マイントピア別子 【住友の鉱山テーマパークや温泉】
愛媛県新居浜市は、大企業である住友の発展の礎となった町。そんな新居浜市にある「マイントピア別子」は、かつて住友が経営した日本三大銅山のひとつ「別子銅山」の本部跡につくられた道の駅にも指定されたテーマパーク。鉱山の紹介以外にも温泉などもありゆっくりできる道の駅だ。
観光、食事、登山、温泉、何でもありの道の駅
マイントピア別子は日本三大銅山であり、昭和48年に閉山した「別子銅山」の最後の採鉱本部である「端出場」(はでば)の跡地に作られたテーマパーク。別子銅山を紹介する観光坑道や鉱山鉄道、砂金採りなどが楽しめる。また、バーベキューやレストラン、多くの花や気持ち良い温泉もあり、1日中楽しめる。
また、別子銅山の「登山基地」としても便利な施設。別子銅山は開発が終わった場所の施設を取り壊し、植林を施していたため、現在ではそこに鉱山町があったなんてわからないくらい、美しい自然が回復している。また、銅山を通り抜け、さらに山の上に出れば、「西赤石山」などの1600~1700mの山々が軒を連ねる。登山者の集合場所や、下山後の温泉として、よくこの施設は使われている。
子連れで訪れたのならばぜひ見ておきたいのが観光坑道。トロッコ列車にのって入坑し、中にはちょっとした夕雲あるので小さな子供でも楽しめる施設になっている。
観光トロッコに乗って坑道へ向かうテーマパーク
レンガ造りの本館入口で入場券を買い、2階からトロッコ列車に乗り込む。ちょうどこのトロッコ列車のプラットホーム、秋に訪れれば冬桜が満開になっている。その名の通り、冬に花を咲かせる桜で、秋の紅葉を背景に広がる淡いピンク色はとても美しい。春の桜と違い、咲く密度が薄いので見応えという面では劣るが、2ヶ月近くという長い期間花をつけるのが特徴だ。
マイントピア別子は最後の採鉱本部だけあって、現存する鉱山遺構もとても多い。まず出発してすぐにくぐる中尾トンネル(写真左)登録有形文化財に指定されており、明治26年に作られたもの。全長92.5m、幅員3m。内部はレンガで組み上げられていて、その歴史を間近に感じられる。
そしてトンネルを出るとすぐに渡るのが「端出場鉄橋」これも有形登録文化財で、明治26年の建設。ドイツハーコート社のトラス橋で、対岸に対して約60度傾けて掛けられている。真っ赤なボーストリング(弓弦式)の橋をガタンゴトンと大きな音を立てながら渡ると、やはりその歴史を感じられる。このタイプの橋は国内でもほとんど現存しないので貴重だそうだ。
5分足らずで列車は到着。トロッコ列車を引っ張っていたのは、標高1000mを越える山の上につくられた日本初の山岳鉄道「別子銅山鉄道・上部線」を走っていた蒸気機関車のレプリカ。現物は、マイントピア別子の近くにある「別子銅山記念館」に大切に保管されいてる。
帰りもこの汽車に乗って帰るが、遊歩道を歩けば「第四通洞」の遺構を見る事も出来る。
入坑前に、駅の売店で名物の「いよかんソフト」を購入。さわやかな柑橘系の味でながら酸味は無く、やさしい甘さ。後味もさっぱりで、なかなか美味しい。
実際に使われた坑道の中で感じる住友の発展の礎
観光坑道に向かう。観光坑道は実際に火薬庫として使われていた坑道を観光用に改造したもので全長は333m。先ほど乗ったトロッコ列車からはバリアフリーになっており、車いすでも入坑が可能だ。中に入るとひんやりとしている。気温は約15℃。
まずは「江戸ゾーン」という、江戸時代の鉱山の様子を模型で表したコーナーになる。写真は銅を溶かしている様子。その他には湧き出した水を排水したり、手作業での掘削、選鉱や運搬、役所への上納、そして銅山町での生活など。
やや怪しげな神社を通り抜けると、そこは「近代ゾーン」ここから先がリニューアルされたエリアで、巨大な模型ができている。主に明治から昭和初期にかけての採鉱や生活の模型で、ボタンを押すと模型が動き始める。
巨大な模型のすぐ横には、竪穴が掘られている。これは火薬が万一爆発した際に、その風圧を逃すものだという。当時の採掘の施設の姿をそのままに残す部分だ。
当時に使っていた機械が展示されている。これは充電式のヘッドライトの充電ラックだろうか。その他にも削岩機や電話、無線機や測量機器などが保管されている。また新しく、ビデオの放映が行われていて、在りし日の別子銅山の映像などが見る事ができる。
子供が楽しく鉱山開発に触れられる遊学エリア
先に進むと「遊学エリア」がある。今回のリニューアルで新しく作られたエリアだ。遊びながら、別子銅山を学べるというもの。
造られた遊具は狭い空間に造られているので、滑り台や網などはやや急な勾配。写真右側に写っているのは、在りし日の索道を模した乗り物。別子銅山で採れた鉱石は索道(リフト)につけられたバケットという荷台に乗せて山の下に下ろし、戻りのバケットに鉱山町で必要な生活物資を乗せて運び上げていた。この遊具は大人でも乗ることができる。
さて、この遊具の奥には階段があり、エレベーターの入口がある。なんと、地下1000mの世界まで通じているという。地下1000mは実際に別子銅山が掘り下げた深さだが、その深さまでの直通エレベーターだ。
賢明な大人なら、2階に浮いたエレベーターの入口が地下まで通じている訳がない事にはすぐ気付くだろう。だが実際に乗り込んでみると、なかなかいい雰囲気をしている。しかも予想以上にリアルな動きをするので、本当に地下の世界まで運ばれている気にさせてくれる。
あっというまに「地下1000m」に到着すると、そこは坑道を模した真っ暗な空間。うっすらと光に照らされているのが、当時活躍していた電話機などの坑道での作業を支えた道具。
この地下1000mからの脱出は、階段を「降りる」か滑り台を「滑る」か先ほど紹介したバケットで索道を「下る」かの方法でなされる。
地下1000mの世界の下には、なぜかプラネタリウムがある。これがまた、想像に反してなかなかきれい。
中には、「別子1号(ここに来るのに乗ったレプリカの機関車)」を模した足こぎの乗り物が置かれている。銀河鉄道??
遊学パークはまだ奥にもある。削岩機での掘削作業を体験(左)そして、実際に銅山の排水を人力で行っていた時の作業(右)手漕ぎポンプで引き揚げた水は水車を回し、鐘の音を響かせる。
敷地内に多数残る鉱山開発の産業遺産
坑道はここで終わり、入口と違う出口から出る。美しい国領川の流れを渡り、元の場所へと向かう。川の底まで見える美しい流れは、ここで40年前に一大産業があり、煙を吐き出し、多くの人が働いていたことなど微塵も感じさせない。
坑道の出口から戻る際にも遺構を見る事ができる。それが坑水路跡。銅山から出る水には重金属などの鉱毒が含まれており、そのまま川にかな流すと公害が発生する。マイントピア別子から、「東平」という第三通洞がある標高750mの山の上まで登山道が通じているが、その道を行くと今でも延々と続いた坑水路の遺構を目にすることができる。
今回は観光坑道だけを楽しんだが、付近は産業遺産にあふれている。別子銅山鉄道の下部線の遺構。そして、先述した第四通洞・端出場発電所以外にも、泉寿亭や貯鉱庫などの別子銅山の遺産を間近に見る事ができる。さらには、貯鉱庫の奥にある通路を進み山へと10分ほど分け入ると、そこには多くの人が暮らした「鹿森社宅」の跡地が、まるでインカ文明の遺跡のように佇んでいる。
この日は「別子・翠波はな街道」でその他の別子銅山の足跡をめぐるので、残念ながら多くの時間はとれない。車を再び走らせ、紅葉の名所である別子ライン沿いに、山の上へと向かった。
マイントピア別子
住所: 愛媛県新居浜市立川町707-3
電話: 0897-43-1801
営業時間: 9:00~18:00(観光鉱山、入場は17:00迄)
休業日: 2月第3月曜から1週間程度点検期間休
砂金採りは冬場は土・日・祝日のみ営業
交通: 松山自動車道・新居浜ICより車で約20分
料金: 観光坑道 大人1200円、中・高校生800円、幼児・小学生600円
(JAF割引で20%OFF)
駐車場: 約400台
【投稿時最終訪問 2014年7月】