武田尾駅【トンネルと橋にまたがる都会近くの秘境駅】
「武田尾駅」は、JR福知山線は大阪駅から兵庫県尼崎、宝塚を経由して京都府福知山へと向かう路線にある駅。福知山線は大阪のベッドタウンが沿線に連なっているため、通勤・通学で多くの利用客が乗車する関西圏の主要な路線です。沿線の駅は駅前に商業施設や住宅が建ち並びますが、武田尾駅は駅前は民家が1軒もなく、深い渓谷の中にある驚きの秘境駅。鄙びた温泉と人気のハイキングコースの利用客が利用する大阪のベッドタウンの間に突如として現れた秘境駅。しかも橋の上とトンネルの中にまたがる珍しい構造も魅力的な駅です。
通勤途中に突如現れる秘境駅
武田尾駅は宝塚歌劇団の本拠地で人口22万人の宝塚市とニュータウンの開発で大阪のベッドタウンとなった人口10万人の三田市の中間にある駅。大阪から12駅、宝塚から３駅目にも関わらず、都心から何時間も離れたかのような自然に囲まれた場所にあります。大阪駅から区間快速に乗ればわずか35分の駅の景色とは信じられません。
宝塚から三田に流れる加古川は、生瀬駅から道場駅にかけて深い渓谷になっており、都心郊外にしては驚きの自然が残っているエリア。かつては武庫川沿いに福知山線が走っていましたが、今はトンネルを抜ける直線的な線路になっています。武田尾駅がある鉄橋の下の道路はかつての福知山線の名残り。付近には鄙びた温泉である武田尾温泉と旧福知山線の廃線跡の人気ハイキングコースがあります。
トンネル内と渓谷に架かる橋の上にまたがる珍しい駅
改札を入り、階段を登ると武田尾駅のホームに出ます。ホームから出ると正面はトンネルの中、後ろはトンネルの外にホームが伸びていることに気づきます。初めて訪れたなら驚かされる不思議な構造です。トンネルの中には待合室もあり、夏場にはとても涼しく気持ち良い場所です。
トンネルの中から見ると、ホームが外まで続いており、さらにまたトンネルが続いています。とても不思議な光景と見せてくれる駅で、どこか特別な場所へと続いているかのように思えます。
ホームの先端は武庫川にかかる橋の上にあります。
地上にあるホームからは、足元を流れる武庫川を見下ろすことができます。付近には民家がない、まさに秘境駅といった雰囲気を色濃く感じられます。
駅前には民家も商店もありませんがバス停があり、バスが走っています。武田尾駅がある武庫川沿いには道路がなく、ここから支流を遡って行くと民家が点在しており、近年できた新名神高速道路の巨大な宝塚サービスエリアに出ることができます。
大阪駅から30分ちょっとしか離れていないのに、とても遠くまで来たような気持になる旅上あふれる鉄道風景。しかし作業武庫川の上流には、両岸にマンションが建ち並ぶ大阪のベッドタウン、人口１０万人を超える三田市があります。この先、この川のほとりにはスターバックスやエディオン、業務スーパーなどの商業施設が並んでいるなんて、とても信じられません。通勤途中の秘境駅です。
橋の上のホームはそのままトンネルの中へと続いています。ホームを飲み込むトンネルは、ひときわ横に広い大きな入口になっています。
まるで都会の地下鉄にも思える不思議な秘境駅
ゴーという音がしてしばらくすると、トンネルから大阪から来た普通電車が抜け出してホームに入ってきました
ローカルな車輌ではなく、関西の大動脈、東海道本線や山陽本線を走る普通電車と同型の7両編成の車両で、スーツの方など多くの人が乗っています。ここだけ見ると、都会の地下鉄のようです。平日日中でも15分に1本の便があり、民家もなく鄙びた温泉とハイキングコースがあるだけの駅とは思えない風景です。
トンネルの中のホームの幅はとても広くなっています。地下鉄の駅と比べても格別なホームの広さで、相当な乗降者数を誇る都心の駅に匹敵するほどの広さです。平日にはほとんど誰もいない駅でこの広さはとても贅沢です。
広く、美しいアーチを描く赤いトンネルの天井には等間隔に明かりが灯り、まるでアートのような空間に思えます。
再びゴーという音がホームに響き、トンネルの中から大阪行きの区間快速がやってきました。乗り込んでクロスシートに座り、外の風景を眺めていれば、あっという間に大都会の大阪駅にたどり着きます。大阪駅から直通で35分、電車の本数も多い思い立ったらすぐに行ける都会郊外の秘境駅です。
廃線トンネルの先にある武田尾温泉や、トンネルや鉄橋を越える旧福知山線廃線ハイキングとあわせて立ち寄れば、鉄道ロマンを満喫できます。
