明石海峡大橋海上ウォーク

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神戸と淡路島を結ぶ明石海峡大橋。世界最長の長さを誇る吊り橋で、全長3911m、主搭の高さは298mと、構造物としては桁外れのスケールを誇ります。橋は高速道路となっており、淡路島はもちろん、その先にある四国・徳島へのアクセスを担っており、海の上を飛ぶように走れることから、ドライブルートとしても人気です。実は自動車専用道路の明石海峡大橋ですが、歩いて淡路島に渡れるイベントが年2回行われていることはご存知でしょうか?

明石海峡を見下ろしながら淡路島に歩いて渡れるという非日常には多くの人が毎回参加しますが、これがなかなかスリリングなウォーキングなのです。

神戸と淡路島をつなぐ長大な明石海峡大橋

明石海峡大橋を歩いて淡路島に渡る事ができるのは、毎年5月と11月に行われる「明石海峡大橋海上ウォーク」というイベントです。事前申込の抽選制ですが、参加定員が2400人ととても多いので、かなり高い当選確率です。しかし、参加するには様々な制約をクリアしないといけません。

小学4年生以上(小・中学生は保護者の同伴が必要)、自己責任で4km以上の歩行ができる、高さ40m程度の階段の昇降ができる方、高所及び閉所恐怖症でない、トイレを2時間程度我慢できる、杖と車いすの使用は不可、ペット連れ不可、スカートやハイヒール不可、飲酒後の参加不可。
かなり様々な条件が付けられていますが、それには理由があります。まず、明石海峡大橋のある舞子公園内の「橋の科学館」にて受付。参加者はあらかじめ班に振り分けらており、順次出発します。班の集合時間までは普段は有料の橋の科学館を無料で見学できます。今から歩く明石海峡大橋の知識を仕入れておきましょう。

真下から見上げる淡路島にかかる明石海峡大橋。橋は高速道路なので歩くのはとても危険。そのため、この長大な距離を歩くのは橋の下にある管理用通路。橋の真ん中に通された細い通路が管理用通路です。細いとはいえ、橋は片道3車線。車2台がすれ違えるほどの広さの幅があります。しかしこの管理用通路、なんと足元は透け透けの網目状の鉄板。高さ40~60mの高さの海面の上を足元が透けた状態で4㎞も歩ける(歩かないと)いけないのです。高所恐怖症でなくても、「これ楽しそう」と思える人以外は参加はおすすめできません。途中で引き返せませんから!

まるで秘密基地!アンカーブロック内部へ潜入

普段は解放されていない巨大なコンクリートの建造物「アンカーブロック」に入ります。巨大なエレベーターの前でヘルメットが配布され、装着方法や海上ウォークの注意点の説明を受けます。スマホなどは無料で貸し出しされるスマホホルダーに入れて体に固定します。荷物も必ずリュックかたすき掛けできるバックが必須。万が一橋上から荷物を落とし、下を通過する人や船に当たれば大変なことになるので、この点についてはかなりの注意を受けます。カメラもストラップで体に掛けられるものでないと使用できません。

説明が終わり装備の確認が終わればついにウォークに出発。巨大なエレベーターに乗り込むのかと思いきや、その脇にある階段を案内されます。エレベーターは車両専用。人間はせっせと無機質な空間を延々とらせん状の詰め板階段を上っていきます。ウォーキング開始と同時に列の先頭に飛び出したい方は、説明の際にエレベーターのシャッター前でなく、エレベーターの右側にある小さな扉の前に陣取りましょう。
階段は7階まで登りますが、1階1階の高さがあるのでなかなか上部までつきません。普段から山に登っていない人にとっては、このウォーキングでの最大の難関でしょう。

およそ40mの高さまで階段を登りきると、そこはまるで秘密基地。車両をアンカーブロック上に運ぶ巨大エレベーターやターンテーブルを備え、コンクリートに包まれた無機質な空間は少しSFっぽくてワクワクします。最初にこの秘密基地に登りついたなら、冒険の開始の扉であるシャッターの前でスタンバイしましょう。

足元スケスケ!高度感満点の海峡ウォーク

出発の時。ゆっくりとシャッターが上がっていくと、その隙間からはるか彼方に伸びる明石海峡大橋の姿が現れます。まさに非日常の空間での非日常のウォーキングのはじまりです。なお、頭上を周回する通路は「舞子海上プロムナード」という常設の観光施設。明石海峡大橋を約150m歩くことができ、最先端の部分は展望スペースとして足元にはガラス張りの床もあります。海上ウォークに参加する機会がなくとも、舞子海上プロムナードで少しその雰囲気を味わうことができます。

さあ、淡路島に向けて出発!!ここで最初の難関。事前通知があったように、高さ40メートルにかかった管理用通路の床は、なんとスケスケ!一歩踏み出せばその恐怖(快感)から逃げるすべはありません。はるか下に小さく人が見えるこの高さに、気を抜けば落ちてしまいそうな足場に踏み出す事ができる人のみ、このイベントに参加できます。管理用通路の床が金網状になっているのは、海上での強風の影響を受けないため。とはいえ管理用通路には車が通れるくらい頑丈なので安心を。海上は常に橋の陰になり、上下左右から風に吹きさらされます。歩き始めて体が温まるまでは少し寒いこともあります。

はるかかなたまで、先が見えないくらいに伸びていく明石海峡大橋下の管理用通路。足元を見ると、網目が透けてはるか下の海面が見えますが、顔をあげるとうまく網目の隙間からの海が見えなくなります。前を向いて歩く限りはそんなに高度感は感じません。ただし、足元が透けない場所はなく逃げ場はなし。右側にある足元に板が張り詰められた通路は高圧電流が通っているために立ち入り禁止です。延々と続く網目の通路を海の向こうまで歩いていきます。

橋の右側に目をやると、日本標準子午線が通る明石市の町並みが見えます。管理用通路の横側も風の影響を最小限にするため、透け透け。かろうじて人が転落しないくらいの幅で柵が設置されているのみで解放感がいっぱいです。吊り橋なので、気づかないくらいに緩やかに登っていきます。橋の中心ではスタートより20mほど登り、海面より約60mの高さまで達します。

明石海峡大橋を支える橋脚が近づくにつれ、海面からの高度もどんどん上がってきます。高いところは比較的大丈夫(というか、好き) な僕でも、下を注視しながら歩くと、時々くらりと来るくらいの高度感を感じます。足元の橋脚の土台は甲子園のグランドくらいの広さがですありますが、はるか下にあるのでこの小ささです。

明石海峡の真ん中で見下ろす橋脚と行き交う船

2本ある橋脚の一本目に到着。ここでひと休憩です。橋脚部分には様々な機械が設置されており、工場感がいっぱいです。明石海峡大橋を使い、神戸から水道水と電力を淡路島に供給されており、この機械はまさにそのライフラインの一部なのです。明石海峡大橋は物資の輸送だけでなく、エネルギーなどの安定供給にも大きな役目を果たしているのです。遠くには六甲山系が海に沈む最後の山である旗振山とそのふもとに広がる神戸の須磨・垂水の町並みが広がります。明石海峡に沈んだ六甲山系は再び淡路島となって海に突き出しており、今まさに海水に満たされた六甲山系の深い谷間を橋で渡っているのです。

ふと橋の横側に目をやると巨大な機械が設置されています。これは橋脚のメンテナンス用の機械で、橋に沿って機械を移動させることで、橋の横側と底面のメンテナンスを行うことができます。橋を歩く途中何基もこの機械を目にすることができます。こういった巨大な橋を維持する仕組みを実際に管理用通路を歩きながら知ることができるのも明石海峡大橋海上ウォークの魅力。班ごとに2、3人の職員が誘導に入っており、実際に作業をされている方から明石海峡大橋の説明を受けながら歩くことができます。できれば職員の方の近くで一緒に歩き、いろいろな説明を受けたいですね。

橋脚の上の比較的安全な場所から恐る恐る橋の下をのぞき込みます。ただし危ないところで派手にのぞき込むと職員の方に注意を受けます。青い海の上に真っ白なコンクリートの建造物。写真では高さはわかりにくいですが、海面からの高さは約50m。 吸い込まれそうになるくらいの高度感です。

ひと休憩を入れたら淡路島に向かい再び出発。次の休憩ポイントである2本目の橋脚までは約2kmの行程です。

2本ある橋脚の間は橋の高さが最も高く、水深も深いため、大阪湾から瀬戸内海へ抜ける船の航路になっています。そのため、1回目の休憩の後の行程では、明石海峡を行き交う船の姿が真下に何隻も見ることができます。そこそこの大きさがあるはずの船が足元に小さく見えるのは爽快。中には網を引きながら走る漁船など、普段見下ろすことのない船が進む様がとっても新鮮で楽しく感じます。

何隻も船が足元を通りすぎていきますが、歩く速度を調整してでもすれ違いたいのが大型タンカー。ヘリポートを備えた超大型タンカーが自分のはるか足元をゆっくりと通過していく様は壮観。船の上で作業をしている人が小さく見え、船の大きさと橋の高さが実感できます。これだけの大きさの船を真上からしかも間近に見下ろすことは滅多にできない体験。タンカーが通り過ぎるときは誰もが歩みをとめて「おおお~」とその迫力に見入っています。

明石海峡のほぼ中間に到達。海峡のど真ん中、海上はるか高い場所から付近をゆっくりと見渡すこともなかなかありません。出発した神戸の山々がはるか彼方遠くになりました。まだ行程はやっと半分。元気に歩いていきましょう。このあたりの高度感はなかなかのものになります。

2本目の橋脚に到着し、二回目の休憩。ここまで3km歩きました。淡路島まであと1km。淡路島の町並みもはっきりと見えてきました。

明石海峡も潮の満ち引きが激しい瀬戸内海にある海峡のひとつ。渦潮で有名な鳴門海峡や潮流の速さで知られる来島海峡ほどではありませんが、それでもまるで川のように流れる海の様子をはるか真上から見ることができます。

ついに歩いて淡路島に到着!

さらに先に進むと淡路島側のアンカーブロックの姿が見えてきます。明石海峡の上を歩くこと4km、ついに淡路島に到着。2時間ぶりの陸地です。参加者が近づくとシャッターがゆっくりと開いて、その冷たい躯体の中に迎えてくれます。出発した場所と変わらない無機質な空間ですが、なんとなくほっとします。

階段でアンカーの中を下ると、最下部には淡路島やその向こう徳島の観光案内をしているブースが特設されています。班の参加者が全員揃うまでここで観光情報の仕入れをして待ちましょう。

参加者全員が揃えば解散。アンカー出口のシャッターが開き、橋の外の世界が広がります。目の前には淡路島から望む明石海峡と神戸。今歩いて渡ってきた明石海峡大橋と出発した神戸を真下から振り返る光景はとても特別で感慨深いものです。これだけの距離を海上を、しかも足元が透けた道を歩きとおす体験はなかなかありません。しばしこの光景を眺めながら達成感に浸ります。

海上ウォークのゴールは「道の駅あわじ」広い芝生広場からの明石海峡大橋の展望は最高で、少しゆっくりと淡路島からの風景を楽しみたいところです。また、道の駅にはお土産店やシラス丼が名物の海鮮レストラン、淡路牛を使ったメニューなどが目白押し。早々に淡路島を後にせず、プチ観光を楽しみたいですね。何せ、淡路島まで歩いて観光に来るなんて、なかなかできないのできませんから。

道の駅からは無料のシャトルバスが運行しており、明石行の高速船「ジェノバライン」が発着する岩屋港、JR舞子・三宮へ向かう高速バスが発車する淡路夢舞台まで連れて行ってくれます。多くの人が最短距離で向かう岩屋港で下車しますが、私のおすすめは淡路夢舞台。
淡路夢舞台は安藤忠雄氏が設計したウェスティンホテル淡路を中心とした緑とスタイリッシュな建造物が立ち並ぶ美しい公園。散策するだけでも自然と人工物が融合した美しさを楽しめ、素敵な植物館やおいしい食事も楽しむことができます。観光を楽しんだ後、先ほど自分が歩いた明石海峡大橋を高速バスに乗って走り戻るのも、旅の振り返りになってとてもいい感じですよ。

神戸・明石海峡大橋付近の宿泊情報

神戸での宿泊は、ハーバーエリアの夜景が楽しめるホテルや上質な有馬温泉が人気。淡路島を対岸に眺める須磨・垂水は、その風光明媚な風景を愛した外国人が多く住んだ場所で、海沿いや小高い丘の上にはリゾートホテルがいくつもあります。美しい風景を上質な空間で楽しめる神戸のマリンリゾートを楽しむなら、須磨・舞子のホテルがお勧めです。

【じゃらん】須磨・舞子のホテル

明石海峡大橋海上ウォーク

日程: 通常5月・11月の土日2日間開催
申込: 開催約1か月前まで (抽選制)
申込方法: 明石海峡海上ウォークホームページより
参加人数: 1200人×2日(出発時間の指定は不可)
出発時間: 8:45~14:40(10班制30分おきに出発)
参加料金: 大人2500円 中学生以下1500円

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