雷鳥沢ヒュッテ 【立山室堂・雷鳥沢温泉・山小屋】

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「立山黒部アルペンルート」の最高所「室堂」
標高2450mの雲上の世界。とても整備されたトレッキングルートで森林限界を超えた美しい自然を楽しめる。室堂の近くには標高3015mの「立山」、2999mの「剣岳」といった日本百名山がそびえ、登山者にも人気のエリア。そのため、室堂は登山基地にもなっていて、年間多くの登山者でにぎわう。
室堂にはいくつもの山小屋と大きなキャンプ場があり、今回はそのひとつ、「雷鳥沢ヒュッテ」に宿泊して、剣岳を目指す。

室堂雷鳥沢に建つ巨大な山小屋・雷鳥沢ヒュッテ

雷鳥沢ヒュッテ

立山黒部アルペンルートの最高所・室堂バスターミナルよりよく整備された道を歩いて約40分。硫黄臭と熱気が吹き出す「地獄谷」を抜けると、山の中にとても大きな建物が現れた。ここが「雷鳥沢ヒュッテ」。本日宿泊する山小屋だ。
44室の客室・250名の収容人数を誇る大型の山小屋で、コンクリート造りでとても頑丈。しかし豪雪地帯の室堂では、冬にはこの建物はすっぽり雪の中に埋もれてしまうそうだ。

古いながらも森林限界上で電気と水道と温泉がある極楽山小屋

雷鳥沢ヒュッテ

山小屋のロビー。山小屋というよりも、ちょっとしたホテルか旅館のようだ。それもそのはず。標高2300mを超える場所にあるにも関わらず、この山小屋には電気と水道が通じている。黒部ダムの開発のために開かれた立山黒部アルペンルートは観光客だけでなく、インフラも山の上に運びあげている。そのため一般的に自家発電が多い山小屋とは違い、24時間電気が使える。
そして、この山小屋は人間がもたらしたインフラの快適さだけではない。写真左に写っている「温泉」の文字。そう、この山小屋には温泉が湧いている。この室堂の地獄谷を源泉として、付近のいくつかの山小屋は天然温泉を引湯している。ここは日本一高い場所にある「温泉地」といえる。実際、日本一高い所にある温泉は、この地獄谷の湯を引く山小屋のひとつである「みくりが池温泉」である。

雷鳥沢ヒュッテ個室
宿泊した和室(個室)

ゴザ敷き、コンクリートの壁でやや殺風景だが、ヒーター完備で山小屋の施設としては二重丸。窓からは森林限界を超えた立山の絶景が拝める。

雷鳥沢ヒュッテスキーヤーズベッド
2段ペットの部屋(スキーヤーズベッド)

広いスペースは荷物の置き場や整理をするのにはもってこいだ。他に相部屋として使っているの大広間がある。

雷鳥沢ヒュッテ洗面所
洗面所

山小屋で普通に水が使えるのはとてもありがたい。しかも各階に1箇所ある。多くの山小屋では水は「買う」もので、洗面や手洗いに使う水はとても限られている。しかし、ここでは蛇口をひねると冷たくて気持ちのいい水が勢いよく流れる。なお、トイレも水洗。温便座も備えていて快適。

雷鳥沢ヒュッテ廊下
廊下

コンクリートむき出しの壁だが、モダンというよりレトロや古さを感じる。豪雪の影響で、建物のダメージもやはり隠せない。しかし、山小屋でこれだけの立派な建物はとてもありがたい。

建物は5階建(入口は2階部分)、靴は部屋まで持って上り、廊下脇や部屋の中の専用のスペースに置く。階段につけられたガラスの間仕切りや、分厚いコンクリートの壁が、ここが1年の大半を豪雪と戦う場所であることを感じさせる。

立山を眺めながら浸かる温泉はとにかく最高!

雷鳥沢ヒュッテ温泉

さて、早速お楽しみの温泉に。
なんといってもこの雷鳥沢ヒュッテの売りは、立山を眺めながら入る温泉。浴室はとても広い。そして窓の外には森林限界を超えた立山の大自然が望める。湯に浸かりながら風景を眺められる絶好の場所に窓がついている。24時間入浴可能なのもうれしい。

雷鳥沢ヒュッテ浴室からの眺め

浴室から眺める雷鳥沢の風景。残念ながらこの時は雲が立ち込めて立山の姿は見えなかった。しかし、雲がなければ、お湯につかりながら、立山三山の頂上とその全容を眺められる。3000mを超える日本を代表する霊山が遮るものなくすぐ目の前に。日本中を探しても、これだけ山の絶景を楽しめる温泉はなかなかない。さすがに、日本最高所にある温泉地だ。
写真中央に点在するカラフルな点はテント。ここは雷鳥沢キャンプ場で、立山・剣岳へのテント泊での登山基地。特に立山には、この場所にテントを張りっ放しにして登るペースキャンプスタイルが可能。雷鳥沢ヒュッテの温泉は外湯ができるので、キャンプ場に泊まれば、是非温泉を楽しみたい。

雷鳥沢ヒュッテ風呂

洗い場。シャワーは1つのみであとはカランだが、この標高でこれだけの施設が整っているのは最高。登山で流した汗を、登った山を見ながら落すのは至極の贅沢だ。
湯はほのかに温泉臭があり、とても気持ちがよく、山の疲れが全部吹き飛びそうだった。

雷鳥沢ヒュッテと立山

温泉を楽しんだら、立山にかかる雲が晴れてきた。火照った体を涼しい高山の風で冷やすついでに、少し山小屋の周囲を散策に出かける。
立山と雷鳥沢ヒュッテ。改めて、とんでもなく素晴らしいロケーションにある山小屋だと感じる。先ほど入った温泉は、建物の左端の部分にあり、あの立山の風景を眺めながら湯に浸かれる。
ちなみに建物の前にある小さな小屋。これは最近できた露天風呂だ。ここには地獄谷の源泉の濁り湯がそのまま引湯されている。

室堂地獄谷

山小屋のすぐ近くに広がる「地獄谷」。ここがこの山小屋の源泉だ。強烈な硫黄臭と火山ガスが吹き出し、熱湯が飛沫を上げる場所はその名の通り地獄。しかし、この地獄が近隣の山小屋に天国のような温泉を提供してくれている。
地獄谷は夏の遅くまで、噴気を上げる荒地に雪が残っているのがとても不思議な風景だ。不思議と地獄谷の強烈な硫黄臭は山小屋の付近までは流れてこなかった。その山小屋の付近にも8月末にも関わらず、何箇所か雪が融けきらずに残って、手で触れることもできる。

雷鳥沢から望む立山

雷鳥沢ヒュッテ前から眺める立山。夏でも雪を残し、雲のヴェールを纏うその姿は雄大でとても美しい。しかしその美しさと裏腹に、高木が生育出来ない岩の世界は、とても厳しく人を容易に寄せ付けない。美しくも人々を拒むその気高き姿に、登山者は魅せられるのだろう。
立山は富士山・白山と並び日本三大霊山に数えられ、古くから参拝登山が行われている。立山とは立山三山の総称で、一般的に立山の頂上とされるのがは一番右のピークである雄山(2991m)
室堂から一の越を経由して登るルートは比較的初心者でも登頂が可能だ。なお、雄山からすぐの所にある雄山神社の標高は3003m。その次の写真中央のピークが立山最高峰の大汝山(3015m)である。

山小屋とは思えない豪勢な夕食!

雷鳥沢ヒュッテ食堂

山小屋のお楽しみ、今から夕食だ。食堂はとても広く、窓から室堂の美しい自然を眺めながら食事を楽しめる。天井が高く、外の雄大な風景も手伝って、開放感があってよい。

雷鳥沢ヒュッテ夕食

これが雷鳥沢ヒュッテの夕食。山小屋とは思えない、とても豪華だ。ご飯とクリームシチューはおかわわり自由。豚の生姜焼きや、マグロのヅケなど・・・
徒歩でしかこれない山小屋にこれだけの食事が頂けるのはありがたい。ビールは500m1缶で500円。運送コストのかかる山小屋としては比較的良心的。

雷鳥沢ヒュッテからの立山

食事が終わったら、食堂のテラスに出てみる。黄昏時の立山の姿はとても幻想的で神秘的。あいにく、明日の天気予報は雨だが、もしかしたらなんとか持つかもしれない。
夜の帳が立山を包むと、真っ暗な稜線に雄山神社と剣御前小舎の明かりが灯る。そして山麓には、色鮮やかなテントの色を映したキャンプ場に無数の明かりの花が咲いた。

絶景露天風呂で濃厚な温泉にドップリ浸かれる!

雷鳥沢ヒュッテ露天風呂

食事が終わったら、山小屋の外にある野外風呂へ。ウッディな小屋に脱衣所と湯船だけあるシンプルな造り。しかし湯船は岩風呂で、その中になみなみとあふれている温泉は内風呂のものとは全く違う。内風呂の湯は、透明でほのかに薫る温泉臭だった。しかし、露天風呂の湯は強烈な温泉臭に真っ白な濁り湯。地獄谷に湧いている湯をそのまま使う、加水・加温なしの掛け流し温泉。ただし洗い場はないので、先に内湯を利用したい。
夜になって何も見えないが、昼間なら立山の姿を眺めながら、どっぷりと濃い温泉に浸かれる。写真はフラッシュを使ったが、小さな電球1つだけの浴室は薄暗くて秘湯の雰囲気。晴れていれば、びっくりするくらいの満天の星空に、頻繁に流れる流れ星も楽しめるだろう。こんな高い山の上で、こんな秘湯を味わえるなんて最高だ。もう少し開放感があればよいが、ここは豪雪地帯。しっかりとしたつくりの小屋でなければ雪に押しつぶされてしまうので、それはいたしかたない。
とにかく気持ちいいお湯だった。ずっと浸かっていたいくらいだ。しかし、この温泉の香はとても強烈。使ったタオルと入浴後に着た服はしばらくこの温泉の残り香が漂う。この手の匂いが苦手な人は、ちょっと注意する必要がある。
さて、温泉から上がったら就寝。ここは山小屋。登山者の朝は早く夜も早い。消灯時間は9時だ。おいしい食事と気持ちいい温泉を楽しんだら、体が欲するものは睡眠。あっという間に気持ちのいい眠りに就くことができた。

雷鳥沢ヒュッテ

住所: 富山県中新川郡立山町芦峅寺室堂平
電話: 076-465-5727
休み: 期間中無休(4月下旬~10月下旬)
営業時間: イン12時、アウト8時半
料金: 個室(1泊2食付)10500円~12000円
    相部屋(1泊2食付)9800円
    素泊まり(相部屋利用)7000円
温泉設備: ドライヤー、リンスインシャンプー、石鹸
交通: 富山地方鉄道立山駅から立山ケーブルカーで7分、高原バス室堂行きに乗り換えて50分
   徒歩35分

【投稿時最終訪問 2008年8月】

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