが町の中心部かと疑いたくなるほど、深い森の中、山の中をのんびりと登っていける。
古町口登山道は大正時代に作られた道ということもあり、石垣などの史跡は感じられない。そのかわり、町の中にありながら手つかずの自然の中、気持ち良いプチ登山を楽しめる。

古町口登城道からの松山城

もう一度、松山城に到着。見上げる小天守が空にそびえる。

松山城石垣

天守閣を守る石垣を見上げる。垂直に近い断崖絶壁を登ることすら難しいのに、上から容赦なく射撃や投石の攻撃。江戸時代や戦国時代に生まれなくて良かったと本当に思う。この城を攻める兵の立場になると、何度も松山城の固い防御を実感する。

松山城野原櫓

本丸脇にある「野原櫓」(重要文化財)には無料で入れる。日本で唯一現存する望楼型二重櫓。この歴史ある建物の中から、先ほど石垣を見上げていた場所を見下ろせる。
あれだけ垂直に感じられた石垣も、上から見ると斜度を感じられる。責めるには難しく、守るにはたやすい造りになっている事を実感する。確かにこれは責めるより、守りの攻撃をする方が楽だ。とはいえ、籠城して守るのもやはり嫌。
実際、松山城での戦闘は無かったようだが、一時朝敵として土佐藩に松山藩は占領されている。その時は不戦・降伏を選んだが、もし抗戦をしていたら、この場所では壮絶な攻防があっただろう。そしてこの松山城、このように美しく今の世に残っていなかっただろう。歴史の「if」を感じる光景だ。

松山城根性桜

ふと桜の木の足元に根をやると、根に咲く「根性桜」を発見。頭上には見事に桜が咲き誇り、城とコラボして日本の美を演出し、多くの観光客がカメラを向ける。誰にも知られずにひっそりと咲く花。そこにはまた違う美を感じられた。

松山城早朝登城に便利なホテル

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