紅葉の大山登山 【見頃は10月の連休】

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「伯耆富士」の名を持つ日本百名山のひとつ「大山」(1729m)は中国地方の最高峰。11月初旬には山麓に広がる広大なブナの原生林の紅葉が見頃となる。
大山は日本海に面する岩稜の独立峰のため、わずか標高1300mを超えると森林限界となる。大山の頂上付近の紅葉の見頃はちょうど10月の3連休の頃。気軽に森林限界上のアルペン的な紅葉を楽しめる秋の大山登山は大人気のコースだ。
登りの地図を発掘する

スキー場がある大山寺の門前町から登山スタート

大山のメイン登山道は夏でも冬でも「夏道登山道」だ。入口は「大山寺橋」南側にある。ここにも駐車場があるが、すぐに満車になるので、少し離れているが大山観光駐車場に車を停める。ここならスキーシーズン以外は無料で開放されていて、とても広いのでどこにでも車を停められる。
観光駐車場からは少しだけ「大山寺」への参道を歩く。まだ朝早く静かな参道も、少しずつ木々が色づき始め、秋の気配が漂い始めていた。しかし、参道を包む空気はとても厳としていて冷たく、冬の気配すら感じられるくらいだった。

登山道に入るため、大山寺橋を渡ろうとすると、道端にテントがいっぱい立ててあった。こんなところで野宿するとは、なかなか度胸座っているなぁと思っていると・・・
あれ?こんなところにモンベルのお店が!!大山寺橋北側、以前は古い土産屋があった所になんとmont-bellショップがオープンしていた。(当時)
連休ということもあり、テントやスノーシューの展示イベントの準備をしているようだ。そういえばモンベルはラフティングのツアーをしている徳島の大歩危など、アウトドアフィールドに店を出店している。普通に考えたら何でここに?と思う場所だが、大山は登山にスノーシューにスキーのメッカ。「ターゲット」の客層がいっぱい集まる場所と言える。なるほど、考えているなぁ~と感心。不足している装備の現地調達もできそうだし、欲しいと思った装備を買ってすぐにフィールドで使えるメリットもありそうだ。

ひたすらにブナの森を登る大山夏山登山道

登山道はよく整備されているが、階段の多い道をただひたすらに登って行く。まだ寒い朝の空気に包まれていたが、僕は登山開始前に上着を脱いだ。大山の夏道コースは無駄がない。一直線に大山頂上を目指してのかなり急な登りだ。とにかく汗が噴き出す。
一面のブナ林の中はまだ葉は青々としているが、気の早い個体が少しだけ美しい色を見せてくれる。清涼な空気が通り抜ける原生林だが、この急坂は体を一気に火照らせる。連休ということもあり、登る人も多い。広い登山道だが、集団を追い抜くのにもかなりのエネルギーを使ってしまう。

登山口は標高800m。少しずつ標高を上げていくと、季節も進み、紅葉の色合いも進んでいく。大山の森林限界は日本海から一気に立ち上がる大山の厳しい地形も影響して、6合目(1300m)である。
6合目にある避難小屋を越えると、ブナの林は見られなくなる。上部のブナ林は少しずつ色づき始め、美しい秋の色を森の中に描き始めていた。

抜けるような青い空に、秋の雲が飛ぶ。ここはもう、秋の中。鮮やかで深い色が、涼しい風に紡がれて、秋色をつくりだす。

5合目を過ぎると広がる展望と紅葉

5合目を過ぎ、元谷に下る「行者コース」の分岐点を過ぎて少し行ったところ。ここに僕の大好きな展望ポイントがある。とはいっても、道端に石を積み上げた場所があるだけのところなのだが・・・
ここからはこのルートで初めて、大山の雄姿が樹木に遮られず拝める場所だ。まずはここから大山を眺めて、頂上の状態をチェック。
・・・雲がかかっていますなぁ。それでも稜線を流れていく雲はまるで生き物のようで幻想的。

大山の絶壁にかかる雲。雲の隙間からこぼれる朝日がスポットライトのように山肌を照らし、早く紅葉した木々をを輝かせる。大山は信仰の山。この山自体が山麓にある大神山神社のご神体だ。まさに神そのものの山が見せる、神々しい風景。

振り返ると、大山の裾野。スキー場や牧場が広がる。奥に見えるのは地平線ではなく日本海。海の近くには大きな風車が建っているのも見える。

見上げると青空に紅葉がとにかく映える。高い空から降り注いだ太陽の光は、すべてのものに美しい色を与える。息をのむ一瞬。紅葉の到来を、実感できた美しいシーンだった。

周りの木々の高さや密度が低くなるにつれて、その木々もずいぶんと色づき始めてきた。もうここは秋の入口。心配した、大山頂上の雲も退き、とても美しい風景になってきた。
空を渡る風の涼しさが増し、この頃には汗はすっかりひいていた。

6合目を過ぎると森林限界の紅葉上の世界

6合目の避難小屋に到着。小屋とはいえ、売店どころか、トイレも水もない。なにかあった時に中に逃げ込むことができるくらいの小さな建物。周りにはベンチがあり、大勢の登山者は中に入ることなく、外で休憩している。
基本的に大山は入山すれば、売店もなく、水場もない。トイレも頂上にあるだけだ。食糧と水はしっかり用意し、トイレは必ず入山前に済ませておきたい。さあ、ここからはブナの林を抜け、森林限界を超えた高山の世界の登りとなる。

大山夏道コースの6合目を過ぎると、もう背の高い木はほとんどなくなる。日本海の厳しい冬の北風に吹かれることもあってか、大山ではわずか標高1300mで森林限界を迎える。こからは一気に季節が進む。気持ちよく色づいた灌木の中の道を、青空に向かって登って行く。

大山の稜線はまだ雲に覆われているが、徐々に退き始めている。登頂の頃には、美しい風景を展望できることを期待して登り続ける。
見下ろす「元谷」。大山は崩壊が続く山。激しい崩壊のため、近年、稜線の縦走が禁止されてしまったくらいで、今は最高峰の「剣ヶ峰」には立つことはできない。
崩壊が激しい大山北壁とそのふもとにある元谷。幾重にも張り巡らせた巨大な砂防堰堤がその崩壊の激しさを物語る。この元谷は土石流や雪崩の通り道。険しい自然の表情が、穏やかな初秋の風景の中に見え隠れする。

7合目付近から見上げる。8合目から先は大山キャラボクの純林が広がる稜線となる。厳しい登りももうすぐ終わりだ。稜線に出ればこの灌木も見られなくなり、草と岩の世界になる。紅葉の色を楽しむのも、この付近までだ。

見下ろす山麓。写真中央やや右にある町が大山寺の門前町で、この登山を出発したところだ。随分と登ったなぁと実感できる。
奥に広がる青い色は日本海。大山はすそ野を海に沈める独特な地形。そのすそ野には広大なブナの原生林が広がっている。残念ながら訪れた10月の連休には、ブナの紅葉はまだまだだった。しかし、山の上からどんどん紅葉が下っていく様子が、見下ろすとよくわかる。

8合目付近から見下ろす大山西側の風景。眼下には桝水高原が広がる。大山牧場の広い牧草地と、建物の赤い屋根が牧歌的でとても気持ちよい眺め。地球が丸いことも実感できてしまう。

もう少し視線を北側に向けると、美しい弧を描く海岸線が見える。この海岸が美しい砂浜で有名な「弓ヶ浜」で、その奥には美保関や境港が見える。
境港の付け根には有名な温泉「皆生温泉」がある。大山の登山口から車があれば30分ちょっとで行ける距離。帰りに汗を流しに、名湯に立ち寄るのもよさそうだ。

9合目から先はダイセンキャラボクのアルペン的な稜線

稜線に出ると、植生は一変する。色づいた灌木はなくなり、緑色のハイマツのような植物が一面を覆う植生に変わる。この植物は「ダイセンキャラボク」
9合目付近は、このキャラボクが大群生をなしている。この「ダイセンキャラボクの純林」はとても貴重で、国の天然記念物に指定されている。キャラボクの間を縫うようにつくられた細い道や木道でここから頂上に向かう。この時期、ダイセンキャラボクは小さな赤い実を結んでいた。

9合目から先は木道が頂上までずっと続く。崩れやすい火山山地の大山の崩壊と、そこに息づく貴重な植物を守る措置だ。圧倒的な高度感を感じる雲の上の木道はとても気持ちがいい。

9合目付近では道が二股に別れている。どちらに行っても頂上にたどり着けるが、左側の道に進む方が近道である。
右側に行くと、このダイセンキャラボクの純林を周遊するルートとなる。(地図上で南側のルート)
途中、大山登山に使われた昔の岩小屋などを見ることができる。しかし、標高を分岐点よりやや下げることになるので、余計な登りが増えることは覚悟しておきたい。
写真は南側のルートを行く登山者。見下ろす足もとの風景は絶景だ。この景色をさらに間近に見下ろせるのが、南側ルートの良いところでもあるかもしれない。

頂上付近に近づくと、岩や草が中心の植生へと変わってくる。コケなどの地衣類に覆われた地面に、不思議に色づいた草がとてもいいアクセントになっている。なんだか不思議な世界に迷い込んだ気分。

大山頂上は海を間近に見下ろす森林限界上の絶景

「大山頂上小屋」が見えてきた。大山の頂上である「弥山」はもうすぐだ。もう、これより上には大地はない。空だけだ。ラストスパート。頂上に向かって小走りで空の中の道を駆け上った。

美しい紅葉を目一杯楽しみながら大山頂上に到着。人がいっぱいいるところが大山の頂上だ。
大山頂上は火山性の地層のためにとても崩れやすく、一時は多くの人の登頂で激しく荒涼していたそうだ。しかし木道を設け、ひとり1つずつ登山者に運びあげてもらった石で崩れた地面を整地するなどして、今の緑が復活した。木道以外の場所に立ち入ることは禁止されている。そのため、頂上は広々としているがそこでくつろぐ人の人口密度はとても高い。団体が来て休憩すれば、文字通り足の踏み場もなくなる。

頂上には「大山頂上小屋」がある。避難小屋であり管理人はいないので、水などは補給できない。トイレのみ利用できるが、登山者の行列ができる。
宿泊するには食糧・水・シュラフなど持ち上がらねばならないが、とても素敵なロケーション。この前夜も、多くの人がこの避難小屋に泊まり、美しい朝の風景を満喫したようだ。

大山の頂上からは日本海が見える。1700mを超える高い山の頂から、これだけ近くに海を感じられる山は数少ない。大山という山の特異性をよく感じられる眺めだ。海岸線に立ち並ぶ巨大な風車群がとても小さく見える。
ちなみに手前に写っている大山頂上小屋の2階にあるのは「冬季入口」だ。冬にはあの2階まで雪が積もり、場合によっては入口を雪の中から掘り起こさないといけないそうだ。日本海から直接冬の北風を受ける頂上。その冬の厳しさは想像以上だ。

木道の一番奥まで進むと、そこには絶景が。大山の頂上されている今いる「弥山」(1709m)から大山の最高峰「剣ヶ峰」(1729m)の眺め。今まで見てきた風景とは全く違う。なだらかなブナ林が広がる山容だったのが、一変して荒々しい岩の世界に。
大山は見る角度によって全く違う山に見える。西側から見れば「伯耆富士」と呼ばれる穏やかな山容。北側・南側から見れば北アルプスを思わせる険しい稜線を持つ岩山に見える。ここ、弥山の頂上が、その世界の分岐点なのだ。

大山は雲の上の世界。稜線から谷底に下り落ちる岩肌には、雲がゆっくりと流れ、まとわりつく。その急な斜面を紅葉が転がり落ちるように、下界へと下って行くのがわかる。流れる雲が、不思議なくらいの静寂をここまで伝えてくれる。

見下ろす下界。多分下界にはこの雲に覆われていて、この大山の姿は見えないだろう。まるで海のように広がる雲海。とても美しい光景。高い場所に登った者だけが見れる空の海。遠く雲の切れ間には、蒜山高原の牧場が見えている。

剣ヶ峰の頂上。もう誰も立ち寄ることのなくなった石碑がひっそりと頂上にたたずんでいる。弥山から剣ヶ峰に伸びる稜線は細く、険しい。その稜線は北側からも南側からも、両側から崩れ続けている。
火山性の地層の稜線は厳しい気候に崩落が続いている。とどめをさしたのが2000年秋の鳥取県西部地震で、激しい揺れでいくつもの登山道が崩壊した。確かに、稜線を行く道を目で追っていくと、何箇所も激しく崩れた場所で道が消えているのがわかる。それ以降、弥山と剣ヶ峰の稜線の縦走路は閉鎖されている。
頂上から稜線に入る道はロープが張られているが、それでも乗り越えて果敢に挑む人もいる。だが、事故も後を絶たない。足元がやせているだけでなく、崩れるのだ。見た目以上に危険なので、絶対に「軽い気持ち」で縦走路に立ち入ってはいけない。

頂上で早めのランチを楽しみながら少し休憩。しかし朝一からの登山だったが、どんどん人が増えてきた。頂上のモニュメントの前で記念写真を撮りたくても、人が多くて近づけないような状況だ。そろそろ僕たちも頂上の場所を開けないと・・・
もう一度美しい大山頂上の風景を拝み、心に焼きつけたら、下山の準備に取り掛かる。

頂上小屋前から見下ろす、大山北側の風景。先ほどの剣ヶ峰は東側の風景で、視線を90度変えただけで全く違う眺めだ。遠くには日本海。なだらかな山麓にはスキー場や牧場、広い農耕地が広がる。足もとから流れ出すのは「元谷」。崩れる大山が流れていく場所だ。大山の水を集め、大山寺の門前町を通り抜けて、日本海へと流れていく。

大山頂上から見下ろす「三鈷峰」(1516m)
この三鈷峰も崩落のため現在は登頂が極めて困難となっているそうだ。標高1500mの稜線は、10月の3連休のこの時、とても美しく紅葉していた。

紅葉の大山頂上からの下山

さあ、下山だ。荒涼から蘇った頂上は不思議な植生。地衣類に覆われ、紅葉する草がピンポイントの彩りを添える。

山頂の温度計。10月中旬の日中でも10℃を下回りそうな勢い。下界のブナの紅葉はまだまだだったが、雲の上の頂上は、もう晩秋を迎えようとしていた。

頂上付近は木道が続く。崩落が続く大山の自然を保護するための道。彼方、下界まで戻る道のりははるかに遠く、ここからも長い旅。圧倒的な高度感を感じながらの下山の道は、絶景の連続。

頂上から9合目付近は、国の天然記念物の「ダイセンキャラボク」の大群生地がある。一気に急斜面となり下界まで下る大山。その頂付近はまるで空に浮かんだ天空の大地のよう。
下界に見える、深い森に囲まれた白く大きな建物は「大山ロイヤルホテル」。何度かあのホテルにもお世話になったが、広い部屋と温泉が気持ちいい、良いリゾートホテルだ。

ダイセンキャラボクが広がる大山の頂付近。雲の上から見下ろす広い牧場や畑が広がる裾野はとても美しい光景。

頂上から稜線の西端まで、木道がずっと続く。日本海を間近に、足元に見下ろしながら進む道は、最高のロケーション。遠く「弓ヶ浜」まで遠望できる。
木道の幅はそう広くはない。朝早く出発したので登りはそうではなかったが、時間がたつにつれてどんどん登山者が増えてきた。この木道にも人があふれ、すれ違いに立ち止まることも増えた。

大山は今も崩れ続ける山。東西に延びる稜線の左右は激しく崩れ、岩肌が露出している。火山性の山地である大山は、日本海から吹きつける厳しい冬の北風で崩壊が続く。2000年の地震での崩壊もあり、この細く崩れる稜線は今は登山道が閉鎖されている。登山道以外に足を踏み入れてはいけない。貴重な大山を崩すどころか、崩れた大山に飲み込まれて命すら失う恐ろしい山だ。

紅葉始まる斜面の下に見えるのは「元谷」。崩れる大山の通り道。
下りはあの元谷まで降り、崩れた大山の欠片の上を横断。そして、ブナの原生林を抜けて、写真左上にある大神山神社奥宮まで下る「行者ルート」を行くつもりだ。

山肌を下って行く紅葉。山麓の広い原生林は、10月の三連休には残念ながらまだ紅葉していなかった。しかし確実に、空から紅葉が大山の急な斜面を滑り落ちていく。もうすぐこの広い裾野のブナ林も美しい紅葉に包まれる。

すそ野へ広がっていく紅葉。牧場を走り、街を飲み込み、海へと消えていく。もう2週間もすれば、この景色は一面の紅葉色に染まる絶景に変わるのだろう。そして、今度は上空から、色のない真っ白な雪が紅葉を飲み込んでいくのだ。
鮮やかな紅葉色を迎えに、下界から登っ来る人々は多く、行列となって道を描いている。3連休の大山は、すれ違いが困るほど、多くの登山客が訪れていた。

標高を下げていく。9合目から上部は岩と草、そして常緑のダイセンキャラボクの世界。しかし8合目に近づくと、色づいた再び灌木が姿を現す。10月の3連休は、6合目から8合目付近(標高1300~1600m)が、一番紅葉が美しい。

青空と紅葉のコントラストが、荒々しい大山の北壁を彩る。美しい秋の、アルプスの山々と見紛うばかりの風景が、海岸線からわずか10数kmの所に広がっている。風が運ぶ色が大地に染まり、太陽が美しく、まぶしく、鮮やかに輝かせる。空と大地の狭間に敷き詰められた美しい紅葉色。人々の言葉を奪い、歩みをとめる。
季節は立ち止まらない。しかし、その季節を感じた人はここに立ち止まり、魅せられた人はここに立ち尽くす。

色づき始めた木々と、結び始めた赤い実。その奥には元谷上部、大山北壁がそびえる。北アルプスのカールを思わせるような、険しい風景。標高1700mの山なのに、標高3000m付近の信州の山を思わせる山容。大山の特異な地形は、手軽にアルピニストの風景を楽しませてくれた。
もうすぐ6合目の避難小屋に到着する。ここから下は森林限界下。大山のこの雄大な姿を間近に遮られずに眺められるのも、もうすぐ終わりだ。

もうすぐ大山の6合目の避難小屋まで降りてくる。その直前になると、灌木の背も高くなってきて、大山の雄大な風景に美しい彩りを添えてくれるようになってきた。

6合目の避難小屋に到着。この先に「行者コース」の分岐点がある。この6合目から見上げる大山と青空がとても美しかったので、少し小休息を入れながらその風景を堪能する。

下山は行者コースで元谷と大上山神社を経由

6合目を出発。ここからは、行者コースに入る分岐に入る。6合目から10分弱下ると分岐点があり、そこを右へと降りて行くのが行者ルート。このルート入口からも大山の雄姿が見える。
夏山ルートから登って来た時、少しでも早く大山の姿を見たければ、20mほどこの行者ルートに足を踏み入れればその姿を拝むことができる。

行者ルートは元谷を経由して大神山神社に向かうルート。大神山神社は車を止めた駐車場からだと、日本一長い自然石を使った参道の奥にある。せっかくここまで登ったのだから、帰り道に神社を経由して、その素晴らしい参道もあるこうという欲張りルートだ。
ここはサブルート的な扱いのため、メインルートである「夏道コース」に比べて人は少ない。この日はとても登山客が多かったので、このルートもまだ人が多かったが、それでもとても静かに思えた。行者コースの元谷への下りはとても急。道はよく整備されているが、なかなかハードだ。ここを登りで使うのはかなり辛そうだ。

急な坂を下り切り、少し道が緩やかになったと思うと、突然開けた場所に出る。ここが、何度も何度も大山から見下ろしていた「元谷」。大きなガレ石が転がる、とても歩きにくい場所だ。巨大な砂防ダムが上流にも下流にもいくつも設置されている。まるで工事現場のようで、ついさっきこの場所で掘られたり、置かれたりしたような岩石が無数に転がる。

大山は厳しい気候とその火山性の地層のため、崩れ続ける山。崩れた大山は、この谷にその欠片を落とし、流し続けている。この元谷では土石流がよく発生するそうだ。冬場は雪崩の巣窟と化す、とても危険な場所。元谷を経由する「行者コース」は危険と言われることがあるが、コースは夏山登山道に劣らぬくらい良く整備されている。
危険なのはここ。天気が晴れているなら問題は少ないが、天候が悪い時は相当危険なようだ。ガスでホワイトアウトしている中、雨の音にかき消された中から土石流が突然発生すれば・・・
その時この谷を横断していればかなり危険だろう。「立ち止まらないで速やかに通過してください」といった看板が立てられている。開放感があり、大山を間近に眺められる素晴らしいところだが、やはり長居はあまりよろしくない。晴れた見通しのいい日ならば危険は少なそうだが。

崩れていく岩肌の下部がモレーンのようにうず高く岩石が積み上がっている。それはまるで氷河の名残のように見える。これが大山が標高1700mにして、日本アルプスを彷彿させる姿を見せる要因なのかもしれない。

大山の上に広がる不思議な雲。空ももうすっかり秋の装いとなっていた。

さて、元谷を渡りきったらすぐの所に遊歩道の入り口がある。治山用の林道は進まず登山道を行く。深いブナや杉の木に囲まれた森はとても神秘的。
まるでこの世のものではない何かに出会えそうな森を進むと、そこに神々しい神社が現れる。ここが今登った大山をご神体とする「大神山神社」だ。

大神山神社は明治時代まで神仏混合であったため、神社でありながらお寺を思わせる様式がとても珍しい。参拝で中に入ると、まるでお寺のような装い。大山を拝み、深い森に囲まれる両翼50mを超える巨大な奥宮は重要文化財。冬場はこの大神山神社は2m近い深い雪に覆われてとても静かで幻想的な世界になる。
ここから階段を下り、通常と逆の方向に扉が開く神門をくぐれば、幻想的な参道が門前町まで続く。日本一長い自然石を使った参道はとても趣があり、歩いているだけでも厳かな気分になる。途中には「金門」や「大山寺」といった見どころもある。時間があれば、車に戻る前に一緒に参拝したい。

大山の観光と宿泊情報

大山の宿泊の選択肢は多くあります。
まず、大山山麓にはリゾートホテルやペンションが多くあります。 森の香りを感じる大自然の中でゆっくりと滞在できます。
また、車で20分走った場所にある「皆生温泉」は海沿いに旅館が建ち並ぶ山陰屈指の温泉地。 美味しい海鮮はもちろん、海を眺めながら入れる温泉が自慢の宿がずらりと並んでいます。フィールド近くの森の中か、海の近くの温泉か好きな場所に泊れるのも大山付近の魅力です。

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