吉野川第十堰
「吉野川第十堰」は四国を代表する大河、徳島県の吉野川の河口から約14kmにある巨大な堰。江戸時代に造られた堰で少しずつその時代に工事が追加されていますが、吉野川の自然を損なうことなく、今も堰の機能を果たしながら豊かな生態系を育んでいる美しい風景です。
広大な吉野川を堰き止める第十堰の風景
徳島市内から吉野川沿いには土手の上の道が続いています。車は通行止めで、歩行者と自転車がのんびりと吉野川の流れを楽しめるルートです。吉野川の広い河川敷には、徳島の名産、鳴門金時の畑の美しい光景が広がっています。
吉野川を代表する風景のひとつが「吉野川第十堰」。江戸時代に造られた堰で、吉野川から分水する旧吉野川の水量確保のために、徳島藩の一大事業として造られた歴史的な建造物です。
吉野川右岸沿い(南側)の土手には自転車・歩行者専用の道が河口付近から吉野川市の県境上流部まで延々と続いており、サイクリングにもってこい。サイクリング途中の立ち寄りにもってこいの気持ちよいスポットです。
第十堰は江戸時代中期に造られた農業用水確保のための堰で、一部護岸がされているも当時の石組みが残されており、250年以上経った現在も堰として役目を果たしています。長さ1000m、幅30mに渡って石積みで吉野川をせき止めている風景は圧巻です。なお、第十堰の名前は十番目の堰ではなく、第十村にある堰という事が名前の由来です。
第十堰上流には、堰き止められた水が湛えられています。ここから旧吉野川が分水しています。水質もきれいで、かつては地元の子供の泳ぎ場だったそうです。
水辺で吉野川の自然に親しめる第十堰
第十堰がある吉野川の河原には車も入れる道が道があります。河川敷には数台車が停められるスペースはありますが、進入禁止の立て札があります。第十堰の案内看板もあり、自転車や徒歩ならここから第十堰に入っても問題はなさそうです。
残念ながら第十堰は江戸時代の姿のままではなく、コンクリートの護岸やブロックが積まれている箇所も多くあります。それでも必要最低限のもので、景観を多く損なうものではありません。
堰は石やブロックを積み上げられ、コンクリートで補強されただけの造りでダムや堰堤のような構造物はありません。水辺には近寄れるようになっていて、向こうまで歩いて渡れそうなくらいです。
堰の上流はまるで湖のようになっています。何も無いどこまでも続くかのような空間の広がりの中に響く第十堰の川音が、とても心地よい奇跡のような場所です。
第十堰が湛えた水の中に浮かぶ中洲がとても印象的。人工物が周りに見渡らない風景はまるで第十堰ができた江戸時代から変わらないかのような風景は阿波十二景のひとつとして愛でられてきました。
第十堰の袂には、吉野川の水を引き入れた澄んだビオトープがあります。ビオトープは最近に造られたものかもしりませんが、多くの生き物たちが古くからここで命を紡いでいることを実感できるほど、豊かな自然を感じます。
吉野川の河口から約14kmも上流にある第十堰ですが、満潮になるとここまで海水が遡ってきます。第十堰は海水の遡上から真水を守り、農業用水や飲用水を確保する役割も担っています。
自然と人間が見事に共存する第十堰
第十堰は水を完全に堰き止めておらず、石の隙間や堰の上部を越流して常に水が流れ続けています。魚道もあり、アユやウナギなどの多くの魚が堰を越えていきます。時代の流れとともに少しずつ治水工事が追加されていますが、現在でも自然としっかりと共存する見事な建造物です。川に巨大な建造物を造る時は自然破壊や反対運動がつきものですが、第十堰に至っては、自然にも人にも優しい憩いの場所となっているかのようです。
実はかつて第十堰を取り壊し、可動堰を建築する計画がありました。カヌーイスト野田知佑さんなどを中心とした住民運動が起こり、住民投票の結果、90%以上の建設反対票を得て、可動堰建設計画は撤回されました。この風景は地元の方に愛され、守られている美しい風景なのです。
大自然と人が共生する楽園のような吉野川・第十堰。川音と水と緑の香り。鳥のさえずりと虫の羽音。いつまでもくつろいでいたいとても素敵な場所でした。
吉野川第十堰
場所:徳島県名西郡石井町藍畑第十
電話:08086436268
交通:徳島自動車道・藍住ICより10分
入場料:無料
駐車場:なし
見学時間:24時間
【投稿時最終訪問 2020年5月】