阿奈波神社と鶴姫像 【大三島・宮浦港】
愛媛県の島の中で最大で、広島県との県境の島である大三島。島には全国にある三島神社の総本社である大山祇神社があり、かつては水軍が活躍していた歴史ある島だ。現在ではしまなみ海道が通り、車だけでなく、自転車や徒歩でも訪れることができるようになり、多くの観光客やサイクリストで賑わう。
瀬戸内海の島への船が行き交う宮浦港
しまなみ海道が通じる大三島は、付近の島へアクセスする船が多く発着する島。かつては汐待の港として賑わった広島県の大崎上島などに向かう船などがこの港から行き交う。
大崎上島へ向かう快速船。この船に自転車を乗せ、海を渡ることもできる。しまなみ海道の島だけでなく、その付近の島にも自転車で訪れられるので、スローな島旅を楽しめるのも瀬戸内海の魅力だ。向こう岸に見えるのが「阿奈波神社」だ。
港から見える「鷲ヶ頭山」。荒々しい岩が露出する雄々しいその姿は、まるで相当に高い山のように見えるが、実は標高437m。この山は数年前に山火事が発生しており、植生が失われている。それだけに島の上に浮かぶこの山の容姿は、目立って仕方がない。この山の山頂まで車で登ることができる。付近はコンクリートで簡易舗装された「登山道」が続き、素晴らしい瀬戸内海の眺めを見ながらのトレッキングが楽しめるそうだ。
目指す神社は「阿奈波神社」「あなば」神社と読む。観光ガイドにもあまり載っていない、まさに「穴場」神社だ。宮浦港より徒歩おおよそ20分と案内がある。
阿奈波神社参道の入口。宮浦港の南端に位置する。宮浦港から海に向って左側へ、道を海沿いに進めばたどり着く。
阿奈波神社の参道。海沿いの歩きやすい舗装された道。片側に青い瀬戸内海、反対側に手つかずの残された、温暖な海辺独特の植生の森が続く。参道でありながら、とても気持ちのいい海沿いの散歩道でもある。
瀬戸内のジャンヌダルク・鶴姫の悲しい伝説
少し行くと、海の岩の上に、何か物悲しそうな女性の像がある。この女性は「鶴姫」。「瀬戸内のジャンヌダルク」と言われる女性で、実在の人物だそうだ。弱冠16歳でこの島に攻め入った敵と兵を率いて戦った。その時に身につけていた胴丸は、すぐ近くの「大山祇神社」に保管されており、唯一現存する女性専用の胴丸だそうだ。鶴姫は見事に勝利したが、戦いで恋人や兄を失ったために、こんな辞世の句を残し海に身を投げたとされている。
「わが恋は 三島の浦の うつせ貝 むなしくなりて 名をぞわづらふ」
鶴姫が自害した時の年齢は18歳。あまりにも急ぎ足で過ぎた人生はとても悲しく思える。鶴姫の像は宮浦の港をひっそりと見守り続けている。愛すべき大三島と愛すべき人々を、この世を去って500年近く経つ今もずっと見守り続けているようだった。
子宝に恵まれる女神のご利益がある神社
「阿奈波神社」にたどり着いた。ここは磐長姫命(いわながひめのみこと)を祭る神社で、すぐ近くにある全国の三島神社の総本社「大山祇神社」の摂社となっている。女性の神様を祀っている神社だけあって、長寿・健康の他に、子宝にも恵まれる神様として信仰があり、地元では女性が下着をお供えするそうだ。神社はとても質素であったが、それでも長い間、地元の人に大切に守られている感じがした。また、この境内は海を眺められる一角にあり、海のすぐそばの神社として、とてもロケーションが素晴らしかった。この赤い屋根の建物は東屋のようにもなっており、この下で海を見ながら過ごす地元の人も多くいるようだ。
最後に振り返る鶴姫の像。美しい瀬戸内海と、悲しい少女の伝説。昔から多くの船が行き交い、多くの水軍や海賊が活躍した瀬戸内海。あまり歴史の表舞台には出てこないが、この海ではずっといろんな物語が繰り返されて来た。瀬戸内海のまたひとつ、別の顔を見た気がした。
しまなみ海道サイクリストのための宿
阿奈波神社
住所: 愛媛県今治市大三島町宮浦3327
電話: 0897-82-0032
料金: 参拝無料
休み: 無休
営業時間: 8:30~17:00 (大山祇神社務所)
交通: 西瀬戸自動車道・大三島ICより車で10分
駐車場:なし(参道に3台ほど駐車可能な路肩あり)
【投稿時最終訪問 2009年6月】