高川山からむすび山縦走【秀麗富嶽十二景】
「高川山」(たかがわやま)は山梨県大月市と都留市の境に位置する標高975mの山。秀麗富嶽十二景のひとつに指定されており、頂上からは見事な富士山の展望が楽しめる人気の山です。今回は高川山からむすび山を縦走。スタートもゴールもJR中央線の駅にできるアプローチしやすいルートです。
JR初狩駅から高川山登山口へ
スタートとなるのJR中央線の初狩駅。山梨県ながらも都内からでも比較的アクセスしやすい駅です。ここからは徒歩で高川山の登山道へと向かいます。
駅前の住宅街を東に線路沿いに進むと地下道で線路を南側にくぐれるようになっています。ここをくぐって先に進みます。
登山道までは集落の入り組んだ道を歩きます。高川山の標識が出ていますので見落とさないようにしましょう。
登る高川山を望む里山の風景。歩いていて楽しくなります。道はどんどん細くなりうっそうとした杉林の中に入っていきます。
アスファルトの道から未舗装に道が変わります。この先が登山道入口です。木々が覆いかぶさるように迫る緑のトンネルのような道です。
登山道入口。駐車スペースは3~4台分くらいありますが、ここに至るまでの道は細く、木々の生い茂る林道もあります。小型車や狭路の運転も気にならない方以外は電車でアプローチするのがよいでしょう。
様々なルートが選べる高川山登山道
高川山への登山道は尾根ぞいの「男坂・女坂コース」と沢沿(ゆるやかだが最後は急登)の「沢コース」のふたつがあります。今回は男坂・女坂コースを登ります。
しばらく杉林の中を歩きます。尾根沿いに出ると原生林も姿を現します。森の広がりを感じながらゆっくりと登っていきます。
途中、男坂と女坂に分岐します。多様性の時代とか叫ばれていますが、男坂は黙って直登、女坂は奥ゆかしく回り道というのが定番。病み上がりの登山で体調がイマイチだったのでここからは女坂に入ります。
女坂はしばらく美しい杉林の中を登っていきます。階段などはありませんが、それでもしっかりと標高は稼ぐ登りです。
登る方向を変えて進むと、薄暗い杉林から太陽の光が降り注ぐ緑あふれる原生林になります。頂上が近づいてきました。
男坂との合流地点付近では、初めて富士山の展望が木々の間から望めます。日本人のDNAに刻み込まれた美しいそのシルエットは誰もが感動し、そこで足を止めて見とれてしまいます。
男坂と合流すると登山道は太陽の光を浴びて輝く美しい森の中を進みます。少し道もなだらかになり、今までとは全く違う植生と眺め。空と接する稜線に近づいたことを感じます。
最後は空に向かっての岩場の登り。この先に目指す頂上が待っています。
高川山頂上からは富士山の絶景の展望!
高川山頂上はむき出しの大きな岩が多く、それに腰掛けて富士山を眺めながらランチを取る多くの登山者で賑わっています。頂上が昼食に最も適した場所と限りませんが、このコースの中では絶好のランチスポットです。
高川山頂上からは秀麗富嶽十二景の案内板があり、見事な富士山の姿を目にすることが出来ます。
高川山頂上からの富士山の眺めはまさに絶景。秀麗富嶽十二景での中でも富士山に最も近い山の一つで、他の山に遮られずに裾野の都留市の町並みまで望めます。ダイナミックな富士山の全景を望める高川山は、個人的には秀麗富嶽十二景の中でも1.2を争う富士山の展望の美しさだと思います。
1時間少しで登山口から登れる高川山は気軽に富士山の絶景が楽しめるスポット。できれば普段より豪勢なランチを持参して、時間の経過とともに、少しずつ表情を変える富士山の姿を楽しみたいですね。頂上からはほぼ360°の展望が楽しめますが、やはり富士山の美しい姿に釘付けです。
深い緑に覆われた高川山からむすび山への縦走路
頂上での富士山を眺めながらの絶景ランチを楽しんだら、むすび山への縦走開始です。まず樹林帯を下り、その後は尾根道を進みます。
高川山頂上からは道標を「むすび山」を目印に、大月駅近くまで続く稜線を縦走するコース。メジャーなコースとしては田野倉分岐から富士急・田野倉駅への下山する道ですが、ここは稜線を直進します。また、高川山直下の古宿分岐から下山すると、リニア見学センターに出ることも可能。下山後に社会見学もできてしまいます。
田野倉方面への分岐を過ぎてむすび山までの縦走路は歩く人が少なくなるせいか、所々に所々草が生い茂り藪のようになっている箇所もありますが、しっかりとした道が続いています。
時々、茂みで道が途切れているように見えますが案内看板はしっかりとついています。ちょっとした藪漕ぎになりますがすぐに抜けられます。
植生が雑木林のようになってくると、木々の間からすぐ足元に街の看板や建物が見えてきます。裏山の散策といった雰囲気を感じます。
「大月防空監視哨跡」が残るむすび山
街の雰囲気が木々の間に感じられるようになると間もなく、最後のビークであるむすび山(標高463m)に到着します。広場になっている山頂にはベンチと案内板、そして太平洋戦争時代の旧日本軍の戦跡「大月防空監視哨跡」があります。
むすび山の頂上にぽっかりと穴をあけた場所が、戦跡の「聴音豪」。宗教的な儀式を行う遺跡のように思えますが、戦時中はこの施設を使い、日本に襲来する敵機の哨戒を行っていました。この場所で双眼鏡による空の監視と、聴音豪に入って航空機の音を聞き、機種と侵攻方向をいち早く電話で本部に伝えていたそうです。アメリカ軍は日本への飛行を富士山を目標にしており、米軍機が日本のどちらに向かったかわかる富士山のふもとにあるむすび山は重要な拠点だったそうです。
「大月防空監視哨跡」にはベンチが置かれ、草が生い茂っており、長い間使われていないことはひと目でわかります。昭和の初期には日本の命運をかけた緊張が支配した場所が、令和の今は、ハイキングや登山の途中にちょっと立ち寄る小さな頂上になっています。
むすび山からは大月市街地を一望することがでる絶好の展望台。空を警戒する軍事施設が置かれた場所だけあって、とても開けています。縦走はここで終了で、この先稜線は大月の市街地に飲み込まれます。
むすび山から大月駅への下山も見所がたくさん
むすび山からは市街地へ向けて一気に坂を下ります。標高は463mのむすび山ですが、大月市の標高が高いので、すぐ足元に民家がはっきりと見えており、すぐに下山することが出来ます。
むすび山からの下山は民家の庭のような場所に出てきます。勝手に通ってもいいのか心配になりますが、道標もあり登山道となっています。
下山後は、所々に設置されている看板を目印に大月駅に向かいます。
国道20号線に出て、大月橋を渡ります。交通量の多い道路ですが、しっかりとした歩道があるので安心です。渡る桂川の深い渓谷に街が広がる風景は見ごたえがあります。
山中湖や忍野八海を源に発した桂川が深い谷を成して流れています。山頂から眺めた富士山から流れ出した澄んだ水が流る桂川は、神奈川県に入ると相模川と名前を変えて太平洋へと注ぎます。
桂川を越えると富士山の山麓、河口湖に向かう富士急の上大月駅を渡ります。富士山観光の人気の路線ですが、途中の駅にはどこかローカルな雰囲気を感じます。
大月駅へは国道20号線を離れ、旧甲州街道を進みます。レトロな雰囲気を残す商店街は山旅の最後になんとも言えない趣きを感じられます。
商店街を抜けると大月駅に到着します。手前にはカラフルで様々なラッピングがされた富士急の車輌が並んでおり、このまま東京方面に戻らず、本日美しい姿を堪能した富士山にこの鮮やかな電車に乗って向かいたくなります。
高川山~むすび山
JR初狩駅→登山口 30分
登山口→高川山 1時間10分
高川山→むすび山 2時間30分
むすび山→大月駅 20分
【縦走時期 2019年10月初旬】