雪の大谷【立山黒部アルペンルート】

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ゴールデンウィークの信州の人気スポットとして必ず美しい写真を目にするのが、「雪の大谷」。3000mを超える北アルプスの名峰・立山を貫いて富山と長野を結ぶ長大な山岳観光ルートである「立山黒部アルペンルート」の最高所・標高2450mの室堂平の道路を除雪してできた高さ20mに迫る雪の壁。その雪の壁に覆われた道路を歩ける雪の谷ウォークは圧巻の風景で、北アルプスの春の風物詩となっています。

雪の大谷の訪問のベストシーズンはゴールデンウィークですが、当然大混雑が予想されます。連休中は朝5時に起点となる立山駅に着いても乗車まで2時間近い列ができています。それ以降なら駐車場の順番待ちなども発生するので折角来ても室堂に行く時間がなくなります。帰りのバスにも行列ができるので、雪の大谷観光は近くで宿を取り、早朝から並ぶことをオススメします。

大行列必須ながらも美しすぎる室堂への高原バスの車窓

標高977mのケーブルカー・美女平駅から残雪が残る山道を立山高原バスは50分で標高差約1400mを一気に登ります。その途中バスが道路で停まる場所から窓越しに見えるのは「称名滝」。4段に分かれて断崖絶壁を一気に流れ落ちる滝は日本一の落差350mの大瀑布です。そしてその右側にさらに高い場所から流れ落ちるのは「ハンノキ滝」で、その落差はなんと500m。しかし雪解け水がなくなるとその流れはなくなるため日本一の滝としては認定されていません。ともあれ窓の中から日本一の滝と幻の日本一の滝両方をこの季節には見ることが出来ます。心して座席に座ってその瞬間を待ちましょう。ちなみに登りはバスの左側、下りは右側の座席からが良く見えます。

残雪だった雪はどんどん積雪というレベルになってきます。平地でこれだけの雪があれば雪かきがかなり大変な豪雪です。しかし今から向かう場所を思えば、この積雪量はまだまだ序の口で、期待を高めてくれるプレリュードにすぎません。

どんどん標高が上がって行き樹木が生息できない森林限界の上に出ます。それと同時に積もっている雪の量は一気に増え、真っ白になった高くそびえる山々の姿も間近に見えはじめます。天気が良ければ遠くには富山の町と日本海も見えます。

立山・室堂に向かって正確に掘り起こされた道をどんどんバスは走ります。快適にバスは走りますが、道路以外はどこも深い雪に閉ざされた世界。普段なら近づくこともできない場所をバスは走り抜けていきます。

室堂に近づくにつれ、バスの窓の上まで雪の壁の高さが上がってきました。雪の絶壁が覆い被さる道のドライブは滅多にできない経験です。

ついにバスは雪の大谷と呼ばれる観光エリアに入りました。この時の雪の谷の最高箇所は16m。雪の谷間を走る高原バス。バスと比べると、その雪の壁の高さがどれほど高いか実感できます。ここは車道に人が歩いているのでバスもゆっくりと進みます。その分車窓からも雪の回廊をたっぷりと楽しむことが出来ます。

感動と驚嘆が連続する美しい雪の大谷

ついにバスは標高2450mの室堂に到着しました。室堂は日本最高所にあるバスターミナルで、ホテル、レストラン、展望テラスなど充実した施設がある立山黒部アルペンルートの最大拠点で、多くの人で賑わいます。付近にはかまくらや小さな雪の谷である「雪の回廊」もあるのでウォーキングの前後に立ち寄りたいですね。

室堂からは間近に日本百名山の立山を望むことができます。実は立山という名前の山頂は無く、雄山(おやま)、大汝山(おおなんじやま)、富士の折立(ふじのおりたて)の立山三山を合わせて立山と読んでいます。実質のピークは標高3015mの最高峰である大汝山ですが、立山信仰の要である雄山神社の祠と社務所が写真一番右側のピークである雄山の頂上にあります。

立山を取り囲む山々も真っ白となり、たくさんの雪を纏っています。素人では近づくことすらできない雪に覆われた北アルプスに容易に立入ことができるのも、雪の大谷の魅力です。

室堂バスターミナルでトイレなどの支度を済ませたら、雪の大谷ウォーキングへ出発です。雪の大谷は20m近くもの雪に埋もれた山岳道路のみを美しく掘り起こした巨大な雪の回廊。約500mの区間を雪の大谷ウォークとして人も歩くことができます。右側が歩道、左側がバスが通る車道になっています。

高くそびえる雪の壁にはまるで地層やミルフィーユのように雪が積み重なっている様子が見られます。 雪が降っては止んでを繰り返しながら、ワンシーズンでここまで積み重なったことを実感できます。そんな雪の壁には触れることが出来ます。冷たい雪の壁は圧縮されて固くなっていながらも手で削ったりもできます。

青空と真っ白な雪の壁に囲まれた世界は見たことがないような世界。まるで映画のセットに迷い込んでしまったようです。雪の壁には積雪状況を記したカレンダーや鯉のぼりが泳ぐように貼り付けられていたりと楽しく歩くことが出来ます。15分で片道を歩くことが出来ると案内はありますが、天気が良ければ方々で足を止めるので、その倍くらいはかかると思います。

クレパスや氷河のよう頭上にそびえる巨大な雪の壁。アルプス山脈や北極に居るかのような風景です。こんなにも1シーズンで雪が降り積もるものかと驚いてしまいます。

緩やかにカーブを描きながらながら続く雪の壁はまさに自然と人間の手が作り出した芸術作品のよう。この深さの雪の中から1本の道を掘り起こすのは相当な労力が必要だったことでしょう。

雪の壁の最高には案内版が置かれており、一番高い場所を確認することが出来ます。訪問した時に雪の壁の最高所は約16m。ビルの5階に相当するような高さの雪が一面に積もっていることは驚愕です。見上げると覆いかぶさるように迫る雪の壁は大迫力。感動と驚きが交互に何度も感じる神秘的なウォーキングです。

室堂と立山の景色を一望する雪の上のウォーキング

雪の大谷ウォークの終点はパノラマ広場。ここからは雪の壁に閉ざされて見えなかった立山や室堂の風景を一望する大展望スポットになっています。

ここからはパノラマウォークで立山を眺めながら雪原を歩いて室堂に戻ることが出来ます。しっかりと固められた雪道で歩きやすくなっています。融雪もあるのである程度の防水性があり足元がしっかりしている靴なら、ぜひ北アルプスの雲上の雪道を歩いてみましょう。ただし晴れの日は雪の照り返しが猛烈です。サングラスがあれば散策はとても楽しくなります。

パノラマウォークで目指すのは、バスが到着した標高2,450mにある日本最高所のホテルであるホテル立山。その1階、2階が室堂バスターミナルの施設となっています。振り返ってみると、すごい場所にあるホテルだとわかります。一度ここで宿泊して、立山の大自然を満喫してみたいものです。

パノラマウォークからは雪の壁に閉ざされていて見えなかった立山の山々を間近に見ることが出来ます。木々がひとつもなく、険しい岩肌の上をなぞるように積もった雪がとても美しい風景で、日本にこんな場所があったのかと感動する場所です。

宇宙の色を映したかのような紺碧の青空と、真っ白に輝く雪がシンプルながらも美しく複雑な風景を作り上げています。稜線からスキーで滑ればとても気持ちよさそうな雪山。時々この立山の雪の中を滑り降りているエクスパートの姿も目にします。

積もった雪が何度も何度も融けて、大地を削り、深い谷が刻まれている室堂。立山や周囲にそびえる3000m級の山々の姿と相まって、美しくも厳しい冬の山岳風景が見渡す限りの一面に広がっています。

左側のクレパスのように雪の間にぱっくりと割れているような場所が先ほど歩いた雪の大谷。そしてその外側、10m以上積もっている雪の上をパノラマロードが続いています。多くの人は雪の大谷からの戻り道に大雪原を歩いて真っ白な立山連峰の姿を堪能しています。パノラマロードは本格的な雪融けが始まる4月中旬から5月上旬までの期間限定で楽しめます。

室堂バスターミナルまで戻ったら、このまま下界に帰るのはもったいない。室堂平には散策路がありこの時期も雪道ながら歩くことが出来ます。雪の積もった室堂はここでしか見られない美しい風景。時間に余裕があり天候が安定しているなら、ぜひ室堂の雪の散策も楽しんでください。

雪の大谷の服装や持ち物

気温は真冬なみなので、ダウンジャケットやコートなど冬の服装は必須。ただし太陽が出ると一気に暖かくなるので、温度調整ができるように重ね着を心がけましょう。

足元は滑りやすい雪でしかも解け始めているので、スニーカーなどの雨の日でもしっかりと歩ける靴が必須。スノーブーツや登山靴があればなおベストです。

高い標高なので陽射しはかなり強烈です。日焼け対策はもちろん、太陽が出ると雪がまぶしすぎますので、サングラスは絶対に忘れないようにしましょう。また土日祝日は2時間行列に並ぶことは必須です。お菓子や飲み物など用意しておくのが良いでしょう。

立山駅徒歩圏内の便利なホテル

雪の大谷【立山高原バス】

住所: 富山県中新川郡立山町
電話: 076-432-2819 (立山貫光)
期間: 4月中旬~11月末
休み: 期間中無休
営業時間: 往路室堂行始発6:40、復路立山行最終16:30
料金: 立山室堂往復/大人6,320円、子供3,160円
交通: 北陸自動車道・富山、立山ICより約40分
駐車場: 900台(無料・6か所、最大800m遠方)

【投稿時最終訪問 2019年5月】

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