高瀑(たかたる)【秘境に潜む西日本随一の落差の滝】

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西日本最高峰・石鎚山の麓、深い山の中に名瀑がある。落差132mの「高瀑」(たかたる)だ。所在地の標高が西日本一、落差も西日本一の那智の滝(133m)に次ぐがかなりマイナーな滝だ。その理由はアクセスが困難な深い山中にあること。約10kmの未舗装の細い林道を走り、さらに徒歩で険しい見える登山道を約1時間、深い石鎚山の懐まで潜り込んで初めて出会える滝で、簡単には見ることはできない。
石鎚山をは挟んで北側には日本の滝百選の落差102mの「御来光の滝」がある。こちらも険しい山道を約3時間歩くが、アクセスは快適な石鎚スカイラインがあり、展望台からもその姿を望むことができる。同じ石鎚山から流れ出す大瀑布ながら、やはり高瀑はその名が知られていない。そんな秘境にあり、無名ながらも大迫力の滝を目指して山に向かう。

石鎚山の懐へと切り込む長く細いダート林道

石鎚山ロープウェイへ向かう道から分岐して、折掛石鎚林道へ向かう。林道を車で走らないなら、その手前にある諏訪神社前の駐車スペースに車を停めさせてもらう。5台ほど駐車は可能だ。
最初は走りやすいダート道。前日に降った雨で、所々水溜りやぬかるみがあるが、問題は無かった。

さて、この時の高瀑へのアクセスはMTBだ。この林道は台風被害などでよく通行止めになる。よっぽどのことがなければ、徒歩や自転車(担ぎ上げあり)での通行は可能。相当な標高を登るのでMTBを途中で押すことにはなるが、帰路は早いとの判断だ。
ここから林道の勾配がきつくなっていく。粘土質の地面がぬかるみ、とても走りにくい。なお、高瀑までの林道はかなりワイルド。延々とダートの狭路が続く道で落石や倒木も頻繁にある。オフロードバイクなどでは気持ちよさそうだが、車はきつい。普通の車なら必ず底をするはずだ。車高の高いSUVでもハンドル操作ひとつで車にキズが付くことは覚悟しておきたい。特に3ナンバーサイズならその可能性はかなり高くなる。林道走りを楽しむジムニーなどには最高のルートと言えそうだ。

もう、どれくらいMTBに乗っただろうか。いや、押しただろうかといったほうが正確かもしれない。何とかMTBを押し、高い山々が見える場所までたどり着く。目的の駐車場は近くなってきた。少し季節も戻ったような感じだ。途中、歩きで林道を行く年配の3人組と出会う。話を聞くと、どうやら林道以外に歩きやすい山道があるとの事だ。しかも、その道は崩壊もしておらず安全という。地図で確認すると、確かに急勾配だが、安全に下山できそうな道がある。「大成」という地名の廃村を通り抜けるショートカットとなっており、徒歩で高瀑に向かうには林道歩きより早い。
大成という場所には、昔集落があったようで、今でも神社や廃屋が多く残っている。石畳で、昔人が行き交っていただろう道を登っていく。神社・廃屋がある場所からは、使われていない林道を歩く。

林道を行くとトンネルが姿を現す。やっとだ。このトンネルを抜けると、間もなく駐車場だ。
素掘りで、深い砂利ダートのトンネル。暗闇に飲み込まれるような、冷たい空間だった。

MTBで林道を走り抜け、やっとの思いでたどり着いた駐車場。ここで昼食をとり、高瀑(たかたる)への道へと向かう。ここから先は登山道だ。MTBは駐車場に置いていく。駐車場には粗末ながらも公衆トイレと休憩小屋がある。相当な年期なのであまり便りにできないが。
道が崩れていれば、普通車が入れるスペースから10km近くも歩かねばならず、登山者も激減している。それでも、名瀑を求めて、訪れる人は少なくない。この日も私たちを含め、こんな山奥まで少なくとも7人は入山している。
歩く人が少なくなったためか、高瀑への登山道も荒れ始めている。瓦礫が道を埋め、木の足場が崩れ始めている。それでも赤テープをつけたり、新しい工事用ロープや道標を設置して、何とかコース保持に努めようとしている形跡がある。地元やこの滝の愛好家の有志の労力だろうか。

美しい川と滝が連続する険しい山道を行く

道を歩き始めると、すぐに出会うのが『赤ノベラ』
名前の通り、赤い滑らかな1枚岩の上を清らかな水が流れている。とても透明度が高い。夏に訪れると、気持ちよさそうだな。

ちなみにここの水の中はこんな感じ。不思議なほど緑色をした、透明な美しい水だ。
赤ノベラを過ぎると、道は本格的に登り始める。1時間半の登山なんて、どうって事はないが、すでに満身創痍の状態での登山開始だ。かなりしんどい。

ぜ~ぜ~いいながら道を登る。まわりは苔むした木と岩の世界。少し、もののけ姫の世界に迷い込んだ気分になる。

のぞきの滝。名前の通り、切り立った崖の上から滝を覗き込む。崖という密閉された空間に響く滝の音が、心地よくも恐ろしくもあった。

丸渕。以前は美しい丸い形をした淵だったようだが、今は土砂が流れ込みその影は無い。この淵の近くにかかる橋は、台風の被害が顕著に出ていた金属製の欄干が折れ曲がり、コンクリート製の橋の一部が砕けている。台風のときは、この橋は激流にすっかり飲み込まれていたのだろう。
ここで一服を入れる。これからは足場の悪い斜面を一気に登る。急登の上、足場が悪い。足場の木製のハシゴが壊れていたり、木が倒れていて行く手を阻んでいたり。その悪路を登りきると、ついに目指していた名瀑が姿を現す。

直下から見上げる大迫力の高瀑

ついに目の前に壮大な滝が姿を現す。見上げると、はるか彼方崖の上から、美しい水が降り注いでいる。人里はなれた深い山奥に、飲み込まれるほどの雄大な滝がひっそりとそこにそびえたっていた。
高瀑と書いて、「たかたる」と読む。愛媛県西条市、西日本最高峰の石鎚山系に源を発する加茂川の最上流部に位置する。
深く美しい渓谷を進むと、突然現れる巨大な崖。高さ132mの崖の上から、水が降り注いでいる。これが目指していた「高瀑」だ。

冬は滝一面が凍る氷瀑となり、とても幻想的な姿を見せてくれる。

降り注ぐ水の量は少ないが、谷から吹き上げる風にあおられ、飛沫となって周囲の森を潤す。

風に踊り、二度と同じ表情はしない高瀑。その目まぐるしくも美しい変化は、見るものを一層魅了する。

はるか彼方上空から降り注ぐ水の流れは、空を舞う間に、細かい霧のように姿を変える。滝の下には滝つぼはなく、霧が降り注ぐ不思議な空間だ。

風が吹くと水は空に舞い上がる。あまりにも高さから落ちるため、水はまとまって落ちず、空中で霧散する。そのため滝の直下には滝壺はなく、その断崖絶壁の真下まで取り付ける。轟音と共に頭上から降ってくる滝を見上げるのは大迫力だ。

高瀑登山に便利な温泉付きのホテル

高瀑

場所:愛媛県西条市
交通:国道11号線より、県道12号線を黒瀬湖経由・石鎚ロープウェイ方面へ
   途中、県道142号線を高瀑渓谷方面へ
   諏訪神社以降は未舗装の狭路
駐車場:諏訪神社に約5台の駐車が可能。トイレ・水場なし
トイレ:簡易トイレが、登山道入口の駐車場にあり
コースタイム:諏訪大社→登山道入口(大成経由)約3時間
(無雪期)  登山道入口→高瀑 約1時間
        
登山に精通している方、何度かこの地を訪れている方を同行しての登山を強くお勧めします。

【最終訪問時2006年4月】

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