三津の渡し 【愛媛県松山市・渡し船】

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かつては日本全国にあった渡し船。架橋技術の発展で近年にはどんどん姿を消して、日本全国にもその姿を見ることが少なくなった。瀬戸内海に面する愛媛県松山市には、かつての海の玄関口三津浜に、「三津の渡し」が今も残っている。地元住民の足であるのはもちろん、近年はノスタルジックな雰囲気を味わえると観光スポットにもなっている。松山市の海辺のサイクリングの途中、三津の渡しに訪れた。

のんびりとした時間が流れる三津の渡し

伊予鉄道・三津駅前から情緒感じる商店街を西へ。途中気が向くままにおもしろそうな路地を北に入ると、そこにたどり着いた。ここが「三津の渡し」の南側の船着き場だ。

渡し船は対岸にいた。ここに三津の渡しの歴史が看板に記されている。この渡しが始まったのは1469年とされ、一時期はとても賑わっていたそうだ。江戸時代の俳人、小林一茶もこの渡しを使ったとされている。

看板や周りの風景を撮影していると、渡し船が僕が乗ろうとしているのに気づいてこちらに近づいて来てくれた。何とも嬉しい光景。ゆっくりと近づいてくる船には、ゆっくりとした時間の流れと、どこか懐かしい光景を感じる。小さな渡し船は、昭和45年までは手漕ぎの船だったそうだが、現在は小型動力船となっている。

自転車を載せられる三津の渡し

車両は乗せられない小型船だが、自転車は持ち込み可能だ。しかし、船着き場は階段になっており、バリアフリー対応や自転車のスロープはない。自転車を乗せるのなら、担ぎあげて階段を登り降りしなければならない。

それでも自転車を乗せたら、快適なサイクリングルートの一端をこの船が担ってくれる。実はこの渡し船の正式名称は「松山市道高浜2号線」の一部と言う。なんと、この船は市道扱いとなっているのだ。そのため、時間は7~19時と制限はあるが、船は無休で運行している。そして、市の道路扱いなので、通行は無料。すなわち、乗船は無料なのだ。船長さんも市の委託職員で、船には松山市の旗が掲げられていた。

船に乗りゆっくりと方向転換。どこか懐かしい、旅情あふれる港町をゆっくりと船は進む。ほんの1、2分のクルージングだが、とても美しい時間の流れに身を置いたように感じる。船はゆっくりと北側の船着き場へと船首を近づけていった。

渡し船のある街はノスタルジックな風景

北側の船着き場を降りると、そこはとても時代を感じる街並みに。実は三津浜は古くは松山の港として発展していた地域。明治時代には、あの夏目漱石が松山に赴任した時にこの港に降り立ち、鉄道に乗って松山中心へと向かっている。その時の体験はそのまま、漱石の作品「坊ちゃん」で主人公が地方の学校に教師として赴任した時の様子として描かれている。

この歴史と趣を感じる道はほんの200m足らずを進むと、伊予鉄道「港山」駅に到着する。出発した「三津」の次の駅である。

振り返る三津浜港湾内。三津浜港の入口にはフェリーターミナルがあり、山口の柳井などとの便が結ばれている。湾内には小型船の停留も多く、よく渡し船の航路と垂直に交差するように船が行き交う。

風光明媚な港町の風景に見とれ、写真を撮っていると、僕の後ろを若い男性が通り過ぎて行く。そして、慣れた感じで渡し船に乗り込んだ。その男性一人を乗せたら、船長は何も言わず、再び船を向こう岸へと走らせ始めた。どうやら地元の人のようで、さもそこに渡し船があるのが普通のように、何気なく利用している。

地図を見ていただくとわかるのだが、ここから北側に渡ろうと思うとかなりの遠回りになる。といっても、橋を造るにも費用がかかり過ぎて難しいようだ。そのため、付近の住民の足として、今もこの渡し船が生活の一部となっているようだ。しかし、現在は松山市のPRもあってか、僕のようにここをわざわざ訪れる観光客も多くなったそうだ。松山市からすれば、費用のかかる「市道」が観光資源となるのは願ったりかなったりだろうか。

さっきは船長さんが気付いて船を寄せてくれたが、気づいてくれなかった時はこれを押すようだ。南側にも北側にも呼び出しボタンがついている。

ここは昔の松山の港。これからサイクリングで、今の松山の港である「松山観光港」にほど近い伊予鉄道「高浜」駅まで移動する。海沿い、鉄道沿いを楽しむ、至極のサイクリングルートだ。

松山の観光と宿泊情報

松山の宿泊といえばやはり道後温泉ですね。四国を代表する温泉街で、老舗からモダンな旅館まで多くの宿があり、歴史ある温泉風情を楽しめます。また、松山にはシティホテルが多くあります。中には温泉を引いている場所もいくつかあります。予算や目的によって豊富な宿が選択できる松山の宿泊は、愛媛の旅にはオススメです。伊予鉄道三津駅から松山市駅へは電車で1本。道後温泉にも松山市駅で路面電車に乗り換えて到着できます。

三津の渡し

住所: 愛媛県松山市三津
電話: 089-948-6491
休み: 無休
料金: 無料
営業時間: 7:00~19:00
交通: 伊予鉄道高浜線港山駅から南へ約200m
   三津港から東へ約300m(松山市駅~三津港・バス便あり)
駐車場: なし

【投稿時最終訪問 2008年9月】

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