大山滝 【鳥取県・日本の滝百選】
中国地方唯一の日本百名山である標高1729mの「大山」。その山麓には、かつて山岳信仰で栄えた大山寺があり、参拝のための古道も多く残っている。そんな古道沿いにある、大山の山麓最大の滝が「大山滝」だ。
日本の滝百選のひとつで落差は42m。中国地方唯一の日本百名山である「大山」の山麓最大の滝である。
大山滝へのトレッキングは一向平キャンプ場から出発
大山登山の翌日、どうせなら百名山と一緒に滝百選も楽しもうと、「大山滝」に向かって車を走らせる。しかし、大山の登山の玄関口は西斜面。大山滝は反対側の東斜面にある。標高1729mを誇る独立峰の大山をぐるっと半周するので、訪問するにははなかなか時間がかかる。
大山滝への登山道入口となる一向平(いっこうなる)へとたどり着いた。実はこの一向平、大山滝に行くルートを地図で調べていてとても気になっていた。
起伏の激しい山の中に突然現れる平地。そしてその中を結構な長さの直線道路が貫いている。案の定、実際に一向平に入ると、気持のよい道がそこにあった。大山の雄姿を目の前に、それに向かって伸びる直線道路を車で走り抜けるのは、相当気持ちがいい。周辺は牧場か何かで開墾されたようだが、今は自然のなすがままにされている。
直線道路の端までくると、そこで車道は終わり。ここに「一向平野営場」があり、その駐車場に車を停める。駐車場は広く、きれいなトイレや売店もある。
キャンプ場の設備も充実していて、サイトもすごしやすそうだ。写真右の建物は炊事棟。木々に囲まれいてるが比較的平らな地形のため開放感があり、ここから大山滝へのトレッキングも楽しめる。
一向平野営場
住所: 鳥取県東伯郡琴浦町野井倉一向ヶ平
電話: 0858-57-2100
料金: 1区画600円
時間:(管理棟) 8時~17時
期間: 4月中旬~11月(期間中無休)
サイト数: 66(オートキャンプ不可)
施設: 管理棟、炊事棟、トイレ、温水シャワー、売店、BBQハウス
レンタル: 毛布、テント、調理用具など
売店: 菓子、酒類、洗剤、薪、炭など
駐車場: 約100台(無料)
アクセス: 米子ICから60km
たたらの跡が残る大山の深い森を歩く
一向平キャンプ場の一番奥、アスファルトの道路が切れても先ほどの直線道路は砂利道になってまだ続いている。この道が「大山滝」への登山道入口だ。
この道は、かつては大山に登る最も過酷なルートでもあり、大山の脇を越える峠道として多くの往来があったそうだ。現在は「峠道」の部分は中国自然歩道(一向平~川床コース)としてよく整備されているが、大山に向かう登山道の部分は、その脆い地形と2000年の地震による崩壊で相当な難路になっていて、熟練者でないと歩けない。しかも、大山の縦走路は地震で崩壊し、封鎖されているので、このルートから頂上に立つことはできない。
林道はしばらくは気持ちの良い開けた平らな森を行く。しかしやがて起伏がある地形になり、道はやや細くなる。
やがて道は急な下りの登山道になる。歩いている最中、一体滝のある川はどこかと思っていたのだが、なるほど、谷はずいぶんと下にあるようだ。
実はこの大山滝への登山道は、2006年の大雨で崩壊し、2007年に新しくルートを付け替えられたのだ。崩壊する前は、この道より水平移動できたようだが、崩れてしまったものは仕方がない。先日の大山登山の筋肉痛を引きずりながら、下に降りて行く。
階段を降り切ると、そこに待っていたのは吊橋。「大山滝吊橋」という、長さ45m、高さ30mの立派なつり橋だ。鉄製のしっかりとした造りだが、やはり揺れる。しかも谷底までの30mの高さはなかなかの迫力だ。この手のものが苦手な人は覚悟して臨まないといけない。しかし、僕は高い所は平気なので、ユラユラ揺れるつり橋とその下の高さを覗き込みながら渡って行く。吊橋の途中からは、森を深く削った足元を流れる加勢蛇川の渓谷美を楽しめる。
大山滝吊橋を渡ったら、気持のいい森の中を登って行く。木々に囲まれながらなだらかな森なので、森の広がりを感じられる。しかし、どこか違和感を感じる。不思議と何か普通の森と違う感覚がする。
その感覚の理由がこれを見てわかった。「旦那小屋跡」という標識が道の脇に立てられていた。ここは「たたら師」が昔に住んでいたそうだ。「たたら」とは、古代の製鉄技術で、島根県の日本海付近はこの「たたら」が盛んに行われていたそうだ。他にも「木地師屋敷跡」という木製品を作っていた跡がある。
たたらの作業場や屋敷がこの森の中にあった。製鉄の燃料や木製品の材料で多くの木々の伐採もされていただろう。それに森の中には石垣など、かつての人々の生活の跡もいくつかまだ残っていた。
なるほど、ここはどうやらかつては人が住む村であり、工業も盛んに行われていた場所だ。以前は往来の多い峠道だったので、ここに人が住んでいたというのも納得できる。そういった「工業」を営む人々の暮らしが廃棄され、自然の中に飲み込まれていった跡がここに残っているのだ。
森の中に轟音を響かせて落ちる大山滝
木地師屋敷跡を過ぎてややすると、森の中に響く水の落ちる音が聞こえてくる。「大山滝」の標識が道にあり、その脇には展望デッキが組まれている。そのデッキに立つと、眼下に見事な滝が姿を現した。「大山滝」についに到着だ。
大山滝の落差は42m。幅は4mで、落差28mの上段と14mの下段で構成されていて、日本の滝100選にも選ばれている。実はこの滝、以前は三段の滝だったが、昭和9年の室戸台風による大雨で中段が崩壊し、現在のような二段の滝になったそうだ。この大山滝を通る道は、以前は大山と三徳山を結ぶ修験道として栄えたそうで、多くの人が昔からこの滝を訪れている。その昔からはずいぶんと姿が変わっただろうが、自然の織りなす美しさは今も変わらない。深い森の中、轟音を立てる巨大な滝の姿はとても見事だった。
滝の周囲にはモミジなどがあり、紅葉の時期はとてもきれいそうだ。訪れたのは体育の日を中心とする10月上旬の連休。まだ、滝付近の紅葉には早すぎた。あと1ヶ月足らずで、付近は見事な紅葉に包まれているだろう。
大山滝の滝壷の様子。大山や烏ヶ山の水を集めた加勢蛇川の水はとても美しく、水量も豊富だ。滝つぼは深い谷の底にあり、秘密の場所のような神秘の雰囲気に包まれている。この展望デッキから滝壺に降りることができるが、ロープや鎖が設置されているなど、道は今までの道と違いとても厳しそうだ。この後の予定があり、時間もとれないので滝つぼへの下降は今回は諦める。
大山滝を楽しんだら来た道を引き返す。「大山滝吊橋」を渡り返してからの登りはなかなかハードだったが、これを登りきったら駐車場までの行程はあっという間だ。そして、一向平の直線道路を再び走って戻る。キャンプ場の入口からこの道路を見ると、またとてもいい雰囲気がある。山の中をはるか彼方まで貫く一直線の道。やはり旅をしていてこういう道に出会うと、なぜか嬉しくなる。
大山滝付近の宿泊情報
大山滝に近く、高速道路からのアクセスが良い区宿泊地は蒜山高原でしょう。蒜山高原にはリゾートのプチホテルや公共の宿、ペンションが多くあります。
また、高速道路で少し走ると、ダムの下の露天風呂「砂湯」で有名な湯原温泉もあります。 ゆっくりと滞在するにはもってこいのエリアです。
大山滝
住所: 鳥取県東伯郡琴浦町野井倉一向平
電話: 0858-57-2100 (一向平野営場管理棟)
期間: 通年 (冬期は積雪あり 野営場は4月中旬~11月)
交通: 米子自動車道蒜山ICから県道114号を琴浦町方面へ車で35km
一向平野営場より徒歩40分(登山道)
駐車場: 100台(無料)
【投稿時最終訪問 2008年10月】