紅葉の湯布院郊外 美しい散策

最終更新日

Comments: 0

湯布院。日本第3位の湧出量を誇る温泉ながら、以前はとてもひなびた温泉だった。高度経済期に乱立するリゾート開発を地元は断固拒否し、昔ながらののどかな風景が残った町。湯布院には温泉街独特のネオンがない。そもそも比較的小さな規模の落ち着いた旅館が田園風景の中に点在するため、温泉街自体存在しない。そんなのどかな風景と、個人のアーティストがアトリエやショップを構える小さな町だ。

湯布院

僕が湯布院に訪れたのはもう10数年以上も前。この町を気に入り、よく訪問しているが、最近は町の様子が変わり始めた。
湯布院観光の中心、「湯の坪街道」は、休日になればまるで祭りのように人があふれる。中には、日本語を離さない外国人が団体となり、我が物顔で道のど真ん中を闊歩し、大勢の人混みを掻き分けて観光バスが裏路地に突入してくる。さらには店舗でのトイレの提供はなく、公衆トイレでは行列。我慢できない子供が泣き叫んでいる。
かつては個人のアーティストがアトリエを出していた店は、来るたびに企業の土産屋に変わっている。湯布院の人気が向上したことで、地価も相当高騰しているそうだ。家賃を払えなくなったアーティストが退き、資本に物をいわせて企業が進出し、画一的な商品で商売をしている。そんな構図を否応なしに頭の中に描いてしまう。
今回湯の坪街道では、なじみの店3つに立ち寄っただけで、他は興ざめで素通りした。確かにショッピングは楽しいが、ここが湯布院である理由は相当に薄れてきた。以前、黒川温泉の人が由布院はもうだめだと嘆いていた事を聞いたが、その言葉の重みを今になって感じる。
初めて湯布院を訪れて、この町を気に入ったのは何だったのだろう。そうだ、カエルの鳴き声が響く田園風景の中、由布岳を眺めながら入った温泉。あの素朴な田園風景の中、湯が何気なく湧いている風景が、僕が見せられた、本当の湯布院の光景だった。今回はそんな湯布院の本当の美しい風景を探すべく、3歳の娘をつれて、湯布院の郊外を散策に出かけた。

由布院

湯布院は駅前と湯の坪街道を少し外れると、途端にのどかな田園風景になる。田んぼの中に民家にまじり、温泉旅館やペンションが点在している。写真の中央、モクモクと民家の間から湯けむりが上がっている。これが僕が感動した湯布院の湯布院たる風景だ。

紅葉の由布院

由布院のシンボルの一つである由布岳。由布院に温泉をもたらす活火山で、町のあらゆるところから、豊後富士と称される美しい風景を望むことができる。この日は残念ながら頂上は雲の中。その山麓の一部のみだけが姿を見せたが、それでも美しい草原の山。付近の山とは全く違う、その特異な姿を垣間見せてくれている。

秋の由布院

石垣で組まれた田畑。その中を行く、舗装もされていない道。日本の里山の風景がここにある。
農作業をするおばあさん。僕がすれ違うと深いシワが刻み込まれた顔をさらにしわくちゃにして、満面の笑顔でこんにちわとあいさつしてくれる。僕はカメラ片手にしたどう見ても観光客。そんなよそ者にも、普通に気さくに笑顔をくれる。こういう田園風景の中の旅行者に対しての美しいホスピタリティが、湯布院の素晴らしいところ。とても心が暖まった。
かつては町中でもアトリエに行くと、アーティストが気さくに話しかけてきてくれた。今はそのアトリエは土産屋になり、客をさばくのに忙しい店員にトイレの場所を聞いても、まともな回答もしない。
由布院はこの風景までもは失って欲しくない。切にそう思った。

佛山寺

由布院の郊外には寺院も点在する。由布岳信仰の拠点であった「佛山寺」藁ぶきの山門は上部が鐘楼になっている。それはとても趣があり、歴史を感じさせてくれる。
ちょうどこの日は僧侶の結婚式が本殿で挙げられていた。滅多には見られない光景。こういう偶然の出会い、町中にいれば、まず出会えることはない。遠目ながらに、厳かな式を見守る。

辻馬車

佛山寺を後にしようとすると、湯布院名物の辻馬車がやってきた。突然やってきた馬に娘も大喜び。馬車に乗っていた観光客はここで下り、佛山寺を参拝していた。その間、馬はたった1匹で、おとなしく待っていた。とてもお利口さんだった。

紅葉の由布院

金鱗湖に近づくと、車の往来が激しくなってきた。狭い道にも関わらず、人も車も多いのが、湯布院の悩みの種だ。そんな苦悩から逃れるように、わざと裏路地に入ってみた。
車も通れないような細い裏路地には、今までになかった湯布院の景色がある。自然の中に身を寄せ合うように建つ家々。観光客は利用できない、地元の人専用の、ひなびた共同浴場。そして、小さな雑貨店。まるで不思議な世界に迷い込んできたしまったようで、とても面白い。
僕は通りの風景を写真に撮りながら。娘も道端に落ちている落ち葉やドングリを拾いながら先に進む。妻は雑貨屋を覗いて、ティーカップなど手に取ってうっとりしている。この裏通りにいる事自体が、とても面白い。

紅葉の湯布院

裏道からさらにあぜ道のような道に入り、迷い出てきた先は、素晴らしい風景だった。紅葉の森に囲まれた広場一面には敷き詰められた落ち葉。そして、その上に、ひらりと降り積もる紅葉。まるで流れていく時間が目で見えそうな、とても美しい場所。あの観光地の雑踏とは無縁な、静かな静かな場所。そんな静寂の中、娘はふわふわの落ち葉の道をガサガサと音を立てて歩くのが楽しそうだ。
少しずつ俗世化していく由布院だが、メインルートを少し離れると、そこにはなお変わらない美しい魅力的な湯布院の風景があった。色んな発見と感動があった、美しい町並み歩き。是非湯布院に来たのならば、メインルートだけでなく、郊外も気ままに散策してほしい。

【じゃらん】湯布院の宿・温泉一覧

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください