遅くまで水芭蕉が残る静かな尾瀬沼【尾瀬ヶ原から沼山峠へ】

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標高1500m前後に広大な湿原や沼が広がり、日本百名山「燧ヶ岳」「至仏山」に囲まれた尾瀬。名曲「夏の思い出」に歌われたことで、多くの人が知る場所となっています。夏の尾瀬は都会に比べて相当に涼しく快適ですが、夏が訪れる前、尾瀬には水芭蕉が一面に咲き誇ります。その水芭蕉の時期の尾瀬はとても美しく人気のシーズンです。尾瀬の水芭蕉の見頃は例年5月末~6月中旬頃。年によって見頃のピークは変わってきます。桜が早く咲いた年はかなり水芭蕉の時期は前倒しになります。そして、水芭蕉のビークの時期には尾瀬は登山者で大渋滞なのです。少し水芭蕉の見ごろを過ぎた頃に遅めの時期に尾瀬を訪れてみてはいかがでしょうか。尾瀬の中でも最も標高の高い大湿地帯である尾瀬沼には6月末でも水芭蕉の花が残っいてます。

尾瀬ヶ原から尾瀬沼へは川と森と湿原の道

尾瀬ヶ原から尾瀬沼へ向かう道

本日の行程は尾瀬2日目。尾瀬ヶ原の北端にある温泉小屋に宿泊し、尾瀬沼を経由して沼山峠に下山し、シャトルバスで車を停めている御池に戻るルートです。6軒の山小屋が集まる「見晴」より尾瀬沼に向けて進みます。ゆっくりとした登りを木道が導く心地よい森の中の登山道です。途中河原を渡り、その後に白砂峠の急な道を登り、そこからは一気に下る道を進みます。

【1日目 御池~尾瀬ヶ原散策はこちら】

水芭蕉と山桜

白砂峠を抜けると湿原に出て尾瀬らしい風景に再び出会います。「白砂田代」という湿原には、尾瀬ヶ原ではほとんどなかった水芭蕉の花が多数見ることができます。さらにはかなり葉桜になっていますが、山桜とのコラボのおまけつきです。

白砂田代のミズバショウ

標高を上げると尾瀬ヶ原では終わっていた水芭蕉の花が多く姿を現しました。やはり水芭蕉の終わりの季節に尾瀬を押す土れるならば、尾瀬沼周辺のトレッキングは外せないですね。

白砂田代

白砂田代にはいくつもの池塘があります。池塘と湿原、そして燧ヶ岳のふもとに広がる広大な新緑の森が作り出す風景はとても静かで幻想的です。

白砂田代

白砂田代の中を木道が通り抜けています。宿泊して朝7時の早朝からの移動だと、まだ尾瀬ヶ原から尾瀬沼へ移動する登山者は少なく、静かな山旅が楽しめます。

白砂田代

途中には木道のデッキがあるので、尾瀬沼は間もなくですが、この白砂田代でも少しゆっくりとしていきたい所。鏡のような水面が移静かな森と湿原の風景は、広大な尾瀬ヶ原と違い、箱庭のような神秘的で違った味のある風景です。

尾瀬のチングルマ

木道の脇には高山植物の「チングルマ」が咲いています。水芭蕉以外にも多くの高山植物が咲き誇るのも尾瀬の魅力。水芭蕉が終わる時期にはチングルマやワタスゲなどが見頃を迎えます。

尾瀬ヶ原から尾瀬沼へ向かう道

白砂田代を抜けると道は平坦に。森の中、小川を渡りながら先に進みます。

尾瀬沼付近のミズバショウ群生

尾瀬沼は尾瀬ヶ原やよりも標高が約200m高い1600m。水芭蕉の開花時期が尾瀬ヶ原よりも遅いため、尾瀬ヶ原では見られなくても尾瀬沼でミズバショウの姿が見れることも多々あります。間もなく尾瀬沼に到着しますが、木道の脇にもミズバショウが見られるようになってきました。

水芭蕉が最後まで残る尾瀬沼

沼尻休憩所

突然目の前が一気にひらけ、尾瀬沼が姿を現します。尾瀬ヶ原から尾瀬沼にたどり着くと、真っ先に迎えてくれるのが沼尻休憩所です。付近が湿原で、木道しか足の踏み場がないため、広いウッドデッキや東屋が組まれた休憩所は登山者がゆっくりと休める場所になっています。さらには舞台のようにせりあがっているので、休憩しながら尾瀬沼の風景を望むことができます。温泉小屋からは約2時間30分の行程です。

尾瀬沼

本来ならばミズバショウと尾瀬沼、燧ヶ岳を望める尾瀬沼南岸の道がオススメですが、天気が悪いため、尾瀬沼の北側の道をショートカットします。とはいえ、南側より湿原や池塘が多いため、幻想的な尾瀬らしい風景を引き続き楽しむことができます。

尾瀬沼北側の道

尾瀬沼の北岸の道は森の中と湿原を交互に進みます。湿原を進み、森に入るときに少し上り下りする感じでしょうか。尾瀬沼の景色を眺めながら進む気持ちの良い道です。

尾瀬沼のミズバショウ

ここまで何度も湿原を歩きましたが、尾瀬沼の北側の湿原は尾瀬沼のほとりに広がっており、今までとは全く違った様相です。生き物のように雲や霧がたなびき、カーテンのように尾瀬沼の姿を見え隠れさせています。

尾瀬沼浅湖湿原

しばし尾瀬沼から別れ、山の中に入り再び湿原に出ます。今までの湖畔の湿原よりも広大な浅湖湿原です。向こう岸にはビジターセンターや山小屋が建っているのがわかります。

大江湿原のワタスゲ

大江湿原に入ると、まばらながらワタスゲが咲いています。ここはワタスゲの群生地。少し時期がずれていたようですが、最盛期には一面の綿毛に湿原が覆われます。奥に少し小高くなった丘にはなぜかお墓があります。ここは尾瀬・燧ヶ岳の登山道を開き、この地に長蔵小屋を建てて尾瀬の自然保護・登山の発展に三代に渡って尽力した平野家のお墓だそうです。

尾瀬沼ビジターセンターで最後の尾瀬を満喫

尾瀬沼ビジターセンター

尾瀬沼の東端には「尾瀬沼ビジターセンター」をはじめ2軒の山小屋、売店などがあります。尾瀬沼散策のベースとなる場所です。

尾瀬沼ビジターセンター

尾瀬沼ビジターセンターは見学無料。内部には尾瀬の自然や風景・歴史、さまざまな資料や剥製が展示されています。さらにはシアタールームまであります。車が入ることができない秘境の地にこれだけの設備があるのには驚き。尾瀬への物資の運搬は、ヘリコプターとボッカという大量の荷物を背負って歩く人によって届けられています。

長蔵小屋売店

ウッドデッキのテラスに、テーブルやベンチが配された売店があります。ジュース、缶ビール、お土産など販売があり、本格的なドリップコーヒーや軽食も頂くことができます。尾瀬の大自然の中で、美味しいものを口にしながらゆっくりとくつろいだり、疲れを癒したりすることができます。

長蔵小屋

尾瀬の老舗山小屋のひとつ、長蔵小屋。施設は近代的なものが導入されており、古き山小屋の雰囲気を残しながら快適な滞在ができると人気の山小屋です。

沼山峠を越えて下山へ

大江湿原

さて、長かった尾瀬の旅もフィナーレに向かいます。長く続く大江湿原を北上し、シャトルバスの便がある沼山峠に向かいます。沼山峠は尾瀬沼に1時間ほどでアプローチができる登山道とあって、福島側からの入山になりますが、利用する登山者の数はとても多いルートです。沼山峠から出入りすれば、日帰りでの尾瀬沼散策が可能です。驚いたことにこの道は「会津沼田街道」として昔からあった街道であり、幕末の戊辰戦争の際、会津軍がこの湿原に防塁を築いていたそうで、その痕跡は今も見ることができます。

大江湿原のシカフェンス

大江湿原が終わり森になると、ついに尾瀬の風景も終わり。尾瀬沼付近への鹿の食害を防ぐために張り巡らせたシカフェンスをくぐり、尾瀬を後ろにします。

沼山峠への道

最後の難関は沼山峠(1781m)への登り。緩やかに木道が敷き詰められた坂道を登って行きます。峠にたどり着くと、沼山峠展望台から最後の尾瀬沼の風景を森の向こうに垣間見ることができます。

下山口の尾瀬沼山峠

尾瀬沼山峠

沼山峠から山を下ると、ついに尾瀬沼山峠の登山口に到着しました。ここには沼山峠休憩所があり、売店でグッズや土産の購入や軽食をとることができます。朝7時に温泉小屋を出発し、尾瀬沼ビジターセンター見学や売店でコーヒーを楽しむなどゆっくりしながらも、12時前の到着です。この日は天気が悪く足取りは早かったですが、燧ヶ岳がはっきり見えているともっとここに到着する時間は遅くなったでしょう。

尾瀬沼山峠シャトルバス

尾瀬沼山峠からはシャトルバスで車を停めている御池まで下ります。バスの乗車は先着順。1時間に約2本運転し、駐車場迄は約20分で下れます。ピーク時は随時出発しているそうです。下山後は、御池の日帰り風呂の他、国道401号線沿いに温泉がいくつかあるので、どこかで山旅の疲れを癒したいですね。
少しミズバショウの時期をずらしただけで、静かとはいえませんが渋滞はなく、時間通りの山旅を満喫できた尾瀬でした。

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