夕やけこやけラインサイクリング【菜の花と夕日】

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愛媛でのサイクリングルートといえば、やはり「しまなみ海道」がダントツではあるが、その次にオススメのルートが「夕やけこやけライン」だ。「夕やけこやけライン」の愛称を持つ国道378号線の伊予市から大洲市長浜までの区間。海と夕日が楽しめる最高のドライブルートではあるが、実はサイクリングも楽しめる。特にここ夕やけこやけラインのおすすめの時期は3月。青い海と美しい夕日はもちろん、レトロにローカル線が並走するこの路線には旅情が強く感じられる。そして、3月には一面の菜の花が、その風景にその名の通り、花を添えてくれる。花粉症の方にはつらい時期だが、そのつらさをも忘れさせる素敵な風景が、この道沿いに待つ。アップダウンも少なく、自転車用の通行スペースがほぼ全行程、分離して作られている。風景を楽しみながら快走できるルートでもある。

【菜の花の見頃は2月末から桜が咲き終わる頃まで】

サイクリングのスタートは道の駅ふたみ

出発は伊予市の「道の駅ふたみ」がベスト。ここに車をとめ、搭載していた自転車を下ろす。サイクリング中はここに車を置かせていただく。道の駅ふたみは白砂のビーチがあり、夏には美しい海で海水浴が楽しめる。四国有数の夕日の名所であり、季節を問わず瀬戸内海に沈む美しい夕日を望める場所。夕方になると多くの家族やカップルがその美しい風景を求めて訪れる道の駅だ。

道の駅に隣接する「ふたみシーサイド公園」には売店やじゃこ天、たこ焼きなどの特産の海産物のお店がある。出発したい気持ちを抑えながら、まずはお昼の腹ごしらえ。特におすすめは「たこ焼き」。たかがたこ焼きと思うことなかれ。大きなタコが入った、とっても大きくておいしいたこ焼き。これが350円なのは安い。夏には人気海水浴場になる、白い砂のビーチで頬張ると、とても気持ちよくて、おいしい。
さて、腹ごしらえしたら出発。時間は13時過ぎである。遅すぎる?いいえ、そんなことはないのです。このルートでのサイクリングではちょうどいい時間。行きは青空、帰りは夕日。同じ道を往復するルートだが、行きと帰りではその風景は全く違うものになる。そしてその名の通り、絶景の夕やけの中のサイクリングを楽しめるのです。

道の駅を出発してすぐの菜の花が美しい

意気揚々と自転車に乗って出発するが、ものの5分もしないうちに出鼻をくじかれる。それは道路わき一面の斜面に広がる眩しい金色に輝く絨毯。菜の花が土手一面に咲き乱れているのだ。この風景を見て、素通りできる自転車乗りはいないだろう。こんな景色を見つけても、すぐに立ち寄れるのが自転車の魅力。

菜の花畑の上に浮かぶ月が、とても幻想的で美しい。ここはどこか遠い国の物語の風景かと思ってしまう。
菜の花畑の上に魅入られた人々を導くように1本の道が続いている。忙しく飛び回るミツバチの羽音と、青い海が奏でるさざなみ。花の香と潮の香り。そしてどこからか、美しいウグイスの鳴き声が早々と聞こえてくる。美しいものが複雑に絡み合って五感に訴える道をゆっくりと登っていく。

この土手の上は、JR予讃線の線路になっている。予讃線は伊予市から大洲市へ向かう路線は2つある。山の中を走る特急の通る新線と、海沿いを走る昔ながらのローカルな旧線。この夕やけこやけラインを並走するのは、旅情あふれる昔ながらの旧線である。
この線路は海を眺めながら走る路線として、鉄道ファンの間では人気が高い。特にこの時期は、菜の花の色どりが添えられるので、その人気度はピークになる。
ちょうど土手に上がった時に、ローカルな汽車が通り過ぎた。とても旅情あふれる風景だ。この菜の花は地元住民が植えたと聞いたことがある。当初はJRも困惑していたそうだが、今となっては旅客を呼び込む一つの目玉になっている。

青い空と海、金色の菜の花畑

サイクリングで先に進もうと思うも、ちょっと走ったら、また美しい菜の花の土手が・・・ここは車を停める路肩があるので、ドライブがてら多くの人が立ち寄っている。ドライブがてら寄る菜の花の土手としては、一番美しい場所だろう。

閏住バス停前には菜の花に包まれた土手が青空に覆いかぶさる。とても気持ちのいい風景。深呼吸すると、潮と花の香りが混ざり合い、肺胞のひとつひとつにしみわたる。ここには記念撮影を撮るお立ち台があり、子供連れの家族でもにぎわう。菜の花に包まれて写真を撮る若い女性の姿も絶えない。その女性の美しさにも目をひかれる。

海の青、菜の花の黄色の間を貫くのが、ゆうやけこやけライン。ここを一陣の風となって、走り抜けていくのはとても気持ちいい。僕たち以外にも自転車乗り、そしてバイク乗りが何人も何人も、風となってここを通りぬけて行った。そして、列車はこの青と黄色を見下ろしながら、この菜の花畑の上をゆっくりと走っていく。

道路の向こうに横たわる海をのぞくと、その青さと透明度には驚かされる。本州と四国に囲まれた瀬戸内海はとても波穏やか。海の色からも春の訪れを感じる。
そんな海を横目にずっと走っていくが、少しここで寄り道をしよう。途中、「下灘駅」と書かれた看板を見つけたら、それに従って細い道に入る。線路をくぐり、ゆっくり坂道を登ると「下灘駅」にたどり着く。

海に最も近い人気駅「下灘駅」は美しい! 

駅舎の中に入ると、そこから見える風景には、驚かされる。海を背にした駅は、とても美しい。この風景は過去に、「青春18きっぷ」のポスターになった風景だ。

この駅は「海にいちばん近い駅」と称され、鉄道ファンの間では絶対的な人気を誇っている。なるほど、こうやって見ると、とんでもなく素晴らしいロケーションである。電車を待ちながら、穏やかなさざ波の音と香りが感じられる。
実際この駅を訪れる人は少なくない。車で立ち寄ったり、電車旅で途中下車したり。実際に立ち寄った時に電車が入ってきた。そこから立ち去った旅人、そして新しく立ち降りた旅人。立ち降りた旅人はすぐにカメラを取り出し、この美しい風景と去っていく先ほどまで乗っていた電車の姿をすばやくカメラに収めていた。

海を望む駅のベンチ。ここに座っているだけでもとても気持ちがい。実際にここでたそがれる旅人や地元の人の姿をよく見る。
この駅はそのロケーションの良さからテレビや映画、ポスターのロケ地としてよく使われる。

海と鉄道沿いの夕やけこやけラインをサイクリング

さて、菜の花と鉄道の風景を堪能したら、青い海を右にずっと眺めながら、快適な道を走って行こう。海に青く染められた風を切りながら走るのはとても快適だ。
今日の目的地は「伊予長浜駅」。道の駅からは約17kmだ。その気になれば1時間もあればたどり着くルート。しかしすでに美しい菜の花畑や鉄道の風景に立ち寄り、1時間以上経過している。美しい風景がいたるところに転がっていて、自転車を先に進めさせてくれない。

予讃線の下灘から伊予長浜までの路線が開通したのは昭和10年。この道を走るとわかるのだが、海岸線に迫る山々を切り通したり橋をかけて線路は走っている。所々に歴史を感じる鉄橋や暗渠が残っている。時々国道から外れて集落の中に入ってみると、懐かしいレトロな風景に出会える。

道は常に海沿いを走る。海を堤防で固めて、その上にこの「夕やけこやけライン」を作ったといえる。それだけに常に海を感じられる最高の道が続く。また、夕やけこやけラインには広い歩道がずっと続く。自転車でも走れるようになっているのでの安全にサイクリングできるようになっている。
大洲市に入り、長浜の工業団地が見えてきたころ、土手や山の中腹を走っていた線路が道路に寄り添ってくる。しかも黄色い菜の花の衣をまとって。この辺りは、菜の花と線路と海の距離が一番縮まる場所である。

菜の花に包まれたレール。海と菜の花に包まれた汽車の旅はどんなに快適か、この風景を見ているだけでもその気になってくる。ここからしばらくは菜の花覆うレールと並んで自転車を走らせる。菜の花が海と並んだり、踏切を覆ったりする度、その風景に目を何度も奪われる。
この先、広大な工業団地に入ると、サイクリング用の走行レーンは終了する。ダンプなどの往来が多いので路肩走行には気をつける。今まで走った山側とは逆の海側に歩道兼自転車道があるので、危険を感じるならそちらへ渡ろう。

折り返しの伊予長浜でも休憩がてら美しい風景を

長浜の町に入り、ややすると伊予長浜駅に到着する。この時期は梅の花に囲まれてとてもいい雰囲気になっている。桜が咲く3月末のサイクリングは、菜の花の黄色に桜のピンクが織り交ぜられてさらに美しい色になりそうだ。駅舎の中もいい味を出しているので、待合室で休憩させていただくのもいいかもしれない。伊予長浜駅到着は16時。菜の花と青空に誘われてとてもゆっくりとしたサイクリングだった。
さて、長浜といえば「長浜大橋」が有名である。橋梁を跳ね上げて船舶を通す、日本最古の道路稼働橋だ。赤いレトロな鉄橋がかかる肱川の風景は日本の美を感じられる。駅から自転車で5分。散策がてら、このまま向ってみるのもオススメだ。

往路は夕やけを楽しみながら走ろう!

長浜大橋をゆっくりと見学したら、元来た道を戻り始める。時刻は17時だ。こんな時間にサイクリングの折り返し地点にいることは普通ならば非常識である。しかし、このルートではこれが王道。この時間がこの「夕やけこやけライン」の一番美しい時間でもある。ゆっくりと海に傾いていく太陽を今度は背負って、東へと自転車を走らせる。
菜の花の中を走り抜ける線路。金色の菜の花の海を切り裂いて進む鉄道の旅は、とても気持ちがよさそうだ。 まるで太陽を運ぶために作られたかのように、太陽はこのレールに沿って西の海へと遠ざかっていく。

長浜の工業団地の一角。誘致に失敗したのだろうか、広大な更地が原野のように広がっている。まるで北海道を思わせる風景である。夕日に照らされたこの海辺の原野には、どこか哀愁が漂う。

海沿いに東へ向かっていく線路。菜の花の中に横たわるそれは、旅情に満ち溢れている。線路沿いに自転車も菜の花の香満ちる風の中を、夕日に照らされながら走っていく。

土手の上を走る線路から、色を眩しく深めた菜の花がなだれ落ちるように道路に迫る。そして、青い海は輝きを増しながら、道路へと波を打ち寄せている。夕陽の中、海と菜の花に囲まれた道を走るのはとても気持ちいい。見るものすべてが、オレンジ色を帯びて、暖かく感じる。

夕やけこやけラインの真骨頂!運が良ければだるま夕日も!

 

どんどん夕日が傾いていく。空は赤く染まり、海はきらきらと眩しく輝く。水平線と太陽が近づくこの時間、この道を走るのはとにかく楽しい。車、バイク、自転車。ジョギングでもこの風景の中を走り抜ける人も多い。美しい輝きの世界の中で、夕日に染まった風を切るのは最高だ。

夕日がかなり水平線に近づき、あたりを真っ赤に染め始めた。日没はもうすぐだ。本当なら車を停めた道の駅でゆっくりと水平線に沈む太陽を眺めたかったが、少し間に合いそうにない。しかし慌てることはない。ずっと海沿いを走るこの夕やけこやけライン、その気になればどこででも自転車を停めて沈む太陽を見送れる。

さあ、もう日没だ。自転車を少し停めて、道路の向こうの海辺へと歩を進める。ゆっくりと水平線に沈んでいく太陽。それはとても美しい風景。ちなみ伊予市双海町では冬場はよくだるま夕日となる。島々がまるで瀬戸内海の水平線の上に浮いているように見える浮島現象と呼ばれる蜃気楼が出ていれば、ほぼ確実に見ることができる。まるで海に溶けていくように沈む夕日はとにかく美しく神秘的だ。春先には見られることは少なくなるが、寒の戻りなどで寒いサイクリングとなったときは、だるま夕日を期待したい。

ゆっくりと沈む太陽と、太陽に染められた空が織りなす美しい空間。1日の終わりとはかくも美しいものだったのかと改めて思い知らされる。ゆっくりと尾を引きながら流れていく飛行機雲。黄昏色の空の広がりは、悠久の時間の流れすら感じられる。美しい菜の花と海を楽しむ春一番のサイクリングの感動的なフィナーレだった。

夕やけの後は松山・道後温泉に泊まりたい

日本最古の温泉とされる道後温泉には、数多くの宿があります。どの宿にも趣向をこらした温泉を楽しめ、さらには湯篭をもって浴衣姿で道後温泉本館や椿の湯といった外湯巡りも楽しめます。道後温泉から伊予鉄道の駅に続く商店街「道後ハイカラ通り」にはたくさんの店が並んでおり、各ホテルの軒先には無料の足湯があり、道後温泉は散策するにはもってこい。海にも近く美味しい魚を食べられる店も多数。道の駅ふたみから1時間もあれば道後温泉に到着するので、遅めの夕食を食べられる宿、夕食なしのプランの宿ならもってこい。また松山市内にも温泉つきのシティホテルがいくつかあるのでそちらに宿泊するのも気持ちが良いです。

【道後温泉の宿一覧】

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