鉄道歴史パークin SAIJO 四国鉄道文化館
愛媛県西条市。西日本最高峰・石鎚山登山の玄関口である同市にはJRで訪れる観光客も多い。そんなJR西条駅に隣接した鉄道のテーマパークが「鉄道歴史パークin SAIJO」だ。
西日本最高峰の石鎚山をバックにした鉄道テーマパーク
鉄道歴史パークin SAIJOは西条駅に隣接する「四国鉄道文化館」「十河信二記念館」「観光交流センター」の施設が集まった小さなテーマパーク。写真奥が四国鉄道文化館、手前が十河信二記念館だ。西条駅の駅前広場にも隣接しているので、JRで西条に訪れた際、まず手軽に見学したり、旅の情報を確認したりすることもできる。
広場のすぐ横には西条駅のプラットフォーム。石鎚山をバックに電車が並ぶ風景は旅情満点で、とても絵になる。
鉄道歴史パークin SAIJOの駐車場は約25台駐車可能。少し駐車場は狭い感はあるが、比較的小規模な施設である事、警備員が利用者以外の駐車にかなり目を光らせている事を考えると、すぐに車は出ていきそうだ。この日も日曜日だったが、比較的すんなりと駐車できた。
駐車場の一角に、なんと線路が通っている。実際にJRの営業路線から、四国鉄道文化館の内部にこの線路は引き込まれている。展示する電車を線路を自走させてここに運んでくる仕組みになっている。日・祝日などはこの線路にトロッコ(軌道自転車)を走らせるイベントがあるという。その時は駐車場の台数がもう少し制限させるかもしれない。
こじんまりとしたアットホームな鉄道博物館
四国鉄道文化館の内部。入口でスリッパに履き替えて、自動販売機で買った切符を模した入場券に入鋏してもらい入場する。木がふんだんに使われたフローリングの館内は、まるで体育館のようだ。展示されている鉄道車両は、0系新幹線とDF501のディーゼル機関車。・・・それだけ。都市部にある鉄道の博物館と違い、ここにはたった2両しか展示されていない。入場料は安いが、四国外から観光で訪れた人には見応えは無いだろう。しかし、四国には新幹線が走っていない。さらには鉄道自体利用される頻度は都市部よりかなり少なく、車がないと生活できない地域だ。そんな四国にこれだけ間近に鉄道に触れられる場所は少なく、四国の人にとってはかなり新鮮な場所なのかも知れない。愛媛で生まれた僕の娘も、愛媛に住んでいる間には電車は地方鉄道に数回しか乗ったことが無く、新幹線は見た事しかなかった。自由に出入りできる車両に、喜んでいる。
館内には鉄道の部品や過去に使われていた道具も多く展示されている。普段は間近に目にすることのないパンダグラフや昔の機械など、ひとつひとつ見て回るだけでも楽しい。
懐かしの0系新幹線を隅々まで満喫
展示の目玉、0系新幹線の中に入る。まずは車両後方から客席の中に。懐かしの客席と、あの古い新幹線の独特の匂いがまだここで息づいていた。席に座ると少しぎこちないギシギシした感じ。今の最新車両を考えると、何とも古めかしい感が相当にする。でも僕が子どもの頃には、これは最新の車両で旅がとても楽しくて仕方がなかった場所だ。さて、新幹線に乗る娘。相当楽しいだろうと思いきや、全然楽しそうではない。やはり新幹線は動いて何ぼのもののようだ。
新幹線の運転席の内部にも入れる。狭いうえにすごい段差。そしていかにも、一昔前の機械室といった感じ。夢の超特急とはいえ、半世紀近く前の0系はやはりかなり古めかしく思える。
とはいえ、0系の新幹線の運転席は、お父さんにとっては魅惑の場所。子供たちもこの操縦席には興味津々。実際にライトを点灯させたり、レバーが動かせたりするのでとても楽しい。
0系新幹線の運転席。レトロでアナログな装置が新鮮にも感じてしまう。これで200kmを越すスピードの車両を制御していたかと思うと、逆に凄いと感じる。今は動くことが無いが、ここで200kmのスピードを感じてみたいと思うのは、誰もが一度は感じた事だろう。
まだ動くディーゼル機関車の運転席
続いてDF50形ディーゼル機関車の運転席に。こちらも運転装置を操作できる。整備すればまだ線路を走る事ができる車両のようで、重要な装置のレバーは外されている。実際にこの機関車が乗っているレールは館の外のJR四国のレールにつながっていて、自力で全国に旅立って行ける。
木の床、レトロでアナログな運転装置に後付けされたようなスイッチ類。なんとものんびりと、かつ長い時代現役をつとめてきた車両だということが感じられる。よく見ると、運転席の右側に、よく昔の電車の座席前についていたような灰皿が。昭和時代は煙草をふかしながら運転する事を国鉄は普通に認めていたようだ。
機関車の車輪など、普段は近づけない足回りもかがみこんでしっかりと見る事ができる。車両が乗っているレールは営業路線から引き込まれた本物のレール。機関車もまだまだ走る事ができる。
四国鉄道文化館の全景。入口改札横から階段でロフト部分に登れる。ロフトからは館内だけでなく、外の石鎚山を背にした西条駅の風景も眺められる。西条駅には「カーバイド庫」や給水塔といったレンガ造りの鉄道遺産も残っており、このロフトからも望むことができる。とはいえ小さな遺構なので、よくわからない。できれば近づいて、当時の施設を見てみたい。ふんだんに木が使われた開放的な空間は心地よく、その中に機械の塊である車両が置かれている。土足厳禁の館内は清潔。小さな博物館ではあるが、居心地は良い。
鉄道以外の無料の展示館も楽しめる
次に西条市観光文化センターへ。こちらは鉄道には関係なく、西条市の観光情報発信基地になっている。入館無料なので、同市の観光前に立ち寄りたい。パンフレット類がかなり充実しているので、情報収集にはもってこいの場所だ。
西条市観光文化センターの内部。西条で石鎚山以外に有名なものは「うちぬき水」と「西条まつり」。うちぬき水は、西条市内で湧き出す石鎚山の伏流水の総称。日本名水百選にも選ばれており、うちぬき水をめぐるサイクリングルートもここで紹介されている。このセンター内部にもうちぬきがあり、美味しい名水を飲むことができる。「西条まつり」は巨大なだんじりが有名。また、何体もの神輿が石鎚山を源流にする清流・賀茂川に入っていく川入りは、祭りのクライマックスとしてよく知られている。ちなみにこの祭には、同市出身のテノール歌手、秋川雅史氏よく参加していると聞く。あのスーツでびしっと決めたダンディな普段の姿ではなく、つなぎを着て大はしゃぎしている秋川氏の姿を何かの写真でも見たことがある。
四国鉄道文化館の隣には十河信二記念館がある。こちらも入館は無料。十河信二氏とは国鉄の第4代総裁で、新幹線の建設に注力した人物で「新幹線の父」と呼ばれる。ここ、西条市の隣、新居浜市の出身だが、西条市との市境すぐの場所生家がある。旧制の西条中学校出身で、旧西条市長も務めた人物であり、西条市の名誉市民第一号でもある。四国鉄道記念館にJR西日本から0系新幹線の寄贈を受けたのも、この十河氏の功績があってからこそ。そんな氏の足跡が展示された記念館。その経歴はとても興味深く、展示にはかなり見入ってしまった。
小さな鉄道テーマパークだが、料金も安くアクセスも便利。西条観光の新しい名所として、十分に楽しめる場所だった。
鉄道歴史パークin SAIJO 四国鉄道文化館
場所: 愛媛県西条市大町798-1
電話: 0897-47-3575
営業時間: 8:00~19:00
休業日: 水曜日(西条市観光交流センターは無休)
交通: JR伊予西条駅下車すぐ
料金: 大人300円、子供100円 (四国鉄道文化館のみ有料)
駐車場: 25台(無料)
【投稿時最終訪問 2013年12月】