大和屋本店ランチと日帰り温泉【道後温泉老舗ホテル】

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日本最古の温泉である道後温泉。その顔である公衆浴場の「道後温泉本館」を取り囲むように多くの旅館が林立する。しかし、日帰り湯入浴が1000円以上の高額な設定だったり、日帰り入浴自体していない旅館も少なくない。 ランチと日帰り温泉をセットにしたプランが道後温泉のホテルのスタンダードになっている。その中でも今回は「大和屋本店」のランチに訪れた。

大和屋本店は明治元年創業の老舗で、道後温泉を代表するホテルのひとつ。大和屋本店ではランチと温泉がセットで楽しめる食事プランがある。食事をすれば、無料もしくは、500円の追加料金で温泉を楽しめる。 宿泊すればハイクラスの旅館だが、ランチは比較的リーズナブルに楽しめるのでねらい目だ。

道後温泉を代表する落ち着いた老舗高級旅館

「大和屋本店」の外観。大和屋は数ある道後温泉の旅館の中でも代表格の高級旅館。創業は明治元年の老舗でもある。大和屋本店は、見た目は和風の大型ホテル。道後温泉本館から徒歩1分、立地的にも最高だ。ただ、温泉街中心部なので駐車場は少ない。ホテルマンに車を預け、詰め込みでの駐車になる。

大和屋本店のエントランス。大きな建物に似合わない、小さな入口だ。料亭やほかの小規模な旅館の入口と思ってしまうほど。思わずホテルマンに、入口はここであっているのかと訪ねてしまった。大規模旅館にありがちなバスツアーの大人数がドカドカと入ってくる大きな自動ドアではない。隠れ家的な高級な旅館の入口。さすが名の通った旅館だけあって、入口からひと味もふた味も違う。

エントランスを通り抜けるとそこはロビー。広くはないが、落ち着いた雰囲気。隠れ家的なエントランスを通り抜けた後にこの広がりだと、やはり驚きがある。受付でランチの予約をしていた事を告げ、先に温泉へと向かう。日帰り湯は大和屋のホームページで見る限りは受付していない。大和屋でランチを食べると、料理のコースのグレードによって「無料」か「500円」で入浴が可能になっている。

温泉とは思えないほどのおもてなしがいっぱい!

温泉はホテルの地下にある。湯上りどころには、とても落ち着いた雰囲気。うちわを置いてあったり、梅干し、冷茶のサービスがあるのがうれしい。テレビや自販機など俗世間とつながる物は一切なし。窓から日本庭園を眺めながら、ゆっくりと湯の余韻に浸れる、大人の空間だ。

さて、それでは温泉に。のれんをくぐって驚き。それは温泉の入口というより、客室や料亭の入口だ。畳敷きの踏込には床の間や押入れまであり、とてもここが温泉だとは思えない。

脱衣所。脱衣所にも床の間があり、まるで和室の部屋を改装したかのような設え。ややこじんまりとしているが、床も清潔でとても雰囲気が良い。タオルとバスタオルが大量に用意されている。ハブラシやヒゲソリ、クシも用意されているので、日帰りでなくても手ぶらで利用できる。特にハンドタオルの肌触りがとてもよく、普通の旅館の手ぬぐいとは品質が全然違うあたりこだわりを感じる。ロッカーはなく、脱衣かごになっている。貴重品ロッカーが別にあり、時計や鍵などが入れられる小さなものが8。ハンドバックのような小さなカバンが入るものが15。ショルダーバックなどの大きめのカバンが入るものが6。リストバンド式のカギになっており、無料で使用できる。

隠れ家のような静かで落ち着いた上質な温泉

男湯の内湯。浴室・湯船はとても広い。窓の外には日本庭園の緑がひろがっている。日本庭園に露天風呂があり、外に出るために湯船内に敷かれた石の上歩いて渡る。土壁に木の天井。やや薄暗めの照明に、窓の向こうの明るい緑。とても上品で心地よく、和の旅館にぴったりの浴室だ。

さて、湯の中に体を沈めてみる。実は道後温泉、湧出量はさほど多くなく、旅館の数も多い。そのため、旅館で源泉かけ流しができる宿はとても少ない。これだけの大きな湯船になれば、確実に循環ろ過方式。そのうえ、愛媛県の条例で塩素消毒をたっぷりされている。道後温泉の湯の評価のひとつとして、いかに塩素臭さを感じないかが僕の基準。さすがにこれだけ広い湯船なので、ほんわりと塩素の臭いはする。しかし、それを打ち消す心地よい香りがこの浴室には漂っている。浴室に入った瞬間、鼻孔に飛び込んできたのは、ヒノキの香り。天井一面に張りつめられた木、これがヒノキなのだろう。頭上から降り注ぐヒノキの香りがとても心地よく、塩素臭の存在を見事に忘れさせてくれる。内湯には大きな石が何か所も配されており、座ったり持たれたりできる。浴槽の縁で一段高くなっている場所も多く、場所によってその広さが違う。自分の好きなポジションを見つけて、自分のスタイルでくつろぐ、そんな場所だ。湯船は写真の左奥の土壁までずっと続いている。

露天風呂は檜風呂。サイズは広くなく、露天ということもあり塩素の香りも内湯に比べて強めだ。それでもこの露天風呂、かなり良い。その理由は庭にあった。数寄屋風の造りに庭園。いかにも和を感じさせてくれる。道後温泉はホテルが林立しているので、ホテルに囲まれたわずかな空間に露天風呂がある所が多い。そのため、露天風呂からの風景がなかったり、屋上に造るホテルも数多い。そんな中、地下に掘り下げて造ったのがこの大和屋本館の露天風呂。日本庭園で露天風呂を演出する旅館は道後にもあるが、どうしても他の旅館や建物の一部が見える。このように地下に掘り下げ、さらに山のように庭を盛り上げたことにより、完全に下界が見えなくなっている。庭を山にしたことで庭園の空間は狭くなるが、完全に視界を庭園しか見えなくすることで、どこまでもこの庭園が続いているように思える。無理矢理広がりを求めるのではなく、敢えて狭めて、入浴者の脳内に見えない空間の広がりをこの庭は生み出しているのだ。この庭のすぐ向こうは賑やかな温泉街である事は完全に忘れさせてくれる。まるで、山奥の一軒宿に来たような気にさせてくれる。道後の温泉街の中心でありながら、この露天風呂の造りは見事で、そのテクニックに酔いしれながら湯に浸かった。

洗い場はメインの7ヵ所と離れた所に3ヶ所。水栓設備としてはやや古いものだが、湯量は豊富なので全く気にならない。檜桶とイスが使われており、「お求めは売店まで」といった営業色丸出しのシャンプーなどは置かれていない。シンプルながらも落ち着いた造りだ。隣との間隔も広めにとられており、使いやすい。女湯の洗い場にはパーテーションが設けられているそうだ。さすがは道後を代表する高級旅館の温泉。そのこだわりは想像を軽く超える素敵なもので、上質な空間の入浴はついつい長湯となった。

まるで料亭のような落ち着いたホテルレストラン

温泉を堪能したら、次はランチを楽しみ大和屋本店のレストラン「松風」に訪れる。和の趣を強く感じさせる料亭のような入口は高級感があり、これからの食事を楽しみにさせてくれる。

レストラン松風の席。落ち着いた和の趣の中に、ソファーやカーペットなどの洋も取り入れられている。まるで、松山を舞台にした夏目漱石の小説「坊ちゃん」が活躍した明治時代のような、和洋折衷のモダンレトロを思わせる。となりの席とも十分離れており、落ち着いた食事を楽しめる。

 能舞台を鑑賞しながら食事が頂けるレストラン!

このレストラン松風はもちろん、大和屋本店の顔ともいえるのがこの能舞台。「千寿殿」という名の能舞台は伝統芸能の上演はもちろん、結婚式などもできる。

レストランでは、座席からこの能舞台を眺めながら食事をすることができる。夕方18時半からは約10分間、この能舞台で舞囃子が上演される。運が良ければ、能や舞囃子などの伝統芸能を楽しみながらの食事を頂ける。

今回オーダーしたのは、季節限定の「芋炊き御膳」1,575円。ランチとしては高級だが、ホテルでいただく食事としてはリーズナブル。さらには525円の追加で温泉が楽しめるので、お得なランチセットだ。しかも、2,625円以上の食事プランだと入浴料は無料となる。(通常、道後温泉のホテルの日帰り入浴料金は1000~2000円)「芋たき」とは、愛媛県の秋の郷土料理。里いもをメインに鶏肉やこんにゃくなどを甘い出汁で煮込んだ料理。秋の名月を愛でながら、河原で仲間で鍋でつつくというのが風情ある食べ方だ。その他天ぷらや刺身、あえ物などがある。ちりめん山椒を乗せたご飯はお代わり自由。食後にはデザートのミルクレープとコーヒー。どれも美味しく、特にちりめん山椒が乗ったご飯は、それだけで食が進む。あなどっていた和え物も予想以上に美味しく、素敵なランチを楽しめた。これで1575円なら納得の料金。温泉に美味しい食事。道後温泉の旅館でのランチは、少しだけ背伸びするだけで相当な贅沢を楽しめた。

【道後温泉の宿・ホテル一覧】

大和屋本店 レストラン松風・日帰り入浴

住所: 愛媛県松山市道後湯之町20-8
電話: 089-935-8880
時間: ランチ 11:30~14:30 (14:00ラストオーダー)
   ディナー 17:00~21:00 (20:00ラストオーダー)
定休日: 無休
交通: 伊予鉄道道後温泉駅から徒歩8分
   松山自動車道・松山ICより20分
駐車場: 50台(無料)

泉質: アルカリ性単純温泉
備品: タオル、バスタオル、ボディソープ、リンスインシャンプー、
   ドライヤー、鍵付ロッカー

【投稿日最終訪問 2013年10月】

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