竜串・見残し海岸【奇岩がそそり立つ美しい海】

四国に残るお遍路とは、弘法大師の足跡をたどる旅。それゆえに、四国を旅していると、弘法大師にちなんだ伝説や言い伝えが多く残っている。高知県の南部にある「見残し海岸」もそのひとつだ。日本で初めて海中公園に指定された「竜串海中公園」の一角にある見残し海岸は一見弘法大師とは無関係な奇岩が続く荒々しい海岸。あまりもの難所のため、弘法大師が見残したことからこの名前がついたそうだ。しかし、ここは見逃していはいけないスポット。確かにきれいな海だが、その海よりも独特の海岸の風景がこの地を日本初の海中公園に指定させたのではないか?訪れた人なら必ずそう思う、不思議でちょっと「アート」な海岸の造形がこの場所にはある。

見残しへはグラスボートでサンゴを眺めながら行こう

見残しへは地図を見ると、歩道が通じているように見える。しかし、どう考えても往復すると山越えで1時間以上はたっぷりかかる。ここは出費を覚悟で船に乗るのが一般的。時間や出費があり、気軽に見れないことから、現在も多くの観光客に「見残し」されている場所だといえる。
見残しへの船は2社が運航していて、どちらもグラスボート。料金も同じ。違うのは、出発する場所だけ。今回は、「足摺海底館」近くから出発する「たつくし海中観光」の船に乗船する。

ちょっと昭和の感じがする船。とはいえ、船長の操船はとても上手で、係員も船の乗り降りをしっかりサポートしてくれる。時間になったらゆっくりと船は出港。美しい海のサンゴ礁を楽しみながら、見残しまでは約20分の船旅だ。

船が走っている間は、船底からは何も見えず、じっと見ていると船酔いする。窓を開けて、外の風景を見ておきたい。「たつくし海中観光」の船に乗ると、進行方向に向かって左側に「竜串海岸」を海上から望むことができる。竜串海岸は、陸地から海岸へ、無数の竹のような細長い岩が突き出している。それは陸地に伏した竜を海から何本もの竹で串刺しにしたように見えるので「竜串」という名になったとか・・・この竜串海岸にも遊歩道があり、こちらは車を国道沿いの駐車場に止めて気軽に散策できる。岩の間の青い海に遊ぶ熱帯魚も観察できる。グラスボートに乗る時間やお金がなければ、「見残し」を見残して、この竜串海岸の散策でも奇岩あふれる海岸美を楽しめる。

グラスボートは何箇所かサンゴ礁を見せてくれるが、一番美しいのはやはり、見残しへの下船前最後のポイント。見残しの下船場にほど近い場所に広がるのはシロサンゴの群れ。海の色もとても美しく、多くの熱帯魚が遊ぶサンゴの世界はまるで竜宮城。手軽に見える美しい青い南の海の中は、このグラスボートのハイライトだ。

見残しはまるで異世界の景色

さて、見残し海岸についたら下船。もちろん下船せずにそのまま船着き場に帰ることはできるが、ここまできて「見残し」する事はない。船はおおよそ30分に1本船着き場に到着するので、散策した後に次の船に乗って船着き場へと戻ることになる。ここからは見残しの遊歩道を歩くことになる。遊歩道は1周すると約60分。小高い展望台まで登ることになる。そんなに時間がなかったので、見どころの海岸線を歩く40分の半周コースを行くことにした。しかし遊歩道を歩き始めると、すぐにこの見残しの不思議な地形が目に飛び込んでくる。荒々しい岩がむき出しの地形もすごいが、その岩の様子がなんだか変だ。明らかに違う。

見残しの岩に刻まれた不思議な模様。なんとも表現し難い、とても不思議な穴が岩にいっぱい出来ている。生物の体の組織のような、いや、ハリウッド映画に出てくるSF映画の異世界や別の惑星のような・・・こんな不思議な岩があちこちにいっぱいある。先ほどのサンゴ礁がそのまま陸上に出てきたみたいだ。この見残しは一面の花崗岩の岩石で形成されていて、長い年月をかけて荒波と潮風に削られ、このような形になるそうだ。まさに、気の遠くなるような年月が作り出した、かなり自然の斬新なアート。

実は僕が見残しを訪れるのは今回が初めてではない。もう10年以上も前、僕か初めての一人旅の時にもここを訪れている。その時にも「なんじゃこりゃあ?」と度肝抜かれた場所がこの『人魚御殿』岩にぽっかりと空いた穴が、いかにも人魚の住処のように見えるが・・・正直かなり「グロテスク」な感じもする。もしここに人魚姫がいたならば、おそらく妖艶な海の魔女に思えるだろう。

見上げる人魚御殿。自然にこんなものができたなんて、とても信じられない。まるでSF映画の別の惑星か、ファンタジーの魔物の巣窟の映画のセットのようだ。さて、人魚姫も魔物もいないことなので、不気味な岩肌をよじ登り、人魚のお屋敷に不法侵入♪

人魚御殿の中から外の岩場を眺める。ちょっと、宇宙の小惑星に来たような感じ。海のすぐそばで宇宙を感じられる不思議な場所だ。

人魚御殿の中でフラッシュをたいてみる。御殿の内装は独特だ。アートのように見えるが、クジラに飲み込まれて、その胃袋にでもいるような感じもする。

奇岩が立ち並ぶ不思議な風景

人魚御殿を後にしてもう少し進むと、巨大な岩壁が見えてくる。「蜂の巣城」と呼ばれる場所。確かに、巨大な蜂の巣のように見える。

少し角度を変えてみる「蜂の巣城」蜂の巣というより、エイリアンの宇宙船といったほうがしっくりくる。

「鎖岩」と名付けられた場所。「蜂の巣城」の下にある。蜂の巣城から飛び出して、海へ鎖のような形の模様がついた岩が伸びている。これは海の中に錨をおろして、このエイリアンの宇宙船を係留しているようにも見えなくはない。何がどうやったらこんな不思議な地形ができるのか。自然の侵食ではなく、宇宙からやってきた何かの化石ではないか。そんなことすら考えてしまうほどだ。

不思議な雰囲気の遊歩道はまだ続く。まるで映画のロケセットのような不思議な場所を歩いて行く。もし、これがどこかのテーマパークでつくられたセットなら、相当なのあるクリエイターの仕事だろう。この「見残し」を作った自然は、世界一のクリエイターなのかもしれない。ここは誰もを魅了する、とっても先進的なアートの世界だ。

「厄抜けの門」と呼ばれる場所。岩の中に、いくつもの部屋が連続するように連なった穴が続いている。まさに人が寝床として作ったとしか思えないような場所。どうやったらこんな地形が自然にできるのか、本当に全くわからない。自然が作り出すアートは制作過程を一切公開しない、マジックのようだ。

「龍宮路」と呼ばれる場所までやってきた。ダイナミックな岩壁がとても気持ちのいい場所だ。さて、そろそろ船の時間だ。これ以上ここにいると、帰路がとても大変になる。結局海岸線を歩く半周コースすら全部行けなかった。あまりにも表情豊かな奇岩が面白く、寄り道に道草ばかりで、前に進めず、予定時間はとっくにオーパーしている。10数年前の訪問の時も全部見れなかったが、今回もまた、「見残し」てしまった。

行きはとても時間がかかったが、帰りは意外なほどにあっという間に船着き場まで歩いて帰ってきた。ちょうど船着き場に帰ってきたころ、グラスボートが見残しにやってきた。乗船したら、ゆっくりと船は見残しを後にした。船の上から離れていく見残しを見返る。「エヴァンゲリオン」のようなロボットに見えなくもない岩がなんだか格好よく見えた。

先ほど訪れた「人魚御殿」を海上から望む。大きな3つの穴がどれも独特。確かに遠くから見ると、ここに人魚姫たちが住んでいても、おかしくなさそうだ。
見残しまでは20分かかった船旅も、帰路はサンゴ礁の観察がないので10分ほどで船乗り場に帰ってこれる。帰りはデッキに出て、見残しの風景や美しい青い海を直接楽しむのが気持ちよい。ある意味、日本とも思えない、そして現実世界とも思えない風景。自然が作り出した斬新なアートの世界。それが見残し。この絶景を見残してしまった弘法大師は、かなりイタイことをしてしまったのだなぁと思わざるを得ない、見ごたえのある場所だった。

足摺・土佐清水の宿泊情報

四国最南端、土佐清水・足摺は黒潮が直接ぶつかる美しく青い海を眺めながらの滞在ができる宿がいっぱい。特に足摺岬付近には温泉を備えた温泉宿やリゾートホテルがいっぱい。土佐清水のサバをはじめとした海の幸もいっぱい。せっかくここまで来たのならば、黒潮を感じる四国最南端の気持ちよい滞在を楽しみたいですね。

■ 足摺・土佐清水のホテル・宿一覧

見残し海岸

住所: 高知県土佐清水市見残し
電話: 0880-82-1111
休み: 対象外
営業時間: 対象外
交通: 宿毛より国道321号線を南下約1時間
   土佐清水より国道321号線を北上約20分
駐車場: 有り(無料・駐車可能台数多)
料金: 大人1260円・小学生630円 (グラスボート・旅館などに割引券あり)

【投稿時最終訪問 2008年5月】

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