石手寺 【四国霊場51番札所・お遍路起源の伝説の寺】

四国八十八箇所の51番札所の石手寺。四国・松山を代表観光名所、道後温泉に近い場所にある事もあり、観光客も多く訪れる。お遍路の元祖とされる衛門三郎の伝説も残る、歴史ある寺である。しかし、この寺、今まで訪れた霊場の中である意味、最も奥が深い、ディープな場所だった。

お遍路の起源と言われる人物にまつわる石手寺

石手寺の入口。付近は交通量も多く、コンビニや飲食店も並んでいて、観光客も多く訪れている。それでも石手寺境内のすぐ後ろにそびえる山を借景にして、とても自然と厳かな雰囲気に包まれた寺に見える。境内入口には売店や遍路用品を扱う店があり、付近の札所の寺に比べ、とても賑わっている。

入口に土下座をしているのが、「衛門三郎」でお遍路の起源となった人物だ。地方の長者で、随分と横暴な人間だったそうだ。ある時、托鉢に訪れた弘法大師を叩き返したところ、8人いた子供が次々に亡くなった。衛門三郎は、弘法大師への非礼を後悔し、弘法大師を追って四国巡礼の旅に出る。長い間巡礼を重ねるも弘法大師に会う事はできず、衛門三郎は病に倒れる。その死の床でついに弘法大師が現れ、三郎は泣いて非礼を詫びた。すると、弘法大師が「衛門三郎再来」と書いた石を彼の手に握らせたところ、安心して息を引き取った。
その後、伊予の豪族に長男が生まれるも、手を固く握って開こうとしない。そこで、この寺に祈願をしたところ、「衛門三郎再来」と書かれた石が左手から出てきたそうだ。

石手寺という名前はこの伝説からきており、安産祈願で訪れる人も多い。詞梨帝母天堂に供えられた石を持ち帰ると子宝に恵まれるそうだ。そして無事に子を授かれば、新しい石を添えてお返しをする。

石手寺の参道は屋根があり、独特な雰囲気。よくお遍路さんが大きな荷物を担いで歩いていく。それはとても絵になる。

国宝の建物等の歴史ある名刹・石手寺

参道の先には仁王門が待つ。鎌倉時代に建てられ、国宝に指定されているだけあってさすがに歴史と威厳を感じる。門の左右には巨大なワラジがぶら下げられている。

境内に入るとまず目につくのが三重塔(重要文化財)歴史ある建物が立ち並ぶ境内は広く、その規模の大きさは、他の寺に比べてけた違いだ。
境内をには反戦や戦没者慰霊のメッセージが多くある事。ある種、独特の雰囲気で、他の寺にはないものだ。

「本堂」(重要文化財)
こちらも鎌倉時代の建物。八十八か所の寺には、本堂と対をなし、弘法大師を祭った「大師堂」があり、お遍路さんは両方お参りする。

境内は広く、見事な寺院が軒を連ねる。これを見て回るだけでも、石手寺の歴史と風格を感じる事が出来る。

石手寺ディープスポットへの入口マントラ洞

ひととおり境内を参拝したら、どうしても気になっていたスポットに向かう。それは「マントラ洞」という名前の洞窟。石手寺の境内にある山をくりぬいた洞窟だが、この中には様々な仏像が安置されていて、巡礼をする事が出来る。そして、洞窟の奥には、出口があり、マントラ塔があるという。なんだか神秘を感じる入口、洞窟好きの僕にとっては、魅惑のスポットだ。
求められた「100円程度の参拝料金」を寸分なく収め、この暗闇の中に身を躍らせる。しかし、この入口こそ、石手寺のもうひとつの顔の入口。理解できるかどうかを万人に問う、ディープな世界への入口であった。
【注意】石手寺の古刹の雰囲気を大切にしたい人は、この先進んではいけません!

洞窟入口で2方向に分かれている。まずはもう一つの出口を目指して真っすぐに直進する。
何体もの着帽し前掛けを掛けたお地蔵さんが並んでいる薄暗い洞内を進む。少し不気味でもある。お地蔵さまにロープが掛けてあり、行きと帰りの道を区切っている。ややバチあたり。
よく見ればセンサーや照明がある。以前はエンマ像の前でいきなりフラッシュをかましたりしたそうだが、今は作動する気配すらない。
途中、「金剛界」や「胎内界」といった祭壇があり、仏像を安置している場所がある。昔は電飾を多く付けていたそうだが、今は全く灯らず、ひっそりとしていて、少し怖い。

洞窟を出ると、そこは静かな山の中の道路だった。鄙びた田舎というのがぴったりの場所で、先ほどの境内や寺社前の賑わいがうそのようにひっそりとしている。

洞窟を抜けるとそこはディープな仏教の世界

「?!」
洞窟を出ていきなり目についたのが、巨大な閻魔様の石像。しかもwelcome」「yenma」など英語??その妖しさに導かれるように、エンマ様の門をくぐっていく。ここは「奥の院清浄寺」というらしいが、この先には何があるのか??

これはもしかして有名なヒンドゥー教の神「ガネーシャ」??そのほかにもヒンドゥー教の神と思われる石像がいっぱい並んでいる。仏教とヒンドゥー教は近いと聞くが、でもいきなり何故こんなものが??

なんじゃこりゃ~。たどり着いた先にはまるでUFOのような建物が・・・これが先ほどのマントラ洞の案内板にあった「マントラ塔」か。あやしい。あやしすぎる。意図するものが、全然わからない。でも、その中に入れるようになっているのだから、中に入らずにはいられない。

中は2階建てになっている。2階にあがると、回廊が一周しているのだが、その回廊沿いにずらりと仏像が置いている。これが「五百羅漢」というものか。
ちょうど階段を上がり切ったところ、360度仏像に一斉に見つめられる。霊力0の僕だが、これは相当に効く。目に見えない力で束縛されるような感じだ。

天井は高く、塔の頂上から光が入る。その光を異国の装飾が異世界の空気を醸し出している。
この空間には古いソファーも置いてある。ここでおくつろぎ下さいと??さすがに無理だ。ここは息がつまりそうだ。正直、落ち着かない。密閉された静寂な空間で、これだけの視線を浴びせられる。仏像が放つ視線の音すら感じられそうで、早々に退出する。

外にはよく見るインドの仏像。ちょっと怖いが、その下でくつろぐ猫が空気をなじませてくれる。
余談だが、石手寺にはネコが多く住みついている。観光客にも慣れていて、とてものんびりとした時間を演出してくれる。奇妙な世界に迷い込んだ僕を救い出してくれたのは、このネコたちだった。

向こうに見える建物。寺の施設だと思うが、これはなんだかいい雰囲気。怪しげな物をいっぱい見せられたので、ちょっと昔の日本を思わせるような建物が至って新鮮。どこかトトロの五月とメイの家にも見える。

マントラ洞に戻り、今度は入口から左方向へと進む。「四国八十八ヶ所霊場」と名付けられた場所。多分各寺に見立てた88体のお地蔵さまがならんているのだろう。ここは通路はせまく、さらに暗くなっている。先に進むと、もう一つの境内の出口に出る。

巨大な弘法大師像が立つお山四国八十八ヶ所

無事に現実世界に戻ってこれた。とんでもない石手寺のもうひとつの顔を見せられ相当にびっくりした。さて、一息ついたら、またまた石手寺のもう一つの顔を見に行こう。
「お山四国八十八ヶ所」という、石手寺の境内にある「愛宕山」をめぐるのだ。先ほどくぐったマントラ洞の掘られた山だが、この道は歩き遍路が次の寺に進む「遍路道」にもなっている。精神衛生上、悪いことはないだろう。ここは家族がなくなった時、49日までにお参りすると、成仏させる事が出来るそうだ。

山道を歩くこと10分足らずで愛宕山の頂上に到着。頂上には小さな祠が祭られている。

石手寺の近くの山の上には、巨大な弘法大師像が立つ。日本最大の弘法大師像で、木々の間に建つ姿は、巨大。また、頂上からは、松山市内や瀬戸内海の展望が見事。松山城や道後温泉の風景もここから見渡せる。

山を下りてくると、京都の清水寺を小さくしたような「観音堂」などの建物を見て回ることが出来る。その中、紅葉に包まれるように、ちょっと先ほどのインド・チベットっぽい建物が姿を現した。これは「パゴダ」というビルマの戦没者慰霊塔。中に入って参拝と同時に資料を見ることが出来る。
急ぎの遍路で、決まった参拝だけをすれば、古刹としての雰囲気を感じられる寺。しかし、立ち止まり、隅々までさまよえば、混沌とした精神世界へのトリップを促してくれる寺だった。

道後温泉の観光と宿泊情報

日本最古の温泉とされる道後温泉には、数多くの宿があります。どの宿にも趣向をこらした温泉を楽しめ、さらには湯篭をもって浴衣姿で道後温泉本館や椿の湯といった外湯巡りも楽しめます。道後温泉から伊予鉄道の駅に続く商店街「道後ハイカラ通り」にはたくさんの店が並んでおり、各ホテルの軒先には無料の足湯があり、道後温泉は散策するにはもってこい。海にも近く美味しい魚を食べられる店も多数。毎時0分に稼働するからくり時計も見応えがあって楽しく、ゆっくりと宿をとって道後温泉を楽しみたいですね。

【道後温泉の宿一覧】

石手寺

住所: 愛媛県松山市石手2-9-21
電話: 089-977-0870
交通: 松山自動車道・松山ICより約20分
   伊予鉄バス・石手寺下車すぐ 
参拝: 無料
時間: 8:00~17:00
駐車場: 門前に有料駐車場あり

【投稿時最終訪問 2008年12月】

シェアする