初寝浦展望台【戦跡が残る父島絶景スポット】
太平洋のど真ん中に浮かぶ絶海の孤島、小笠原・父島。海から一気にそびえ立つ深いジャングルに覆われた山の中に走る道路が「夜明道路」。その山上付近に太平洋と父島のジャングルを一望し、太平洋戦争時に後のアメリカの大統領が銃撃した戦跡が残る場所が「初寝浦展望台」だ。
夜明道路。かなり標高を上げた所に駐車スペースと森の中に入っていく道がある。ここが初寝浦展望台への入口だ。林道で深い森の中を抜けると、海を見渡せる最高の場所にたどり着く。
小笠原の海を見下ろす父島山上の絶景展望台
初寝裏展望台からの北側の眺め。傾いた日に照らされた山肌は、南国の様相。そしてその向こうには、はるかかなたまで広がる水平線。地球の丸さを実感できる。
初寝浦展望台から南側を眺めると見える、エメラルドグリーンの美しいビーチ。これが「初寝浦」だ。
車が走る夜明道路から山の中を歩いて30分以上降りなければたどり着けない魅惑のビーチ。ただでさえ、静かな父島のビーチだが、このビーチの静かさと美しさはその中でも格別だと聞く。ここからは青い海だけでなく、小笠原の深い森も見下ろせる最高の展望台だ。
この展望台の岩場付近は足元注意。これは「ノヤギ」のフンだ。ノヤギとは、家畜として小笠原に持ち込まれたヤギが、野生化したもの。現在その数が増え、小笠原の固有種・希少植物への食害が危惧されている。また、増えすぎたノヤギが植生を食べつくしたため、大量の土砂が海に流出し、サンゴ礁の破壊なども起こっている。
現在、このノヤギに対しては「1頭残らず駆除=根絶」を目指して事業がすすめられている。戦前に人が住んでいて、戦後無人島になっていた「媒島」「嫁島」などでは駆除は完了。「兄島」などで現在は駆除作業が行われているそうだ。ここ父島でも普通にノヤギは生息していて、現在は防護柵などでノヤギから希少種の被害を防ぎつつ駆除もしていくそうだ。
なんだかひどい話のように聞こえるが、ノヤギに食いつくされて露出した赤い土壌が青い海に流れ出している姿を見ていると、致し方ないようにも思える。すべては人間が移住のために連れてきたのが始まり。人間によって狂った生態系を人間が元に戻そうとする。ヤギたちにとっては何とも迷惑な話だろう。
小笠原で駆逐されたノヤギは聞いた話だと、そのまま地面に埋められるそうだ。食肉として流通させるには、保健所の検査が必要。しかし、小笠原には保健所が無い。東京まで駆除したノヤギの肉を運び、検査して流通させようとすると、コストが高すぎる。ただ「殺す」だけにならないよう、何とか島の中だけでも流通できないかと、関係機関と調整するためのNPOも先日立ち上げがったそうだ。穏やかな自然が残る小笠原ではあるが、その自然は今破壊や変貌の危機に直面しているのだ。
今もジャングルに残る銃撃の跡が残る戦跡
初寝浦展望台には、旧日本軍の通信所跡が残っている。元アメリカ大統領、ジョージ・ブッシュはこの付近を戦闘機で攻撃中に撃墜されたそうだ。何とか海に不時着して難を逃れ、その後に大統領になった事実には驚かされる。展望台にある戦跡は銃撃を受けた形跡があり、戦争のあとがひしひしと感じられる・・・
展望台から夜明道路に続く林道の脇の深い森の中にも大きな戦跡が眠っている。こちらは落書きもされておらず、当時のままの姿を残している。
窓から内部を覗いてみる。とても広い建物で、今は何もない。地面に何か機械を置いていたような台座の跡がある。ここに発電施設があったという話を聞いたことがある。これは発電機のタービンの台座だろうか?
この建物の奥にも少しだが落書きがある。しかしその落書きの日付は1977年。当時の若者が書いたのだろうか。何十年も前の落書きが残っているというのも、不思議な気分だ。とはいえ、もうこれ以上、ここに落書きを増やすのは、もちろん許されない。
建物の内部。どこかしらレトロな雰囲気が漂う。しかし天井が一部はがれたり、2階部分の床が崩落している。中に簡単に入れるが、やはり入るのは危険だ。
しかしこの建物はとても重厚な造りだ。分厚いコンクリートに鋼鉄の窓枠。おそらく分厚い鉄板で窓をガードしていたのだろう。それだけ頑丈な造りなのは、ここが重要施設だった証拠。それだけに、この建物のあちらこちにらも、戦闘機から受けた銃撃の跡が外壁に物々しく残っていた。
初寝浦展望台の入口付近にある、おなじみの二宮尊徳像。と、思いきや、なんと首がない。これは怖い・・・
これは旧日本軍が大村小学校から運んできた二宮尊徳像を、占領中のアメリカ兵が首を切り落として持ち帰ったらしい。この尊徳像も、その身をもって戦争の悲惨さを伝えようとしているようでもあった。
小笠原・父島の宿泊情報
■ 父島の街の中心で便利なリゾートステイ
■ 小笠原を代表するリゾートホテル
初寝裏展望台
場所:東京都小笠原村父島
交通:二見港から車で20分
駐車場:約5台
【投稿時最終訪問 2008年1月】